Artist: Drake
Album: Comeback Season
Song Title: Barry Bonds (Freestyle)
概要
本楽曲は、2007年にリリースされた第2弾ミックステープ『Comeback Season』に収録されたフリースタイルである。ビートはKanye Westの名盤『Graduation』収録の同名曲「Barry Bonds」を拝借している。当時メジャー契約前であったDrakeが、カニエのビートを見事にジャックし、業界に自身のスキルを見せつけた野心的なトラックだ。歌詞には、マイケル・ジョーダンのルーキーカードや『サインフェルド』を用いた高度な言葉遊びが散りばめられ、同時に「コーンロウ(ブレイズ)をしている古いラッパー」へのサブリミナル・ディス(同郷の先輩ラッパーへの牽制とも言われる)も含まれている。女の裏の顔を疑う「Sad Boy」の視点と、富と才能を見せつける「Mob Boss」の傲慢さが完璧に融合した、初期Drakeのリリシズムの結晶である。
和訳
[Verse]
It's what you all been waiting for, ain't it?
お前らがずっと待ってたもんだろ?
Your weekly entertainment
お待ちかねのウィークリー・エンターテインメントさ
For me to get a hold of this beat and go 'head, claim it
俺がこのビートを掴んで、自分のもの(俺の曲)だと主張するのをな
I'm about to paint a picture, you niggas go 'head, frame it
これから絵を描いてやる、お前らはそれを額縁にでも飾っておけよ
Since we getting Seinfeld on some Jerry and Elaine shit
俺たちは『サインフェルド』のジェリーとエレインみたいな関係になりつつあるからな
※アメリカの大ヒットコメディドラマ『となりのサインフェルド』の主人公ジェリーと元カノのエレインの関係を引用。
I flow far from mediocre
俺のフロウは「平凡」なんかじゃ到底ない
And if we talking cards, I will fold him with the poker
カードゲームの話なら、ポーカーで奴をフォールド(降参)させてやる
You and your whole crew are like a deck of 54
お前とお前のクルー全体で、54枚のトランプのデッキみたいなもんさ
So it's obvious y'all gon' steady be rolling with some jokers
だから、お前らが常にジョーカー(バカな奴ら)とつるんでるのは明白だろ
※通常のトランプ52枚にジョーカー2枚を加えた「54枚のデッキ」と掛け、相手のクルーには必ず「ジョーカー(役立たず/道化)」が混ざっているという強烈なパンチライン。
And me, I'm rolling with some brokers
対して俺は、ブローカー(仲介人/大金を動かす男)たちとつるんでるぜ
Like, damn, could you niggas get any broker?
「おいおい、お前らこれ以上ブローク(一文無し)になれるのか?」って感じだ
※「ブローカー(Broker)」と「一文無し(Broke)の比較級(Broker)」を掛けたワードプレイ。
I got my new girl so content
俺の新しい彼女はすごく満足してる
Just save yourself the embarrassment, don't even approach her
恥をかく前にやめておけ、彼女に近づこうとすらするな
Disguise yourself, go buy a costume
変装でもしな、コスチュームでも買ってこいよ
I am making stocks work while you working stock rooms
俺が株(ストック)を動かしてる間、お前は倉庫(ストックルーム)で働いてるんだからな
Ugh, and I was praying I would drop June
あぁ、6月にリリースできればって祈ってたんだが
But label reps applying pressure to make them pop tunes
レーベルの連中が「ポップな曲を作れ」ってプレッシャーをかけてきやがる
So I keep it rocking for Pete's sakes
だから頼むぜ、俺は俺のやり方でロックし続ける
You fake gangsta rappers are cliché
お前らフェイクなギャングスタ・ラッパーは、ありきたり(クリシェ)で退屈だ
And if you ain't talking dough when you meet Drake
もしDrakeに会った時、金(ドウ)の話をしないんなら
I'll be all in your face, like, "No speak-a la ingles"
お前の目の前で「英語ワカリマセン」って顔をしてやるよ
Soon as you hear it, you quote it
聴いた途端に、お前は俺のリリックを引用(クオート)する
They try to be the one that I done left out the show with
女たちは、俺がショーの後に連れて帰る「特別な一人」になろうとする
But trust me, I'm aware, and my car's right there
でも信じろ、俺は気づいてるぜ、俺の車はすぐそこにある
Is this interior enough for y'all ulterior motives?
お前らの下心(アルテリア・モーティブ)を満たすには、この車の内装(インテリア)で十分か?
※車の「インテリア(内装)」と、金目当ての女性の「アルテリア(下心)」で韻を踏みつつ対比させる、初期特有のパラノイア(女性不信)。
'Cause if you like it, y'all should stick with me
気に入ったなら、俺にしっかりくっついてな
My money good, I ain't never had to flip a ki
俺の金回りはバッチリだ、コカインのキロ買い(ki)を捌いたことなんて一度もないがな
A lot of ice, a lot of cream like Dickie Dee
大量の氷(ダイヤ)と大量のクリーム(金)を持ってる、まるでディッキー・ディーみたいにな
※「Dickie Dee」はカナダ・トロントの有名なアイスクリーム移動販売のカート。氷(ダイヤ)とクリーム(現金)をアイスクリーム屋に掛ける、地元愛溢れる比喩。
Might cut the phone and disapear like Michie Mee
電話を切って、ミッチー・ミーみたいに姿を消すかもしれないぜ
※「Michie Mee」は1980〜90年代に活躍したカナダの女性ヒップホップ・パイオニア。後にメインストリームから姿を消した彼女へのトロントローカルなレファレンス。
But I'ma try and have you on the trip with me
でも、お前を俺の旅に連れて行くように努力するよ
Sliding through Henri Bendel like it's slippery
ヘンリ・ベンデルの中を、床が滑るみたいにスライドして(カードを切って)いく
※Henri Bendelはニューヨークの高級女性向けデパート。
And your ex-man is a hater, officially
そしてお前の元カレは、今や公式に俺のヘイターさ
Probably 'cause he know I'm exactly what you wish he be
たぶん、俺がお前の望んでいた「理想の男」そのものだって分かってるからだろうな
Yeah, that's the reason why he looking hard
あぁ、だからあいつは俺を睨みつけてるんだ
'Cause I done snatched the Chips Ahoy out the cookie jar
俺がクッキージャーから「チップスアホイ」を奪い取っちまったからな
※「Chips Ahoy!(有名なチョコチップクッキー)」と「カジノのチップ(金)/魅力的な獲物」を掛けている。
He just mad 'cause his girl's at the house
あいつは怒ってるだけさ、だって自分の彼女が俺の家にいて
With her tongue sticking out like a Michael Jordan rookie card
マイケル・ジョーダンのルーキーカードみたいに、舌を突き出してるからな
※マイケル・ジョーダンがダンクの際に舌を出す有名な癖と、性的な奉仕を求めて舌を出す女性を掛けたパンチライン。
Let me address this, pardon me while I fix
これについてはハッキリさせておこう、ちょっと直すから待っててくれ
A couple subliminal lines caught me in the mix
サブリミナルなディスの何本かが、俺を巻き込もうとしてたよな
I guess he thought he could've been Gotti in the flicks
あいつは自分が映画に出てくる(マフィアのボス)ジョン・ゴッティにでもなれたと勘違いしてたんだろう
But at this point, I'm just poking a body with a stick
でも今の時点じゃ、俺はただ死体を棒でつついているだけさ
※自分にサブリミナル・ディスを仕掛けてきた相手はすでに終わっており、反撃するのも「死体蹴り」に等しいというMob Boss的な余裕。
Nowadays, rapping is a children's hobby
最近じゃ、ラップなんて子供の趣味だ
And girls keep telling me I'm still this snobby
女たちは、俺が相変わらずスノッブ(気取ってる)だって言ってくる
I tell them myself is who I am feeling, probably
だから言ってやるんだ、俺が一番イケてると思ってるのは「俺自身」だってたぶんな
Just because I got a buzz like a building lobby
ビルのロビーみたいに「バズ(ブザー)」が鳴り止まないからってな
※人気が出て話題になる「バズる(Buzz)」と、マンションのロビーの「インターホンのブザー(Buzz)」を掛けている。
It ain't a song that your ass finna skip
これは、お前らがスキップするような曲じゃない
I tried to sell weed, give me cash for the zip
ハッパを売ろうとしたこともある、1ジップ(1オンス)分の現金をくれよ
The way your girlfriend pumped me up in the car
お前の彼女が車の中で俺をパンプアップして(アゲて)くれたおかげで
Seem like she don't really need no gas for the trip
この旅に「ガス(ガソリン/大げさな煽り)」は必要ないみたいだな
※気分をアゲる「Pump up」と車の「ガス(Gas)」を掛けた言葉遊び。
Millionaire shades, fade with the waves
ミリオネアのサングラス、波と一緒に消えていく
I smirk at a nigga if he still rocking braids
今だにブレイズ(コーンロウ)をしてる奴がいたら、俺は鼻で笑ってやるよ
That just lets me know that we ain't on the same page
そいつとは「同じページ(レベル)」にいないってことが分かるからな
And that goes out to every nigga except Trey
そしてこれは、Trey以外の全ニガに向けた言葉だ
※Trey Songz(当時ブレイズだった)を例外としつつ、古いスタイルに固執する上の世代のラッパーたちへのサブリミナル・ディス。
I'm outta here, baby
もう行くぜ、ベイビー
They asked me about the past years and how does it phase me
奴らは過去数年について、そしてそれが俺にどう影響したか聞いてくる
I wouldn't take it back, nah, not if they paid me
過去を取り消すつもりはないね、いや、いくら積まれてもな
Mr. Bet You That's Expensive 'cause it's not a fugazi
俺は「それ高いだろ、だって偽物(フガジ)じゃないからな」って呼ばれる男だ
Spitting a Crock Pot of bottomless gravy
底なしのグレービーソースが入ったクロックポット(鍋)みたいなラップを吐き出す
The shit is so nasty, how is it tasting?
エグいくらい最高(nasty)だろ、味はどうだい?
And you can probably find him walking out of a Macy's
あの男(ヘイター)はたぶん、メイシーズ(庶民派デパート)から歩いて出てくるところを見つけられるぜ
Forget it, girl, they just thinking how to replace me
忘れな、ガール。奴らは俺の代わりをどうやって見つけるかばかり考えてるんだから
Exit with a joke, leave these niggas some hope
ジョークを言って去ろうか、このニガどもに少しの希望を残してやるために
You took that 'Ye beat and put that shit in a choke
お前はあのYe(カニエ)のビートを奪い取って、チョークスリーパーで締め落としてやったんだな
Well, I'm thinking I should leave out on this note
まぁ、この辺で切り上げるとするか
Nigga, keep your two cents, I ain't tryna leave you broke
ニガ、お前の2セント(くだらない意見)はしまっておけ。お前を一文無し(ブローク)にするつもりはないからな
※「Put one's two cents in(意見を言う)」という慣用句の「2セント」と「一文無し(broke)」を掛け、相手の意見など無価値だと嘲笑して曲を締める。
[Refrain]
Life of a don, lights keep glowing
ドン(マフィアの首領)の人生、光は輝き続ける
Come up in the club with that fresh shit on
最新のイケてる服を着てクラブに現れる
And something crazy on my arm, uh-ahem
腕にはクレイジーなもの(女か時計)を抱えてな、エヘン
And here's another hit, Barry Bonds
そして、ここにもう一つのヒット(曲)だ、バリー・ボンズさ
※メジャーリーグの歴代最多本塁打記録保持者バリー・ボンズの「ヒット(安打/本塁打)」と、音楽の「ヒット曲」を掛けた、カニエの原曲のテーマを踏襲したアウトロ。
