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SIR BAUDELAIRE - Tyler, The Creator (feat. DJ Drama) 【和訳・解説】

Artist: Tyler, The Creator (feat. DJ Drama)

Album: CALL ME IF YOU GET LOST

Song Title: SIR BAUDELAIRE

概要

本作は、2021年のグラミー賞最優秀ラップアルバム賞に輝いた『CALL ME IF YOU GET LOST』のオープニングを飾る楽曲だ。タイラーの新たなオルターエゴ(別人格)である「タイラー・ボードレール」の誕生を高らかに告げている。この名前は『悪の華』で知られる19世紀のフランスの詩人シャルル・ボードレールに由来し、世界中を旅する放浪者かつ洗練された文化人としての姿を象徴している。2000年代のミックステープ文化を代表するDJ Dramaのアイコニックな煽り(Gangsta Grillz)を大々的にフィーチャーし、大人の富と成熟、そしてパスポートのページを埋め尽くすほどのラグジュアリーな旅の情景を見事に描き出した、贅沢なイントロダクションである。

和訳

[Intro: Tyler, the Creator & DJ Drama]
The sun beamin'
太陽がギラギラ照りつけてるぜ。
※DJ Dramaによる、アルバムの始まりを告げる快晴の情景描写。

Y'all ready?
お前ら、準備はいいか?

Ayo (DJ the fuck-It's DJ the fuck—)
エイヨォ(DJのクソ…俺がDJの…)
※DJ Dramaのお馴染みのプロデューサータグ「DJ Drama」の言い淀み(スクラッチ風の演出)。ミックステープ黄金期のバイブスを呼び起こしている。

It's T, baby
俺だよ、T(タイラー)だぜ、ベイビー。

I don't think you're ready
お前らにはまだ早いと思うがな。

Wolf Haley, Bunnyhop, yo
ウルフ・ヘイリー、バニーホップ、ヨォ。
※Wolf Haley=タイラーの初期作品における凶暴な別人格。Bunnyhop=タイラーの別名義、または彼の愛するBMXのジャンプ技を示すフレーズ。

I must say, I'm glad you found your way here
よくぞここまで辿り着いてくれた。嬉しいよ。
※アルバムのメインテーマである「迷子になったら電話して(Call Me If You Get Lost)」に呼応する、リスナーへの歓迎のメッセージ。

Yo
ヨォ。

[Verse: Tyler, the Creator & DJ Drama]
Cookie crumbs in the Rolls (Rolls), jet-fuel-scented vest (Vyoom)
ロールスロイスの中にクッキーの食べこぼし。ジェット燃料の匂いが染み付いたベストを着てるぜ(ヴューン)。
※超高級車であるロールスロイスの中でスナックを食べる無頓着さと、プライベートジェットで世界中を飛び回っている大富豪のライフスタイルを描写している。

Swim trunks in the trunk, Geneva water the best (The best, yeah)
車のトランクには水着。ジュネーブの湖の水が最高なんだ(最高だぜ、イェー)。
※Geneva water=スイスのジュネーブ湖を指す。世界有数の避暑地での優雅なバカンス。

The passport lookin' thick, the afro need a pick
パスポートのスタンプは分厚くて、アフロにはコームが必要だ。
※頻繁な海外渡航によりパスポートのページが増刷(thick)されていることの自慢。pickはアフロヘアを整える専用の櫛。

My skin soak up the sun, ain't shakin' hands with you bums (Nah)
俺の肌は太陽の光をたっぷり浴びてる。お前らみたいな浮浪者と握手する気はねえよ(悪いな)。
※bums=「浮浪者」「役立たず」。成功した自分と、それに群がる連中(ヘイター)との明確な格差を示している。

Bunny Hoppa, the new car doors, they lift open (Woo)
バニー・ホッパー。新しい車のドアは、上に跳ね上がるんだ(ウー)。
※lift open=マクラーレンなどに採用されているバタフライドアやシザードアのこと。自転車のジャンプ技である「Bunny Hop」と、車のドアが跳ね上がる様子を掛けている。

The lake water, dry off at the French Open (Ayy)
湖で泳いだ後は、全仏オープンの会場で体を乾かすぜ(エイ)。
※French Open=テニスの四大大会の一つ(ローラン・ギャロス)。ヨーロッパ中を飛び回るセレブ生活の誇示。

I rub it in these niggas' faces like thick lotion
あいつらの顔に、濃厚なローションみたいに塗りたくってやるよ。
※rub it in someone's face=「(成功などを見せつけて)嫌がらせをする」「嫌味を言う」という英語の慣用句。文字通りローションを顔に塗る行為と掛けたワードプレイである。

That big B is in motion, uh (Gangsta Grillz)
あの巨大なBが動き出したぜ、アー(ギャングスタ・グリルズ)。
※big B=今作のオルターエゴである「Baudelaire(ボードレール)」の頭文字。Gangsta GrillzはDJ Dramaの象徴的なミックステープ・シリーズの名前。

Coral peach cobbler, dude, spit like a llama do
コーラルピーチのコブラー。なあ、ラマみたいにツバを吐いてやるよ。
※Peach cobbler=アメリカの伝統的な焼き菓子。ラマが威嚇のためにツバを吐く習性と、ラッパーとして「spit(リリックを吐き出す)」することを掛けている。

Used to be reckless, you should see what them commas do
昔は無茶ばかりしてたけどな、カンマが人を変えるのを見てみな。
※commas=数字の桁を区切るカンマのこと。つまり1,000,000(100万ドル=億万長者)以上の莫大な富を手に入れたことで、精神的にも大人に洗練されたことを語っている。

New le FLEUR* season, summertime look like private school
GOLF le FLEURの新しいシーズン。夏なのに私立学校の生徒みたいに見えるだろ。
※le FLEUR=タイラーが展開するファッションブランド。ローファーやカーディガンなど、プレッピーで上流階級の私立学校(private school)の制服のような上品なサマースタイルを表現している。

Keep it low, don't want that shit to blow like Osama shoe
目立たないようにしておく。オサマの靴みたいに爆発(炎上)させたくないからな。
※blow=「爆発する」と「大流行する(あるいは炎上する)」のダブルミーニング。Osama shoe=2001年に靴に爆弾を隠してテロを企てたリチャード・リード(オサマ・ビンラディンに忠誠を誓っていた)の事件を不謹慎にサンプリングした過激なライン。

I'm a true connoisseur, hotel concierge
俺は真の目利きだ。ホテルのコンシェルジュみたいにな。
※connoisseur=芸術や美食などに精通した鑑定家・玄人。高級ホテルを渡り歩くタイラーの洗練された嗜好を示している。

Know me as that spaced-out nigga with the chunky ears
分厚い耳をした、あのぶっ飛んでる黒人ってのが俺のことさ。
※chunky ears=次行への見事な伏線。

UFC, that shit swole up, that's VVS, keep Vic safe
UFCの選手みたいにパンパンに腫れ上がってる。これはVVSのダイヤだ、ヴィックを安全に守れ。
※UFCの格闘家が耳にダメージを受けて腫れ上がる「カリフラワー・イヤー」に、自身の耳に輝く巨大なVVS(最高純度)のダイヤモンドピアスを例えている。Vicは身内のガードマンや宝石商などを指す。

That's a mansion on that USB, it's T
このUSBメモリには大邸宅が入ってるんだ。俺だよ、Tさ。
※タイラーは自身の未発表曲やビートをUSBに入れて持ち歩いている。そのデータの価値が「豪邸(マンション)を買えるほどの莫大な金額」に相当するという、クリエイターとしての究極のフレックス(自慢)。

[Outro: Tyler, the Creator & DJ Drama]
Yeah
イェー。

I hope you niggas been spendin' your time wisely
お前らが賢く時間を使ってきたことを願うぜ。

Call me if you get lost, baby
迷子になったら電話してくれ、ベイビー。

As you can tell, we have (Haha)
見りゃ分かる通り、俺たちはそうしてきた(ハハ)。

This shit for the sunseekers
これは太陽を追い求める奴らのためのモンだ。
※sunseekers=日光浴を楽しむ人々、あるいは常に明るい場所(成功や幸せ)をアクティブに求める人々のこと。

Got the bikes on the tarmac
滑走路に自転車を用意してある。
※tarmac=空港の滑走路。プライベートジェットから降りてすぐに自転車(タイラーの愛用品)に乗れるという、セレブな自由気ままさを表す。

Welcome to the disco
ディスコへようこそ。

Hittin' wheelies and shit
ウィリーとかキメながらな。

Call me if you get lost
迷子になったら電話してくれ。

Perfume on the skin, ha
肌には香水をまとってな、ハッ。

Hahaha
ハハハ。

Call me if you lost
迷子になったら電話してくれよ。

See, while y'all was in the house (Call me if you lost)
ほら、お前らが家でくすぶってる間に(迷子になったら電話してくれ)、

We was takin' Rolls Royces to go see alligators
俺たちはロールスロイスに乗って、ワニを見に行ってたんだぜ。
※インドアな生活を送る他者を尻目に、自由でワイルドな旅行を満喫している描写。

DJ Drama, man (Call me if you lost)
DJ Dramaだぜ、おい(迷子になったら電話してくれ)。

Travelin' the world
世界中を旅してるんだ。

Passport stamped up (Call me)
パスポートはスタンプだらけさ(電話してくれ)。

It's Tyler Baudelaire, nigga
タイラー・ボードレール様だぜ、クソが。
※最後に堂々と新たな名前(Baudelaire)を名乗り、アルバム全体のコンセプチュアルな世界観を確固たるものにしている。

 

CALL ME IF YOU GET LOST

CALL ME IF YOU GET LOST

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