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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Sweet November - SZA 【和訳・解説】

Artist: SZA

EP: Z

Song Title: Sweet November

概要

2014年のEP『Z』に収録された本作は、マーヴィン・ゲイの未発表インストゥルメンタル曲「Mandota」を大胆にサンプリングした、オールドスクールなソウル・ヴァイブスが漂う一曲だ。タイトルの「Sweet November」は、不治の病を抱えるヒロインが愛する男の前から去り、美しい記憶だけを残そうとする同名のロマンティック映画(邦題『スウィート・ノベンバー』)に由来している。死への誘惑(コレクトコール)、Toxicな腐れ縁、そして無防備な性交渉といった自己破壊的なテーマを扱いながら、「今の私ではなく、かつての私として記憶してほしい」と切実に願う姿は、SZAの持つ「等身大の孤独と虚無感」を見事に体現している。

和訳

[Verse 1]
Jesus called me collect last night
昨日の夜、イエス様からコレクトコールがかかってきたの。
※「コレクトコール」は受信者側が通話料を負担するシステム。イエス(神=死や運命の象徴)からの電話に出ることは、自らの命を差し出す(代償を払う)という死への衝動や危うさを暗示している。

It took all of me not to answer
電話に出ないようにするだけで、もう精一杯だったんだから。

Daddy warned me the perils of playing
パパからは、お遊びの危険性について警告されてたのにね。

Hard to get with God isn’t standard
神様相手に「焦らしプレイ(Hard to get)」をするなんて、普通じゃないし。
※「play hard to get」は恋愛において「気のない素振りをして相手を焦らす」という駆け引きの手法。ここでは死や運命(=神)に対して無謀な駆け引きをしている自身の危うさを自嘲している。

Flying high and fearless baby
ハイになって、怖いものなんて何もないのよ、ベイビー。

I've kissed death a thousand times before
これまでだって、死と1000回くらいキスしてきたんだし。
※薬物乱用や無軌道な行動によるオーバードーズ、あるいは自傷的な体験を「死とのキス」と詩的に表現している。

[Chorus]
Remember me for who I was not who I am
今の私じゃなくて、昔の私として記憶しておいてね。
※映画『スウィート・ノベンバー』のテーマと直結するライン。自分が完全に壊れ果ててしまう前に、最も美しかった思い出のままで相手の記憶に留まりたいという悲痛な防衛本能だ。

I'll pray you never understand this sweet
あなたがこの甘さを、絶対に理解しないようにって祈ってる。

Sweet, sweet, sweet November
甘くて、甘い、スウィート・ノベンバー。
※破滅に向かう自己破壊的な精神状態(=11月)の「甘美さ」を、愛する人には知ってほしくないという複雑な愛情と孤独が入り交じっている。

Remember me for who I was not who I am
今の私じゃなくて、昔の私として記憶しておいてね。

I'll pray you never understand this sweet
あなたがこの甘さを、絶対に理解しないようにって祈ってる。

Sweet, sweet, sweet November
甘くて、甘い、スウィート・ノベンバー。

[Bridge]
Take (take) time (time)
時間をかけて(時間を)

Flow (flow) shine (shine)
流れに任せて(流れて)、まばゆく光る(光る)

Brilliant (brilliant) light (light)
鮮やかな(鮮やかな)、光(光)

Angel (angel) fly (fly)
天使が(天使が)、飛んでいく(飛んでいく)
※走馬灯のような、あるいはドラッグのトリップ状態のような幻覚的な意識の流れがアンビエントなコーラスで表現される。

[Verse 2]
Heard you fucking with Tommy again
またトミーとヤッてるんだってね。
※急に三人称視点(あるいは自己を客観視した視点)に切り替わる。自分と同じようにToxicな恋愛から抜け出せない友人(または過去の自分自身)への冷ややかな指摘である。

We both 'member where that landed you last time
前回それでどういう結末になったか、私たち二人とも覚えてるでしょ。

That nigga don't really love you girl
あいつ、あなたのことなんて本当に愛してないのよ。

He just beds you every night, it's his past-time
毎晩あなたをベッドに連れ込むだけ、ただの暇つぶしなの。
※「past-time(娯楽、気晴らし)」。都合のいい女として扱われている無惨な現実を突きつけている。

Blind eye and the fearless, darling
見て見ぬふりをして、怖いもの知らずね、ダーリン。

You two might just do it raw tonight
今夜もどうせ、二人で生でヤッちゃうんでしょ。
※「do it raw」はコンドームなしでの無防備な性交渉。妊娠や性病、そして心の傷のリスクを顧みない無軌道で刹那的な行動(=Fearless)を非難しつつ、どこか共感もしている。

Heaven help if he leave you girl
あいつに捨てられたら、神頼みするしかないわね。

I bet you bought two new thongs this time
どうせ今回も、新しくTバックを2枚買っちゃったんでしょ。
※「thongs(Tバックの下着)」。報われない関係だと分かっていながら、相手の気を引くためについ下着を新調してしまう、女性のリアルで愚かで愛おしい性(さが)をGenius的な視点で見事に切り取っている。

[Chorus]
Remember me for who I was not who I am
今の私じゃなくて、昔の私として記憶しておいてね。

I'll pray you never understand this sweet
あなたがこの甘さを、絶対に理解しないようにって祈ってる。

Sweet, sweet, sweet November
甘くて、甘い、スウィート・ノベンバー。

Remember me for who I was not who I am
今の私じゃなくて、昔の私として記憶しておいてね。

I'll pray you never understand this sweet
あなたがこの甘さを、絶対に理解しないようにって祈ってる。

Sweet, sweet, sweet November
甘くて、甘い、スウィート・ノベンバー。

[Outro]
Hurts right, broken stride
痛いよね、歩幅も乱れちゃうくらい。
※「stride(歩み、ペース)」が壊れること。肉体的な痛み(激しい性行為などによるもの)と、自身の精神的なバランスや人生のペースが崩壊していく様の両方を意味する、痛切なダブルミーニングである。