Artist: KIDS SEE GHOSTS (feat. Louis Prima)
Album: KIDS SEE GHOSTS
Song Title: 4th Dimension
概要
KIDS SEE GHOSTSのサイケデリックな世界観を象徴する「4th Dimension(四次元)」は、1936年のルイ・プリマによるクリスマス・ソング「What Will Santa Claus Say」を大胆にサンプリングした特異な一曲だ。カニエ・ウェストは原曲の陽気なスウィング・ジャズを再構築し、一部を逆再生することで不気味なホラーコアの雰囲気を演出している。リリックにおいてカニエが自身の性的なエピソードや傲慢さをコミカルかつ赤裸々にラップする一方、キッド・カディは迫り来る悪魔や闇との闘い、魂の救済というスピリチュアルなテーマを展開する。両者の明暗が交差するこの曲は、規格外の狂気と才能がぶつかり合う2018年ワイオミング・セッションのハイライトの一つであり、時間や空間が歪んだような「異次元」を見事に体現している。
和訳
[Intro: Louis Prima]
Down the chimney, he will come
煙突からあいつがやってくる。
With his great big smile
満面の笑みを浮かべてな。
And you'll find that even the kiddies
ガキどもでさえ気づくはずさ。
Are swingin' in the latest style
最新のスタイルでスウィングしてるってな。
※1936年のLouis Primaの楽曲「What Will Santa Claus Say (When He Finds Everybody Swingin'?)」からのサンプリング。本来は陽気なクリスマスソングだが、文脈から切り離されたことで不気味なトーンを帯びている。
[Chorus: Louis Prima]
Oh, oh, oh
Oh, oh, oh
What is Santa bringing?
サンタは何を持ってきてくれるのかな?
Oh, oh, oh
Oh, oh, oh
I w—
俺は…
Gnignirb atnaS si tahw?
?なかのるくてきっ持を何はタンサ
※原曲の「What is Santa bringing?」を逆再生(バックワード・マサキング)した音声。「四次元」というタイトル通り、時間や空間が歪んだ異次元空間を表現している。
[Verse 1: Kanye West]
It feels so good, it should cost
クソ気持ちいいぜ、金取れるレベルだ。
Bought a alligator, I ain't talkin' Lacoste
アリゲーターを買ったんだ、ラコステの話じゃねえぞ。
※「アリゲーター(ワニ)」は高級な革製品(靴やバッグ)を指すが、同時にKanyeの桁違いの富や野生的な豪快さを誇示している。アパレルブランドのラコステ(ロゴがワニ)を引き合いに出したワードプレイだ。
Made me say, "Ugh, uh"
思わず「Ugh, uh」って声が出ちまう。
Like a mix of Master P and Rick Ross, uh-uh
マスター・Pとリック・ロスを混ぜたみたいにな、uh-uh。
※Master Pの代名詞である「Ugh!」という唸り声と、Rick Rossの代名詞である「Huh(あるいはUh)」というアドリブ(Grunt)を掛け合わせた声を出しているというユーモアである。
She seem to make me always feel like a boss, uh-uh
あの女はいつも俺に「ボス」になった気分にさせてくれる。
She said I'm in the wrong hole, I said I'm lost, uh-uh
女に「穴が違うわよ」って言われたから、「迷子になっちまった」って答えてやったぜ、uh-uh。
※アナルセックスにおけるコミカルな失敗談。Kanyeらしい露悪的でタブーを恐れないラインである。
She said I'm goin' too fast, I'm exhausted
「早すぎるわ」なんて言われたけど、俺はもうヘトヘトだ。
Now drop to your knees for the offerin'
さあ、ひざまずいて捧げ物(オーラル)をしな。
※「offering(捧げ物)」は宗教的な儀式を連想させる単語。自らを神(Yeezus)に擬える崇拝的行為を、性的なコンテクストに落とし込んでいる。
This the theme song of something wrong
こいつは「何かがおかしい」って時のテーマソングだ。
Might need an intervention for this new dimension
この新次元(ニュー・ディメンション)には介入(インターベンション)が必要かもな。
※interventionはアルコールや薬物依存症の患者に対して家族や友人が行う「介入(説得・治療)」を指す。常軌を逸した新たな次元(4th Dimension)に突入した自分への自嘲である。
That's too new to mention, or fit in a sentence
あまりに新しすぎて言及もできねえし、言葉にも収まらねえよ。
If I get locked up, I won't finish the sent—
もし俺がムショにブチ込まれたら、刑期(センテ—)は全うできねえだろうな。
※sentenceには「文章」と「刑期」のダブルミーニングがある。一つ前の「fit in a sentence(文章に収まる)」という言葉遊びから繋がり、言葉の途中でフレーズがカットされる(刑期を全うしないことのメタファー)という高度なギミックが使われている。
[Chorus: Louis Prima]
Oh, oh, oh
Oh, oh, oh
What is Santa bringing?
サンタは何を持ってきてくれるのかな?
Oh, oh, oh
Oh, oh, oh
Gnignirb atnaS si tahw?
?なかのるくてきっ持を何はタンサ
[Verse 2: Kid Cudi]
Gettin' loose while I'm rollin' through, see me roll out
ドライブしながらリラックスしてるぜ、俺が繰り出すのを見てな。
Watch you surf, hit the coast, and this feelin', I got
波に乗るお前らを見て、海岸沿いを走る。この感覚を掴んだんだ。
Plenty of bitches for the evenin', we go journey, we off
今夜は女もたっぷりいる、旅に出ようぜ、出発だ。
From the light to guide us home, we in the moment, ha-ha
家に導いてくれる光から離れて、俺たちは今この瞬間を生きてるんだ、ハハ。
Such a lost boy, caught up in the darkest I had
まるで迷子のガキだ、俺が抱える深い闇に囚われてた。
※Cudiが長年苦しんできたうつ病や薬物依存といった精神的な「闇」を振り返っている。
What's the cost, boy? Losin' everything that I had
代償は何だった? 俺が持ってたすべてを失うことだった。
She been on me, boy, 'less you got somethin' to tell
悪魔が俺に憑きまとってるんだ、何か言うことがあるなら別だがな。
※「She」は直前の文脈から女性ではなく、「闇」や「悪魔的な誘惑(ドラッグなど)」を擬人化したものと解釈される。
Sittin', waitin' for me slippin', yeah, I'll see you in hell
俺がミスる(滑り落ちる)のを座って待ってやがる。ああ、地獄で会おうぜ。
Tell the cougar get up off me, no, my soul ain't for sale
そのクーガーに俺から離れろって言え、いや、俺の魂は売り物じゃねえんだよ。
※cougar(年上の魅力的な女性)は、富や名声がもたらす誘惑のメタファー。「悪魔に魂を売らない」というヒップホップにおける自己保持の宣言だ。
All the evils in the world, they keepin' on me for real
世界中のすべての悪が、マジで俺を狙い続けてるんだ。
I really hope the Lord heard me, we all live in sin
神様が俺の声を聴いてくれたと心から願うよ、俺たちは皆、罪の中で生きている。
※誘惑や悪と戦う中での神への祈り。人間は皆罪人であるというキリスト教の原罪思想に基づいている。
Kids See Ghosts off the ropes, Ric Flair on your bitch
KIDS SEE GHOSTSがロープから飛び立つぜ。お前の女の上でリック・フレアーだ。
※プロレスの伝説的レスラー、Ric Flair(リック・フレアー)を引き合いに出している。「off the ropes」はプロレスでロープの反動を使って攻撃する様と、逆境からの復活(バウンスバック)を掛けている。
Now this the theme song, this the theme song
さあ、こいつがテーマソングだ、こいつがテーマだ。
The put the beams on, get your, get your dream on
スポットライト(ビーム)を当てな、お前の夢を追いかけろ。
But you don't hear me though, drama: we let it go
でも俺の声は届いてねえか。ドラマ(揉め事)なんて手放したんだよ。
Watch the guitars roll, but let your friends know
ギターが鳴り響くのを見な、ダチにも教えとけよ。
[Chorus: Louis Prima]
Oh, oh, oh
Oh, oh, oh
What is Santa bringing?
サンタは何を持ってきてくれるのかな?
Oh, oh, oh
Oh, oh, oh
Gnignirb atnaS si tahw?
?なかのるくてきっ持を何はタンサ
[Outro: Shirley Ann Lee]
Just do that and then let the music do somethin', and then do that again, that'd be enough for a record
ただそれをやって、あとは音楽に何かさせればいい。それをもう一回やれば、レコードとしては十分よ。
I mean, you only want two and a half minutes if you can get it, you know, three minutes max—
つまり、できれば2分半、長くてもせいぜい3分もあれば十分なのよ…。
※Shirley Ann Lee(ゴスペル・シンガー)の未発表の音声サンプリング。音楽業界の「売れる曲の長さ(3分以内の短い曲)」に対するメタ的な言及であり、実際にこの「4th Dimension」も2分33秒という尺で終わっているというKanyeのウィットに富んだ構成である。
