Artist: Kanye West
Album: Yeezus
Song Title: Bound 2
概要
2013年の問題作『Yeezus』のラストを飾る、カニエ流の歪で不器用なラブソングだ。アルバム全体を覆っていたインダストリアルで破壊的な電子音から一転、彼のお家芸であるソウル・サンプリング(Ponderosa Twins Plus One「Bound」など)への回帰を見せ、古くからのファンを歓喜させた。当時交際していたキム・カーダシアンとの関係を背景に、互いに悪評に塗れた不完全な二人が恋に落ちる様を、生々しい性描写とユーモアを交えて描いている。自己中心的な男の葛藤や疲れをさらけ出しながらも、最終的には「一人のイイ女は1000人のビッチに値する」と愛を誓う、ヒップホップ史に残る異端にして至高の純愛アンセムである。
和訳
[Intro: Ponderosa Twins Plus One & Brenda Lee]
B-b-b-b-bound to fall in love
恋に落ちる運命(バウンド)さ。
※シカゴのソウルグループPonderosa Twins Plus Oneの1971年の楽曲「Bound」の鮮やかなサンプリング。
Bound to fall in love
恋に落ちるに決まってる。
Uh-huh, honey
アハ、ハニー。
※Brenda Leeの1959年の楽曲「Sweet Nothin's」からのボーカルサンプリング。曲全体を通して甘く響き続ける。
[Chorus: Kanye West, Ponderosa Twins Plus One & Brenda Lee]
All them other niggas lame, and you know it now
他の男どもがダサいってこと、お前ももう分かってるだろ。
When a real nigga hold you down, you supposed to drown
本物の男がお前を抱き寄せたら、お前は愛に溺れちまうはずさ。
※hold downは「守る」「深く愛する」の意。drown(溺れる)と韻を踏み、本物の愛情に飲み込まれる様を表現している。
(Bound to fall in love)
(恋に落ちる運命さ)
Bound
運命なんだ。
(B-b-b-b-bound to fall in love)
(恋に落ちるに決まってる)
Bound
そうなる運命さ。
Uh-huh, honey
アハ、ハニー。
[Verse 1: Kanye West]
What you doin' in the club on a Thursday?
木曜のクラブで何してんだ?
She say she only here for her girl birthday
「女友達の誕生日だから来てるだけ」なんて彼女は言うけど。
They ordered champagne but still look thirsty
シャンパンを頼んだくせに、まだガッツいてる(喉が渇いてる)顔をしてやがる。
※thirstyは文字通りの「喉の渇き」に加え、男や注目、承認欲求に「飢えている」状態を指すストリート・スラング。
Rock Forever 21, but just turned thirty
Forever 21を着てるけど、三十路になったばっかりだろ。
※ファストファッションの若者向けブランドを着てクラブで遊ぶ、年齢不相応な女性への冷ややかな皮肉。
I know I got a bad reputation
俺が悪い評判まみれだってことは分かってる。
Walk-around-always-mad reputation
「いつもキレて歩き回ってる」って評判だ。
※パパラッチへの暴行など、メディアから「常に怒っている男」として扱われていた当時の自身のパブリックイメージへの言及。
Leave-a-pretty-girl-sad reputation
「可愛い子を悲しませる」って評判。
Start a Fight Club, Brad reputation
『ファイト・クラブ』を始める、ブラッド(・ピット)みたいな評判さ。
I turnt the nightclub out of the basement
俺は地下室からナイトクラブをひっくり返して(ブチ上げて)やった。
I'll turn the plane around, your ass keep complainin'
お前が文句ばっか言うなら、飛行機をUターンさせてやるよ。
※休暇中のプライベートジェットでの痴話喧嘩の描写。カニエの短気で自己中心的な一面が出ている。
How you gon' be mad on vacation?
バカンスに来てまで、なんでキレてんだよ?
Dutty wining 'round all these Jamaicans
ジャマイカ人たちに囲まれて「ダティ・ワイン」を踊りながらさ。
※Dutty wineはジャマイカのダンスホール・レゲエにおける、首や腰を激しく振るセクシーなダンス。
Uh, this that prom shit
アー、これはプロム(高校のダンスパーティー)みたいなノリだ。
This that what-we-do-don't-tell-your-mom shit
「俺たちがやってること、ママには内緒だぜ」ってノリさ。
This that red-cup-all-on-the-lawn shit
芝生の上に赤いカップが転がってるようなノリ。
※アメリカの学生のホームパーティーで大量消費される、赤いプラスチックカップ(Red Solo Cup)のこと。大人気ない青春のような恋愛をしているという比喩。
Got a fresh cut, straight out the salon, bitch
サロンから出たばっかのフレッシュな髪型でな、ビッチ。
[Bridge: Charlie Wilson & Brenda Lee]
I know you're tired of lovin', of lovin' (Ooh)
君が愛することに疲れてるって分かってる。(オー)
※R&BシンガーのCharlie Wilsonによるソウルフルなコーラス。Weeの1977年の楽曲「Aeroplane (Reprise)」のメロディと歌詞を補間(インターポレーション)している。
With nobody to love, nobody, no—
愛する人が誰もいなくて、誰も……。
Uh-huh, honey
アハ、ハニー。
[Chorus: Kanye West, Ponderosa Twins Plus One & Brenda Lee]
Close your eyes and let the word paint a thousand pictures
目を閉じて、この言葉で1000の景色を描いてみな。
※「A picture is worth a thousand words(百聞は一見に如かず/一枚の絵は千の言葉に値する)」という諺の逆説的表現。
One good girl is worth a thousand bitches
一人のイイ女は、1000人のビッチに値する。
※遊びの恋愛を繰り返してきたカニエが、キム・カーダシアンという究極のパートナーを見つけたことを宣言する、ヒップホップ史に残る名パンチライン。
(Bound to fall in love)
(恋に落ちる運命さ)
Bound
運命なんだ。
(Bound to fall in love)
(恋に落ちるに決まってる)
Bound
そうなる運命さ。
Uh-huh, honey
アハ、ハニー。
[Verse 2: Kanye West]
I wanna fuck you hard on the sink
洗面台の上でお前を激しく抱きたい。
After that, give you somethin' to drink
その後で、何か飲み物をあげよう。
Step back, can't get spunk on the mink
ちょっと下がれよ、ミンクのコートに精液(スパンク)がついちまうだろ。
※極めて下世話な性描写の直後に、自らの高級ファーコートが汚れることを気にするという、カニエらしい滑稽なエゴイズム。
I mean damn, what would Jeromey Romey Romey Rome think?
いやマジで、ジェローミ・ローミ・ローミ・ロームならどう思うだろうな?
※90年代の黒人シットコム『Martin』の登場人物である「Jerome(ジェローム)」のこと。派手な格好をした女好きのキャラクターを引き合いに出している。
Hey, you remember where we first met?
なあ、俺たちが初めて出会った場所、覚えてるか?
Okay, I don't remember where we first met
オーケー、俺もどこで出会ったか覚えてねえわ。
※ロマンチックな雰囲気を作ろうとするも、自分自身が詳細を忘れているというリアリティのある笑い。
But hey, admittin' is the first step
でもさ、認めることが第一歩だろ。
And hey, you know ain't nobody perfect
それに、完璧な人間なんて誰もいないって分かってるだろ。
And I know, with the hoes I got the worst rep
俺が女遊びに関して、最悪の評判を持ってることも知ってる。
But hey, their backstroke I'm tryna perfect
でもさ、あいつらの背泳ぎ(バックストローク)を完璧にしようとしてただけなんだ。
※水泳の「背泳ぎ」と、女性との性行為における特定の体位(またはテクニックの探求)を掛けた下ネタのワードプレイ。
And hey, ayo, we made it; Thanksgivin'
なあ、俺たちなんとかやり遂げたな。感謝祭(サンクスギビング)を迎えられた。
So hey, maybe we can make it to Christmas
だからさ、もしかしたらクリスマスまでもつかもしれないぜ。
※ハリウッド・セレブの恋愛がいかに短命であるかを自嘲しつつ、少しずつ関係が長続きしていることを祝っている。
She asked me what I wished for on my wishlist
彼女が「ウィッシュリスト(欲しいものリスト)には何を書いたの?」って聞いてきた。
Have you ever asked your bitch for other bitches?
自分の女に「他の女たちが欲しい」なんて頼んだことあるか?
Maybe we could still make it to the church steps
もしかしたら、俺たち教会の階段(結婚)まで辿り着けるかもしれないな。
But first, you gon' remember how to forget
でもその前に、お前は「過去を忘れる方法」を思い出さなきゃならない。
※結婚して関係を築くためには、お互いの過去の過ちや元恋人、悪評などを「水に流す(忘れる)」スキルが必要であるという、非常に現実的で成熟したアドバイス。
After all these long-ass verses
こんなクソ長いヴァースを歌い終えて。
I'm tired, you tired, Jesus wept
俺は疲れた、お前も疲れた。「イエスは涙を流された(ジーザス・ウェプト)」よ。
※新約聖書(ヨハネによる福音書11章35節)にある最も短い節の引用。痴話喧嘩や関係性の維持に対する疲労感と、自らを神(Yeezus)に擬えたカニエの人間らしい弱音の吐露が重なっている。
[Bridge: Charlie Wilson & Brenda Lee]
I know you're tired (Tired) of lovin', of lovin' (Ooh)
君が愛することに疲れてるって分かってる。(オー)
With nobody to love, nobody, nobody
愛する人が誰もいなくて、誰も、誰も。
So just grab somebody, no leavin' this party (Woo)
だから誰かを捕まえな、このパーティーからは帰さないぜ。(ウー)
With nobody to love, nobody, nobody
愛する人が誰もいなくて、誰も、誰も。
Ooh
オー。
Uh-huh, honey
アハ、ハニー。
[Chorus: Kanye West, Ponderosa Twins Plus One & Brenda Lee]
Jerome's in the house, watch your mouth
ジェロームが来てるぜ、口の利き方に気をつけな。
※前述のシットコム『Martin』のジェロームのセリフの実際の音声サンプリング。
Jerome's in the house, watch your mouth
ジェロームが来てるぜ、言葉には気をつけろ。
(Bound to fall in love)
(恋に落ちる運命さ)
Bound
運命なんだ。
(Bound to fall in love)
(恋に落ちるに決まってる)
Bound
そうなる運命さ。
Uh-huh, honey
アハ、ハニー。
