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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Outside the Wall - Pink Floyd 【和訳・解説】

Artist: Pink Floyd

Album: The Wall

Song Title: Outside the Wall

概要

1979年発表の歴史的ロック・オペラ『ザ・ウォール(The Wall)』の壮大な物語を締めくくる、穏やかで余韻に満ちたエピローグである。前曲「The Trial」で自らの精神の「壁」を打ち壊された主人公ピンクが、剥き出しの現実(壁の外側)で目にする光景が描かれる。クラリネットの牧歌的な響きと児童合唱団のコーラスに乗せて、ロジャー・ウォーターズが「他者との繋がり」と「愛の困難さ」を静かに独白する。しかし、楽曲の最後に唐突に挿入される「Isn't this where...(ここが俺たちの…)」という囁きが、アルバム冒頭の「...we came in?(…入ってきた場所だったか?)」と接続されることで、壁の構築と崩壊は決して終わることのない人生の無限ループであるという、冷徹かつ哲学的な円環構造を完成させている。

和訳

[Verse: Roger Waters]
All alone or in twos
たった一人で、あるいは二人連れ立って。

The ones who really love you
あなたのことを心から愛している者たちが。

Walk up and down outside the wall
その壁の外側を、行ったり来たりして歩き回っている。
※壁を築き、孤独の奥底へ引きこもってしまった主人公の周囲にも、実は彼を心配し、愛をもって寄り添おうとしていた人々が常に存在していたという事実の提示。疎外感は彼自身の被害妄想が生み出したものでもあったのだ。

Some hand-in-hand
ある者は手を取り合い。

And some gathered together in bands
またある者は、群れをなして集まりながら。
※「bands」は単なる集団(群れ)という意味だけでなく、連帯する人々、あるいは音楽を奏でる「バンド(ピンク・フロイド自身)」というダブルミーニングを含んでいる。

The bleeding hearts and the artists make their stand
過剰なまでに心を痛める者たちや、芸術家たちが、そこに立ち尽くしているのだ。
※「The Trial」において、抑圧的な教師が忌み嫌っていた「the bleeding hearts and artists(同情的な偽善者や芸術家気取り)」という言葉の反復。権威主義的な社会から見れば軟弱で厄介な存在だが、彼らこそが他者の痛みに共感し、壁を壊して救い出そうとする愛の体現者であることが示されている。

And when they've given you their all
そして彼らが、あなたのためにそのすべてを捧げ尽くした時。

Some stagger and fall, after all it's not easy
よろめき、倒れ込む者もいる。何しろ、それは決して容易なことではないのだから。
※他者の強固な心の壁を壊し、対話を取り戻そうとすることは、愛する側にとっても自己をすり減らす過酷な試練である。狂気の世界へ沈んでいったシド・バレットを結局救うことができなかった、ウォーターズ自身の挫折感や罪悪感が色濃く投影されている。

Banging your heart against some mad bugger's wall
どこかの狂った野郎の壁に、自分の心を打ち付け続けるなんてことは。
※「mad bugger(狂った野郎)」とは、壁を築いたピンク自身(あるいはシド・バレット)を指す。どれだけ愛情を注いでも拒絶され、冷たいレンガに心を打ち付けるような徒労感と悲哀が表現されている。

[Outro: Richard Wright]
Isn't this where...
ここが俺たちの……。
※アルバムの最後に途切れるように呟かれるこの言葉は、ディスク1の1曲目「In The Flesh?」の冒頭の呟き「...we came in?(……入ってきた場所だったか?)」と接続し、「Isn't this where we came in?(ここが俺たちの入ってきた場所だったか?)」という完全な一文となる。壁が崩壊しても、人はまた新たなトラウマによって壁を築き始める。歴史の過ちや人間の本質的な孤独は繰り返されるという、プログレッシブ・ロック史において最も見事で、かつ残酷なループ構造の完成である。

 

Outside the Wall

Outside the Wall

  • ピンク・フロイド
  • ロック
  • ¥255
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