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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

I Am a God - Kanye West 【和訳・解説】

Artist: Kanye West

Album: Yeezus

Song Title: I Am a God

概要

2013年の問題作『Yeezus』に収録された、カニエの極端なエゴと神格化が爆発する物議を醸したトラックだ。Daft Punkらがプロデュースに参加し、インダストリアルで不穏なエレクトロビートを展開している。本作は、パリのファッションウィークで某有名デザイナーから「他のショーを見ないなら招待する」という理不尽な条件を突きつけられたことや、白人至上主義的なハイファッション界に対する怒りが制作の引き金となっている。自身を神(God)と名乗りながらも、安っぽいマッサージやクロワッサンを要求する滑稽さ、そして突如響き渡る恐怖に満ちた絶叫には、圧倒的な自己顕示欲の裏に潜む彼のパラノイアと人間的な脆さが滲み出ている。「エゴの極致」と「神への信仰」が入り混じる、カニエの複雑な精神構造を象徴する一曲である。

和訳

[Intro: Capelton]
Blazin', mi don't want dem
燃え上がれ、奴らはいらない。

Mi need dem
俺には奴らが必要なんだ。

Blazin
燃え上がれ。

Suh mi tek har outta bugah red and put her in a tall skirt
だから俺は彼女の赤い下着を脱がせて、長いスカートを穿かせたんだ。
※ジャマイカのレゲエ・アーティストCapletonの楽曲「Forward Inna Dem Clothes」からのサンプリング。「bugah red(赤い下着=娼婦のような世俗的な格好)」をやめさせ、「tall skirt(長いスカート=ラスタファリに基づく貞淑な格好)」へと導くという内容。

And now she find out what life is really worth
そして今、彼女は人生の本当の価値を知ったのさ。

No to X rated
X指定(下品な生き方)にはノーだ。

Yo mi tek har outta bugah red and put her in a tall skirt
俺は彼女の赤い下着を脱がせて、長いスカートを穿かせたんだ。

And now, she find out what life is really worth
そして今、彼女は人生の本当の価値を知った。

No to X rated
X指定にはノーだ。
※カニエが自身の音楽を通じて、ヒップホップ界やリスナーを教化(神のような導き)しようとするスタンスを暗示している。

[Refrain: Kanye West]
I am a God
俺は神だ。

I am a God
俺は神だ。

I am a God
俺は神だ。

[Chorus: Kanye West]
I am a God
俺は神なんだよ。

Hurry up with my damn massage
さっさと俺のマッサージを終わらせろ。

Hurry up with my damn ménage
さっさと俺のメナージュ(3P)を始めさせろ。

Get the Porsche out the damn garage
ガレージからあのポルシェを出してこい。
※自分を神と豪語しつつ、実際の要求はマッサージや乱交、高級車といった極めて俗物的で人間臭いものであるという強烈なアイロニー。

I am a God
俺は神だ。

Even though I'm a man of God
たとえ俺が「神に仕える男」だとしてもな。

My whole life in the hand of God
俺の人生のすべては、神の手の中にある。

So y'all better quit playin' with God
だからお前ら、神(俺)を舐めた真似するのはやめとけよ。
※唯一神への信仰心(man of God)と、自らの神格化(I am a God)を平然と両立させる矛盾こそがカニエの特異な精神構造を表している。

[Verse 1: Kanye West]
Soon as they like you make 'em unlike you
奴らがお前を気に入った途端、お前は奴らに嫌われるようなことをする。

'Cause kissin' people ass is so unlike you
だって、他人のケツにキスする(媚びへつらう)なんて、お前らしくないからな。

The only rapper compared to Michael
マイケル(・ジャクソン)と比較される、唯一のラッパー。

So here's a few hatin'-ass niggas to fight you
だから、お前と戦おうとするヘイター共がここに何人かいる。

And here's a few snake-ass niggas to bite you
そして、お前を噛もうとするヘビみたいな裏切り者共もいるってわけだ。

And I don't even wanna hear 'bout what niggas might do
奴らが何をしてくるかなんて、聞きたくもねえよ。

Old niggas mentally still in high school
年食った奴らも、精神年齢は高校生のままだ。

Since the tight jeans, they ain't never liked you
お前がタイトなジーンズを穿き始めた頃から、奴らはお前をずっと嫌ってたよな。
※2000年代初頭、ダボダボの服が主流だったシーンにおいて、タイトなジーンズやピンクのポロシャツを着用し「ゲイっぽい」「リアルじゃない」と同業者から批判されていた過去を振り返っている。

Pink-ass polos with a fuckin' backpack
ピンクのポロシャツに、クソみたいなバックパック姿。

But everybody know you brought real rap back
でも、お前が「本物のラップ」を取り戻したってことは誰もが知ってるぜ。

Nobody had swag, man, we the Rat Pack
誰もスワッグ(イケてるスタイル)なんて持ってなかった。なあ、俺たちは「ラット・パック」だ。
※ラット・パック(Rat Pack)は、フランク・シナトラらを中心に1950〜60年代に活躍した最強のエンターテイナー集団。自分たちが現代の最もクールな集団であることを示している。

Virgil, Pyrex, Don C snapback
ヴァージル、パイレックス、ドン・Cのスナップバック。
※カニエの側近であり後にルイ・ヴィトンのデザイナーとなるVirgil Abloh(彼の初期ブランド「Pyrex Vision」)、長年のマネージャーであるDon Cが手がけるスナップバックキャップ(Just Don)など、自身のクルーがファッション界を席巻していることを誇示している。

Ibn diamond, Chi-town shinin'
イブンはダイヤモンド、シカゴ(シャイタウン)が輝いてる。
※Ibn Jasperはカニエの長年の理髪師であり親友。シカゴ出身の仲間たちが成功を収めている描写。

Monop' in this bitch again, changed the climate
モノポリーがまたここにいる、気候(トレンド)を変えちまった。
※カニエのマネージャーの一人、John Monopolyのこと。

Hop in this bitch to give Saint the garment
聖人にふさわしい服(ガーメント)を着せるために、この業界に乗り込んだんだ。

Until the day I get struck by lightning
俺が雷に打たれるその日までな。

[Chorus: Kanye West]
I am a God
俺は神だ。

So hurry up with my damn massage
だからさっさと俺のマッサージを終わらせろ。

In a French-ass restaurant
フランスのクソ気取ったレストランで。

Hurry up with my damn croissants
さっさと俺のクロワッサンを持ってこいってんだよ。
※パリのファッションウィークで受けた理不尽な扱いへの怒りを、レストランでの横柄な態度として表現している。自らを神と称しながら「クロワッサンを急かせ」とキレるミスマッチは、本作を代表するカニエらしいユーモラスかつ傲慢なパンチラインである。

[Refrain: Kanye West]
I am a God
俺は神だ。

I am a God
俺は神だ。

I am a God
俺は神だ。

[Bridge: Kanye West]
Ah!
アアアアアアアーッ!!

Ah!
アアアアアアアーッ!!
※インダストリアルなビートの中で突如として轟く、ホラー映画さながらの恐怖に満ちた絶叫。神として振る舞う彼の内面にある、プレッシャーやパラノイア、あるいはシステムに組み込まれることへの根源的な恐怖を表現している。

[Verse 2: Kanye West]
I just talked to Jesus
さっきジーザス(イエス・キリスト)と話したんだ。

He said, "What up, Yeezus?"
彼が「調子はどうだ、Yeezus(カニエ)?」って言うから。
※Jesus(イエス)と自身のニックネームYeezus(イーザス)が対等に会話しているという究極の神格化。

I said, "Shit, I'm chillin'
俺は「ああ、のんびりやってるよ」って答えた。

Tryna stack these millions"
「この数百万ドル(大金)を積み上げようとしてるところさ」

I know He the Most High
彼が「いと高き者(至高の神)」だってことは分かってる。

But I am a close high
でも俺も、「それに近い高み」にいる存在だからな。

Mi casa, su casa
「俺の家は、お前の家(ミ・カサ・ス・カサ)」。

That's our cosa nostra
これが俺たちの「コーザ・ノストラ(我々のもの)」さ。
※スペイン語の歓迎の挨拶「Mi casa es su casa」と、イタリアのマフィアを指す「Cosa nostra(我々の事/縄張り)」を掛けている。神と自分はファミリー(マフィアのような同格の関係)であり、天国も地上も自分たちの縄張りであるという不遜極まりない表現。

[Refrain: Kanye West]
I am a God
俺は神だ。

I am a God
俺は神だ。

I am a God
俺は神だ。

[Bridge: Kanye West]
Ah!
アアアアアアアーッ!!

Ah!
アアアアアアアーッ!!

Ah!
アアアアアアアーッ!!

Ah!
アアアアアアアーッ!!

[Outro: Justin Vernon]
Ain't no way I'm givin' up, I'm a God
絶対に諦めるわけにはいかない。俺は神なんだから。
※Bon IverのJustin Vernonによる幽玄なボーカル。エゴの塊のような曲の終わりに、自らを鼓舞するような切実な響きを持たせている。

 

Yeezus

Yeezus

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