Artist: JAY-Z & Kanye West
Album: Watch the Throne
Song Title: That's My Bitch
概要
2011年の歴史的ジョイントアルバム『Watch the Throne』に収録された本作は、Q-TipとKanye Westが共同プロデュースを手掛けたバウンシーな一曲である。客演にElly Jackson(La Roux)とJustin Vernon(Bon Iver)を迎え、自身のパートナー(Kanyeにとっては当時の恋人、JAY-Zにとっては妻のBeyoncé)への強烈な独占欲と愛情をストリートな視点から歌い上げている。特筆すべきはJAY-Zのヴァースであり、モナ・リザやマリリン・モンローといった西洋美術史における白人中心の美の基準に異議を唱え、有色人種の女性こそが美術館に飾られるべき真のアートであると主張する。ヒップホップ特有の下世話なフレックスと、美術史的な知性が交差するコンシャスな側面も併せ持つ名曲だ。
和訳
[Intro: Kanye West]
Uh
アー。
Hello, can I speak to, uh
もしもし、ええと、〇〇と話せるかな。
Uh
アー。
Yeah, you know who you are, look
ああ、自分のことだって分かってるだろ、なあ。
You had no idea what ya dealing with
お前は自分がどれだけヤバいもんと関わってるか分かっちゃいない。
Something on some this realest shit
最高にリアルなモン(俺たち)に触れてるんだぜ。
Pop champagne, I'll give you a sip
シャンパンを開けな、一口飲ませてやるよ。
'Bout to go dumb, how come?
今からバカ騒ぎ(go dumb)するぜ、なんでかって?
Yeah, that's my bitch
ああ、あいつは俺の女だからさ。
That's my bitch
俺の女だ。
Sh-shorty right there? That's my bitch
あそこにいるイイ女か?あれは俺の女だぜ。
※shorty(ショーティ)は魅力的な女性を指すヒップホップ・スラング。
That's my bitch
俺の女だ。
[Chorus: Elly Jackson & Kanye West]
I've been waiting for a long, long time
ずっと、ずっと長い間待ってたの。
※イギリスのエレクトロ・ポップ・デュオ、La RouxのボーカルであるElly Jacksonがフックの歌唱を担当している。
Just to get off and throw my hands up high
ただ解放されて、両手を高く突き上げるために。
And live my life, and live my life
自分の人生を生きるために。
Just to get off and throw my hands up high (Yeah)
ただ解放されて、両手を高く突き上げるために。
[Verse 1: Kanye West]
I paid for them titties, get your own
あのオッパイは俺が金を出したんだ、お前らは自分で女を見つけな。
※パートナーの豊胸手術の費用を出したのは自分であるという、Kanyeらしい下世話でストレートな独占欲の表現。
It ain't safe in the city, watch the throne
この街は安全じゃねえ、「王座に注意しろ(Watch the Throne)」。
She say I care more about them basquions
俺が「バスキオン」ばっかり気にしてるって彼女は言う。
Basquiats, she learning a new word, it's yacht
「バスキア」だよ。彼女はまた新しい言葉「ヨット」を覚えてる最中だ。
※無教養な女性がJean-Michel Basquiat(バスキア)の名前を「バスキオン」と言い間違える様子と、金持ちの象徴である「ヨット(Yacht)」という単語しか頭にないステレオタイプな姿を皮肉交じりに描いている。
Blew the world up soon as I hit the club with her
彼女と一緒にクラブに現れた途端、世界中が爆発(大騒ぎ)したぜ。
Too Short called, told me I fell in love with her
Too Shortから電話が来て、「お前、あの子にガチ恋しちまったな」って言われたよ。
※Too Shortは「Bitch」という言葉を多用し、ピンプ(ポン引き)カルチャーを体現する西海岸の重鎮ラッパー。彼から見てもKanyeが本気になっているとからかわれている。当時の恋人アンバー・ローズへの言及とされる。
Seat by actors, ball players, and drug dealers
俳優、バスケ選手、それからドラッグディーラーの隣の席。
And some lesbians that never loved niggas
それに、男(Niggas)なんか愛したこともないレズビアンたちもいる。
Twisted love story, True Romance
歪んだラブストーリー、まるで『トゥルー・ロマンス』だな。
※1993年の映画『トゥルー・ロマンス』へのオマージュ。コールガールと恋に落ち逃避行する物語と自身の恋愛を重ねている。
Mary Magdalene from a pole dance
ポールダンスから抜け出してきたマグダラのマリア。
※元ストリッパーであるアンバー・ローズを、娼婦からイエス・キリストの熱心な従者となった聖書に登場する「マグダラのマリア」に例える強烈なメタファーである。
I'm a freak, huh? Rockstar life
俺は変態だろ?これがロックスターの人生さ。
The second girl with us, that's our wife
俺たちと一緒にいる2番目の女、あれは俺たちの妻さ。
※スリーサム(3人での性行為)やポリアモリー的な関係性を匂わせるライン。
Hey, boys and girls, I got a new riddle
なあ、少年少女たち、新しいなぞなぞを出してやるよ。
Who's the new old perv that's tryna play second fiddle?
脇役(セカンド・フィドル)を演じようとしてる、新参の老いぼれ変態野郎は誰だ?
No disrespect, I'm not tryna belittle
ディスるつもりはないし、見下すつもりもないが。
But my dick worth money, I put Monie in the middle
俺のモノには金の価値があるんだ。俺は「モニー」を真ん中に置くぜ。
※女性ラッパーMonie Loveの1990年のヒット曲「Monie in the Middle」と、「Money(金)」を掛けたワードプレイ。
[Chorus: Elly Jackson & Kanye West]
I've been waiting for a long, long time (Where she at? In the middle)
ずっと、ずっと長い間待ってたの。(彼女はどこだ?真ん中だ)
Just to get off and throw my hands up high
ただ解放されて、両手を高く突き上げるために。
And live my life, and live my life
自分の人生を生きるために。
Just to get off and throw my hands up high, high, high, high
ただ解放されて、両手を高く突き上げるために。
[Bridge: Justin Vernon]
Swilling little licks and mixes 'til mornin'
朝まで酒(ミックス)を少しずつ飲み明かして。
※インディー・フォークバンドBon IverのJustin Vernonによるボーカル。
I'm yearnin', ooh, yeah
俺は切望してるんだ、ああ。
Could I maybe have a little dab of your potion?
君のポーション(魔法の薬)を少しだけもらえないか?
Stop motion, ooh, yeah
ストップモーションのように時が止まる、ああ。
[Verse 2: Jay-Z]
Go harder than a nigga for a nigga, go figure
男のために、男以上にハードに立ち回る女。想像してみな。
※パートナーであるビヨンセの献身性と、彼女自身のビジネスウーマンとしての力強さを称賛している。
Told me keep my own money if we ever did split up
「もし別れることがあっても、あなたのお金は自分で持っておいて」って俺に言ったんだぜ。
※ビヨンセ自身が莫大な資産(Independent Woman)を持っているため、JAY-Zの財産目当てではないという事実を示している。
How could somethin' so gangster be so pretty in pictures?
こんなにギャングスタ(タフ)な女が、どうして写真じゃこんなに美しく写るんだ?
Ripped jeans and a blazer and some Louboutin slippers
ダメージジーンズにブレザー、それにルブタンのスリッパ。
Uh, Picasso was alive, he would've made her
ああ、もしピカソが生きてたら、彼女を作品にしてただろうな。
That's right, nigga, Mona Lisa can't fade her
その通りだぜ。モナ・リザだって彼女には敵わない。
※fadeは「色褪せさせる・圧倒する」という意味。世界で最も有名な絵画「モナ・リザ」の美しさでさえ、ビヨンセの前では霞んでしまうという最大限の賛辞。
I mean Marilyn Monroe, she's quite nice
マリリン・モンローだって、そりゃかなり魅力的だが。
But why all the pretty icons always all white?
だけど、どうして「美しいアイコン」ってのはいつも白人ばかりなんだ?
※西洋美術史やポップカルチャーにおける美の基準が常に白人(ユーロセントリック)に偏っていることへの、JAY-Zからの社会的な問題提起である。
Put some colored girls in the MoMA
MoMA(ニューヨーク近代美術館)に、有色人種の女性たちを飾れよ。
Half these broads ain't got nothing on Willona
そこらの女たちの半分も、ウィロナの足元にも及ばねえよ。
※Willonaは70年代の黒人シットコム『Good Times』に登場する美しく自立した黒人女性キャラクター、ウィロナ・ウッズのこと。
Don't make me bring Thelma in it
セルマのことまで持ち出させないでくれ。
※Thelmaも同番組『Good Times』の登場人物で、当時の黒人コミュニティのセックスシンボルであった。
Bring Halle, bring Penélope and Salma in it, uh
ハル・ベリー、ペネロペ・クルス、それにサルマ・ハエックも連れてこい。
※Halle Berry(黒人)、Penélope Cruz(スペイン系)、Salma Hayek(メキシコ系)といった、非白人の美のアイコンたちを列挙している。
Back to my Beyoncés
さて、俺のビヨンセ(愛する妻)の話に戻るか。
You deserve three stacks, word to André
君は「3スタック」の価値がある。Andréに誓ってな。
※three stacksは3000ドル(または大金)を指すスラングであり、同時にヒップホップ・デュオOutkastのAndré 3000(アンドレ・スリー・スタックス)と掛けた見事なワードプレイである。
Call Larry Gagosian, you belong in mo-seums
ラリー・ガゴシアンに電話しろ、君は美術館に飾られるべき存在だ。
※Larry Gagosianは世界的に有名なアートディーラー。MoMAとMuseumsを掛け合わせて「mo-seums」と発音している。
You belong in vintage clothes, crushing the whole building
ヴィンテージの服を着て、ビル全体を圧倒するような君がふさわしい。
You belong with niggas who used to be known for dope dealing
君には、かつて麻薬の密売(ドープ・ディーリング)で名を馳せた男がふさわしい。
※自らの過去(ドラッグディーラー)に触れつつ、そんなストリートの男こそが世界一の女性の隣に立つにふさわしいという絶対的な自信。
You too dope for any of those civilians
君は最高(ドープ)すぎて、そこらの一般市民(パンピー)にはもったいないからな。
Now shoo, children, stop looking at her tits
さあ子供たち、シッシッ(あっち行け)。彼女のオッパイを見るのはやめな。
Get your own dog, ya heard? That's my bitch
自分の犬(女)は自分で探せ、分かったか? あれは俺の女だ。
※Kanyeのヴァース冒頭と呼応するように、他人に自分のパートナーを見られることへの独占欲をむき出しにして曲を締めている。
[Chorus: Elly Jackson]
I've been waiting for a long, long time
ずっと、ずっと長い間待ってたの。
Just to get off and throw my hands up high
ただ解放されて、両手を高く突き上げるために。
And live my life, and live my life
自分の人生を生きるために。
Just to get off and throw my hands up high, high, high, high
ただ解放されて、両手を高く突き上げるために。
