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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Pigs on the Wing, Pt. 1 - Pink Floyd 【和訳・解説】

Artist: Pink Floyd

Album: Animals

Song Title: Pigs on the Wing (Part 1)

概要

1977年に発表された、ジョージ・オーウェルの小説『動物農場』にインスパイアされた社会風刺の傑作アルバム『アニマルズ(Animals)』のオープニングを飾る、わずか1分半のアコースティック・ナンバーである。人間社会を支配者層の「豚」、抑圧的な執行者の「犬」、そして盲目的な大衆の「羊」の3階級に分類して痛烈に批判するヘヴィなコンセプト・アルバムにおいて、本作はロジャー・ウォーターズが当時の妻キャロラインに向けて書いた純粋なラブソングという異質な存在感を放っている。しかし、この「他者への愛と思いやり」こそが、次曲から展開されるエゴイズムと搾取にまみれた冷酷な資本主義社会を生き抜くための唯一の希望(あるいは防波堤)として機能しており、アルバム全体の極端な虚無主義を中和する極めて重要なプロローグとなっている。

和訳

[Verse: Roger Waters]
If you didn't care what happened to me
もし君が、僕の身に何が起ころうと気にかけず。

And I didn't care for you
そして僕も、君のことを気遣わなかったなら。
※他者への愛や思いやり(care)が完全に欠如した状態。次曲以降で展開される「犬」「豚」「羊」によるエゴイズムと搾取に支配された冷酷な人間社会の前提条件を示している。

We would zigzag our way through the boredom and pain
僕たちは退屈と苦痛の中を、ジグザグにさまよい歩くことだろう。
※「zigzag」は明確な目的や方向性を失い、資本主義社会という巨大なシステムの網の目を当てもなく逃げ惑う現代人の孤独な姿。

Occasionally glancing up through the rain
時折、冷たい雨の降る中を上目遣いで見上げながら。

Wondering which of the buggers to blame
一体どのクソ野郎に責任を押し付けてやろうかと考えながら。
※「buggers(嫌な奴ら)」は、社会の支配層(豚や犬)やシステムそのものを指す。自ら行動を起こさず、ただ他者や環境に不満の矛先を向ける大衆(羊)の無責任さとルサンチマン(怨恨)に対する痛烈な皮肉だ。

And watching for pigs on the wing
そして、空飛ぶ豚たちの姿を、油断なく警戒し続けるのだ。
※「pigs on the wing」は「あり得ないこと」を意味する慣用句(when pigs fly)をもじった表現であると同時に、戦闘機パイロットの用語で「敵機が自機の死角にいる危険な状態」を意味する。アルバムのコンセプトにおいては、空から大衆を監視し搾取する資本家や権力者(豚)の脅威に怯え、常に防衛本能を張り巡らせなければならない現代社会のパラノイア(強迫観念)を見事に暗示している。

 

Pigs On the Wing, Pt. 1

Pigs On the Wing, Pt. 1

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  • ロック
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