Artist: Bad Bunny
Album: X 100PRE
Song Title: Ser Bichote
概要
バッド・バニーのデビューアルバム『X 100PRE』(2018年)に収録された、トラップの重厚なビートに乗せてプエルトリコのストリートの現実と社会問題を浮き彫りにした重要曲だ。「Bichote(ビチョテ)」とは麻薬組織のボスや大物を指すスラングであり、貧困層の子供たちにとって彼らが「成功の象徴」として憧れの対象になってしまうという歪んだ現実を描いている。
しかし、バッド・バニーは犯罪に手を染めることなく、音楽という独自の手段でその「ビチョテ(大物)」の地位と富を手に入れたと宣言する。終盤の「学校が閉鎖される一方で、麻薬の売買所が増えていく」というラインは、経済危機や度重なるハリケーン被害、そして政府の緊縮財政によって教育の機会を奪われているプエルトリコの若者たちの悲痛な叫びを代弁した強烈なパンチラインである。単なるフレックス(自慢)ソングではなく、ゲットーのリアルと社会への鋭い批判が込められた一曲である。
和訳
[Intro]
Eh, eh, eh, eh, eh
エ、エ、エ、エ、エ
[Estribillo]
Yo siempre quise ser bichote (Prr)
俺はずっとビチョテ(ボス)になりたかったんだ(プルル)
※bichote=英語の「big shot(大物)」がプエルトリコでなまったスラング。カセリオ(公営団地)やストリートを牛耳る麻薬密売組織のボスを指す。貧困層の子供たちにとって、富と権力を持つ彼らがダークヒーローのように映ってしまう現実を示している。
Yo siempre quise ser bichote (¡Yeh!)
俺はずっとビチョテ(ボス)になりたかったんだ(イェー!)
Yo siempre quise ser bichote (¡Wouh!)
俺はずっとビチョテ(ボス)になりたかったんだ(ウォウ!)
Y ahora somos bichotes, eh
そして今、俺たちはビチョテ(大物)になったのさ、エ
Yo siempre quise ser bichote (Ey)
俺はずっとビチョテ(ボス)になりたかったんだ(エイ)
Yo siempre quise ser bichote (Ey)
俺はずっとビチョテ(ボス)になりたかったんだ(エイ)
Yo siempre quise ser bichote (Yeh)
俺はずっとビチョテ(ボス)になりたかったんだ(イェー)
Y ahora somos bichotes
そして今、俺たちはビチョテ(大物)になったのさ
[Verso 1]
Mami quería que yo fuera un ingeniero
母さんは俺にエンジニアになってほしがってた
Papi quería un pelotero
父さんは野球選手になってほしがってた
※pelotero=野球選手。プエルトリコにおいて、メジャーリーガーになることは貧困から抜け出すための最も伝統的で真っ当な夢の一つである。
Mi maestra de segundo me dijo que fuera bombero
小学2年の時の先生は、消防士になれって言ってたな
Nah, yo vo'a hacer lo que yo quiero
いや、俺は自分のやりたいようにやるぜ
Siempre quise to'as las tenis y to'as las gorras (¡Wouh!)
スニーカーもキャップも、全部手に入れたかったんだ(ウォウ!)
El Pitbull, la BM, la cotorra
ピットブル、BM(BMW)、オウム(ペット)もな
※ストリートのボスたちが権力の象徴として所有する典型的なアイテム(高級車や闘犬、エキゾチックなペット)を並べ、当時の憧れを描写している。
El Polaris, dejar que el nene lo corra
ポラリス(バギー)を買って、ガキに運転させてやるとかな
Un tatuaje no se borra
タトゥーは消えねぇんだよ
Siempre me gustó la bregadera (Prrr)
昔からハッスルする(クスリを捌く)のが好きだった(プルル)
※bregadera=プエルトリコのスラング「bregar(働く、対処する)」から派生し、ストリートでの違法なシノギや厄介事に関わることを意味する。
Siempre me gustó la jodedera, ey
ストリートでつるんで遊ぶのが好きだったんだ、エイ
※jodedera=バカ騒ぎすること、仲間とつるんでストリートで時間を潰すこと。
Pero entendí que esa no era (Wouh, wouh, wouh)
でも、それが正解じゃないって気づいたんだ(ウォウ、ウォウ、ウォウ)
※ストリートの犯罪(麻薬密売など)に手を染めることが、真の成功への道ではないと悟ったターニングポイントを歌っている。
Y ahora somo' millo' y sin disquera
今じゃメジャーレーベルなしでミリオネア(大富豪)だぜ
※sin disquera=「レコード会社(メジャーレーベル)なしで」。バッド・バニーがインディペンデントレーベル(Rimas Entertainment)のまま世界的な成功を収めた事実を誇示している。
Ferrari, Lambo' o Panamera
フェラーリ、ランボルギーニ、パナメーラ
Si quiero compro el que yo quiera, ey (¡Wouh!)
欲しけりゃどれでも好きなのを買えるぜ、エイ(ウォウ!)
Haciendo chavo' a mi manera
俺のやり方で金を稼いでるんだ
※chavo' (chavos)=プエルトリコのスラングで「お金」のこと。
Mi respeto a todos en la nevera, yeah
ムショにいる全員にリスペクトを送るぜ、イェー
※nevera=直訳は「冷蔵庫」だが、プエルトリコでは「刑務所」を意味するスラング。独房の冷房が極端に効いていて凍えるほど寒いことに由来する。
[Estribillo]
Yo siempre quise ser bichote
俺はずっとビチョテ(ボス)になりたかったんだ
Yo siempre quise ser bichote
俺はずっとビチョテ(ボス)になりたかったんだ
Yo siempre quise ser bichote, yeh-eh, yeh (Prr)
俺はずっとビチョテ(ボス)になりたかったんだ、イェー、イェー(プルル)
Yo siempre quise ser bichote (Ey)
俺はずっとビチョテ(ボス)になりたかったんだ(エイ)
Yo siempre quise ser bichote (Prr)
俺はずっとビチョテ(ボス)になりたかったんだ(プルル)
Yo siempre quise ser bichote (¡Wouh!)
俺はずっとビチョテ(ボス)になりたかったんだ(ウォウ!)
Y ahora somos bichotes
そして今、俺たちはビチョテ(大物)になったのさ
[Puente]
¿Cómo que qué me pasa a mí, papi?
俺がどうしたって? パピ
Que yo mando aquí en el caserío
このカセリオ(団地)は俺が仕切ってんだよ
※caserío=プエルトリコの低所得者向け公営住宅(プロジェクト)。ギャングや麻薬密売の温床となりやすい場所。このセクションは、ストリートでの権力闘争をリアルに再現した音声クリップである。
Y yo digo que te tienes que ir pa'l carajo
だからお前はとっとと失せろって言ってんだ
¡Tírala!
撃て!/やっちまえ!
[Verso 2]
Aquí to' el mundo es calle (Eh)
ここでは誰もがストリート出身だ(エ)
Por dentro siempre voy a ser caco (Ja)
俺は心の底からいつだってカコ(ストリートのガキ)さ(ハッ)
※caco=プエルトリコでレゲトンを愛聴し、ストリートファッションを身にまとうゲットーの若者を指すスラング。かつては不良を意味する蔑称だったが、現在ではアーバンカルチャーのアイデンティティとして使われる。
Donde quiera soy un naco (Ey, ey, ey)
どこへ行こうと俺はナコ(ゲットー育ち)だぜ(エイ、エイ、エイ)
※naco=中南米で「悪趣味」「教養がない」といった軽蔑的な意味を持つが、ここでは「洗練されていなくても自分らしくいる」というストリートの誇りを表している。
De chamaquito yo capeaba como Polaco
ガキの頃はポラコみたいにクスリを手に入れてた
※capear=「(ドラッグを)買う、手に入れる」というスラング。Polaco=プエルトリコの伝説的ラップデュオ「Lito y Polaco」のメンバー。彼らのハードコアなストリートラップを引き合いに出している。
Por eso tengo un flow bellaco (Wuh, wuh, wuh)
だから俺のフロウはこんなにベジャコ(ヤバくてエロい)なのさ(ウー、ウー、ウー)
※bellaco=「好色な」「激しく興奮した」という意味のカリブ海スラングだが、ここでは「荒々しくてイケてる」ニュアンス。
To' los que me critican, que se mueran juntos
俺を批判する奴らは、まとめてくたばりな
Chorro 'e hijo 'e putas, resuelvan sus asuntos
クソ野郎ども、自分の問題でも片付けてろ
Se cierran escuelas mientras se abren puntos
学校が閉鎖される一方で、プント(麻薬の売人街)が新しく開いていく
※puntos (punto de drogas)=麻薬の密売所。プエルトリコ政府の財政破綻により多くの公立学校が閉鎖された一方で、ドラッグビジネスだけが貧困層の受け皿として拡大し続けるという、楽曲内で最も重く鋭い社会批判のラインである。
Entonces, ¿qué hago? Dime, te pregunto, eh
じゃあ、俺はどうすりゃいいんだ? なあ、教えてくれよ、エ
[Estribillo]
Y siempre quise ser bichote
俺はずっとビチョテ(ボス)になりたかったんだ
Yo siempre quise ser bichote (Brr)
俺はずっとビチョテ(ボス)になりたかったんだ(ブルル)
Yo siempre quise ser bichote (¡Wouh!)
俺はずっとビチョテ(ボス)になりたかったんだ(ウォウ!)
Y ahora somos bichotes
そして今、俺たちはビチョテ(大物)になったのさ
[Outro]
Yeh, yeh, yeh, yeh
イェー、イェー、イェー、イェー
Bad Bunny, baby, -be-be-be
バッド・バニー、ベイビー、ベ・ベ・ベ
Yeh
イェー
EZ, EZ, EZ on the, on the beat, ah
EZ、EZ、EZがビートに乗せて、アー
※EZ=この楽曲をプロデュースしたプエルトリコのプロデューサー、EZ El Ezeta(エセタ)のプロデューサータグ。
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