Artist: Tyler, The Creator (feat. Rex Orange County)
Album: Flower Boy
Song Title: Foreword
概要
タイラー・ザ・クリエイターの最高傑作との呼び声も高い5thアルバム『Flower Boy』(2017年)の幕開けを飾るオープニングトラック。タイトル「Foreword」が「序文・前書き」を意味する通り、このアルバム全体で語られる内省的なテーマのイントロダクションとなっている。富や名声を手に入れた後に訪れる虚無感、ブラック・ライヴズ・マターや警察の暴力といった社会問題への眼差し、そして何より「森の中で花や虹といた」というリリックに隠された自身のセクシュアリティに対する示唆など、かつての悪ふざけに満ちたホラーコア路線からの完全な成熟と脱却を示している。客演に迎えたRex Orange Countyの哀愁漂うボーカルが、タイラーの孤独や「墜落への恐怖」を見事に増幅させている。
和訳
[Intro]
Bitch, fuck! (Uh, uh, fuck)
ビッチ、クソッ!(あー、クソ)
You have a question?
何か質問でもあるのか?
[Verse 1: Tyler, The Creator]
How many cars can I buy 'til I run outta drive?
モチベーション(ドライブ)が尽きるまで、あと何台車を買えばいい?
※drive=「車を運転する」と「モチベーション・野心」のダブルミーニング。以下のラインで「限界」に関する問いかけが連続する。
How much drive can I have until I run outta road?
道(ロード)がなくなるまで、俺はどれだけ走り続けられる?
How much road can they pave until I run outta land?
土地がなくなるまで、奴らはどれだけ道を舗装できるんだ?
How much land can it be until I run in the ocean?
海に突っ込むまで、あとどれくらい土地が残されてる?
Niggas go with the motions and all the plans
ニガどもは流れに身を任せて、計画通りに進んでいく。
See, I was never into the beaches and all the sands
ほら、俺はビーチや砂浜なんて全く好きじゃなかった。
※ヒップホップにおけるステレオタイプな成功(ビーチリゾートなどで豪遊すること)には興味がなかったという表明。
See, I was in the woods with flowers, rainbows, and posies
俺は森の中で、花や虹や花束と一緒にいたんだ。
※woods, flowers, rainbowsなどは、自身の中に秘めていた同性愛的なアイデンティティ(クローゼットの中)を美しく暗喩している。
Fallin' outta my pocket, but y'all want to know if I swam to cool down
それらがポケットからこぼれ落ちてる。でもお前らは、俺がクールダウンするために泳いだかどうかが知りたいんだろ。
How much cooler can I get until I run out of fans?
ファン(扇風機)がいなくなるまで、俺はどれだけクールになれる?
※fans=「扇風機」と「熱狂的なファン(支持者)」のダブルミーニング。cooler=「涼しくなる」と「イケてる」。
How many fans can I have until they turn on the AC?
エアコン(AC)をつけるまで、扇風機(ファン)はいくつ必要なんだ?
If the AC blow up, well then I'm TNT, I'm gone
もしエアコンが爆発(ブロウアップ)したら、俺はTNT爆薬だ。俺は消えるぜ。
※blow up=「爆発する」と「大ブレイクする」。人気が爆発しすぎたら、自分を見失って消えてしまうという恐怖。
[Bridge: Rex Orange County]
I'm gone and I'm finished
僕は消えて、もう終わりだ。
And I ain't seen my friends in a minute
しばらく友達にも会ってない。
Guessing nothing lasts forever
永遠に続くものなんてないんだろうな。
Yeah, nothing lasts forever
ああ、永遠なんてない。
Nothing sticks together
ずっと一緒にいられるものなんてないんだ。
Sick of sitting in doubt
疑いの中でじっとしているのにはウンザリだ。
Please let me figure this out, out
頼むから、答えを見つけさせてくれ。
[Verse 2: Tyler, The Creator]
Shout out to the girls that I led on
俺が気を持たせた女の子たちにシャウトアウト。
※これまでの人生で、自身のセクシュアリティを偽るために付き合ったり、関係を持った女性たちへの言及。
For occasional head and always keepin' my bed warm
たまにフェラしてくれて、いつもベッドを温めてくれたよな。
And tryin' their hardest to keep my head on straight
それに、俺の頭をまともに(ストレートに)保とうと、一生懸命頑張ってくれた。
※straight=「まともな状態」と「異性愛者(ストレート)」を掛けた秀逸なワードプレイ。
And keepin' me up enough 'til I had thought I was airborne
俺が宙に浮いてる(エアボーン)って錯覚するくらい、俺を奮い立たせて(勃起させて)くれたよ。
How many raps can I write 'til I get me a chain?
チェーンを手に入れるまで、あといくつのラップを書けばいい?
※ここから再び「限界」についての連続した問いかけ。chain=ラッパーの成功の証であるネックレス。
How many chains can I wear 'til I'm considered a slave?
奴隷だと見なされるまで、いくつのチェーン(鎖)を首に巻けばいい?
※ラッパーが富を見せびらかすためのチェーン(宝石)が、実は白人社会や資本主義に縛られる「奴隷の鎖」と同じではないかという痛烈な皮肉。
How many slaves can it be 'til Nat Turner arise?
ナット・ターナーが立ち上がるまで、どれだけの奴隷が必要なんだ?
※Nat Turner=1831年にアメリカで黒人奴隷の反乱を率いた歴史的人物。
How many riots can it be until them Black lives matter?
「ブラック・ライヴズ・マター」が実現するまで、あと何回暴動を起こせばいい?
Niggas click-clack splatter, (Pew) pew that nigga
ニガどもはカチャッ、バーンって血をブチまける。(ピュー)あのニガを撃ち抜け。
Life a game of basketball, you better shoot that nigga
人生はバスケの試合みたいなもんだ、あいつをシュート(撃つ)したほうがいいぜ。
※ストリートでの黒人同士の殺し合い(Black-on-Black crime)とバスケットボールを掛けた表現。
'Cause if that cop got trigger, he better pull (Yeah)
だって、もしサツが引き金を持ってるなら、あいつらは間違いなく引く(pull)からな(イェー)。
※警官による黒人への不当な暴力・射殺事件に対する言及。
'Cause when I get pulled over, I usually play it cool (Skrt)
だって車を止められた(プルオーバーされた)時、俺はいつもクールに振る舞うからさ(スカート)。
'Cause I know what I'm drivin' is usually paid in full
なぜなら、俺が乗ってる車はローンじゃなく「一括で払い終わってる(paid in full)」って分かってるからな。
※Eric B. & Rakimのクラシック「Paid In Full」の引用。違法な金で買った車ではないという自信。
And my ego and possessions will not let me be one (Nah)
そして俺のエゴと所有物が、俺を「犠牲者の一人」にはさせないんだ(いや)。
※富と名声が、警察の理不尽な暴力から自分を守る盾(白人社会の特権階級と同等)になっているという冷徹な事実。
Because I got a mansion, my mansion got some rooms
だって俺には豪邸があって、豪邸にはいくつか部屋がある。
Them rooms got some windows and my windows got some views (Yup)
その部屋には窓があって、窓からの景色(ビュー)もある(ああ)。
Them views get some stares and my backyard does too
その景色は人々の視線を集めるし、俺の裏庭もそうだ。
※views=景色と、SNSやYouTubeの「再生回数/閲覧数」のダブルミーニング。
And if you walk to the bottom, you'll prolly see a pool
そして裏庭の一番下まで歩いていけば、たぶんプールが見えるだろうな。
You better not drown, keep them ten toes up
溺れないように気をつけな、10本の足の指を上に向けて(仰向けに)浮かんでろ。
'Cause if them ten toes down, that mean that you fucked up
だって、もし10本の足の指が下を向いて(底について)いたら、それはお前がしくじった(死んだ)ってことだからな。
※Ten toes down=本来は「地に足をつけて覚悟を決める」「リアルでいる」というヒップホップ・スラングだが、ここでは「プールの底に足がつく=水死体として浮いている」というダークな意味に反転させている。
And that's what I swim in
そしてそれが、俺が泳いでる世界なんだよ。
※富や名声というプールの中で、常に溺れ死ぬ恐怖と戦っている精神状態を表現してVerseを締める。
[Outro: Rex Orange County]
And if I drown and don't come back
もし僕が溺れて、戻ってこなかったら。
Who's gonna know? (Maybe then I'll know)
誰が気づいてくれるんだ?(その時になれば分かるのかもな)
And if I crash and don't come back
もし僕が墜落して、戻ってこなかったら。
Who's gonna know? (Maybe then I'll know)
誰が気づいてくれるんだ?(その時になれば分かるのかもな)
And if I fall and don't come back
もし僕が落ちて、戻ってこなかったら。
Who's gonna know? (Maybe then I'll know)
誰が気づいてくれるんだ?(その時になれば分かるのかもな)
I'm wondering if I don't come back
もし僕が戻ってこなかったらって考えてるんだ。
Maybe then I'll know
その時になれば分かるのかもな。
Don't come back
戻ってこない。
Don't come back
戻ってこない。
Ayy, don't come back
ああ、戻ってこない。
Don't come back
戻ってこない。
No, no
いや、いや。
