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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Greg (A Cappella) - Eminem 【和訳・解説】

Artist: Eminem

Album: The Slim Shady LP (Expanded Edition)

Song Title: Greg (A Cappella)

概要

『The Slim Shady LP』の20周年記念拡張版(Expanded Edition)に収録された本作は、エミネムがブレイク前のアンダーグラウンド時代や、スウェイ&キング・テックのラジオ番組等で頻繁に披露していた伝説的なフリースタイル音源のアカペラである。障害を持つ子供、ベトナム帰還兵、さらにはR&Bシンガーの容姿までを無差別に攻撃する「スリム・シェイディ」の極悪非道な狂気が1分足らずのヴァースに凝縮されている。モラルを完全に欠如させた内容とは裏腹に、人体自然発火現象や中米の内戦までをも引き合いに出す高度なボキャブラリーと多音節韻(マルチシラブル)の連打は、若き日のエミネムの圧倒的なラップスキルを証明する歴史的資料だ。

和訳

[Verse]
It's like this and like that and like this
こんな感じで、あんな感じで、こんな感じだぜ。
※ドクター・ドレーとスヌープ・ドッグのクラシック曲『Nuthin' But A 'G' Thang』の有名なイントロ("It's like this and like that and like this and uh")をサンプリングした、西海岸ヒップホップへのオマージュから幕を開ける。

I'm the illest rapper to hold the cordless, patrollin' corners
俺はコードレスマイクを握る最高にヤバい(イルな)ラッパーだ。街角をパトロールして、

Lookin' for hookers to punch in the mouth with a roll of quarters
25セント硬貨のロールを握りしめて、口をぶち殴るための娼婦を探してんのさ。
※「cordless」「corners」「quarters」で見事な脚韻を踏む。「roll of quarters(硬貨の束)」は、ストリートの喧嘩で拳の中に握り込んでパンチの破壊力を上げるための凶器(メリケンサック代わり)として使われる。

I'm meaner in action than Roscoe beatin' James Todd Senior
俺の行動は、ロスコーがジェームズ・トッド・シニアをぶちのめした時よりもタチが悪いぜ。
※ジェームズ・トッド・スミスは、ヒップホップ界のレジェンド「LL Cool J」の本名。ロスコー(Roscoe)はLLの母親の元恋人であり、幼少期の彼に凄惨な虐待を加えていた実在の人物。他人の最も深刻なトラウマすら平然とジョークのネタにする、スリム・シェイディのタブーなき狂気を象徴するラインだ。

And smackin' his back with vacuum cleaner attachments
掃除機のアタッチメントでアイツの背中をぶっ叩くようにな。
※「action than Roscoe」「James Todd Senior」「cleaner attachments」という不規則だが計算し尽くされた多音節韻(マルチシラブル)のコンボ。

I grew up in a wild hood, as a hazardous youth
俺はワイルドなゲットーで、危険な若者(ハザードス・ユース)として育った。

With a fucked up childhood that I used as an excuse
そのクソみたいな子供時代を、自分の悪事の「言い訳」に使ってきたのさ。
※メディアや心理学者が「彼の暴力性は過酷な生い立ちのせいだ」と分析することを見越し、自らそれを都合の良い免罪符(excuse)として利用していると開き直るメタ的な皮肉である。

And ain't shit changed, I kept the same mind state
何一つ変わっちゃいねえ、俺の精神状態はずっと同じままだ。

Since the third time that I failed ninth grade
中学3年(9年生)を3回落第したあの時からな。
※エミネムが高校時代に9年生を3回落第し、結果的に中退したという実際の経歴に基づいた自虐ライン。

You probably think that I'm a negative person
お前らはたぶん、俺のことをネガティブな人間だと思ってるだろうな。

Don't be so sure of it
そんなに決めつけない方がいいぜ。

I don't promote violence, I just encourage it
俺は暴力を「推奨(promote)」してるわけじゃねえ、ただ「奨励(encourage)」してるだけだ。
※言葉遊びの極致。全く同じ意味の単語を言い換えただけで「俺は悪くない」と主張する、詭弁を用いた天才的なブラックジョーク。

I laugh at the sight of death
俺は死を目の当たりにしても笑っちまう。

As I fall down a cement flight of steps
コンクリートの階段から転げ落ちて、

And land inside a bed of spider webs
クモの巣のベッドの中に着地しながらな。
※「sight of death」「flight of steps」「spider webs」の流れるような3音節のライミング。死や痛みを伴う状況すらもカートゥーン(アニメ)的な滑稽さで描写している。

So throw caution to the wind
だから警戒心なんて風に投げ捨てちまえよ。

You and a friend can jump off of a bridge
お前も友達と一緒に、橋から飛び降りてみりゃいい。

And if you live, do it again
もし生きてたら、もう一回やりな。

Shit, why not? Blow your brain out, I'm blowin' mine out
クソッ、いいじゃねえか? 自分の脳みそをブッ飛ばせよ、俺も自分のをブッ飛ばすからな。

Fuck it, you only live once, you might as well die now
クソくらえだ、人生は一度きりなんだから、いっそ今すぐ死んじまった方がマシだろ。
※本来「人生は一度きりだから楽しもう(YOLO)」というポジティブな意味で使われる表現を、「どうせ一度しか生きられないなら今すぐ死のうぜ」という究極のニヒリズムへと反転させた、スリム・シェイディらしい破滅的なパンチラインで締めくくられる。

 

Slim Shady

Slim Shady

  • アーティスト:EMINEM
  • UNIVERSAL MUSIC GROUP
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