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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Is There Anybody Out There? - Pink Floyd 【和訳・解説】

Artist: Pink Floyd

Album: The Wall

Song Title: Is There Anybody Out There?

概要

1979年のロック・オペラ『ザ・ウォール(The Wall)』の第2部に収録された、絶対的な孤独と狂気の静寂を描いた重要楽曲である。前曲「Hey You」で壁の向こう側へ助けを求めた主人公「ピンク」であったが、当然ながらその声が届くことはなく、彼は自分が構築した精神の牢獄の中で完全な孤立に直面する。前半の荒涼としたシンセサイザーのドローン音とテレビの無機質な音声サンプリングが、ホテルの部屋に引きこもる主人公の狂気を不気味に浮かび上がらせる。後半で展開されるクラシック・ギターによる美しくも冷え切ったアルペジオは、喪失感と孤独の極致を見事に音響化しており、プログレッシブ・ロック史における最も悲哀に満ちたインストゥルメンタル・パートの一つとして高く評価されている。

和訳

[Intro]
”Well, only got an hour of daylight left, better get started.
「そうだな、日が出ている時間もあと1時間しかない。そろそろ出発した方がいいだろう」

Isn't it unsafe to travel at night?
「夜間に移動するのは危険ではないのか?」

It'll be a lot less safe to stay here. Your father's gonna pick up our trail before long.
「ここに留まる方がよっぽど危険さ。君の父親がすぐに我々の足跡を追ってくるだろうからね」

Can Lorca ride?
「ロルカは馬に乗れるのか?」

He'll have to ride. Lorca, time to go!
「乗るしかない。ロルカ、出発の時間だ!

Chengra, thank you for everything. Let's go.
チェングラ、色々ありがとう。さあ、行くぞ。

Goodbye, Chengra, Goodbye, Missy! I'll be back one day”
さようならチェングラ。さようなら、お嬢さん! いつか必ず戻ってくるよ」
※アメリカのTVドラマ(西部劇『ガンスモーク』のエピソード「Fandango」)からの音声サンプリングである。テレビをつけっぱなしにしたままホテルの部屋に引きこもり、外界との接触を完全に絶ってしまったピンクの状況を描写している。他者との生きたコミュニケーションを失い、メディアのノイズでしか心の空白を埋められない現代人の疎外感の暗喩でもある。

[Refrain]
Is there anybody out there?
外には、誰かいるのか?

Is there anybody out there?
この壁の外には、誰かいるのか?

Is there anybody out there?
外には、誰かいるのだろうか?

Ah, is there anybody out there?
ああ、外の世界には、誰かいるのか?
※壁の内側に閉じこもった主人公が、自身の狂気と絶対的な孤独に直面し、外界に向かって放つ悲痛な呼びかけ。シンセサイザーの冷たいドローン音と、カモメの鳴き声を模した不気味なギターノイズ(ペダルを逆接続して出されたエフェクト)に乗せて反復されるこの問いかけは、エコーのように虚空へ消えていく。当然ながら返事はなく、他者との断絶が修復不可能であることを残酷に突きつけている。

[Acoustic Guitar Solo]
※後半を占める、クラシック・ギターによる静謐で美しいアルペジオの独奏。壁の中で一人孤独に直面し、虚無感に囚われたピンクの心象風景である。荒涼とした精神状態の中で微かに残る人間としての悲哀や喪失感が、冷え切った弦の響きを通して極限まで純化されている。

 

Is There Anybody Out There? (Remastered)

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