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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Garden Shed - Tyler, The Creator 【和訳・解説】

Artist: Tyler, The Creator (feat. Estelle)

Album: Flower Boy

Song Title: Garden Shed

概要

本楽曲は、タイラー・ザ・クリエイターの5作目のアルバム『Flower Boy』(2017年)に収録された、彼のキャリアにおいて最も重要かつパーソナルな転換点となる一曲だ。イギリスのシンガー、エステル(Estelle)を客演に迎え、サイケデリックで美しいギターとシンセサイザーが響く中、タイラーは長年隠し続けてきた自身のセクシュアリティ(同性への愛)について初めて公に告白している。タイトルの「ガーデン・シェッド(庭の物置)」は、同性愛者が自身の性的指向を隠す「クローゼット」の巧みなメタファーである。かつて過激な言葉狩りの標的にされた彼が、過去の葛藤やカモフラージュしてきた恋愛事情を赤裸々に綴り、真の自分自身として「開花(Bloom)」する姿を描いた歴史的な名曲である。

和訳

[Chorus: Estelle]
Don't kill a rose
バラを殺さないで。

Before it could bloom
花開く前に。

Fly, baby, fly
飛ぶのよ、ベイビー、飛ぶのよ。

Out the cocoon
繭の中から抜け出して。
※cocoon(繭)はガーデンシェッド(物置)と同様、自分を閉じ込めている殻のメタファー。そこから羽ばたく(カミングアウトする)ことを促している。

[Verse 1: Tyler, The Creator]
You don't have to hide
もう隠れる必要なんてねえよ。

I can smell it in your eyes
お前の目を見れば(匂いで)分かるぜ。

That there's something more to say, baby
まだ言いたいことがあるってことがな、ベイビー。

Them words
その言葉が。

(Damn, run me back, yeah)
(クソッ、もう一回巻き戻してくれ、イェー)

[Bridge: Estelle & Tyler, The Creator]
If I could, if I could
もしできたら、もし私にできたら。

If you could
もしあなたにできたら。

Find the words to say
伝えるべき言葉を見つけられたら。

Find the words to say
伝えるべき言葉を見つけられたら。

Find the words
その言葉を見つけられたら。

In the garden
庭の、

Shed
物置の中で。

Go
行くわよ。

[Chorus: Estelle]
Don't kill a rose
バラを殺さないで。

Before it could bloom
花開く前に。

Fly, baby, fly
飛ぶのよ、ベイビー、飛ぶのよ。

Out the cocoon
繭の中から抜け出して。

[Verse 2: Tyler, The Creator]
Ayo, garden shed, garden shed, garden shed, garden shed
エイヨー、ガーデン・シェッド(庭の物置)、ガーデン・シェッド。

For the garden
庭のための物置さ。

That is where I was hidin'
そこが俺の隠れ場所だったんだ。
※garden shed=「クローゼット(性的指向を隠す場所)」のタイラー流のメタファー。

That was real love I was in
あれは俺が陥った「本物の愛」だった。

Ain't no reason to pretend
もう偽る理由なんてねえよ。

Garden shed, garden shed, garden shed
ガーデン・シェッド、ガーデン・シェッド、ガーデン・シェッド。

Garden shed for the garçons
ギャルソン(男の子たち)のためのガーデン・シェッドだ。
※garçonsはフランス語で「男の子」の意。ファッションブランド「Comme des Garçons」と掛けつつ、自身が惹かれる対象が男性であることを明確に示唆している。

Them feelings that I was guardin'
俺がずっと守り隠してきた感情。

Heavy on my mind
心に重くのしかかってたんだ。

All my friends lost
ダチはみんな戸惑ってた。

They couldn't read the signs
奴らにはそのサイン(兆候)が読めなかったのさ。

I didn't wanna talk and tell 'em my location
俺は話したくなかったし、自分の「居場所(性的指向)」を奴らに教えたくなかった。

And they ain't wanna walk
それに、奴らもあえて踏み込もうとはしなかった。

Truth is, since a youth kid, thought it was a phase
実を言うと、ガキの頃から、これはただの「時期的なもの(一時的な気の迷い)」だと思ってたんだ。

Thought it'd be like the phrase; "poof," gone
「プイッ(poof)」と消えちまうような言葉みたいなもんだと思ってた。
※poofは「魔法のように消える音」を表すオノマトペだが、同時にイギリスの軽蔑的なスラングで「同性愛者」を意味する高度なダブルミーニング。

But, it's still goin' on
でも、その感情はまだ続いてるんだ。

Big fan of the beige tan
ベージュの日焼け肌の大ファンでさ。

Polka dot nose, how it goes
水玉模様の鼻、そんな感じだ。
※Polka dot nose(水玉模様の鼻)=そばかすのある顔のこと。当時タイラーとの交際が噂され、本アルバムにも参加している友人Wyatt Navarroの特徴を指しているとされる。

Had to keep it on the subwoofer
サブウーファーの上に隠しておかなきゃならなかった。
※keep it on the subwoofer=「重低音(低い音)」から転じて「low(秘密にする=keep it on the down-low)」ことのメタファー。

A couple butterflies wanna float
何匹かの蝶が舞い上がりたがってた。
※butterflies=「胸がドキドキする恋心(butterflies in stomach)」のこと。

But I was always like, "Eh"
でも俺はいつも、「えーと」って感じで誤魔化してた。

Barely interested, but I bagged just to brag to my boys like, "Bruh"
ほとんど興味もねえのに、ダチに「なぁ兄弟」って自慢するためだけに女をお持ち帰り(bag)してた。
※同性愛者であることを隠すために、異性愛者のマチズモ(男らしさ)を演じていた過去の虚勢の告白。

This is crucial subject matter
これは極めて重大なテーマだ。

Sensitive like cookin' batter
クッキングバッター(ケーキの生地)みたいに繊細なんだよ。

'Til the temperature that's risin'
温度が上昇して焼き上がるまではな。

Steppin' on that ladder, tryna
あのハシゴに登って、

Grab the rings of Saturn, I'ma
土星の輪を掴もうとしてるんだ。俺は…

Planet by the time you hear this
お前らがこれを聴く頃には「惑星(プラネット)」になってるだろうな。
※planet=plan it(計画する/確立する)と掛けている。ハシゴを登り、土星(別の次元)に行き、自身の世界を確立するという決意。

Shit and chatter 'bout the heat
世間がこの熱(カミングアウトの話題)についてクソみたいに騒ぎ立てようと、

It will not fuckin' matter
そんなことマジでどうでもよくなるからな。