Artist: Drake
Album: Room for Improvement
Song Title: U.P.A. (Outro)
概要
2006年にリリースされたデビュー・ミックステープ『Room For Improvement』の締めくくりとなる本トラックは、前半に収録されたスキット「Pianist Hands」の続編である。「アーバン・ピアニスト協会(U.P.A.)」の発表会を舞台に、ピアノ教師が教え子であるAubrey(Drakeの本名)を紹介するという寸劇が展開される。教師はDrakeが「改善(Improvement)」したと称賛し、俳優から音楽家へと転身して大成功を収めたジェイミー・フォックスを引き合いに出す。しかし、最終的にDrakeがピアノの演奏でミスを犯すと激怒し、彼を容赦なく追い出してしまう。これは、Drakeがクラシックな枠組みにおけるエリート街道からあえて外れ(あるいはドロップアウトし)、不完全な自分を抱えたままヒップホップの世界へ本格的に身を投じることを象徴する、極めて演劇的かつシニカルなアウトロである。ミックステープのタイトルを見事に回収しつつ、俳優としてのルーツと音楽家としての野心をユーモラスに昇華させた、初期Drakeのセルフプロデュース能力の高さが窺える一曲だ。
和訳
[Intro: Piano Instructor]
Welcome ladies and gentlemen to our annual recital here at the U.P.A., Urban Pianist Association.
紳士淑女の皆様、ここU.P.A.(アーバン・ピアニスト協会)の年に一度の発表会へようこそ。
※U.P.A.は架空の組織。Urban(都会的、ヒップホップ的)とPianist(クラシック的)という相反する言葉を組み合わせることで、Drake自身の立ち位置のハイブリッドさを表現している。
Here is the most talented student in my class, Aubrey Drake Graham.
私のクラスで最も才能のある生徒、オーブリー・ドレイク・グラハムを紹介します。
※Drakeの本名。ここから「Drake」というアーティスト名へと変貌していく過渡期であることを示している。
It has taken a long time for him to get to this point.
彼がここに至るまでには、長い時間がかかりました。
Do not get me wrong, he’s not perfect, but he has come a long way since my meeting with his mother.
誤解しないでいただきたいのですが、彼は決して完璧ではありません。しかし、私が彼のお母様と面談した時から比べれば、見違えるほど成長しました。
※ミックステープ前半のスキット「Pianist Hands」で行われていた、母親(Sandi Graham)との三者面談への言及。
He has made improvement! So Aubrey, show these people what you got man!
彼は見事に「改善(Improvement)」したのです!さあオーブリー、皆さんに君の実力を見せてやりなさい!
※ミックステープのタイトル『Room For Improvement(改善の余地)』を見事に回収するセリフ。
[Sidebar (to Drake): Piano Instructor]
Put the Jamie Foxx on them! I won’t be able to see you, but I will be able to hear you from outside, so, I’ll eat my Greek salad and drink that Grey Goose you gave me, mmmm!
ジェイミー・フォックスみたいにカマしてやれ!私はお前の姿は見えないが、外から演奏は聴こえるからな。お前がくれたグレイグース(高級ウォッカ)を飲みながらグリークサラダでも食ってるとするよ、うーん!
※ジェイミー・フォックスは、コメディ俳優から本格的なR&Bシンガーへと転身し、映画『Ray』で盲目の天才ピアニストであるレイ・チャールズを演じてアカデミー賞を受賞した人物。同じく俳優から音楽家への転身を図るDrakeにとって、究極のロールモデルである。また、教師が賄賂として「Grey Goose」を受け取っている描写から、Drakeがすでにストリートで金を稼ぎ、大人の付き合いをしていることが窺える。
Anyways, good luck! Hey! Don’t mess up, okay? My ass is on the line!
とにかく、幸運を祈る!おい!絶対にヘマするなよ、分かったな?私のクビがかかってるんだからな!
[Piano Solo: Drake] [Sidebar (to Drake): Piano Instructor]
Hey! What did I tell you about playing bad notes huh?! You’re a Failure!
おい!ミスタッチ(悪い音)を弾くなと何度言ったら分かるんだ!?お前は落第(失敗作)だ!
※教師の期待に反して意図的に(あるいは実力不足で)ピアノの演奏を失敗する。これは、伝統的で「正しい」音楽の道を捨て、ラッパーとしての道を選ぶことの暗喩である。
Just leave and take your damn Grey Goose with you!
とっとと出て行け!お前のその忌々しいグレイグースも持って帰れ!
