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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Empty Spaces - Pink Floyd 【和訳・解説】

Artist: Pink Floyd

Album: The Wall

Song Title: Empty Spaces

概要

1979年発表のロック・オペラ『ザ・ウォール(The Wall)』に収録された、主人公「ピンク」が自己の精神的な壁をいよいよ完成へと向かわせる転換点となる重苦しい小曲である。元々は「What Shall We Do Now?」という消費社会や物質主義を痛烈に批判する長尺の楽曲であったが、アナログ盤の収録時間の都合でカットされ、この短いバージョンが収録された(映画版やライブでは元の構成で演奏される)。妻とのコミュニケーションが完全に断絶し、心に生じた巨大な「空白(Empty Spaces)」をこれ以上何で埋めればいいのかという絶望的な問いかけが、地を這うようなシンセサイザーとギターの反復に乗せて歌われる。また、冒頭にバックマスキング(逆再生)による不気味な隠しメッセージが仕込まれていることでも有名な、プログレッシブ・ロックの実験性と狂気が凝縮されたトラックだ。

和訳

[Intro: Roger Waters, James Guthrie]
​yakO
(ヤコ…)

Enohp eht no s’enyloraC, regoR
(エノプ エト ノ スエニロラC、レゴR…)

TnoflahC ,mraF ynnuF eht fo erac ,kniP dlO ot rewsna ruoy dnes esaelP
(トノフラC、ムラF ウンヌF エト フォ エラク、クニP ドゥルO オト レウスナ ルオイ ドネス エサエルP…)

​egassem terces eht derevocsid tsuj evah uoY
(エガセム テルケス エト デレヴォクシド ツジ エヴァ ウオY…)

​snoitalutargnoC
(スノイタルタルグノC…)

​akuL ,olleH
(アクル、オレH…)
※この不可解なイントロはバックマスキング(逆再生)で収録されており、正順で再生すると以下の隠しメッセージとなる。「Hello, Luka. Congratulations. You have just discovered the secret message. Please send your answer to Old Pink, care of the Funny Farm, Chalfont. / Roger, Caroline's on the phone. / Okay.(やあ、ルカ。おめでとう。君はたった今、秘密のメッセージを発見した。答えはチャルフォントのファニー・ファーム気付、オールド・ピンク宛に送ってくれ。/ロジャー、キャロラインから電話だよ。/わかった。)」。「ファニー・ファーム」は精神病院を意味するスラングであり、「オールド・ピンク」は狂気によってバンドを去ったシド・バレットを暗示している。レコードを逆回転させてまで隠された意味を探そうとする熱狂的なファンへのシニカルなジョークであり、同時に狂気の世界へと沈んでいく主人公のパラノイアを見事に演出している。

[Verse: Roger Waters]
What shall we use to fill the empty spaces
この空っぽの空間(隙間)を埋めるために、僕たちは何を使えばいいのだろうか?
※妻との関係が冷え切り、互いの心に生じてしまった決定的な断絶。本来の「What Shall We Do Now?」では、この隙間を「高級車を買うこと」や「ドラッグ」「暴力」といった虚無的な消費行動で埋めようとする姿が描かれていた。

Where we used to talk?
かつては、僕たちが語り合っていたこの場所を。
※愛情やコミュニケーションが存在していたはずの空間が、今や冷たい沈黙(空白)に支配されている。

How shall I fill the final places?
この最後に残された場所を、僕はどうやって埋めればいいのだろう?

How should I complete the wall?
僕はどうやって、この壁を完成させるべきなのだろうか?
※心の隙間を他者との関係修復によって埋めることを諦め、代わりにそこに「最後のレンガ」を押し込んで、外界からの完全な隔離(壁の完成)を選ぼうとする主人公の絶望的な決意。重々しいエレクトリック・ギターが、後戻りのきかない精神の牢獄の扉が閉まる音のように響き渡る。

 

Empty Spaces

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