Artist: Kanye West
Album: Yeezus
Song Title: On Sight
概要
2013年にリリースされたカニエ・ウェストの6thアルバム『Yeezus』のオープニングを飾る、極めて攻撃的でインダストリアルな一曲だ。Daft Punkとの共同プロデュースによる本作は、前作『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』の豪奢なサウンドや『Watch the Throne』の王者の風格から一転、歪みきったシンセサイザーとノイズが支配するミニマルかつ破壊的なビートを展開している。タイトルの「On Sight」とはストリートのスラングで「見つけ次第(即座に攻撃する)」を意味し、世間の期待や既存のファッション、音楽のルールを一切無視して己の衝動を突き通すカニエの狂気的なエゴが剥き出しになっている。過激な性描写や不遜な態度の合間に、突如としてゴスペル・クワイアのサンプリングが挿入される特異な構成は、彼の内面にある「俗」と「聖」の激しい衝突を象徴しており、ヒップホップシーンのサウンドデザインにパラダイムシフトをもたらした革命的なトラップ/インダストリアル・ナンバーである。
和訳
[Verse 1: Kanye West]
Yeezy season approachin'
Yeezyの季節が近づいてるぜ。
※Yeezy season=カニエが音楽やファッション界を完全に支配する時期が来たという宣言。
Fuck whatever y'all been hearin'
お前らが今までどんな音楽を聴いてきたかなんて知るか。
Fuck what, fuck whatever y'all been wearin'
お前らがどんな服を着てたかなんてクソくらえだ。
※既存の音楽の流行やファッショントレンドを全否定し、自らが新たなルールを作るという傲慢なスタンス。
A monster about to come alive again
モンスターが再び蘇ろうとしてるんだ。
※前作の収録曲「Monster」を引き継ぎつつ、さらに凶暴化した自我の覚醒を意味する。
Soon as I pull up and park the Benz
俺がベンツを停めて降り立った瞬間に。
We get this bitch shaking like Parkinson's
このハコ(クラブ)をパーキンソン病みたいに激しく揺らしてやるよ。
※物議を醸したライン。パーキンソン病の症状である手の震えを、ベース音でクラブが揺れる様に例えたインセンシティブで過激な表現。
Take my number and lock it in
俺の番号を受け取って、スマホに登録しておけ。
Indian hair, no moccasins
インディアンの髪、でもモカシンは履いてねえ。
※黒人女性がつける高級なヘアエクステンション(Indian hair=インド人の髪)と、ネイティブ・アメリカンの伝統靴であるモカシンを掛けている。
It's too many hoes in this house of sin
この「罪の館」にはビッチが多すぎる。
Real nigga back in the house again
本物のヤバい奴が、またこの家に戻ってきたぜ。
Black Timbs all on your couch again
黒のティンバーランドで、お前のソファにまた土足で上がってやる。
※Rick Jamesがエディ・マーフィの白い高級ソファに土足で上がった有名なエピソード(Fuck yo couch)のオマージュ。他人の領域を荒らす傍若無人な振る舞い。
Black dick all in your spouse again
お前の嫁のなかに、黒いモノをまたブチ込んでやる。
And I know she like chocolate men
あいつがチョコレート(黒人)の男を好きだってことは分かってるんだ。
She got more niggas off than Cochran, hah!
あの女、コクランよりも多くの黒人を「抜いて(無罪にして)」きたんだぜ、ハッ!
※O.J.シンプソン事件で黒人のO.J.を無罪(get off)にした凄腕の黒人弁護士ジョニー・コクラン(Johnnie Cochran)と、性的な意味での「イカせる(get off)」を見事に掛けた秀逸なパンチライン。
[Refrain: Kanye West]
On sight
見つけ次第、即実行だ。
※On sight=ギャング用語で「敵を見つけたら警告なしで即座に撃つ(攻撃する)」という容赦のないスタンス。ここでは「ためらわずに本能のまま行動する」という決意表明。
On sight
見つけ次第にな。
[Bridge: Kanye West]
How much do I not give a fuck?
俺がどれだけ世間の目なんて気にしてないか(ファックしてないか)?
Let me show you right now 'fore you give it up
お前が降参する前に、今すぐ見せてやるよ。
How much do I not give a fuck?
俺がどれだけ何も気にしてないか?
Let me show you right now 'fore you give it up
お前が諦める前に、今すぐ見せてやる。
[Interlude: Holy Name of Mary Choral Family]
Oh, He'll give us what we need
おお、主は我々に「必要なもの」を与えてくださる。
It may not be what we want
それが、我々が「欲しいもの」とは限らないとしても。
※Holy Name of Mary Choral Familyによる1977年のゴスペル曲「He'll Give Us What We Really Need」からのサンプリング。ノイズまみれのビートが唐突に途切れ、美しい聖歌が響く。これは「大衆が欲しい(want)耳障りの良いポップソングではなく、ヒップホップ界に必要な(need)破壊的な本作を俺が与える」という、カニエの神託めいたメタメッセージである。
[Verse 2: Kanye West]
Baby girl tryna get a nut
ベイビーガールがイキたがってる。
And her girl tryna give it up
その友達の女もヤラせたがってる。
Chopped 'em both down
だから二人とも切り倒して(抱いて)やったぜ。
Don't judge 'em, Joe Brown
彼女らを裁くんじゃねえぞ、ジョー・ブラウン。
※Joe Brownはアメリカの有名なテレビ裁判番組の裁判官(Judge Joe Brown)。
One last announcement
最後に一つ、アナウンスだ。
No sports bra, let's keep it bouncin'
スポーツブラは禁止だ、そのままたっぷり揺らそうぜ。
Everybody wanna live at the top of the mountain
誰もが山の頂点(トップ)に住みたがる。
Took her to the 'Bleau, she tried to sip the fountain
彼女をフォンテンブローに連れてったら、噴水の水を飲もうとしやがった。
※マイアミの超高級リゾートホテル「Fontainebleau(フォンテンブロー)」のこと。連れてきた田舎者の女性が、ホテルの豪華な噴水を飲み水と勘違いしたという下世話なジョーク。
That's when David Grutman kicked her out
その時、デイヴィッド・グラットマンが彼女を叩き出した。
※David Grutmanはマイアミの有名クラブオーナーでありカニエの友人。
But I got her back in and put my dick in her mouth
でも俺が彼女を中に戻してやって、俺のモノを彼女の口に突っ込んでやったのさ。
[Refrain: Kanye West]
On sight
見つけ次第、即実行だ。
On sight
見つけ次第にな。
[Bridge: Kanye West]
Uh-huh
アーハ。
Uh-huh
アーハ。
Uh-huh
アーハ。
Uh-huh
アーハ。
[Outro: Kanye West]
Right now
今すぐだ。
I need right now
今すぐ必要なんだよ。
Right now
今すぐ。
I need, I need right now
今すぐ、俺には必要なんだよ。
Right now
今すぐな。
I need, I need right now
今すぐ必要なんだ。
