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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Another Brick In The Wall, Pt. 3 - Pink Floyd 【和訳・解説】

Artist: Pink Floyd

Album: The Wall

Song Title: Another Brick In The Wall (part III)

概要

1979年の歴史的ロック・オペラ『ザ・ウォール(The Wall)』の前半戦を締めくくる、主人公ピンクの「壁の完成」を宣言する決定的な楽曲である。妻の不倫を知り、狂気の発作を起こしたピンクは、もはや他者の愛情も、精神を安定させるためのドラッグすらも不要だと叫び、外界とのあらゆる繋がりを完全に断ち切る決意を固める。冒頭のテレビを破壊する暴力的なサウンドエフェクトと、ロジャー・ウォーターズの冷酷で突き放すようなボーカルが、修復不可能な精神の崩壊と絶対的な孤独を見事に音響化している。これまでの人生におけるすべての悲劇や出会いが、結局は壁を塞ぐための「レンガ」に過ぎなかったという絶望の帰結だ。

和訳

[Intro]
televisions being smashed
(テレビが粉々に破壊される音)
※前曲「Don't Leave Me Now」の終盤から続く、ピンクによるホテルの部屋の破壊行為の帰結。メディアや外界からの情報の完全な遮断を意味している。

“Thought you’d like to know-“
「あなたも知りたいかと思って…」
※破壊される直前のテレビから漏れ聞こえる無機質な声。この後、外界からの音声は完全に途絶える。

[Verse]
I don't need no arms around me
俺を抱きしめる腕なんて、もう必要ない。
※妻の裏切りを経て、他者からの愛情や慰めを完全に拒絶する宣言。「don't need no」という二重否定が、その強い拒絶反応を強調している。

And I don't need no drugs to calm me
気を静めるためのドラッグだって、必要ないさ。
※後に「Comfortably Numb」で完全に薬物依存に陥ることを考えると、この強がりは極めて皮肉であり、彼がすでに正常な判断力を失っている(強迫観念に囚われている)ことを示している。

I have seen the writing on the wall
壁に書かれた文字(不吉な予言)は、もうとっくに見てしまったんだ。
※「the writing on the wall」は旧約聖書(ダニエル書)に由来する「災いの前兆」を意味する慣用句。しかしここでは同時に、文字通り自分が構築してきた「精神の壁」そのものを直視したというダブルミーニングとなっている。

Don't think I need anything at all
俺にはもう、何ひとつとして必要なものなんてない。

No, don't think I'll need anything at all
ああ、何ひとつとして必要だとは思わないね。
※完全なる虚無主義への到達。外界への期待をすべて捨てることで、傷つくことから自己を防衛しようとする哀れな自己完結である。

[Chorus]
All in all, it was all just bricks in the wall
結局のところ、すべては壁の中に埋め込まれたレンガに過ぎなかったんだ。
※父親の死(Part 1)、抑圧的な教育(Part 2)、過保護な母、妻の裏切り。彼の人生におけるすべての出来事が、彼を孤立させるための防壁の材料(レンガ)として機能してしまったという絶望的な総括。

All in all, you were all just bricks in the wall
結局のところ、お前たちも全員、壁を塞ぐためのただのレンガだったのさ。
※「you(お前たち)」は、彼を傷つけたすべての人間、あるいは彼を消費する大衆を指す。この呪詛の言葉と共に主人公ピンクは壁の最後の一隙間を塞ぎ、外界との接触を完全に断ち切ることになる。

 

Another Brick in the Wall, Pt. 3

Another Brick in the Wall, Pt. 3

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