Artist: Tyler, The Creator
Album: IGOR
Song Title: NEW MAGIC WAND
概要
本作は、タイラー・ザ・クリエイターの最高傑作『IGOR』の中でも最も凶暴でダークなエネルギーを放つ楽曲である。愛する男性が、元カノ(あるいは現在のガールフレンド)との関係を断ち切れずにいる状況に対し、主人公「IGOR」の嫉妬と独占欲が頂点に達した瞬間を描いている。タイトルである「NEW MAGIC WAND(新しい魔法の杖)」とは、邪魔な女性を文字通り「消し去る」ための凶器(銃など)の暗喩だ。写真の現像プロセスに掛けた巧みなワードプレイや、狂気じみた執着心をノイジーで破壊的なビートに乗せて叫ぶ、アルバムのストーリーにおけるターニングポイントとなるスリリングな一曲だ。タイラー自身もライブで最も熱狂するお気に入りの曲だと公言している。
和訳
[Intro: Jerrod Carmichael]
Sometimes you gotta close a door to open a window
時として、窓を開けるためにはドアを閉めなきゃならねえ。
※「何か新しいものを手に入れるには、古いものを断ち切らなければならない」という格言的なフレーズ。アルバムのナレーターであるジェロッド・カーマイケルが、相手の男性に対して女性との決別を促している。
[Verse 1: Tyler, The Creator]
I saw a photo, you looked joyous
写真を見たぜ。お前ら、ずいぶん楽しそうじゃねえか。
My eyes are green, I eat my veggies
俺の目は緑色だ。野菜だってちゃんと食ってるぜ。
※green eyes=英語の慣用句で「激しい嫉妬(green-eyed monster)」を意味する。それに「緑色の野菜を食べる」という言葉を繋げ、自身の抑えきれない嫉妬心をシニカルに表現している。
I need to get her out the picture
あの女をこの絵(関係)から追い出さねえとな。
She's really fuckin' up my frame
あいつが俺のフレーム(視界・計画)をぶち壊してやがるんだ。
She's not developed like we are
あの女は、俺たちみたいに「現像(成熟)」されてねえだろ。
※picture(写真)、frame(額縁・フレーム)、developed(現像する/関係が成熟する)という写真用語を用いたダブルミーニングの連続。
[Refrain: Tyler, The Creator]
Like magic, like magic, like magic, gone
魔法みたいに、手品みたいに、消え失せろ。
New magic, new magic, new magic wand (Ayy)
新しい魔法、新しい魔法、新しい魔法の杖だ(エイ)。
※magic wand(魔法の杖)=邪魔な恋敵を消し去るための凶器(銃など)のメタファーである。
Like magic, like magic, like magic, gone (Gone, nigga)
魔法みたいに、手品みたいに、消え失せろ(消えな、クソが)。
New magic (Woo), new magic, new magic wand
新しい魔法(ウー)、新しい魔法、新しい魔法の杖。
[Verse 2: Tyler, The Creator]
My buddy said I'm on the spectrum
ダチには「お前はスペクトラム(自閉症・アスペルガー)だな」って言われたよ。
※on the spectrum=自閉症スペクトラムの略。自分が相手に対して病的で異常なまでの執着を見せていることを自嘲気味に語っている。
Don't call me selfish, I hate sharin'
俺を自分勝手だなんて呼ぶな、シェアするのは大嫌いなんだ。
This 60-40 isn't workin'
この「60対40」の関係じゃ上手くいかねえんだよ。
※相手の愛情の比率(自分に60%、女性に40%など)を示している。完全に100%自分を向いていないことへの苛立ち。
I want a hundred of your time, you're mine
お前の時間の100パーセントが欲しい、お前は俺のモンだ。
[Chorus: Tyler, The Creator & Santigold & Jessy Wilson]
Please don't leave me now
頼むから俺を置いていかないでくれ。
Please don't leave me now (Don't leave)
今、俺を置いていかないでくれ(行かないで)。
Please don't leave me now
頼むから俺を置いていかないでくれ。
Please don't leave me now (Don't leave)
今、俺を置いていかないでくれ(行かないで)。
Please don't leave me now (Don't leave)
頼むから俺を置いていかないでくれ(行かないで)。
(Like magic, like magic, like magic, gone)
(魔法みたいに、手品みたいに、消え失せろ)
Please don't leave me now (I can make her leave)
今、俺を置いていかないでくれ(俺ならあの女を消し去れるぜ)。
(New magic, new magic, new magic wand)
(新しい魔法、新しい魔法、新しい魔法の杖)
Please don't leave me now (Don't leave)
頼むから俺を置いていかないでくれ(行かないで)。
(Like magic, like magic, like magic, gone)
(魔法みたいに、手品みたいに、消え失せろ)
Please don't leave me now
今、俺を置いていかないでくれ。
(New magic, new magic, new magic wand)
(新しい魔法、新しい魔法、新しい魔法の杖)
[Verse 3: Tyler, The Creator & Santigold & Jessy Wilson]
I wanna be found, passenger in your car (Don't leave)
見つけてほしいんだ、お前の車の助手席でな(行かないで)。
You wanna give me mixed signals, don't park (I can make her leave)
お前は俺に思わせぶりな態度をとりたいんだな、駐車するんじゃねえ(俺ならあの女を消し去れる)。
She's gonna be dead, I just got a magic wand (Don't leave)
あの女は死ぬことになる。俺は魔法の杖を手に入れたばかりなんだ(行かないで)。
※ついに殺意を明確にし、「魔法の杖」が相手の女性を殺害するための道具であることをストレートに宣言している。
We can finally be together
これでようやく、俺たち一緒になれるな。
[Bridge: Tyler, The Creator]
You roll the dice, hit a seven, sure you right
ダイスを振って、7を出す。お前は確かに正しいぜ。
※hit a seven=クラップス(サイコロゲーム)において「7」は勝ち負けを左右する重要な数字。運命を賭けたギャンブルの隠喩。
Beginner's luck? You not my first, who gives a fuck?
ビギナーズラックだって? お前が初めてじゃねえよ、知ったことか。
Your other one? Evaporate, we celebrate
お前のもう一人の相手(あの女)? 蒸発させちまおうぜ、そして祝うんだ。
You under oath, now pick a side and if you don't
お前は宣誓してるんだ。さあ、どっちか選べ。もし選ばないなら、
(Run, run, run, run)
(逃げろ、逃げろ、逃げろ、逃げろ)
I'll pick you both
俺がお前ら両方とも(始末するのを)選んでやる。
(Run, run, run, run)
(逃げろ、逃げろ、逃げろ、逃げろ)
It's not a joke, murder she wrote
冗談じゃねえぞ、『ジェシカおばさんの事件簿(殺人事件)』の始まりだ。
※murder she wrote=有名なアメリカの推理ドラマ『Murder, She Wrote(邦題:ジェシカおばさんの事件簿)』のタイトルからの引用。実際に殺人が起きることを暗示している。
[Verse 4: Tyler, The Creator]
Ayo, take one look in the mirror, implications so clear
エイヨォ、一度鏡を見てみろよ。意味してることは超クリアだろ。
I live life with no fear, except for the idea
俺は恐れるものなんて何一つなく生きてる。ただ一つの考えを除いてな。
That one day you won't be here
「いつかお前がここにいなくなる」ってことだけは怖いんだ。
I will not fetch the ball
俺はボールを取ってくる犬にはならねえ。
※fetch the ball=飼い主の言うなりになる従順な犬の暗喩。これ以上弄ばれる都合のいい存在でいるのはごめんだという拒絶。
Eyes are green, I eat my vegetables
俺の目は緑色(嫉妬)だ。野菜だって食ってるぜ。
It has nothin' to do with that broad
あの女(アマ)なんて全く関係ねえ。
※broad=女性を軽蔑的に呼ぶ古いスラング。
But if it did, guarantee she'd be gone, well
だが、もし関係あるってんなら、絶対にあいつを消してやるよ、まあね。
I got a plan, but the walkin' depends
俺には計画がある。だが実行に移すか(歩き出すか)は状況次第だ。
If you can't understand, I'm a hawk in the gym
もしお前が理解できねえなら、俺はジムにいるホーク(鷹)になるだけだ。
※hawk in the gym=スケートボーダーのトニー・ホーク(Tony Hawk)と掛けた言葉遊び。または、獲物を狙う鷹のように攻撃態勢に入っていることを示す。
Eyes on the prize, got weight on my chest
賞品(お前)から目は離さない。胸には重いウェイト(プレッシャー)が乗っかってる。
That I need to get off, I ain't talkin' to them
それをどかさねえとな。あいつらと話すつもりはねえよ。
Can't be in the picture if it got no frame
フレームがねえなら、写真に収まることはできねえだろ。
And let the world know 'cause I ain't got no shame
世界中に知らせてやるよ、俺には恥じらいなんてねえからな。
※セクシュアリティ(男性への愛)を公表することに対する恐れが全くないことの宣言。
Blow the whole spot up, 'cause I ain't—
この場所ごと全部吹き飛ばしてやる。だって俺は—
I wanna share last names, I wanna be your number one
お前と苗字を共有したいんだ。お前の一番になりたいんだよ。
※share last names=結婚することのストレートなメタファー。
Not the other one, keep it on the low
「もう一人のやつ(浮気相手)」じゃなくてな。秘密にしておこうぜ。
I'm in my right mind, keep it on a high
俺の頭はまともだぜ。ハイな気分を保とうぜ。
Janis Joplin spillin' feelings, now I'm out here moppin' 'em
ジャニス・ジョプリンみたいに感情をぶち撒けてる。俺は今、それをモップで拭き取ってるとこさ。
※Janis Joplin=激しく感情的な歌唱スタイルで知られる伝説のロックシンガー。溢れ出る狂気的な感情を持て余している様子を描写している。
Four on the floor, pack up your bags, we hit the store
アクセル全開だ。荷物をまとめろ、店(銃砲店)に向かうぜ。
※Four on the floor=車のマニュアルトランスミッション(4速)のことで、「フルスピードで進む」という意味。音楽用語の「4つ打ち」とのダブルミーニングでもある。
Grab our supplies, no need for masks, bust through the door
必要な物資(弾薬など)を掴め。マスクは要らねえ、ドアをぶち破れ。
Get the job done like retirement, I admit you look concerned
定年退職みたいに「仕事」を終わらせるんだ。お前がビビってるのは認めるよ。
※retirement=引退=殺人を完遂して役割を終えること。
New magic wand
新しい魔法の杖でな。
