Artist: Kanye West
Album: JESUS IS KING
Song Title: Follow God
概要
『JESUS IS KING』の中でも一際ヒップホップ的なビートとフロウが際立つ「Follow God」は、Kanye Westが実の父Ray Westとの関係性、そして「キリスト教徒として正しく生きる」ことの難しさについて内省した一曲だ。1974年のゴスペルグループWhole Truthによる「Can You Lose By Following God」をサンプリングし、ソウルフルなブーンバップ・ビート上で矢継ぎ早にライムを連発する。メディアや大衆からのプレッシャー、SNSの虚栄心に対する不満を語りつつ、幾度となく繰り返される「それはキリストらしくない(It ain't Christ-like)」という父からの戒めが本作のコアとなっている。宗教的な覚醒を経てもなお、怒りやエゴを手放しきれない自身の不完全さを赤裸々かつコミカルに吐露した、本作屈指の人気トラックである。
和訳
[Intro]
Father, I stretch
父よ、俺は手を伸ばす
Stretch my hands to You
あなたへと手を伸ばす
※1974年のゴスペル・グループ Whole Truth の「Can You Lose By Following God」からのサンプリング。「Father」は実の父(Ray West)と天の父(神)のダブルミーニングとして機能している。過去作『The Life of Pablo』の「Father Stretch My Hands」へのセルフオマージュでもある。
[Verse]
Lifelike, this is what your life like, try to live your life right
リアルだな、これが人生ってやつだ。正しく生きようとしてるんだよ。
People really know you, push your buttons like typewrite
世間は俺のことを分かった気になって、タイプライターみたいに俺の感情(ボタン)を叩いてきやがる。
※push someone's buttons=「人を怒らせる、感情を逆撫でする」というイディオム。それをタイプライターのキーボードを叩く動作にかけている。
This is like a movie, but it's really very lifelike
まるで映画みたいだが、マジで現実なんだよ。
Every single night, right, every single fight, right?
毎晩毎晩そうだろ、いちいち争いばっかりだろ?
I was looking at the 'Gram and I don't even like likes
インスタグラムを見てたんだが、俺は「いいね(likes)」すら好きじゃねぇ。
※'GramはInstagramのこと。承認欲求の象徴である「いいね」を否定し、現代のSNS文化やエゴに対する嫌悪を示している。
I was screamin' at my dad, he told me, "It ain't Christ-like"
親父に向かって怒鳴り散らしたら、「それはキリストらしくないな」って言われたぜ。
I was screamin' at the referee just like Mike
マイクみたいにレフェリーに向かって怒鳴ってたんだ。
※Mikeはマイケル・ジョーダン(Michael Jordan)を指す。試合中の判定に不服でレフェリーに猛抗議するジョーダンの姿と、自分の血の気の多さを重ね合わせている。
Lookin' for a bright light, Sigel, what your life like
光(希望)を探してる。シーゲル、お前の人生はどうだ?
※Sigelはフィラデルフィア出身のラッパー、Beanie Sigelのこと。彼の楽曲「What Ya Life Like」を引用している。Kanyeはかつて彼のレーベルメイト(Roc-A-Fella)であった。
Riding on a white bike, feeling like Excitebike (Stretch my hands to You)
白いバイクに乗って、エキサイトバイク気分だ(あなたへと手を伸ばす)。
※Excitebike(エキサイトバイク)は1984年の任天堂のファミコンゲーム。障害物を避けて進むゲーム性を、人生の困難を乗り越えるメタファーとして使っている。
Pressin' on the gas, supernova for a night light
アクセルを踏み込む、夜の灯り代わりの超新星(スーパーノヴァ)だ。
Screamin' at my dad and he told me, "It ain't Christ-like"
親父に向かって怒鳴り散らしたら、「それはキリストらしくないな」って言われたぜ。
But nobody never tell you when you're being like Christ
だけど、俺がキリストらしく振る舞ってる時には、誰も何も言ってくれねぇんだよ。
※失敗した時や怒った時だけ批判され、善行や努力を積んでいる時には評価されないという、世間のダブルスタンダードへの不満を吐露している。
Only ever seein' me only when they needin' me
あいつらが俺を見るのは、俺を利用したい時だけだ。
Like if Tyler Perry made a movie for BET
まるでタイラー・ペリーがBETのために映画を作る時みたいにな。
※Tyler Perryは黒人層に絶大な人気を誇る映画監督。BET(Black Entertainment Television)は黒人向けのケーブルテレビ局。BETが視聴率を稼ぐためにTyler Perryのコンテンツに依存する関係性を、大衆がKanyeの話題性を搾取する構造に例えている。
Searchin' for a deity, now you wanna see it free
神(deity)を探してるのに、お前らはそれをタダで見ようとする。
Now you wanna see if we, let's just see if three apiece
俺たちがどうなるか見たいんだろ、一人3つずつかどうか見てみようぜ。
※解釈が分かれるラインだが、イエスを裏切ったユダが受け取った「銀貨30枚」の裏切りを暗喩している、あるいはビジネスの不当な分配や搾取について語っているとされる。
Tell me what your life like, turn it down, a bright light
お前の人生がどんなもんか教えてくれよ。まぶしい光を少し落としてくれ。
Drivin' with my dad, and he told me, "It ain't Christ-like" (Stretch my hands to You)
親父とドライブしててさ、「それはキリストらしくないな」って言われたんだ(あなたへと手を伸ばす)。
I'm just tryna find, l've been lookin' for a new way
ただ見つけたいだけだ、新しい道をずっと探してるんだ。
I'm just really tryin' not to really do the fool way
バカなやり方だけはマジで避けようとしてるんだ。
I don't have a cool way, bein' on my best, though
クールなやり方なんて持ってねぇよ、ベストは尽くしてるんだがな。
Block 'em on the text though, nothin' else next though
でもテキストはブロックする。もう次なんてねぇ。
Not another word, letter, picture, or a decimal (Father, I stretch)
言葉も、手紙も、写真も、小数点のドット一つすらもな(父よ、俺は手を伸ばす)。
※decimalは小数点。連絡を完全に絶ち切り、これ以上一切関わらないという徹底した拒絶を表している。
Wrestlin' with God, I don't really want to wrestle
神とレスリング(葛藤)してる。マジで戦いたくなんかないのにな。
※旧約聖書の『創世記』において、ヤコブが夜明けまで神(の使い)と格闘し、「イスラエル」という名を与えられたエピソードからの引用。神への信仰と己のエゴの間での葛藤を示している。
Man, it's really lifelike, everything in my life (Stretch my hands to You)
なぁ、マジでリアルだよな、俺の人生のすべてがさ(あなたへと手を伸ばす)。
Arguing with my dad, and he said, "It ain't Christ-like"
親父と口論になってよ、そしたら親父が言ったんだ、「それはキリストらしくないな」って。
[Outro]
Man
なぁ。
You know, it's like
分かるだろ、なんていうか。
Somebody only close who can get you, like, off your
身近な奴だけなんだよ、俺をこう…我を忘れさせるのはさ。
I be on my
俺は俺のやり方で…
I woke up this morning, I said my prayers
今朝起きて、ちゃんとお祈りをしたんだ。
I'm all doing good, I tried to talk to my dad (Stretch my hands to You)
調子も良くてさ、親父と話そうとしたんだよ(あなたへと手を伸ばす)。
Give him some advice, he starts spazzin' on me
アドバイスをしてやったら、親父のやつ俺にキレ出しやがって。
I start spazzin' back, He said "That ain't Christ-like"
だから俺もキレ返してやったんだ。そしたら親父が「それはキリストらしくないな」って。
※spazz on〜は「〜に対してキレる、発狂する」というAAVEのスラング。信仰に目覚め、穏やかな朝を迎えたはずなのに、結局肉親との些細なやり取りで感情を爆発させてしまうという、人間的で滑稽なオチがついている。
I said, "Ahhh"
だから俺は叫んでやった、「Ahhh」ってな。
