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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Otis - JAY-Z & Kanye West 【和訳・解説】

Artist: JAY-Z & Kanye West (feat. Otis Redding)

Album: Watch the Throne

Song Title: Otis

概要

2011年リリースの歴史的ジョイントアルバム『Watch the Throne』に収録された、ラグジュアリー・ラップの極致とも言える一曲だ。ソウルの巨星Otis Reddingの名曲「Try a Little Tenderness」をKanye Westが大胆かつソウルフルにサンプリング・チョップし、一般的なフック(サビ)を一切配置せず、二人のラップだけでマイクをリレーしていく構成が特徴的である。リリックでは、互いの圧倒的な富、ステータス、そしてシーンにおける絶対的な権力をユーモアを交えて誇示し合っている。数千万円のマイバッハを解体して乗り回すスパイク・ジョーンズ監督のMVも話題を呼び、グラミー賞最優秀ラップ・パフォーマンス賞を受賞するなど、ヒップホップ史に燦然と輝くクラシックとなっている。

和訳

[Intro: Otis Redding & JAY-Z]
It makes it easier, easier to bear
それが楽にしてくれる、耐えやすくしてくれるんだ。

You won't regret it, no, no, no
後悔はさせないさ、絶対に。

Some girls, they don't forget it
忘れられない女の子たちもいる。

Love is their only happiness
愛だけが彼女たちの幸せなんだ。

Squee'— Squee'— Squee'—
抱き— 抱き— 抱き—

(Sounds so soulful, don't you agree?)
(最高にソウルフルだろ、そう思わないか?)

Squeeze her, don't tease her, never leave her
彼女を抱きしめてやれ、からかわずに、決して離すな。
※Otis Reddingの「Try a Little Tenderness」からのサンプリング。原曲の「Squeeze her(彼女を抱きしめる)」というフレーズをKanyeが絶妙なセンスでチョップしている。

[Verse 1: JAY-Z]
Uh, I invented swag
ああ、俺が「スワッグ(イケてるスタイル)」を発明したんだ。
※JAY-Zの絶対的な自信の表れ。2001年の楽曲「All I Need」でいち早く「swag」という言葉をヒップホップに持ち込んだ自身の功績を誇示している。

Poppin' bottles, puttin' supermodels in the cab
シャンパンを開けて、スーパーモデルたちをタクシーに乗せたりな。

Proof
これが証拠だ。

I guess I got my swagger back, truth
どうやら俺の輝き(スワガー)が戻ってきたみたいだな、マジで。
※自身の楽曲「Roc Boys (And The Winner Is)...」のラインや、2001年の名盤『The Blueprint』期の勢いを完全に取り戻したことを示唆している。

New watch alert, Hublots
新しい時計の警告だ、ウブロ(Hublot)のお出ましだぜ。

Or the big-face Rollie, I got two of those
デカい文字盤のロレックスだっていい、俺はあれを2つ持ってる。

Arm out the window, through the city, I maneuver slow
窓から腕を出して、街中をゆっくりと流していく。

Cock back, snapback, see my cut through the holes, Hov
スナップバック(キャップ)を後ろ向きに被って、その穴から俺の髪型が見えるだろ、Hovのな。

[Verse 2: Kanye West]
Damn, Yeezy and Hov, where the hell you been?
くそっ、YeezyとHov、お前らいったいどこにいたんだ?

Niggas talking real reckless, stuntmen
スタントマンみたいに、無謀なこと(ディス)を口走るヤツらがいるな。
※「stunt」には「危険なスタント」と「見栄を張る」のダブルミーニングがある。自分たちに対して身の程知らずな態度をとる同業者たちを揶揄している。

I adopted these niggas, Phillip Drummond them
俺がこいつらを養子にしてやったんだ、フィリップ・ドラモンドみたいにな。
※米国のシットコム『アーノルド坊やは人気者(Diff'rent Strokes)』に登場する、スラム出身の黒人兄弟を養子に迎えた白人の富豪「フィリップ・ドラモンド」の隠喩。シーンの若手たちは俺が育ててやったんだという上から目線のフレックスである。

Now I'm 'bout to make 'em tuck they whole summer in
今からあいつらの夏を終わらせて(チェーンをシャツにしまわせて)やるよ。
※「夏を終わらせる=自分たちがチャートを支配する」という意味と、強盗を恐れて「Tuck in(ジュエリーをシャツの中に隠す)」ことを掛けている。

They say I'm crazy, well, I'm 'bout to go dumb again
みんな俺をイカれてるって言うが、ああ、またバカ騒ぎ(go dumb)してやるぜ。

They ain't seen me 'cause I pulled up in my other Benz
あいつら俺に気付かなかったみたいだ、俺が「別の」ベンツで乗り付けたからな。

Last week, I was in my other, other Benz
先週は「さらに別の」ベンツに乗ってたしな。
※Kanyeの高級車コレクションの多さをシンプルかつ強烈に自慢する名パンチライン。

Throw your diamonds up 'cause we in this bitch another 'gain
お前らのダイヤ(ハンドサイン)を掲げな、俺たちがまたこの場所に戻ってきたんだからな。
※JAY-Zのレーベル「Roc-A-Fella Records」の象徴である、両手で作るダイヤモンドのハンドサインのこと。

[Verse 3: JAY-Z]
Photoshoot fresh, looking like wealth
雑誌の撮影帰りみたいにフレッシュで、歩く「富」みたいなルックスだぜ。

I'm 'bout to call the paparazzi on myself
自分で自分のためにパパラッチを呼んでやろうか。

Uh, live from the Mercer
ああ、マーサー・ホテルから生放送だ。
※The MercerはNYソーホー地区にある高級ホテル。JAY-ZとKanyeが本作『Watch the Throne』のレコーディングを行うためにフロアを丸ごと貸し切った場所である。

Run up on Yeezy the wrong way, I might murk ya
Yeezyに舐めた態度で近づいてみろ、俺がお前を殺(murk)っちまうかもな。

Flee in the G450, I might surface
ガルフストリームG450(プライベートジェット)で高飛びして、どこかに現れる。

Political refugee, asylum can be purchased
政治難民さ、亡命権だって金で買えるんだぜ。

Uh, everything's for sale
ああ、世の中のすべては売り物だ。

I got five passports, I'm never going to jail
俺はパスポートを5つ持ってる、絶対にムショになんか行かねえよ。

[Verse 4: Kanye West]
I made "Jesus Walks," I'm never going to hell
俺は「Jesus Walks」を作った男だぜ、地獄に落ちるわけがねえ。
※自身の2004年の大ヒット曲「Jesus Walks」(神への信仰をストリート目線で歌った曲)を引き合いに出し、神の加護がある自分は無敵だと豪語している。

Couture-level flow is never going on sale
オートクチュール・レベルの俺のフロウは、絶対にセール(安売り)なんてされない。

Luxury rap, the Hermès of verses
ラグジュアリー・ラップ、これがヴァース界の「エルメス」さ。

Sophisticated ignorance, write my curses in cursive
洗練された無知。筆記体(カーシブ)で放送禁止用語(カース)を書き殴ってやるよ。
※「洗練された無知(Sophisticated ignorance)」は、ストリート上がりの粗野なマインドとハイエンドな富・教養が混在する彼らの現状を端的に表した名フレーズ。cursesとcursiveの言葉遊びも秀逸である。

I get it custom, you a customer
俺は特注(カスタム)で作らせるが、お前はただの客(カスタマー)だ。

You ain't accustomed to going through customs, you ain't been nowhere, hah?
お前は税関(カスタム)を通り抜けるのにも慣れてない(accustomed)。どこにも行ったことねえんだろ、ハッ?
※custom、customer、accustomed、customsと同音異義語・派生語を連続で畳み掛ける極めて高度なライミング。

And all the ladies in the house got 'em showing off
会場にいる女たちはみんな着飾って見せびらかしてる。

I'm done, I'll hit you up maña— nah
俺のバースはここまでだ、また明日(マニャーナ)連絡す…いや、やめとくわ。
※スペイン語の「mañana(明日)」を言いかけて途中で切り上げるという、余裕たっぷりのオフビートなユーモア。

[Verse 5: JAY-Z]
Welcome to Havana
ハバナへようこそ。

Smoking Cubanos with Castro in cabanas
カバナ(リゾートの小屋)でカストロと一緒にキューバ産葉巻をふかす。

Viva México, Cubano
ビバ・メヒコ、クバーノ。

Dominicano, all the plugs that I know
ドミニカーノ、俺の知ってるすべてのコネクション(密輸業者)たち。
※plugは麻薬や違法品の供給源(ディーラー)を指すストリート・スラング。キューバやメキシコなどの中南米の麻薬カルテルとの繋がりをマフィア映画のように誇張してラップしている。

Driving Benzes with no benefits
保険(ベネフィット)もなしにベンツを乗り回してた。

Not bad, huh, for some immigrants?
移民(マイノリティ)にしちゃ、悪くないだろ?

Build your fences, we diggin' tunnels
壁(フェンス)を作ればいいさ、俺たちは地下トンネルを掘るから。

Can't you see we gettin' money up under you?
お前らの足元で、俺たちが金を稼ぎまくってるのが見えねえか?
※白人社会や権力者がどれだけマイノリティをシステムから排除しようと壁を作っても、アンダーグラウンド(ストリート)のやり方で巨万の富を築いてみせるという痛烈な社会的メッセージ。

[Verse 6: Kanye West, Jay-Z & Both]
Can't you see the private jets flying over you?
お前らの頭上を飛んでくプライベートジェットが見えねえか?

Maybach bumper sticker read, "What would Hova do?"
マイバッハのバンパーステッカーにはこう書いてある、「Hova(ジェイ・Z)ならどうする?」ってな。
※キリスト教徒の有名なスローガン「WWJD(What Would Jesus Do? = キリストならどうする?)」のJesusを、JAY-Zの別称であるHovaに置き換えている。

Jay is chillin' (Uh), Ye is chillin' (Uh)
Jayはくつろいでる、Yeもくつろいでる。
※ヒップホップ・クラシックであるEric B. & Rakimの「Microphone Fiend」のフレーズへのオマージュ。

What more can I say? We killin' 'em
これ以上言うことあるか?俺たちの圧勝(キル)だぜ。
※JAY-Z自身の楽曲「What More Can I Say」からのセルフサンプリング・引用。

Hold up before we end this campaign
待てよ、このキャンペーン(プロモーション)を終わらせる前に。

As you can see, we done bodied the damn lames
見ての通り、俺たちはダサい連中を完全にブチのめした(ボディした)わけだ。

Lord, please let them accept the things they can't change
神よ、どうかあいつらに「自分たちには変えられない現実」を受け入れさせてやってくれ。
※キリスト教の有名な「ニーバーの祈り(Serenity Prayer)」の一節をもじっている。自分たち(Jay & Kanye)が頂点にいるという「変えられない事実」をアンチに突きつけている。

And pray that all of they pain be champagne
そして、あいつらの抱えるすべての痛み(pain)が、シャンパン(champagne)に変わるよう祈っててやるよ。
※painとchampagneで見事に踏んだアイコニックなライン。敵対する者への皮肉でありながら、最高級のラグジュアリーさで締めくくる美学が光る。

[Outro]
Scream it
叫べ。

Give it
寄越せ。

Scream it
叫ぶんだ。

 

Otis (feat. Otis Redding)

Otis (feat. Otis Redding)

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