Artist: Drake
Album: Room for Improvement
Song Title: Drake’s Voice Mail Box #1
概要
「Drake’s Voice Mail Box #1」は、2006年のデビュー・ミックステープ『Room for Improvement』に収録されたスキット(留守番電話メッセージ)である。ヒップホップのミックステープ文化において、著名人や業界関係者からのシャウトアウト(称賛)を留守番電話の形式で収録することは、自身のストリート・クレジット(信頼性)やコネクションを誇示する伝統的な手法である。本トラックでは、80年代から90年代にかけて活躍したヒップホップデュオ「Kid 'n Play」のKid(Christopher Reid)や、カナダ出身のR&BシンガーであるGlenn Lewisからのメッセージが収められている。特にGlenn Lewisが「トロントを地図に載せる(世界に知らしめる)」と語る部分は、当時のトロントのシーンがまだ辺境であったことを示しており、Drakeがその後OVO Soundを率いて地元を「6ix」として世界的なヒップホップの中心地へと押し上げる、その壮大な野望の幕開けを感じさせる極めて重要なドキュメントとなっている。
和訳
[Message 1]
Jermaine [?] from [?]. The man, Drake, puts it the fuck down. He’s doing his thing.
Jermaine [?] からだ。Drakeって男は、マジでヤバいことやってるぜ。あいつは自分のスタイルを貫いてる。
※発信者の詳細は不明だが、ヒップホップ業界の関係者と思われる。若き日のDrakeがすでにアンダーグラウンドで話題を集めていたことが窺える。
He’s got the hottest mixtape on the streets. It’s early, it’s nasty. He’s putting it the fuck down, you know what I’m sayin'?
ストリートで一番ホットなミックステープを持ってるんだ。まだキャリアの初期段階だが、エグいぜ。あいつはマジでカマしてる、言ってる意味わかるか?
※「puts it down」はヒップホップのスラングで、物事を完璧にやり遂げる、あるいは現場を確実に盛り上げるという意味である。
Listen to that shit. Do your thing, aiiight?
あの曲を聴いてみろよ。お前らしくやれ、な?
[Message 2]
Yo, yo, yo. This is your boy, Christopher "Kid" Reid, that’s right, Kid from Kid 'n Play, chilling with my main man, Drake.
ヨー、ヨー、ヨー。お前らのボーイ、Christopher "Kid" Reidだ。そう、Kid 'n PlayのKidさ。俺のメインのダチであるDrakeと一緒にチルしてるぜ。
※Christopher "Kid" Reidは、80〜90年代に活躍したヒップホップ・コメディデュオ「Kid 'n Play」のメンバーである。レジェンドからのフックアップにより、Drakeが単なるカナダの俳優上がりではなく、ヒップホップの文脈にしっかりと根ざしていることをアピールしている。
On the off-the-hook from this tape. You know how we get down.
このミックステープから放たれるヤバい曲に乗せてな。俺らがどうやって盛り上げるか知ってるだろ。
※「off-the-hook」は「常軌を逸した」「めちゃくちゃヤバい(最高な)」を意味するスラング。
That’s how we do it, the real house party, baby. Let’s go, let’s go, let’s go!
これが俺たちのやり方さ、本物のハウス・パーティーだぜ、ベイビー。さあ行くぞ、行くぞ、行くぞ!
※Kidが主演を務めた1990年の大ヒットヒップホップ映画『House Party』にかけた、気の利いたレファレンスである。
[Message 3]
Yo, nigga. What’s up? This is Glenn Lewis, man.
ヨー、ニガ。調子はどうだ? Glenn Lewisだぜ。
※Glenn Lewisはカナダ・トロント出身の著名なネオソウル/R&Bシンガー。同郷の先輩アーティストからの熱いサポートのメッセージである。
Had to holla at my boy, Drake: the incomparable, illustrious, lyrical genius hailing from the one and only Toronto, Up-North.
俺のボーイ、Drakeに声をかけなきゃな。唯一無二のトロント、つまり「北」からやってきた、比類なき、輝かしい、リリカル・ジーニアス(天才作詞家)へ。
※「Up-North」はアメリカのヒップホップ中心地から見たカナダ(トロント)を指す表現。Drakeを「リリカル・ジーニアス」と称賛し、言葉の力で成り上がる才能を見抜いている。
Throwed niggas pay attention, how my nigga get down. Drake, let ‘em have it man.
ヤバい奴らは注目しろ、俺のダチがどうカマすかをな。Drake、奴らに喰らわせてやれ。
‘06, you know how we doing it this year. We doing it big, man.
06年、今年俺たちがどう動くか分かってるだろ。デカくやるぜ。
※このミックステープがリリースされた2006年を強調し、トロント発のムーブメントを起こす決意を語っている。
We 'bout to set this whole country on fire, 'bout to put this place on the map. Let’s get it
俺たちはこの国中を炎で包み込み、この場所を地図に載せてやるんだ。さあ、やったろうぜ
※「put this place on the map(地図に載せる)」とは、無名だった地元を世界的な認知を得る場所に押し上げるという意味。後にDrakeがトロントを「6ix」と名付け、世界の音楽シーンの中心地へと変貌させることを予言しているかのような、非常に重要なフレーズである。
