Artist: Eminem (feat. Dr. Dre)
Album: The Slim Shady LP
Song Title: Guilty Conscience
概要
エミネムと恩師ドクター・ドレーが、人間の脳内でせめぎ合う「良心(天使)」と「悪意(悪魔)」という2つの声を見事に演じ分けた、ヒップホップ史に残るコンセプチュアルなストーリーテリングの傑作である。3人の登場人物(強盗を企てる男、少女を狙う男、妻の不倫現場に遭遇した男)の心の中に2人が入り込み、善と悪のラップバトルを繰り広げるという演劇的な構成を持つ。特に第3バースにおいて、エミネムがドレー自身の過去の暴行事件(ディー・バーンズ事件)を痛烈に蒸し返して彼の「良心」としての説得力を粉砕し、最終的にドレーまでもが悪に染まるという展開は秀逸だ。コミカルさと猟奇性が同居するエミネムの真骨頂であり、師弟関係の枠を超えた特異なケミストリーを見せつけたクラシックである。
和訳
[Intro: Mark Avery & Eddie]
Meet Eddie, twenty-three years old
エディを紹介しよう。彼は23歳。
Fed up with life and the way things are going
人生と今の状況に完全にウンザリしている。
(Damn, I'm going fucking insane)
(クソッ、頭がおかしくなりそうだ)
He decides to rob a liquor store
彼は酒屋への強盗を決意する。
(I gotta take this shit, I can't take it no more, holmes)
(やるしかねえ、もう耐えられねえよ、相棒)
But on his way in, he has a sudden change of heart
だが店に入る直前、彼は突然心変わりをする。
(Shit is mine)
(全部俺のモンだ)
And suddenly (I gotta do this)
そして突如として、(やるしかねえんだ)
His conscience comes into play (I gotta do this)
彼の良心が働き始める。(やるしかねえんだ)
[Verse 1: Dr. Dre, Eminem & (Eddie)]
Alright, stop (Huh?)
よし、やめとけ。(あ?)
Now before you walk in the door of this liquor store
この酒屋のドアをくぐって、
And try to get money out the drawer
レジから金を引きずり出そうとする前に、
You better think of the consequence (Who are you?)
その結果どうなるか考えた方がいいぜ。(アンタ誰だ?)
I'm your motherfuckin' conscience
俺はお前の、クソったれな「良心」だ。
That's nonsense
くだらねえ。
Go in, gaffle the money, and run to one of your aunt's cribs
中に入れ、金をひったくって、叔母さんの家のどれかに逃げ込め。
And borrow her damn dress and one of her blond wigs
そこで叔母さんのドレスと金髪のウィッグを借りるんだ。
(Can I borrow this?)
(これ借りていい?)
Tell her you need a place to stay, you'll be safe for days
泊まる場所が必要だって言え、そうすりゃ数日は安全だ。
If you shave your legs with Renee's razor blades
レネェのカミソリでお前のすね毛を剃っておけばな。
Yeah, but if it all goes through like it's supposed to
ああ、だがもし全部予定通り上手くいったとしても、
The whole neighborhood knows you and they'll expose you
近所の連中はみんなお前を知ってるし、すぐにバラされるぞ。
Think about it before you walk in the door first
ドアをくぐる前に、まずはよく考えろ。
Look at the store clerk, she's older than George Burns
あの店員を見てみろ、ジョージ・バーンズよりも年寄りじゃねえか。
※ジョージ・バーンズ(George Burns)はアメリカの伝説的なコメディアン。当時100歳近い高齢だった彼を引き合いに出し、相手が抵抗できない弱者であることを「良心(ドレー)」が説いている。
Fuck that, do that shit, shoot that bitch
知るかよ、ヤっちまえ、あのババアを撃ち殺せ。
Can you afford to blow this shit? Are you that rich?
このチャンスをフイにする余裕があんのか? お前はそんなに金持ちか?
Why you give a fuck if she dies? Are you that bitch?
あいつが死んだって何の問題がある? お前はあんなビッチの身内か?
Do you really think she gives a fuck if you have kids?
お前に子供がいようが、あいつが気にするって本気で思ってんのか?
Man, don't do it, it's not worth it to risk it (You're right)
なぁ、やめとけ。リスクを冒す価値なんてねえよ。(アンタの言う通りだ)
Not over this shit (Stop)
こんなことのために人生を棒に振るな。(やめろ)
Drop the biscuit (I will)
その銃(ビスケット)を捨てろ。(そうするよ)
※「biscuit(ビスケット)」は銃を指すストリートスラング。
Don't even listen to Slim, yo, he's bad for you
スリムの言うことなんて聞くな、あいつはお前にとって害悪だ。
You know what, Dre? I don't like your attitude
あのさ、ドレー? 俺はアンタのその態度が気に食わねえんだわ。
[Skit: Stan, Girl]
Come on, just come in here for a minute
なぁ、ちょっとだけこっちに来いよ。
I don't know
どうしようかな。
Look, look, look
ほら、ほら、ほら。
Damn
クソッ。
Look, it's gonna be alright, alright?
いいか、大丈夫だって、な?
O-okay
わ、わかった。
Look, give me a kiss, pull your pants off, come on
ほら、キスしろよ、パンツを脱いで、さあ。
[Interlude: Mark Avery]
Meet Stan, twenty-one years old
スタンを紹介しよう。21歳。
After meeting a young girl at a rave party
レイブパーティーで若い少女と出会った後、
Things start getting hot and heavy in an upstairs bedroom
2階の寝室で状況はエスカレートしていく。
Once again, his conscience comes into play
そして再び、彼の良心が働き始める。
[Verse 2: Eminem & Dr. Dre]
Now, listen to me, while you're kissin' her cheek
さあ、俺の言うことを聞け。彼女の頬にキスして、
And smearin' her lipstick, slip this in her drink
口紅を滲ませてる間に、これを彼女の酒に混ぜるんだ。
※いわゆるデートレイプドラッグ(睡眠薬など)を盛るよう、スリム・シェイディが唆している凶悪なライン。
Now all you gotta do is nibble on this little bitch's earlobe
あとはこの小さなビッチの耳たぶを甘噛みするだけだ。
Yo, this girl's only fifteen years old
おい、この子はまだ15歳だぞ。
You shouldn't take advantage of her, it's not fair
彼女につけ込むべきじゃない、それはフェアじゃねえ。
Yo, look at her bush, does it got hair? (Uh-huh)
おい、あいつのアソコを見てみろよ、毛が生えてるか?(ああ)
Fuck this bitch right here on the spot, bare
このビッチを今すぐここでヤっちまえ、生でな。
'Til she passes out and she forgot how she got there
彼女が気を失って、どうやってここに来たか忘れるまでよ。
Man, ain't you ever seen that one movie Kids?
なぁ、お前あの『Kids』って映画を見たことないのか?
※1995年の映画『Kids(キッズ)』は、未成年の無軌道なセックスやドラッグ、そしてHIV感染の恐怖をリアルに描いた衝撃作。ドレーは性病のリスクと未成年淫行の末路を警告している。
No, but I seen the porno with Son Doobiest
いや、でもサン・ドゥービエストが出てるポルノなら見たぜ。
※「Son Doobiest」はラテン系ヒップホップグループFunkdoobiestのメンバーだが、当時はポルノ男優としても活動していた。ドレーの真面目な警告に対し、ポルノ知識でボケて返すスリムの軽薄さが際立つ。
Shit, you wanna get hauled off to jail?
クソッ、お前は刑務所にブチ込まれたいのか?
Man, fuck that, hit that shit raw dog, then bail
知るかよ、生(ロウドッグ)でヤりまくって、ズラかればいいんだ。
[Interlude: The Isley Brothers, Mark Avery, (Grady), & Grady's Wife]
Here I lay
ここで俺は横になる。
(Man, it feels good to be home)
(ああ、家に帰ってくるって最高だな)
Meet Grady, a twenty-nine-year-old construction worker
グレイディを紹介しよう。29歳の建設作業員。
After coming home from a hard day's work
過酷な1日の仕事を終えて帰宅し、
He walks in the door of his trailer park home
トレーラーハウスのドアをくぐった彼は、
To find his wife in bed with another man
妻が別の男とベッドにいるのを発見する。
(What the fuck?) Grady
(なんだと!?)グレイディ。
[Verse 3: Dr. Dre & Eminem]
Alright, calm down, relax, start breathin'
よし、落ち着け、リラックスして、深呼吸するんだ。
Fuck that shit, you just caught this bitch cheatin'
ふざけんな、たった今このビッチが浮気してんのを現行犯で捕まえたんだぞ。
While you at work, she's with some dude tryna get off
お前が働いてる間に、あいつはどこの馬の骨とも分からん男とイこうとしてたんだ。
Fuck slittin' her throat, cut this bitch's head off
喉を掻き切るなんて生温い、このビッチの首を切り落としてやれ。
Wait, what if there's an explanation for this shit?
待て、もしかしたらこれには何か説明がつくかもしれないぞ?
What, she tripped, fell, landed on his dick?
なんだって? 彼女が躓いて、転んで、あいつのイチモツの上に着地したとでも言うのか?
※エミネムのキャリアの中でも屈指のコミカルかつ秀逸なパンチライン。ドレーの苦しい擁護を、カートゥーンのようなあり得ない物理法則で論破している。
Tsh, alright, Shady, maybe he's right, Grady
チッ、分かったよシェイディ、もしかしたらあいつの言う通りかもな、グレイディ。
But think about the baby before you get all crazy
だが完全にブチギレる前に、赤ん坊のことも考えろよ。
Okay, thought about it? Still wanna stab her?
よし、考えたか? それでもまだあいつを刺したいか?
Grab her by the throat, get your daughter and kidnap her?
あいつの喉首を掴んで、お前の娘を奪って誘拐したいか?
That's what I did, be smart, don't be a retard
それが「俺がやったこと」だ。賢くなれ、バカな真似はするな。
※エミネム自身がかつて元妻キムとのトラブルの末、娘ヘイリーを連れ去ろうとした実体験を交えている。
You gonna take advice from somebody who slapped Dee Barnes?
お前、ディー・バーンズにビンタを食らわしたような奴のアドバイスを聞くつもりか?
※1991年、ドクター・ドレーが女性TV司会者のディー・バーンズに対して暴行を加えた実際の事件を痛烈に掘り起こしたライン。恩師の隠したい過去を最大の武器として使い、「良心」としてのドレーの偽善性を完全に破壊する一撃。
What you say?
お前、今なんて言った?
What's wrong? Didn't think I'd remember?
どうした? 俺が覚えてないと思ったか?
I'ma kill you, motherfucker
ブチ殺してやる、クソ野郎。
Uh-uh, temper, temper
おっとっと、落ち着けよ、短気は損気だぜ。
Mr. Dre, Mr. N.W.A, Mr. AK
ミスター・ドレー、ミスターN.W.A、ミスターAK(アサルトライフル)。
Comin' straight outta Compton, y'all better make way
「コンプトンからの直行便(ストレイト・アウタ・コンプトン)」だ、お前ら道を開けな。
※ドレーがかつて所属していた伝説的ギャングスタ・ラップグループ「N.W.A」の代表曲を引き合いに出し、彼が元々は凶悪なギャングスタであったことを皮肉っている。
How in the fuck you gonna tell this man not to be violent?
どの口がこの男に向かって「暴力を振るうな」なんて言えんだよ?
'Cause he don't need to go the same route that I went
こいつが、俺と同じ過ち(ルート)を辿る必要はねえからだ。
Been there, done that
俺もその道を通って、やらかしてきたからな。
Aw, fuck it, what am I sayin'?
ああ、クソッ、俺は何を言ってんだ?
Shoot 'em both, Grady, where's your gun at?
両方とも撃ち殺しちまえ、グレイディ、お前の銃はどこだ?
※エミネムの執拗な論破によってついにドレーの「良心」が崩壊し、かつてのギャングスタ気質(悪魔)が顔を出すという完璧なオチ。二人の声が重なり、暴力へと加担していく様子が見事に描かれている。
