Artist: Kendrick Lamar
Album: untitled unmastered.
Song Title: untitled 01 | 08.19.2014.
概要
本作は、名盤『To Pimp a Butterfly(TPAB)』のアウトテイクを集めたコンピレーション・アルバム『untitled unmastered.』のオープニングを飾る楽曲である。タイトルの日付「08.19.2014」は、この曲が制作された2014年8月19日を示している。
Bilalによる官能的で世俗的なイントロから一転、ケンドリックは「ヨハネの黙示録」を彷彿とさせる恐ろしい世界の終末(アポカリプス)のヴィジョンを鮮明に描写する。神の裁きの前に立たされた彼は、自らの誕生日に遡る「履歴書」を提示し、人類を救うために『TPAB』を制作したと神に訴えかける。名声や世俗的な欲望と、神から与えられた使命との間で揺れ動くケンドリックの精神的な葛藤と恐怖が、重苦しくもスリリングなビートの上で展開される問題作だ。
和訳
[Intro: Bilal]
Come here, girl
こっちへおいで、ガール。
Oh, you want me to touch you right there?
あぁ、そこを触ってほしいのか?
Oh, like a little lamb, play in your hair
あぁ、小さな子羊みたいに、君の髪で遊んでやるよ。
※Bilalによる過剰にセクシャルなイントロ。「子羊」はキリスト教において神の生贄や信者を象徴するが、ここでは極めて世俗的で性的な意味合いで使われており、直後に始まる「神の裁き」との強烈なコントラストを生み出している。
Oh, you want it? Oh, you want it right now
あぁ、欲しいのか?あぁ、今すぐ欲しいんだな。
Like that? I got you, baby
こんな感じか?任せな、ベイビー。
All on you, baby
全部君のものだ、ベイビー。
Push it back on daddy
ダディ(俺)に向かって押し返してきな。
Push it back on daddy, baby
ダディに向かって押し返してきな、ベイビー。
[Verse: Kendrick Lamar]
I seen it vividly, jogging my brain memory, life no—
俺はそれを鮮明に見たんだ、脳内の記憶を呼び覚ましながら。命はもう——
I seen it vividly, jogging my brain memory
俺はそれを鮮明に見たんだ、脳内の記憶を呼び覚ましながら。
Life no longer infinity, this was the final calling
命はもう永遠じゃねえ、これが最後の呼び声(ファイナル・コーリング)だった。
No birds chirping or flying, no dogs barking
鳥のさえずりも飛ぶ姿もなく、犬の吠える声もしない。
We all nervous and crying, moving in caution
俺たちはみんな怯えて泣き叫び、警戒しながら動いてる。
In disbeliefs our belief's the reason for all this
信じられねえが、俺たちの「信仰」こそが、このすべての事態を引き起こした原因なんだ。
The tallest building plummet, cracking, and crumbling
一番高いビルが真っ逆さまに落ちて、ひび割れ、崩れ落ちる。
The ground is shaking, swallowing young woman
地面が揺れ、若い女を飲み込んでいく。
With a baby, daisies, and other flowers burning in destruction
赤ん坊を抱えたままな。ヒナギクや他の花々も、破滅の中で燃え盛っている。
The smell is disgusting, the heat is unbearable
悪臭が立ち込め、熱さは耐え難いほどだ。
Preachers touching on boys, run for cover, the paranoid
牧師が少年たちに触れ(性的虐待し)、パラノイド(偏執狂)どもは身を隠そうと逃げ惑う。
※カトリック教会などで実際に起きた聖職者による児童への性的虐待スキャンダルへの痛烈な批判。神に仕えるはずの者たちの罪が暴かれている。
Rapists and murderers hurdle alleys
レイプ犯や人殺しどもが、路地を飛び越えていく。
Valleys and high places turn into dust
谷底も高い場所も、すべてが塵に変わっちまう。
Famous screaming in agony
有名人どもが苦痛のあまり絶叫している。
Atheists for suicide, planes falling out the sky
無神論者たちは自殺を選び、飛行機が空から墜落してくる。
※神の存在を否定していた者たちが、終末の光景を目の当たりにして絶望し自ら命を絶つ様子を描写。
Trains jumping off the track, mothers yelling "He's alive!"
列車が線路から脱線し、母親たちが「あの子は生きてる!」と叫んでいる。
Backpedaling Christians settling for forgiveness
後ずさりするキリスト教徒どもが、許しを乞うて妥協しやがる。
Evidence all around us the town is covered in fishes
証拠は俺たちの周り中にある。街は魚で覆い尽くされている。
※海が干上がり、海の生物が陸に打ち上げられているという終末の光景。
Ocean water dried out, fire burning more tides out
海の水は干上がり、炎がさらに潮を焼き尽くしていく。
Tabernacle and city capital turned inside out
礼拝堂(タバナクル)も首都も、裏返しにされちまった。
Public bathroom, college classroom's been deserted
公衆便所も、大学の教室も見捨てられた(誰もいなくなった)。
Another trumpet has sounded off and everyone heard it
もう一つのラッパ(トランペット)が鳴り響き、誰もがそれを聞いた。
※『新約聖書』の「ヨハネの黙示録」において、天使が7つのラッパを吹くたびに地上に災いがもたらされるという描写の引用。
(It's happening) No more running from world wars
(始まってるんだ)もう世界大戦から逃げることはできねえ。
(It's happening) No more discriminating the poor
(始まってるんだ)もう貧しい者を差別することもできねえ。
(It's happening) No more bad bitches and real niggas
(始まってるんだ)もうイイ女(バッド・ビッチ)も、リアル・ニガも存在しねえ。
Wishing for green and gold, the last taste of allure
緑(札束)や金(ゴールド)を望みながら、最後の誘惑を味わっている。
I swore I seen it vividly
誓って言うぜ、俺はそれを鮮明に見たんだ。
A moniker of war from Heaven that play the symphony
天国からの戦争の合図が、シンフォニーを奏でている。
Thunder like number four, then I heard
4番目のような雷鳴が轟き、そして俺は聞いたんだ。
※黙示録に登場する「四騎士」のうち、4番目の騎士(死の象徴)がもたらす破滅を指している。
"What have you did for me?"
「お前は私のために何をしたのだ?」と。
※ついにケンドリックが神の前に引きずり出され、最後の審判(裁き)の問いかけを受ける瞬間。
I fell to my knees, pulled out my resume
俺は膝から崩れ落ち、自分の履歴書を引っ張り出した。
That dated back to June 17th, 1987
それは、1987年6月17日にまで遡る履歴書さ。
※1987年6月17日は、ケンドリック・ラマー自身の誕生日。生まれてからこれまでの人生の全記録を神に提示している。
My paperwork was like a receipt
俺の書類(善行の記録)は、まるで領収書みたいだった。
I was valedictorian, I was fearful of judgment
俺は卒業生総代(優秀な生徒)だった。俺は裁きを恐れていたんだ。
But confident I had glory in all my past endeavors
だが、過去のあらゆる努力の中に栄光があったと自信を持っていた。
Close my eyes, pray to God that I live forever
目を閉じ、永遠に生きられるように神に祈る。
Dark skies, fire and brimstone, some of us sent home
暗い空、火と硫黄。俺たちのうち何人かは「家(天国)」に送られた。
Some of us never did wrong but still went to Hell
何人かは悪いことなんて一度もしてないのに、それでも地獄に落ちた。
※理不尽な裁きや、原罪の概念に対する疑問。
Geez Louise, I thought you said that I excel
おいおいマジかよ(Geez Louise)。あんたは俺が秀でてる(優秀だ)って言ったじゃねえか。
I made To Pimp a Butterfly for you
俺はあんたのために『To Pimp a Butterfly』を作ったんだぜ。
※自身の最高傑作であるアルバムさえも、神の意志(使命)に従って作ったのだと主張している。
Told me to use my vocals to save mankind for you
あんたのために人類を救うべく、俺の歌声を使えって言ったじゃないか。
Say I didn't try for you, say I didn't ride for you
俺があんたのために努力しなかったとでも言うのか?あんたのために行動しなかったとでも?
I tithed for you, I pushed the club to the side for you
あんたのために十分の一税(献金)も払ったし、クラブで遊ぶのだって後回しにしたんだ。
Who love you like I love you?
俺ほどあんたを愛してる奴がどこにいるってんだ?
Crucifix, tell me you can fix anytime I need
十字架(クルシフィクス)よ、俺が必要な時はいつでも直して(救って)くれるって言ってくれよ。
Amistad, chain evidence in my diary
アミスタッド号、俺の日記に刻まれた鎖の証拠。
※1839年にアフリカ人奴隷が反乱を起こした「アミスタッド号事件」の引用。黒人の抑圧の歴史と、自らの内なる鎖(罪悪感や葛藤)を重ねている。
Never would you lie to me
あんたは絶対に俺に嘘をつかないはずだろ。
Always camaraderie, I can see, our days been numbered
いつだって仲間意識(カマラデリー)があった。分かるぜ、俺たちに残された日々はもう数え切れるほどだってことが。
Revelation greatest as we hearing the last trumpet
最後のラッパを聞く時、黙示録(レベレーション)は最高潮に達する。
All man, child, woman, life completely went in reverse
すべての男、子供、女、生命が完全に逆回転しちまった。
I guess I'm running in place trying to make it to church
俺は教会へたどり着こうと、その場で足踏みして走ってる(もがいてる)みたいだ。
[Outro]
Young nigga, act an ass
若いニガよ、バカやれ。
Young nigga, act a fool
若いニガよ、ふざけ回れ。
Young nigga, get yo' cash
若いニガよ、金を稼げ。
Young nigga, do what it do
若いニガよ、自分のやるべきことをやれ。
Young nigga go, young nigga go
若いニガよ行け、若いニガよ行け。
Young nigga go, young nigga go
若いニガよ行け、若いニガよ行け。
Whatever makes all of you happy in this bitch
このクソみたいな場所で、お前らを幸せにするもんなら何でも。
Just take it all back before the light switch
光のスイッチが切れる(死が訪れる)前に、全部奪い返してやれ。
※終末を前にして、ストリートの若者たちに「今のうちに生き急げ、やりたいことをやれ」と投げやりにも聞こえるアドバイスを送るアウトロ。
