Artist: JAY-Z & Kanye West (Feat. Mr Hudson & the Library)
Album: Watch the Throne
Song Title: Why I Love You
概要
2011年の歴史的ジョイントアルバム『Watch the Throne』のスタンダード版ラストを飾る、悲哀と裏切りに満ちたエモーショナルな一曲だ。フレンチ・ハウス・デュオCassiusの「I Love U So」を大胆にサンプリングし、客演にMr Hudsonを迎えた本作は、ヒップホップの頂点(王座)に立った彼らが味わう「孤独」と「パラノイア」を浮き彫りにしている。特にJAY-Zのヴァースは、かつてRoc-A-Fella Records時代に自らが引き上げ、富と名声を与えたかつての仲間たち(Beanie SigelやDame Dashなど)からの度重なる裏切りとヘイトに対する痛切なアンサーとなっている。「なぜお前を愛しているのか分からない」というフックの通り、愛が憎しみに変わるストリートの非情さと、それでもかつての兄弟たちを完全には憎みきれない王者の複雑な胸中を、シーザー暗殺などの歴史的メタファーを交えて書き上げた傑作である。
和訳
[Chorus: Mr. Hudson]
Ooh, I love you so
ああ、お前をこんなにも愛してるのに。
But why I love you, I'll never know
でも、なぜお前を愛してるのか、俺には一生分からないだろうな。
※フレンチ・ハウス・デュオCassiusの楽曲「I Love U So」のボーカルサンプル。裏切られてもなお消え去らない、かつての仲間への複雑な愛情を表現している。
Ooh, I love you so
ああ、お前をこんなにも愛してるのに。
But why I love you, I'll never know
でも、なぜお前を愛してるのか、俺には一生分からない。
Ooh, I love you so
ああ、お前をこんなにも愛してるのに。
But why I love you, I'll never know
でも、なぜお前を愛してるのか、俺には一生分からない。
Ooh, I love you so
ああ、お前をこんなにも愛してるのに。
But why I love you, I'll never know
でも、なぜお前を愛してるのか、一生分からないだろうな。
[Verse 1: Jay-Z]
Picture, if you will, that the throne's burning
想像してみな、王座が炎に包まれてる様を。
Rome's burning, and I'm sitting in the corner all alone, burning
ローマ帝国は燃え落ち、俺はひとり隅っこに座って、一緒に燃え尽きようとしてる。
※ローマ帝国の大火と自身の帝国(Roc-A-Fella Records)の崩壊を重ね合わせている。かつての仲間たちが去り、頂点で孤立する王の姿を描写している。
Why does it always end up like this?
なんでいつも、こんな結末になっちまうんだ?
Something that we don't determine
俺たちでさえ、どうにもできない運命(何か)がある。
Same people that I fought for, that I fight for, that I ride for
俺がかつて身を粉にして戦い、今も戦い、共に走ってきたヤツらが。
That I live for, that I die for
そいつらのために生き、そいつらのためなら死ねると思ってたヤツらが。
Be the reason that these niggas is alive for
あいつらが今生きて(シーンに居て)いられるのは、俺のおかげなのに。
And they want me dead, but I'm sorry, but I just can't die for you
なのに俺の死(破滅)を望んでやがる。悪いが、お前らのために死んでやることはできねえよ。
But I can make 'em put their hands in the sky for you
だが、お前らのためにあいつら(観客)の両手を空に挙げさせることならできるぜ。
We waiting for the fireworks like July 4th
7月4日(独立記念日)みたいに、花火が上がるのを待ってるんだ。
Get fly more, get high more, cry boy, why for?
もっと高く飛べ、もっとハイになれ。泣いてるのか、坊や?何のために?
When the grief is over, beef is over
悲しみが終われば、ビーフ(揉め事)も終わるさ。
I'll be fly when Easter's over
復活祭(イースター)が終わっても、俺はイケてる(飛び続ける)ままだ。
I tried to teach niggas how to be kings
俺はあいつらに「王」になる方法を教えようとしたんだ。
And all they ever wanted to be was soldiers
なのに、あいつらがなりたかったのは「兵隊」止まりだったのさ。
※JAY-Zがビジネスマンとして自立するよう仲間を導いたにも関わらず、ストリートのギャングスタ(兵隊)としてのメンタリティから抜け出せず、結果的に彼のもとを去っていった元Roc-A-Fellaの仲間たちへの痛烈な皮肉。
So when love is gone 'til blood is drawn
だから、愛が消え失せ、血が流れるまでやり合う。
'Cause we no longer wear the same uniform
だって俺たちはもう、同じユニフォームを着てねえからな。
Fuck you, squares, the circle got smaller
クソくらえだ、スクエア(つまらねえ奴ら)め。俺のサークル(身内)は小さくなった。
※square(四角/真面目ぶった奴)とcircle(円/仲間)という図形を掛けた見事なワードプレイ。裏切り者を排除し、本当に信頼できる少数精鋭だけを残したことを意味する。
The castle got bigger, the walls got taller
城はデカくなり、壁はさらに高くなった。
And truth be told, after all that said
そして実を言うとな、あれだけ言った後でも。
Niggas still got love for you
俺はまだ、お前らのことを愛してるんだよ。
[Chorus: Mr. Hudson]
Ooh, I love you so
ああ、お前をこんなにも愛してるのに。
But why I love you, I'll never know
でも、なぜお前を愛してるのか、一生分からないだろうな。
Ooh, I love you so
ああ、お前をこんなにも愛してるのに。
But why I love you, I'll never know
でも、なぜお前を愛してるのか、一生分からない。
Ooh, I love you so
ああ、お前をこんなにも愛してるのに。
But why I love you, I'll never know
でも、なぜお前を愛してるのか、一生分からない。
Ooh, I love you so
ああ、お前をこんなにも愛してるのに。
But why I love you, I'll never know
でも、なぜお前を愛してるのか、一生分からないだろうな。
[Verse 2: Jay-Z & Kanye West]
Showed love to you niggas
お前らに愛を示したってのによ。
You ripped out my heart and you stepped on it
お前らは俺の心臓を引きずり出して、踏みにじりやがった。
I picked up the pieces 'fore you swept on it
お前らが箒で掃き捨てる前に、俺はその欠片を拾い集めたんだ。
Goddamn, this shit leaves a mess, don't it?
クソッ、マジでめちゃくちゃにしやがって、そうだろ?
Shit feelin' like death, don't it?
死ぬほど辛い気分だぜ、なあ?
Charge it to the game, whatever's left on it
このゲーム(ヒップホップ界)のツケにしておけ、何が残っていようとな。
I spent about a minute, maybe less on it
俺がこれ(裏切りへの悲しみ)に割いた時間は、たった1分、いやそれ以下かもな。
Fly, pelican, fly, turn the jets on it
飛べ、ペリカンよ、飛べ。ジェットのエンジンを吹かしてな。
※映画『スカーフェイス』で、トニー・モンタナがテレビでフラミンゴ(ペリカン)を見て「Fly, Pelican, Fly」と呟くシーンからの引用。ドラッグゲームでのし上がり、やがて破滅に向かう運命のメタファーである。
But first I shall digress on it
だがその前に、少し話を逸らさせてもらうぜ。
Wasn't I a good king?
俺は良い王じゃなかったか?
Maybe too much of a good thing, huh?
甘やかしすぎた(良いことが多すぎた)のかもな、あ?
Didn't I spoil you? Me or the money, what you loyal to?
お前らを甘やかしただろ? 俺と金、お前はどっちに忠誠を誓ってるんだ?
Huh, I gave you my loyalty
ハッ、俺はお前に忠誠(ロイヤルティ)を尽くした。
Made you royalty and royalties
お前を王族(ロイヤルティ)にしてやり、印税(ロイヤルティ)まで稼がせてやった。
※loyalty(忠誠)、royalty(王族)、royalties(印税)と同音異義語を連続で畳み掛けるJAY-Zの神業的なライミング。
Took care of these niggas' lawyer fees
お前らの弁護士費用だって払ってやったんだ。
And this is how niggas rewarded me, damn
それでこの仕打ち(見返り)かよ、クソッタレ。
[Chorus: Mr. Hudson]
Ooh, I love you so
ああ、お前をこんなにも愛してるのに。
But why I love you, I'll never know
でも、なぜお前を愛してるのか、一生分からないだろうな。
Ooh, I love you so
ああ、お前をこんなにも愛してるのに。
But why I love you, I'll never know
でも、なぜお前を愛してるのか、一生分からないだろうな。
[Verse 3: Jay-Z & Kanye West]
Bussin' at me, b-b-b-bussin' at me
俺を撃ち(ディスり)やがる、バンバン撃ってきやがる。
But I'm bulletproof, bitch, you can't get nothin' past me
だが俺は防弾(無敵)だぜ、ビッチ。俺をすり抜けることなんてできねえよ。
Got body armor
ボディアーマーを着込んでるからな。
A nigga gotta watch the throne
俺たちは王座に注意(Watch the throne)しなきゃならねえ。
And I'm bussin' back
だから俺も撃ち返してやる。
So niggas in a glass house should not throw stones
「ガラスの家に住むヤツは、石を投げるべきじゃない」って言うだろ。
※英語の有名な諺。自分に弱み(ガラスの家)があるにも関わらず、他人を攻撃(石を投げる)すれば、反撃されて自分が破滅するという警告。ディスを仕掛けてきた元仲間たちへのアンサー。
What do you do when the love turn to hate?
愛が憎しみに変わっちまった時、お前ならどうする?
Gotta separate from these fuckin' fakes
このクソみたいなフェイク野郎共と縁を切るしかねえんだ。
Caesar didn't see it, so he ceased to exist
シーザーはそれ(裏切り)を見抜けなかった、だから彼は死んだ(存在しなくなった)んだ。
※ローマの独裁官ジュリアス・シーザーが、腹心のブルータスに暗殺された歴史的事件(ブルータス、お前もか)を引用。「see it」と「ceased(終わる/死ぬ)」で韻を踏んでいる。
So the nigga that killed him had keys to his shit
彼を殺したヤツは、彼のすべて(鍵)を握ってた身内だったのさ。
Am I my brother's keeper?
俺は兄弟の保護者(キーパー)なのか?
※旧約聖書の「カインとアベル」からの引用。弟アベルを殺したカインが神に放った言葉。兄弟の面倒をどこまで見るべきかという葛藤を示している。
Only if that nigga don't creep up
そいつが俺の背後に忍び寄って(裏切って)こない限りはな。
Got a pistol under my pillow
枕の下にはピストルを隠してる。
I've never been a deep sleeper
俺は一度だって、深く眠りについたことはねえんだ。
※頂点に立つ者は常に裏切りの恐怖と隣り合わせであり、ストリート上がりのサバイバル本能からパラノイア(偏執症)的な警戒心を解くことができない孤独を描写している。
P-P-P-Paranoia, 'cause the nigga that said he'll
パ、パ、パラノイア(被害妄想)さ。だってお前のために
Blast for ya is now blastin' for ya
撃ってやる(Blast for ya)って言ってたヤツが、今じゃお前を狙って撃ってる(blastin' for ya)んだからな。
※かつて自分のために敵を撃ってくれた仲間が、今は銃口を自分に向けているという恐怖。
That's an assassin for ya
それがお前への刺客(アサシン)ってやつだ。
These niggas got a shot, they'll shoot
あいつらはチャンス(弾)があれば、撃ち込んでくる。
Please Lord, forgive him
神よ、どうか彼らを許してやってくれ。
For these niggas not know what they do, ooh
なぜなら、あいつらは自分が何をしてるのか分かっちゃいないんだから。
※十字架にかけられたイエス・キリストが、自分を処刑する者たちに対して神に放った最期の言葉(ルカによる福音書23章34節)。裏切り者への究極の赦しと、自身をキリストと同格の犠牲者として置く劇的な幕引きである。
