Artist: Kanye West
Album: Yeezus
Song Title: Blood on the Leaves
概要
2013年リリースのアルバム『Yeezus』に収録された本作は、ヒップホップ史に残る最も大胆で物議を醸したサンプリングの一つとして知られている。TNGHT(Hudson Mohawke & Lunice)のトラップ・ビート「R U Ready」の強烈なホーンサウンドに乗せ、Nina Simoneが黒人へのリンチを告発した歴史的プロテストソング「Strange Fruit(奇妙な果実)」を大胆にサンプリングしている。しかしカニエは、その重篤な人種差別の歴史的文脈を、自身の名声による孤独、グルーピーとの不毛な関係、中絶、そして泥沼の離婚劇といった極めてパーソナルで世俗的な苦悩へと反転させた。聖と俗、歴史的悲劇と個人の悲劇を同列に置くカニエの狂気的なエゴと、その裏にある悲哀が爆発した傑作である。
和訳
[Intro: Nina Simone]
Strange fruit hangin' from the poplar trees
ポプラの木にぶら下がる、奇妙な果実。
※「Strange Fruit」は、アメリカ南部で白人によってリンチに遭い、木に吊るされた黒人の死体を「奇妙な果実」に例えた楽曲。Nina Simoneによる1965年のカバー版が使用されている。
Blood on the leaves
葉っぱに滴る血。
[Verse 1: Kanye West]
I just need to clear my mind now
今はただ、頭の中をスッキリさせたいんだ。
It's been racin' since the summertime
夏からずっと、思考がフル回転しっぱなしだからな。
Now I'm holdin' down the summer now
今じゃ俺がこの夏を支配(ホールドダウン)してる。
And all I want is what I can't buy now
俺が欲しいのは、金じゃ買えないものだけさ。
'Cause I ain't got the money on me right now
だって今の俺は、手持ちの金がないからな。
※名声や富の頂点に立ちながらも、真の愛や心の平穏など「買えないもの」を渇望している虚無感の表れ。
And I told you to wait
お前には「待っててくれ」って言ったよな。
Yeah, I told you to wait
ああ、待ってろって言ったはずだ。
So I'ma need a little more time now
だから、もう少しだけ時間が必要なんだよ。
'Cause I ain't got the money on me right now
だって今の俺は、手持ちの金がないから。
And I thought you could wait
お前なら待ってくれると思ってたのに。
Yeah, I thought you could wait
ああ、待っててくれるって信じてたぜ。
These bitches surroundin' me
ビッチどもが俺の周りをうろついてやがる。
All want something out me
どいつもこいつも、俺から何かを搾り取ろうとしてるんだ。
Then they talk about me
そして俺の陰口を叩く。
Would be lost without me
俺がいなきゃ、お前らどうせ何もできねえくせによ。
We could've been somebody
俺たち、何か特別な存在(大物)になれたかもしれないのにな。
Thought you'd be different 'bout it
お前だけは他とは違うと思ってたぜ。
Now I know you not it
でも今なら分かる、お前もただのビッチだったってな。
So let's get on with it
だから、とっとと次へ行こうぜ。
[Chorus: Kanye West]
We could've been somebody
俺たち、特別な存在になれたかもしれないのに。
'Stead, you had to tell somebody
それなのに、お前は誰かに言いふらさなきゃ気が済まなかったんだ。
Let's take it back to the first party
最初のパーティーの夜に戻ろうぜ。
When you tried your first molly
お前が初めて「モリー」をキメたあの夜にな。
※MollyはMDMA(エクスタシー)を指すストリート・スラング。
And came out of your body
そして自分の体から抜け出した(幽体離脱した)夜さ。
And came out of your body
ドラッグでぶっ飛んで、自分を見失ったあの夜。
[Post-Chorus: Kanye West]
Running naked down the lobby
全裸でロビーを走り回って。
And you were screamin' that you love me
俺を愛してるって叫んでたよな。
Before the limelight tore you
名声(ライムライト)がお前を引き裂く前の話だ。
Before the limelight stole you
名声がお前を奪っちまう前のことさ。
Remember we were so young
覚えてるか、俺たちはまだ若くて。
When I would hold you
俺がお前を抱きしめてた頃のことを。
[Bridge: Kanye West]
Before the blood on the leaves
葉っぱに血が流れる前のことさ。
I know there ain't wrong with me
俺には何も悪いところなんてないって分かってる。
Something strange is happenin'
何かおかしなこと(奇妙な果実)が起きてるんだ。
Uh, uh, ayy, ayy
アー、アー、エイ、エイ。
[Chorus: Kanye West]
You could've been somebody
お前は特別な存在になれたかもしれないのに。
We could've, uh, we could've been somebody
俺たちは、アー、俺たちは大物になれたかもしれないのに。
Or was it on the first party
それとも、最初のパーティーの夜だったか?
When we tried our first molly?
俺たちが初めてモリーをキメたあの時か?
And came out of our body
そして自分の体から抜け出して。
And came out of our body, yeah
ドラッグでぶっ飛んで、自分を見失った時か、イェー。
[Post-Chorus: Kanye West]
Before they call lawyers
弁護士を呼ばれる前の話だ。
Before you tried to destroy us
お前が俺たちをぶち壊そうとする前の話だ。
How you gon' lie to the lawyer?
どうやって弁護士に嘘をつくつもりだ?
It's like I don't even know you
まるでお前のことが、誰だか分からねえよ。
I gotta bring it back to the 'Nolia
俺は「ノーリア」のノリに戻らなきゃならねえ。
※'Noliaはニューオーリンズにある悪名高いスラム街「Magnolia Projects(マグノリア・プロジェクツ)」のこと。そこを拠点とするラッパーC-MurderやJuvenileのような、荒々しいギャングスタの精神状態に戻るという宣言。
[Interlude: Kanye West]
Fuck them other niggas, 'cause I'm down with my niggas
他のクソ野郎どもは知るか、俺は俺のダチと一緒にいるんだからよ。
※ニューオーリンズのラッパーC-Murderの1999年のバンガー「Down for My N's」のフックからの補間(フレーズの引用)。トラップビートの爆発と共に、暴力的なエネルギーが解放される。
Fuck them other niggas, 'cause I'm down with my niggas
他のヤツらなんかクソくらえだ、俺は仲間とつるんでる。
Fuck them other niggas, 'cause I'm down with my niggas
他の連中は知るか、俺は自分のダチと共にある。
I ride with my niggas, I'd die for my—
俺はダチと走り、ダチのために死ぬ覚悟だ。
[Bridge: Kanye West & Nina Simone]
Uh (Strange fruit hangin')
アー。(ぶら下がる奇妙な果実)
Uh, on the southern leaves (From the poplar trees)
アー、南部の葉っぱに。(ポプラの木から)
(From the poplar trees)
(ポプラの木から)
[Verse 2: Kanye West]
To all my second-string bitches tryna get a baby
子供を作ろうと企んでる、すべての「二軍(セカンドストリング)」のビッチどもへ。
※second-stringはスポーツの控え選手。本命の恋人や妻ではなく、スターの子供を身ごもって養育費(慰謝料)を狙う愛人やグルーピーたちを指す。
Tryna get a baby? Now you talkin' crazy
子供を作るだって?お前、イカれたこと言ってんな。
I don't give a damn if you used to talk to JAY-Z
お前が昔JAY-Zと遊んでた過去があろうが、俺の知ったことじゃねえよ。
He ain't with you, he with Beyoncé, you need to stop actin' lazy
あいつはお前とは一緒にいない、ビヨンセといるんだ。楽して稼ごう(玉の輿)とするのはやめな。
She Instagram herself, like, "Bad bitch alert"
あいつはInstagramに自撮りを上げて、「超イイ女(バッドビッチ)警報発令」とかやってる。
He Instagram his watch, like, "Mad rich alert"
男のほうは時計をアップして、「超金持ち(マッドリッチ)警報発令」ってな。
He only wanna see that ass in reverse
男の方は、お前のケツがバックしてくる(後ろからヤる)のを見たいだけさ。
Two-thousand-dollar bag with no cash in your purse
2,000ドルの高級バッグを持ってるくせに、財布の中身はスッカラカン。
Now you sittin' courtside, wifey on the other side
今じゃお前は(バスケの試合で)コートサイドに座り、正妻は反対側の席にいる。
Gotta keep 'em separated, I call that apartheid
この二人を隔離(セパレート)しておかなきゃな。俺はこれを「アパルトヘイト」って呼んでるぜ。
※南アフリカの人種隔離政策「アパルトヘイト」という歴史的重みのある言葉を、本妻と愛人の鉢合わせを防ぐための席離しに例えるという、極めて不遜でKanyeらしいブラックジョーク。
Then she said she pregnant-ated, that's the night your heart died
そして彼女が「妊娠した(プレグナンテッド)」って言った夜、お前の心は死んだんだ。
※pregnant-atedはKanyeの造語。意図的に妊娠を企てられた(罠にはめられた)ニュアンスを含む。
Then you gotta go and tell your girl and report that
それから自分の本命の女のところに行って、その事実を報告しなきゃならねえ。
Main reason 'cause your pastor said you can't abort that
一番の理由は、牧師が「中絶(アボート)は許されない」って言ったからだ。
Now your driver say that new Benz, you can't afford that
今じゃお抱えの運転手が「あの新しいベンツ、もう維持できませんよ」って言ってくる。
All that cocaine on the table, you can't snort that
テーブルの上のコカインの山も、もう吸うことはできねえ。
That go into that, all that money that the court got
これがああなって、結局金は全部裁判所に持っていかれる。
All in on that alimony, uh
すべて「扶養手当(アリモニー)」に消えちまうんだ、アー。
Yeah-yeah, she got you, homie, yeah
イェー、イェー、あいつにお前はハメられたんだよ、兄弟、イェー。
'Til death, but do your part, uh
「死が二人を分かつまで」って言うが、お前は自分の役割を果たすだけだ、アー。
Unholy matrimony
神聖とは程遠い、呪われた結婚(アンホーリー・マトリモニー)さ。
[Bridge: Nina Simone]
Black bodies swinging in the southern breeze
南部のそよ風に揺れる、黒い肉体。
Freeze
フリーズ(止まれ)。
Strange fruit hanging from the poplar trees
ポプラの木にぶら下がる、奇妙な果実。
From the poplar trees
ポプラの木から。
[Outro: Kanye West]
That summer night, holdin' long and long
あの夏の夜、ずっとずっと抱きしめ合って。
'Din long
長く。
No waiting for the summer rose and
夏に咲くバラを待つこともなく、そして。
And breathe
そして息をして。
And breathe and breathe
息をして、息をして。
And breathe and breathe
息をして、息をして。
And breathe and breathe
息をして、息をして。
And live and learn, and live and learn
生きて、学んで。生きて、学んでいくんだ。
And livin' and livin' like I'm lonely
そして孤独なまま、俺は生きていく。
Lonely, lonely, lonely
孤独に、孤独に、孤独に。
And livin' lonely
孤独に生きていくのさ。
And live and learn
生きて、そして学んで。
And live
生きて。
And live
生きていくんだ。
