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Violent Crimes - Kanye West 【和訳・解説】

Artist: Kanye West

Album: ye

Song Title: Violent Crimes

概要

2018年にリリースされたアルバム『ye』のエンディングを飾る「Violent Crimes」は、愛娘(ノース・ウェスト)を持つ父親となったカニエ・ウェストの深い内省と恐怖を描いた楽曲だ。かつて女性をトロフィーや性的欲望の対象として扱っていた「プレイヤー」や「モンスター」であった自分自身の過去を振り返り、そのカルマ(因果応報)が娘に降りかかるのではないかという恐れを赤裸々に吐露している。

ヒップホップ特有のミソジニー(女性蔑視)的な価値観から脱却し、女性を「征服する対象」から「育み守るべき存在」へと捉え直す精神的な成熟が表現されている。070 Shakeのエモーショナルなボーカルが親の切実な祈りを際立たせ、アウトロではニッキー・ミナージュ本人のボイスメモが挿入されるなど、カニエの私小説的なアルバムを締めくくるにふさわしい、美しくもほろ苦い子守唄である。なお、リリース後にカニエ自身の口から、この楽曲の象徴的なリリックの大部分がラッパーのPardison Fontaineによってゴーストライト(代筆)されたことが明かされ、ヒップホップシーンで大きな議論を呼んだ背景も持っている。

和訳

[Intro: 070 Shake]
Fallin', dreamin', talkin' in your sleep
落ちていく、夢を見る、寝言を言う。

I know you want to cry all night, all night
一晩中泣きたいんだろう、一晩中な。

Plottin', schemin', finding
企んで、計画して、見つけ出そうとしてる。

Reason to defend all of your violent nights
お前のすべての暴力的な夜を正当化する理由を。

Promise me you will be (Oh)
約束してくれ、お前は…(Oh)

[Chorus: 070 Shake]
Don't you grow up in a hurry, your mom will be worried, oh
急いで大人にならないでくれ、ママが心配するから、oh。

It was all part of the story, even the scary nights
怖い夜のことでさえ、すべては物語の一部だったんだ。

Thank you for all of the glory, you will be remembered, oh
すべての栄光に感謝を、お前は記憶に刻まれるだろう、oh。

Thank you to all of the heroes of the night (Night, night)
夜のすべてのヒーローたちに感謝を。(Night, night)

They gotta repaint the colors, the lie is wearin' off
色を塗り直さなきゃいけない、嘘が剥がれ落ちてきてるからな。

Reality is upon us, colors drippin' off
現実がすぐそこまで迫ってる、色が滴り落ちていくんだ。

Colors drippin' off
色が滴り落ちていく。

[Verse: Kanye West]
Niggas is savage, niggas is monsters
男ってのは野蛮だ、男ってのはモンスターだ。
※niggas=ここでは黒人に限らず「男たち」「世間の野郎ども」全般を指す。

Niggas is pimps, niggas is players
男ってのはピンプ(売春斡旋者)だ、男ってのはプレイヤー(遊び人)だ。

'Til niggas have daughters, now they precautious
自分に娘ができるまではな。今じゃ用心深くなっちまった。
※男は散々女性を弄んでおきながら、いざ自分の愛娘ができると途端に世間の男たちから娘を守ろうと過保護になるという、身勝手で皮肉な真理を突いている。

Father, forgive me, I'm scared of the karma
神様、俺を許してくれ、カルマ(因果応報)が怖いんだ。
※かつて自分が女性に対して行ってきた非道な振る舞いの報いが、因果応報として自分の娘に降りかかるのではないかという深い恐怖と悔恨の念。

'Cause now I see women as somethin' to nurture
今では女性を「大切に育むべき存在」として見れるようになったからな。

Not somethin' to conquer
「征服する対象」としてじゃなく。

I hope she like Nicki, I make her a monster
娘にはニッキーみたいになってほしい、俺が彼女をモンスター(大物)に育て上げるんだ。
※Nicki=ニッキー・ミナージュ。カニエの2010年の楽曲「Monster」でのニッキーの伝説的な客演バースを引き合いに出し、誰にも媚びず男に依存しない強い女性になってほしいという願いを込めている。

Not havin' ménages, I'm just bein' silly
スリーサム(ménages)をするって意味じゃないぞ、ただの冗談だ。
※「Monster」のリリック(ménage à trois=3P)にかけたジョーク。父親として、娘の奔放な性的な振る舞いは許容できないという複雑な親心を覗かせている。

I answered the door like Will Smith and Martin
ウィル・スミスとマーティンみたいに玄関のドアを開けてやるよ。
※2003年の映画『バッドボーイズ 2バッド』で、ウィル・スミスとマーティン・ローレンスが、マーティンの娘を迎えに来たデート相手の少年を銃で過剰に脅しつける有名なコメディシーンへの言及。

Nigga, do we have a problem?
「おい坊主、何か問題でもあんのか?」ってな。

Matter fact, Marlon, this ain't Meet the Fockers
いや実のところ、マーロン、これは『ミート・ザ・ペアレンツ2(Meet the Fockers)』なんかじゃねえんだよ。
※Meet the Fockers=義理の親に挨拶に行くドタバタを描いた2004年のコメディ映画。俺(カニエ)の家へ挨拶に来ることは、コメディ映画みたいに生ぬるいものにはならないという交際相手への警告。

I'll beat his ass, pray I beat the charges
あいつのケツをぶっ飛ばす、俺が無罪になる(beat the charges)ことを祈っとけよ。

No, Daddy don't play, not when it come to they daughters
いや、パパはお遊びじゃないんだ、娘のこととなればな。

Don't do no yoga, don't do pilates
ヨガなんてやるな、ピラティスもやるな。
※体のラインが出るエクササイズをさせたくないという過保護な描写。

Just play piano and stick to karate
ただピアノを弾いて、空手だけやってなさい。
※護身術としての空手と、おしとやかなピアノだけを身につけてほしいという極端な父親の希望。

I pray your body's draped more like mine
お前の体型が、俺に似ることを祈ってるよ。

And not like your mommy's
ママ(キム・カーダシアン)の体型には似ないでくれ。
※妻キム・カーダシアンのグラマラスな体型は世界中から性的な視線を浴びており、娘が同じように男たちの欲望(Male Gaze)の標的になることを恐れている。

Just bein' salty, but niggas is nuts
ただのやっかみかもしれないが、男ってのはイカれてるからな。

And I am a nigga, I know what they want
俺も「男」だ、奴らが何を求めてるか痛いほど分かってるんだよ。

I pray that you don't get it all at once
すべてを一度に持たないことを祈るよ。
※美貌や魅力が急速に開花することで、危険な男たちがすぐに群がってくることへの懸念。

Curves under your dress, I know it's pervs all on the net
ドレスの下の曲線、ネット上には変態どもがウヨウヨしてるのは分かってる。

All in the comments, you wanna vomit
コメント欄は全部そうだ、吐き気がしてくるぜ。

That's your baby, you love her to death
あれはお前の赤ん坊だ、死ぬほど愛してるだろ。

Now she cuttin' class and hangin' with friends
それが今じゃ授業をサボって、友達と遊び歩いてる。

You break a glass and say it again
お前は怒りでグラスを叩き割って、もう一度注意するんだ。

She can't comprehend the danger she in
彼女は自分がどれだけ危険な目に遭ってるか理解できないんだよ。

If you whoop her ass, she move in with him
もしお前が彼女を引っぱたいたら、彼女はあいつ(彼氏)と同棲しちまう。

Then he whoop her ass, you go through it again
そしたら今度はあいつが彼女を殴り、お前はまた同じ地獄を味わうんだ。
※DV(ドメスティック・バイオレンス)の連鎖と、親として手出しできない無力感を描いた極めて生々しく悲痛なライン。

But how you the devil rebukin' the sin?
だけど、自分自身が悪魔だったくせに、どうやって罪を咎められるってんだ?
※rebuke the sin=罪を戒める。過去に数々の女性を傷つけてきた「罪深い遊び人(悪魔)」である自分が、娘の交際相手を道徳的に裁くことはできないという痛烈な自己矛盾とジレンマ。

Let's pray we can put this behind us
これを過去のこととして乗り越えられるよう祈ろう。

I swear that these times is the wildest
誓って言うが、今の時代はマジで狂ってる。

She got the scars, they serve as reminders
彼女には傷跡がある、それが教訓(リマインダー)になるのさ。

Blood still on her pajamas
パジャマにはまだ血がついている。
※純真だった少女が傷つき、現実の残酷さを知る過程を痛ましく表現しているメタファー。

But yesterday is dead, yeah, moment of silence
でも昨日はもう死んだ、yeah、黙祷の時間を捧げよう。

Next, she'll be off to college and then at the altar
次は大学へ行って、そして祭壇(結婚式)へ向かうんだ。

'Cause she know that niggas is savage, niggas is monsters
だって彼女も分かってるからな、男ってのは野蛮で、モンスターだってことを。

Niggas is pimps, niggas is players, 'til niggas have daughters
男ってのはピンプだ、プレイヤーだ。自分に娘ができるまではな。

Niggas is pimps, niggas is players, 'til niggas have daughters
男ってのはピンプだ、プレイヤーだ。自分に娘ができるまでは。

[Chorus: 070 Shake, 070 Shake & Ty Dolla $ign]
Don't you grow up in a hurry, your mom will be worried, oh
急いで大人にならないでくれ、ママが心配するから、oh。

It was all part of the story, even the scary nights
怖い夜のことでさえ、すべては物語の一部だったんだ。

Thank you for all of the glory, you will be remembered, oh
すべての栄光に感謝を、お前は記憶に刻まれるだろう、oh。

Thank you to all of the heroes of the night (Night, night)
夜のすべてのヒーローたちに感謝を。(Night, night)

They gotta repaint the colors, the lie is wearin' off
色を塗り直さなきゃいけない、嘘が剥がれ落ちてきてるからな。

Reality is upon us, colors drippin' off
現実がすぐそこまで迫ってる、色が滴り落ちていくんだ。

Colors drippin' off
色が滴り落ちていく。

[Outro: Nicki Minaj]
I'm saying it like, "I want a daughter like Nicki, aw, man, I promise
私はこんな風に言うのよ、「ニッキーみたいな娘が欲しい、ああ、本当に。

I'ma turn her to a monster, but no ménages"
彼女をモンスターに育て上げる、でもスリーサムは無しだ」って。

I don't know how you s-sayin' it, but let 'em hear this
あなたがどうやって言うつもりなのかは知らないけど、とにかく彼らにこれを聞かせてやって。
※アウトロにニッキー・ミナージュ本人のボイスメッセージを配置している。カニエの書いたリリックに対する彼女からの承認・返答の形をとっており、ヒップホップシーンのトップに君臨する強い女性からの視点で、楽曲のメッセージを裏打ちしている。

 

Violent Crimes

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