Artist: Eminem
Album: The Slim Shady LP
Song Title: If I Had
概要
猟奇的な別人格「スリム・シェイディ」が暴れ回る本アルバムにおいて、エミネムの本来の姿である「マーシャル・マザーズ」としてのリアルな苦悩と絶望が色濃く反映された数少ない内省的なトラックだ。元々は1997年の自主制作盤『The Slim Shady EP』に収録されていた楽曲であり、娘を養うために時給5ドル半で底辺の労働をこなし、地元のヒップホップシーンからは冷遇されるという、スターダムを駆け上がる直前の極貧時代の鬱屈が克明に綴られている。サビでは「もし100万ドルあったら」という空想を皮肉たっぷりに歌い上げるが、全体を覆うのは抜け出せない貧困への圧倒的な徒労感である。後の世界的アンセム『Lose Yourself』にも通じる、ハングリーなエミネムの原点とも言える重要な一曲である。
和訳
[Intro]
"Life," by Marshall Mathers
「人生」 作:マーシャル・マザーズ
What is life?
人生とは何だ?
Life is like a big obstacle in front of your optical to slow you down
人生ってのは、お前の視界(オプティカル)の前に立ちはだかって、足並みを鈍らせる巨大な障害物みたいなもんだ。
And every time you think you've gotten past it
そして、やっと乗り越えられたと思ったその度に、
It's gonna come back around to tackle you to the damn ground (If I had a million)
舞い戻ってきて、お前を地面に叩き伏せるんだよ。(もし俺に100万ドルあったら…)
What are friends?
友達って何だ?
Friends are people that you think are your friends
友達ってのは、お前が「こいつらは友達だ」って思い込んでる連中のことさ。
But they really your enemies with secret identities
だが奴らの正体は、本当はお前の敵なんだよ。
In disguises to hide they true colors
本性を隠すために仮面を被ってやがる。
So just when you think you close enough to be brothers
だから「兄弟みたいに親しい関係になれた」と思った途端に、
They wanna come back and cut your throat when you ain't lookin'
奴らはお前が目を離した隙に、お前の喉元を掻き切りに来るのさ。
What is money?
金って何だ?
Money is what makes a man act funny, money is the root of all evil
金ってのは人間をおかしくさせるもの。金は諸悪の根源だ。
Money'll make them same friends come back around
金さえあれば、あの裏切り者の友達もまたすり寄ってくる。
Swearin' that they was always down
「俺は最初からお前の味方だったぜ」なんて誓いながらな。
What is life? I'm tired of life
人生って何だ? 俺はもう人生にウンザリしてるんだ。
[Verse 1]
I'm tired of backstabbin'-ass snakes with friendly grins
愛想笑いを浮かべながら背中から刺してくるような、蛇みたいなクソ野郎どもにはウンザリだ。
I'm tired of committin' so many sins
これほど多くの罪を犯し続けることにも疲れた。
Tired of always givin' in when this bottle of Henny wins
ヘネシー(酒)のボトルに負けて、いつも屈伏しちまう自分にもウンザリだ。
Tired of never havin' any ends
いつまで経っても金(ends)が手に入らねえことにもな。
Tired of havin' skinny friends hooked on crack and Mini Thins
クラックやミニ・シン(気管支拡張薬)に依存してるガリガリのダチばかりなのもウンザリだ。
※「Mini Thins」は本来ぜんそくの薬だが、安価な覚醒剤(スピード)の代用品として貧困層の間で乱用されていた。
I'm tired of this DJ playin' your shit when he spins
DJがレコードを回す時に、お前のクソみたいな曲ばかり流すのにも反吐が出る。
Tired of not havin' a deal
レコード契約(ディール)が取れねえことにも疲れた。
Tired of havin' to deal with the bullshit without grabbin' the steel
銃(スティール)をブッ放さずに、このクソみたいな現実に対処しなきゃならねえことにもな。
Tired of drownin' in my sorrow
自分の悲しみに溺れることにもウンザリだ。
Tired of havin' to borrow a dollar for gas to start my Monte Carlo
モンテカルロ(ボロ車)のエンジンをかけるために、ガソリン代の1ドルを借りなきゃならねえことにもな。
※シボレー・モンテカルロ。エミネムが下積み時代に乗っていた、頻繁に故障する安物の車を指している。
I'm tired of motherfuckers sprayin' shit and dartin' off
クソ野郎どもが銃弾をバラ撒いて逃げ去っていくのにもウンザリだ。
I'm tired of jobs startin' off at $5.50 an hour
時給5ドル50セントで始まる底辺の仕事にも疲れたよ。
Then this boss wonders why I'm smartin' off
それでボスは「なんでコイツは生意気な口を利くんだ」なんて不思議がってやがる。
Tired of bein' fired every time I fart and cough
ちょっと屁をこいたり咳をしただけでクビにされるのにもウンザリだ。
Tired of havin' to work as a gas station clerk
ガソリンスタンドの店員として働かなきゃならねえことにもな。
For this jerk, breathin' down my neck, drivin' me berserk
嫌な上司が俺の首元に息を吹きかけて監視してきやがる、狂いそうだよ。
I'm tired of usin' plastic silverware
プラスチックの安い食器を使い続ける生活にも疲れた。
Tired of workin' at Builder's Square, tired of not bein' a millionaire
ビルダーズ・スクエアで働くのにもウンザリだ、ミリオネアになれねえことにもな。
※「Builder's Square」はかつてアメリカにあったホームセンター。エミネムがデビュー前に娘ヘイリーを養うために実際に最低賃金で働いていた場所である。
[Chorus]
But if I had a million dollars
だが、もし俺に100万ドルあったら、
I'd buy a damn brewery and turn the planet into alcoholics (If I had a million dollars)
クソでかい酒の醸造所を丸ごと買い取って、地球上の奴らを全員アル中にしてやる。(もし俺に100万ドルあったら)
If I had a magic wand
もし俺に魔法の杖があったら、
I'd make the world suck my dick without a condom on while I'm on the john (I could set my troubles free)
俺が便器に座ってクソしてる間に、世界中の奴らにコンドームなしで俺のイチモツをしゃぶらせてやる。(俺の悩みなんて吹っ飛ぶだろうな)
If I had a million bucks
もし100万ドルあったとしても、
It wouldn't be enough 'cause I'd still be out robbin' armored trucks (If I had a million dollars)
そんなんじゃ足りねえから、俺はまだ現金輸送車を強盗して回ってるだろうな。(もし俺に100万ドルあったら)
If I had one wish
もし俺の願いが一つだけ叶うなら、
I would ask for a big enough ass for the whole world to kiss
世界中の奴らがキスできるくらい、超巨大な「ケツ」を頼むぜ。
※「Kiss my ass(俺のケツにキスしろ=くたばれ)」という英語の決まり文句を使ったエミネムらしい秀逸なパンチライン。自分を見下してきた世界全体に対して、最大の中指を立てている。
[Verse 2]
I'm tired of bein' white trash, broke, and always poor
「ホワイト・トラッシュ(白人のクズ)」呼ばわりされて、一文無しで、常に貧乏なことにもウンザリだ。
Tired of takin' pop bottles back to the party store
小銭を稼ぐために、空き瓶を酒屋に返しに行くのにも疲れたよ。
Tired of not havin' a phone
自分の電話すら持てねえことにもウンザリだ。
Tired of not havin' a home to have one in if I did have one on
もし電話を持てたとしても、それを置くための「家」すらねえことにもな。
Tired of not drivin' a BM
BMWを乗り回せねえことにもウンザリだ。
Tired of not workin' at GM, tired of wantin' to be him
GM(ゼネラルモーターズ)で働けねえことにも、あいつらみたいになりたいと願うことにも疲れた。
※自動車産業の街デトロイトにおいて、GMの工場労働者になることは安定した生活の象徴であった。当時のエミネムはそれすら手に入らない最底辺にいた。
Tired of not sleepin' without a Tylenol PM
タイレノールPM(睡眠薬)なしじゃ眠れねえことにもウンザリだ。
Tired of not performin' in a packed coliseum
超満員のコロシアムでライブができねえことにもな。
Tired of not bein' on tour
ツアーに出られねえことにも疲れた。
Tired of fuckin' the same blonde whore after work in the back of a Contour
仕事終わりに、フォード・コンツァー(ボロ車)の後部座席で同じ金髪のビッチとヤるのにもウンザリだ。
I'm tired of fakin' knots with a stack of ones
1ドル札の束を丸めて、大金(ノッツ)を持ってるように見栄を張るのにも疲れた。
Havin' a lack of funds and resortin' back to guns
資金が底を尽きて、結局また銃に頼らざるを得なくなることにもな。
Tired of bein' stared at
ジロジロ見られることにもウンザリだ。
Tired of wearin' the same damn Nike Air hat
毎日毎日、同じナイキ・エアの帽子を被り続けるのにもな。
Tired of steppin' in clubs, wearin' the same pair of Lugz
いつも同じLugzのブーツを履いてクラブに足を踏み入れるのにもウンザリだ。
※「Lugz」は90年代のヒップホップシーンで流行した安価なブーツブランド。着回ししかできない貧困を象徴している。
Tired of people sayin' they're tired of hearin' me rap about drugs
「お前のドラッグのラップはもう聞き飽きた」って連中に言われることにもウンザリだ。
Tired of other rappers who ain't bringin' half the skill as me
俺の半分のスキルすら持ってねえ他のラッパーどもにもウンザリだ。
Sayin' they wasn't feelin' me on "Nobody's As Ill As Me"
あいつら、俺の曲を聴いても「全然ピンとこねえな」なんて抜かしやがる。
※「Nobody's As Ill As Me」は初期エミネムがよく主張していたフレーズ、あるいはアンダーグラウンド時代の楽曲。圧倒的なスキルを持ちながら正当に評価されないフラストレーションを吐露している。
And I'm tired of radio stations tellin' fibs
ラジオ局が嘘っぱちばかり並べてるのにもウンザリだ。
Tired of JLB sayin', "Where hip-hop lives" (Where hip-hop lives)
WJLBが「ヒップホップが生きる場所」なんて綺麗事をほざいてるのにも反吐が出る。(ヒップホップが生きる場所だあ?)
※「WJLB」はデトロイトの主要な黒人向けラジオ局。地元のアーティストをフックアップするという建前を持ちながら、ドクター・ドレーに見出される前のエミネム(白人の無名ラッパー)の曲を一切かけなかったことへの強烈なディスである。
[Chorus]
But if I had a million dollars
だが、もし俺に100万ドルあったら、
I'd buy a damn brewery and turn the planet into alcoholics (If I had a million dollars)
クソでかい酒の醸造所を丸ごと買い取って、地球上の奴らを全員アル中にしてやる。(もし俺に100万ドルあったら)
If I had a magic wand
もし俺に魔法の杖があったら、
I'd make the world suck my dick without a condom on while I'm on the john (I would set my troubles free)
俺が便器に座ってクソしてる間に、世界中の奴らにコンドームなしで俺のイチモツをしゃぶらせてやる。(俺の悩みなんて吹っ飛ぶだろうな)
If I had a million bucks
もし100万ドルあったとしても、
It wouldn't be enough 'cause I'd still be out robbin' armored trucks (If I had a million dollars)
そんなんじゃ足りねえから、俺はまだ現金輸送車を強盗して回ってるだろうな。(もし俺に100万ドルあったら)
If I had one wish
もし俺の願いが一つだけ叶うなら、
I would ask for a big enough ass for the whole world to kiss
世界中の奴らがキスできるくらい、超巨大な「ケツ」を頼むぜ。
[Outro]
You know what I'm sayin'?
俺の言ってること、分かるか?
I'm tired of all of this bullshit (If I had a million dollars)
俺はこのクソみたいな現実すべてにウンザリしてるんだよ。(もし俺に100万ドルあったら…)
Tellin' me to be positive, how am I 'posed to be positive
「ポジティブになれ」だと? 一体どうやってポジティブになれって言うんだよ。
When I don't see shit positive? You know what I'm sayin'?
ポジティブな要素なんて欠片も見当たらねえのにさ。分かるか?
I rap about shit around me, shit I see (If I had a million dollars)
俺は自分の身の回りのこと、自分が目にしてる現実をラップしてるだけだ。(もし俺に100万ドルあったら…)
You know what I'm sayin'? Right now, I'm tired of everything
分かるか? 今、俺はもう何もかもに疲れてるんだ。
Tired of all this player-hatin' that's goin' on in my own city (You could share my wealth with me)
俺の地元で蔓延してる、プレイヤーの足の引っ張り合い(ヘイト)にもウンザリだ。(俺と富を分け合えばいいのに)
Can't get no airplay, you know what I'm sayin'?
ラジオでも全く曲をかけてもらえねえ、分かるだろ?
But hey, it's cool though (If I had a million dollars)
まあ、別にいいけどよ。(もし俺に100万ドルあったら…)
You know what I'm sayin'? I'm just fed up
分かるだろ? 俺はただウンザリしてるだけさ。
That's my word (I could set my troubles free)
俺が言いたいのはそれだけだ。(俺の悩みなんて吹っ飛ぶだろうな)
(If I had a million dollars)
(もし俺に100万ドルあったら…)
