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Murder to Excellence - JAY-Z & Kanye West 【和訳・解説】

Artist: JAY-Z & Kanye West

Album: Watch the Throne

Song Title: Murder to Excellence

概要

2011年リリースの『Watch the Throne』に収録された本作は、「Murder(殺人)」と「Excellence(卓越性)」という2つのパートで構成される、アルバム内で最も社会派かつメッセージ性の強い重要曲である。前半の「Murder」では、Swizz BeatzとS1による不穏なビートに乗せ、シカゴの殺人発生率の異常さや、黒人同士が殺し合う「ブラック・オン・ブラック・クライム」の悲惨な現状を嘆き、同胞たちに団結を訴えかける。一転して後半の「Excellence」では、成功を収めた黒人の頂点(ブラック・エクセレンス)を祝福し、オプラ・ウィンフリーやウィル・スミスに言及しながら、白人中心の社会構造(システム)を打破して新たなブラック・エリート層を築き上げる決意を表明する。ゲットーの絶望から頂点の栄光まで、黒人が直面する現実の振れ幅を壮大なスケールで描き出したヒップホップ史に残るコンシャスな一曲だ。

和訳

[Part I: Murder]

[Intro: Jay Z]

Uh, bloody murder, murder, murder
血塗られた殺人、殺し合いだ。

Bloody murder, murder, murder, murder
血塗られた殺人、殺し合いだ。

Bloody murder, murder, murder, murder
血塗られた殺人、殺し合いだ。

Bloody murder, murder, murder
血塗られた殺人だ。

[Chorus: Kanye West & Jay Z]

Paper read, "Murder, Black-on-Black murder"
新聞には「殺人、黒人同士の殺し合い」と見出しが躍る。

Paper read, "Murder, Black-on-Black murder" again (Uh)
新聞にはまた「殺人、黒人同士の殺し合い」とあるぜ。

[Verse 1: Jay Z]

This is to the memory of Danroy Henry
これはダンロイ・ヘンリーの記憶に捧げる。
※Danroy "DJ" Henry:2010年にニューヨーク州で白人警官によって理不尽に射殺された黒人大学生。警察による黒人への過剰防衛問題を提起している。

Too much enemy fire to catch a friendly
味方(同胞)から撃たれるには、敵(警察やシステム)からの砲火が多すぎるんだよ。
※外の世界に黒人を脅かす敵が山ほどいるのに、身内である黒人同士で殺し合っている場合ではないという悲痛な訴え。

Strays from the same shade, nigga, we on the same team
同じ肌の色のヤツからの流れ弾。なあ、俺たちは同じチームだろ。

Giving you respect, I expect the same thing, uh
俺はお前らにリスペクトを送る、だからお前らにも同じことを期待するぜ。

All-black everything, nigga, you know my fresh code
全身黒ずくめ(オール・ブラック)、俺のイケてるドレスコードを知ってるだろ。
※自身のファッションスタイル(黒の衣服)と、黒人としての誇り(All Black)を掛けている。

I'm out here fighting for you, don't increase my stress load
俺はここでお前らのために戦ってるんだ、これ以上俺のストレスを増やさないでくれ。

Niggas watching the throne, very happy to be you
みんなが王座(俺たち)を見上げてる。お前らと同じ黒人であることを、俺は心から嬉しく思うぜ。

Power to the people, when you see me, see you
民衆に力を。俺を見るときは、そこに自分自身の姿を重ね合わせてくれ。
※自分の成功は黒人社会全体の成功の象徴であり、誰もが頂点を目指せるというエンパワーメントである。

[Verse 2: Kanye West]

And I'm from the murder capital where they murder for capital
俺は「殺人の都」の出身だ、そこじゃ資本(金)のために殺しが行われる。
※シカゴ(Kanyeの地元)の異常な殺人発生率と、capital(首都/都)とcapital(資本/金)を掛けたワードプレイ。

Heard about at least three killings this afternoon
今日の午後だけで、少なくとも3件の殺人があったって聞いた。

Looking at the news like, "Damn, I was just with him after school"
ニュースを見て「クソッ、放課後にあいつと一緒にいたばっかりなのに」ってなるのさ。

No shop class, but half the school got a tool
技術の授業(ショップクラス)なんてないのに、学校の半分のヤツらが「道具」を持ってる。
※tool(道具)は銃を指すストリート・スラング。

And a "I could die any day"-type attitude
それに「いつ死んだって構わねえ」って態度で生きてるんだ。

Plus his little brother got shot reppin' his avenue
おまけに、そいつの弟は自分の通り(縄張り)をレペゼンして撃たれちまった。

It's time for us to stop and redefine Black power
立ち止まって「ブラック・パワー」を再定義する時が来たんだ。

Forty-one souls murdered in fifty hours
50時間で41人もの命が奪われた。
※シカゴでのとある週末に起きた、異常な数の銃犯罪の犠牲者数を生々しく提示している。

[Chorus: Kanye West]

The paper read, "Murder, Black-on-Black murder"
新聞には「殺人、黒人同士の殺し合い」と見出しが躍る。

The paper read, "Murder, Black-on-Black murder" again
新聞にはまた「殺人、黒人同士の殺し合い」とあるぜ。

"Murder" again
また殺し合いだ。

[Verse 3: Kanye West]

Is it genocide?
これはジェノサイド(大量虐殺)なのか?

'Cause I can still hear his mama cries
だって俺には、まだあいつの母親の泣き声が聞こえるんだ。

Know the family traumatized
家族がトラウマを抱えちまったのが分かる。

Shots left holes in his face about piranha-sized
銃弾が、あいつの顔にピラニアくらいのデカさの穴をあけた。

The old pastor closed the cold casket
年老いた牧師が、冷たい棺桶を閉じる。

And said the church ain't got enough room for all the tombs
そして言ったんだ、「教会にはもう、墓石を置くスペースが残ってない」ってな。
※犠牲者が多すぎて教会の墓地が満杯になっているという、シカゴのゲットーの絶望的な状況を描写。

It's a war going on outside we ain't safe from
外では戦争が起きてる、俺たちも安全なんかじゃない。

I feel the pain in my city wherever I go
どこへ行こうと、俺は自分の街(シカゴ)の痛みを感じるんだ。

314 soldiers died in Iraq, 509 died in Chicago
イラクでは314人の兵士が死んだが、シカゴでは509人が死んだんだぜ。
※2008年の統計。戦地であるイラクよりも、地元シカゴのストリートでの死者数の方が多いという衝撃的な事実を突きつけている。

[Verse 4: Jay Z]

I arrived on the day Fred Hampton died, uh
俺はフレッド・ハンプトンが死んだ日にこの世にやって来た。
※JAY-Zの誕生日(1969年12月4日)は、ブラックパンサー党の若きリーダーであったフレッド・ハンプトンが警察に暗殺された日と同一である。自身が彼の意志を継ぐ者であるという暗喩。

Real niggas just multiply
本物の黒人は、そうやって増殖し(受け継がれ)ていくのさ。

And they say by 21, I was supposed to die
世間は、俺が21歳までに死ぬはずだったって言う。

So I'm out here celebrating my post-demise
だから俺は今ここで、自分の「死後」の人生を祝ってるんだ。
※ストリートの黒人の平均寿命が極端に短かった時代を生き延びたJAY-Zが、現在の成功はボーナスステージのようなものだと語っている。

If you put crabs in a barrel to ensure your survival
もし自分の生き残りを確実にするために、樽の中にカニを入れるような真似をするなら。

You gon' end up pulling down niggas that look just like you
結局、自分と同じ見た目をした仲間(黒人)の足を引っ張り下ろすことになるんだぜ。
※「Crabs in a barrel(樽の中のカニ)」は、他人が成功して抜け出そうとするのを邪魔し合う黒人社会の悪習を指す有名なメタファー。

What up, Blood? Uh, what up, cuz? Uh, it's all Black, uh, I love us
調子はどうだ、ブラッド? 調子はどうだ、カズ? 全部黒(ブラック)だ、俺は俺たちを愛してるぜ。
※Blood(ブラッズ)とCuz(クリップスの呼び名)という、互いに殺し合う対立ギャング双方に呼びかけ、肌の色のもとに団結しようという大きな愛のメッセージ。

[Chorus: Kanye West]

The paper read, "Murder, Black-on-Black murder"
新聞には「殺人、黒人同士の殺し合い」と見出しが躍る。

The paper read, "Murder, Black-on-Black murder" again
新聞にはまた「殺人、黒人同士の殺し合い」とあるぜ。

"Black-on-Black murder" again
また黒人同士の殺し合いだ。

"Black-on-Black murder" again
また黒人同士の殺し合いだ。

[Part II: Excellence]

[Intro: Jay Z]

It's a celebration of Black excellence, black tie, black Maybachs
これはブラック・エクセレンス(黒人の卓越性)、ブラックタイ、そして黒のマイバッハへの祝祭だ。
※ここから曲調が変わり、黒人が社会的・経済的な頂点に立つことの賛歌となる。

Huh, yeah, uh
ハッ、イェー、アー。

[Verse 1: Jay Z]

Black excellence, opulence, decadence
ブラック・エクセレンス、巨万の富、そして退廃。

Tuxes next to the president, I'm present
大統領の隣にタキシード姿で、俺はそこに立っている。
※バラク・オバマ大統領の就任式など、国家の最高権力者の隣に並び立つほどの地位を確立したことを示している。

I dress in Dries, and other boutique stores in Paris
ドリス(ヴァン・ノッテン)や、パリの高級ブティックの服を着こなす。

In sheepskin coats, I silence the lambs
シープスキン(羊の毛皮)のコートを着て、羊たちを沈黙させるのさ。
※映画『羊たちの沈黙(The Silence of the Lambs)』と掛けて、自分に文句を言う連中(羊=大衆やヘイター)を自身の成功で黙らせるという粋なライン。

Do you know who I am, Clarice?
俺が誰だか分かるか、クラリス?
※前述の映画に登場する殺人鬼、ハンニバル・レクター博士の有名なセリフをもじっている。

No cheap cologne whenever I "shh-shh"
俺が「シュッシュッ」と香水をつける時、安いコロンなんか使わねえ。

Success never smelled so sweet
成功ってやつが、これほど甘い匂いがしたことはない。

I stink of success, the new Black elite
俺は成功の匂いをプンプンさせてる、新たなブラック・エリートだ。

They say my Black Card bear the mark of the beast
あいつらは、俺のブラックカードには「獣の数字」が刻まれてるって噂する。
※JAY-Zのあまりの成功に対し、イルミナティなどの秘密結社や悪魔崇拝(獣の数字=666)と結びつける世間の陰謀論を小馬鹿にしている。

I repeat, my religion is the beat
繰り返すぜ、俺の宗教はビート(音楽)だ。

My verse is like church, my Jesus piece
俺のヴァースは教会みたいなもんさ、これが俺のジーザス・ピース(神への信仰)だ。

Now please, domino, domino
さあ頼むぜ、ドミノ、ドミノ。
※ドミノ倒しのように、自分の成功に続いて他の黒人たちも次々と成功の連鎖を起こしてほしいという願い。またはVan Morrisonの楽曲「Domino」の引用とも言われる。

Only spot a few Blacks the higher I go, uh
上へ登り詰めれば登り詰めるほど、黒人の姿は数えるほどしか見当たらない。
※白人が支配するトップ・エリートの階層における、黒人の圧倒的な少なさと孤独を指摘している。

What's up to Will? Uh, shout out to O, uh
ウィル、調子はどうだ? オプラにシャウトアウトだ。
※Will Smith(ウィル・スミス)とOprah Winfrey(オプラ・ウィンフリー)という、アメリカを代表する超富裕層の黒人たちに挨拶を送っている。

That ain't enough, we gonna need a million more, uh
それだけじゃ足りねえ、あと100万人は(成功する黒人が)必要だぜ。

Kick in the door, uh, Biggie flow
ドアを蹴破れ、ビギーのフロウだ。
※The Notorious B.I.G.の楽曲「Kick In The Door」を引用し、白人社会の門を実力でこじ開ける覚悟を示している。

I'm all dressed up with nowhere to go, uh
最高にドレスアップしたのに、行く場所がねえんだよ。
※頂点に立ちすぎて、自分と同レベルの黒人エリートが集まる社交場が存在しないという究極のフレックスと孤独。

[Verse 2: Kanye West]

Yeah, it's all messed up when it's nowhere to go
ああ、行く場所がないなんてマジで狂ってる。

So we won't take the time out 'til we reach the T-O-P
だから俺たちは、T-O-P(頂点)に達するまで休んだりしねえ。

From parolees that hold G's, sold keys, low keys
G(1000ドル)を握りしめ、こっそり(low key)キロ単位(keys)のヤクを売ってた仮釈放の身から。
※keysとlow keysで踏みつつ、ストリートのどん底からの這い上がりを描写。

We like the promised land of the OG's
今の俺たちは、OG(オリジナル・ギャングスタ)たちにとっての「約束の地(目標)」みたいなもんだ。

In the past if you picture events like a black tie
昔なら、ブラックタイを着るようなイベントを想像した時。

What the last thing you expect to see? Black guys
一番見かけない(期待しない)ものは何だった? 黒人の男たちだ。

What's the life expectancy for Black guys?
黒人の平均寿命(ライフ・エクスペクタンシー)はどれくらいだ?

The system's working effectively, that's why
システム(白人至上主義的な社会構造)が効果的に働いてるからな、それが理由さ。
※黒人がエリート層になれないのも、ストリートで早死にするのも、すべて社会のシステムがそう設計されているからだというKanyeの鋭い社会批判。

I'll be a real man, take care of your son
俺は本物の男になる、君の息子(家族)の面倒を見るぜ。

Every problem you had before this day is now done
今日までのありとあらゆる問題は、これで終わりだ。

New crib, watch a movie
新しい豪邸(クリブ)で、映画でも見ようぜ。

'Cause there ain't nothin' on the news but the blues
だってニュースをつけても、憂鬱なこと(ブルース)しかやってないからな。

Hit the mall, pick up some Gucci
モールに行って、グッチでも買おう。

Now ain't nothing new but your shoes
今じゃ新しい問題は何もない、あるのは君の新しい靴だけさ。

Sunday morning, praise the Lord
日曜の朝、神を讃える。

You the girl that Jesus had been saving me for
君は、イエスが俺のために取っておいてくれた女の子だ。

So let's savor this moment and take it to the floor
だからこの(最高の)瞬間を味わって、フロアに行こうぜ。

Black excellence, truly yours
ブラック・エクセレンス、敬具(真心を込めて)。

 

Murder To Excellence

Murder To Excellence

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