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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

PILOT - Tyler, The Creator (feat. Syd) 【和訳・解説】

Artist: Tyler, The Creator (feat. Syd)

Album: Cherry Bomb

Song Title: PILOT

概要

タイラー・ザ・クリエイターの4作目のアルバム『Cherry Bomb』(2015年)に収録された本楽曲は、彼自身をヒップホップ・シーンや人生における「パイロット」に位置づけ、自らの先見性と野心を高らかに宣言するトラックだ。盟友シド(Syd)の浮遊感あるボーカルと、重厚でノイジーなシンセサイザー、そして荒々しいドラムブレイクが交錯し、乱気流の中を飛行するような音像を作り出している。リリックでは、シーンを牽引する絶対的な自信を見せつける一方で、「ファーストクラスにいるのにエコノミークラスの気分だ」と、物質的な成功や名声を手に入れても埋まらない内面の孤独や「墜落」への恐怖を吐露している。既存の枠組みや評価から逃れ、真の自由(翼)を渇望するタイラーの複雑な心境がリアルに描かれた野心作である。

和訳

[Verse 1: Tyler, the Creator]
Fly with the birds in the wind
風に乗って鳥たちと飛ぶのさ。

Where you wanna go, who, what, why, when? Uh
どこに行きたい? 誰と、何を、なぜ、いつ?

On a scale of nine to ten
9から10のスケールで言えばな。

You taking L's, baby, hold my hand and feel the wind, uh
お前は負け(L)を食らってるぜ、ベイビー。俺の手を握って風を感じな。
※taking L's=Loss(敗北・失敗)を受け入れるというスラング。

Now fasten your seat belt, and turn everything off
さあ、シートベルトを締めて、電子機器の電源は全部切れよ。

I got your attention, motherfucker, I'm 'bout to take off
お前らの注目はいただいたぜ、クソ野郎ども。今から離陸するからな。

I'm the new pilot in this bitch
俺がこの場所の新しいパイロットだ。

And I ain't bring no extra baggage for this trip
このフリップに余計な手荷物(バゲッジ)は持ってきてねえ。
※baggage=手荷物と、過去のしがらみや精神的負担(emotional baggage)のダブルミーニング。

But I do bring a terror like I hate America
でも、アメリカを憎んでるみたいにテロはもたらしてやるぜ。
※自身の過激な音楽性や存在感をテロリズムに例えた、タイラー特有の不謹慎なジョーク。

A brand new camera and a parachute
新品のカメラとパラシュートを持ってな。

Nigga, you and I are not the same, we not parallel
ニガ、お前と俺は違う。平行線(同レベル)じゃねえんだよ。

Don't talk to me 'fore I fucking embarrass you
俺がお前をクソみたいに赤っ恥かかせる前に、話しかけてくんな。

Now sit your ass down, you doing three much
さあ、そこにお前のケツを下ろせ。お前はやりすぎ(three much)だぜ。
※「too much (two much)」の上を行く「three much」という造語。

I'm the captain on this bitch, don't get it fucked up
俺がここのキャプテンなんだよ、勘違いすんな。

Or you'll get fucked up
さもなきゃ、痛い目を見る(fucked up)ことになるぜ。

[Break]

[Verse 2: Tyler, the Creator]
I'm so far ahead of you niggas, I'm in the future
俺はお前らニガのずっと先を行ってる、俺は未来にいるんだ。

Y'all don't even know about my existence, it's like I'm dead to you niggas
お前らは俺の存在すら気づいてねえ、お前らにとっちゃ俺は死んでるも同然さ。

I'm saying (I'm saying I'm dead to y’all niggas)
言ってんだよ(お前らにとっちゃ俺は死んでるって言ってんだ)。

Look, y'all be on the stupid shit
見ろよ、お前らは下らねえことばっかやってる。

I'm the fucking pilot, your goal is to be the stewardess
俺はクソヤバいパイロットで、お前の目標はスチュワーデスになることだろ。

I'm the fucking bomb like I was stuffing my shoe with it
俺はマジで爆弾(最高)なんだよ、靴の中にそいつを詰め込んでるみたいにな。
※2001年に起きたリチャード・リードによる「靴爆弾テロ未遂事件(Shoe Bomber)」のメタファー。

The boy's a fucking problem like ****
このボーイはマジで問題児さ、****みたいにな。
※検閲で隠されているが、文脈からテロリストなどの過激な人物名が入ると推測される。

If anything happens, it's one door
もし何か起きたら、出口は一つだけだ。

'Cause if I see a building, motherfucker, we're done for
だって、もし俺がビルを見つけたら、クソ野郎、俺たちはおしまいだからな。
※飛行機のハイジャックと9.11テロ事件を想起させる、極めて際どいブラックジョーク。

I'ma hit a couple of 'em up, this is parkour
ビルをいくつかぶち当ててやるよ、これはパルクールだぜ。

Better call your family and give 'em your last wishes, nigga
家族に電話して、最後の願いを伝えておいた方がいいぜ、ニガ。

And every line dirty, you thought that I dug ditches
俺のライン(リリック)は全部ダーティ(汚い)だから、お前は俺が溝を掘ってたと思ったんだろ。
※dirtyなリリックと、泥にまみれて溝(ditch)を掘る肉体労働を掛けた言葉遊び。

But I never give a fuck, it's like I was born dickless
でも俺は全く気にしねえ(give a fuck)よ、まるでディックなしで生まれてきたみたいにな。
※「give a fuck(気にする/ヤる)」というスラングを逆手に取り、ディックがないからセックス(give a fuck)できない=「全く気にしない」、という下品で巧妙なパンチライン。

[Refrain: Tyler, the Creator]
I don't wanna crash anymore, I don't wanna crash anymore
もうこれ以上、墜落(クラッシュ)したくねえよ、もう墜落したくねえんだ。

I just wanna soar through the space, let the wind hit my face
ただ宇宙を高く舞い上がりたい、顔に風を当ててくれ。

'Til there's nothing left in the gas tank, I don't wanna crash
ガスタンクが空っぽになるまでな。俺は墜落したくないんだ。

I don't wanna crash anymore, I don't wanna crash anymore
もうこれ以上、墜落したくねえよ、もう墜落したくねえんだ。

I just wanna soar through the space, let the wind hit my face
ただ宇宙を高く舞い上がりたい、顔に風を当ててくれ。

'Til there's nothing left in the gas tank, I don't wanna crash
ガスタンクが空っぽになるまでな。俺は墜落したくないんだ。

[Bridge: Tyler, The Creator, Syd]
(I don't wanna crash)
(墜落したくないの)
※Sydのコーラスが重なる。The Internetのボーカルであり、Odd Futureの初期メンバー。

I'm in first class but I feel like coach, yeah, uh
俺はファーストクラスにいるのに、コーチ(エコノミークラス)にいる気分だ、ああ。
※音楽シーンの頂点(ファーストクラス)に到達したにもかかわらず、内面的には窮屈で満たされない(エコノミー)という、富と名声がもたらす孤独感を表現した核心的なフレーズ。

(And it's okay if I fall, I just wanna fly)
(もし落ちたとしてもいい、私はただ飛びたいの)

'Cause I'm in first class but I feel like coach, yeah, uh
だって俺はファーストクラスにいるのに、エコノミーにいる気分なんだ、ああ。

(The wind's getting high, I don't wanna crash)
(風が強くなってきた、墜落したくないわ)

'Cause I'm in first class but I feel like coach, yeah
だって俺はファーストクラスにいるのに、エコノミーにいる気分なんだ、ああ。

(And it's okay if I fall, I just wanna fly)
(もし落ちたとしてもいい、私はただ飛びたいの)

It's kinda weird
なんか奇妙だよな。

(The wind is getting high)
(風が強くなってきた)

'Cause I'm in first class but I feel like coach, look (Say what?)
だって俺はファーストクラスにいるのに、エコノミーにいる気分なんだ、なあ(何だって?)

(Oh, yeah, yeah)
(あぁ、イェー、イェー)

[Outro: Tyler, the Creator]
I'm tryna find a place, a place where I can land at
俺は着陸できる場所、俺の居場所を見つけようとしてる。

A place where I can be with no alphabet
アルファベットの評価なんてない場所をな。

Dictating where to stand at
どこに立つべきかを指示されることのない場所さ。
※Aリスト、Bリストといったランク付けや、カテゴリー分け(ヒップホップ、ラップなど)によって自分の立ち位置を決められる(Dictating)ことへの反発。

You can buy a car, you can buy many things
車は買えるし、いろんなものが買える。

You can buy happiness, but you can't buy wings
幸福だって買えるさ、でも「翼」は買えねえんだ。

You can buy a parachute, you can buy a parrot
パラシュートも買えるし、オウムだって買える。

But you can't buy a pair of wings, aerodynamic
でも、一対の翼は買えねえ。空気力学の力で、

To stay cloud level
雲の高さに留まり続けるための翼はな。
※金で物質的なものは手に入っても、真の自由(自分の力で飛ぶための翼)は買えないという痛切な悟り。

That's why I'm in first class but I feel like coach (Fucked up)
だから俺はファーストクラスにいるのに、エコノミーにいる気分なんだ(最悪だな)。

'Cause I'm in first class but I feel like coach
俺はファーストクラスにいるのに、エコノミーにいる気分なんだよ。

It's just crazy how you can have everything in the world, but
世界中のすべてを手に入れられるってのに、マジで狂ってるぜ。

You in first class but you feel like coach, damn
ファーストクラスにいるのに、エコノミーにいる気分だなんて、クソッ。

That's why I'm in first class, but I feel like coach
だから俺はファーストクラスにいるのに、エコノミーにいる気分なんだ。

[Outro]
I don't wanna—
俺は…したくないんだ。

 

Cherry Bomb

Cherry Bomb

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