Artist: Tyler, The Creator
Album: Wolf
Song Title: Cowboy
概要
本楽曲は、タイラー・ザ・クリエイターの3rdアルバム『Wolf』(2013年)に収録された、彼が抱える「名声に伴う孤独感」をテーマにした内省的なトラックである。自身を「孤独なカウボーイ」に例え、富と名声を得たことで生じた旧友たちとの経済的・精神的なギャップや、自分の音楽が消費されることへの違和感を、ブラックユーモアを交えながら吐露している。また、トレイボン・マーティン射殺事件への言及や、フランク・オーシャンのカミングアウトに対する彼なりのサポートなど、社会的なトピックも随所に散りばめられている。曲の終盤では、本作の舞台である架空のサマーキャンプ「Camp Flog Gnaw」のストーリーが進行し、主人公Wolfが不良のSamの彼女であるSalemに一目惚れするという、アルバムの核となる三角関係の始まりが描かれている。
和訳
[Verse 1]
Knock-knock, mothafucks, it's me, Mr. Clusterfuck
コンコン、クソ野郎ども、俺だ、ミスター・クラスターファック(大混乱)だ。
What, when, where, how, like who gives a fuck
何が、いつ、どこで、どうやって、誰が気にするってんだよ。
Golf Wang M-O-B, mopping niggas ante up
Golf Wangのモブ、ニガどもを一掃するぜ、金を出しな。
※M-O-B=ギャング的な群れ、あるいはMoney Over Bitches。ante up=M.O.P.のヒップホップ・クラシック「Ante Up」にかけた表現。
Ain't been this fucking sick since brain cancer ate my Granny up
脳腫瘍がばあちゃんを食い尽くして以来の、クソヤバい(病気な)状態だぜ。
※sick=「病気(祖母の死因)」と「最高/ヤバい」のダブルミーニング。
Rest in peace or lie in it, life ain't got no light in it
安らかに眠る(R.I.P)か、その中に横たわるか。人生には光なんてねえよ。
Darker than that closet that nigga Frankie was hiding in
あのニガ、フランキーが隠れてたクローゼットよりも暗いぜ。
※Frankie=Frank Oceanのこと。クローゼットに隠れる(In the closet)=同性愛者であることを隠している状態を指す。この曲が収録されたアルバム『Wolf』リリースの前年(2012年)にフランク・オーシャンはバイセクシャルをカミングアウトしており、それに対するタイラー流のブラックジョーク交じりのサポートである。
Open it, dope in it, Bobby, where's my fucking pipe?
開けてみろ、ドープ(薬物)が入ってる。ボビー、俺のクソパイプはどこだ?
Dress my little dick as Ike, twenty says I hit your wife
俺の小さなディックをアイクの格好にさせる。20ドル賭けてもいい、お前の嫁を殴って(ヤッて)やるよ。
※Ike=アイク・ターナー。元妻のティナ・ターナーに暴力を振るっていたことで知られる。「hit」は「殴る」と「セックスする」のダブルミーニング。
This is life, truthfully I just want to fly some kites
これが人生だ。本当はただ凧揚げでもしたい気分なんだよ。
Grab Salem and Slater and go around, riding bikes
セーラムとスレイターを連れて、自転車を乗り回したい。
※Salem=アルバム『Wolf』のストーリー上のヒロイン。Slater=タイラーの自転車の名前であり、同アルバムに曲名としても登場する。
Get some ice cream, Golf Wang Roscoe's for the night
アイスクリームを食って、夜はGolf Wangでロスコーズ(Roscoe's)に行くんだ。
To skate around and do annoying shit that older peeps despise
スケボーで走り回って、大人たちが嫌がるようなウザいことをやるのさ。
Nigga, fuck it though, going hard as riga mo
ニガ、でもクソくらえだ。死後硬直(riga mo)みたいにハードに(勃起して)いくぜ。
※riga mo=rigor mortis(死後硬直)。
Got a nigga dollars and a couple cracker kids at shows
ニガから金を稼いで、ショーには白人のガキどもが数人来てる。
Cracked a couple kids in the head with this cast
このギプスでガキども数人の頭をカチ割ってやった。
Had a blast out in Europe, had a Swedish bitch licking toes
ヨーロッパでバカ騒ぎして、スウェーデン人のビッチに足の指を舐めさせた。
That's how it goes, designing clothes
そんなもんだろ、服をデザインして、
Cats on everything, cats on everything
何にでも猫をプリントして、何にでも猫をプリントする。
※当時のタイラーのアパレル(Golf Wang)で多用されていた猫のデザインについて。
You think all this money will make a happy me?
これだけの金があれば俺が幸せになると思うか?
But I'm 'bout as lonely as crackers that supermodels eat
でも俺は、スーパーモデルが食うクラッカーくらい孤独なんだよ。
※crackers=「白人」と「食べるクラッカー」のダブルミーニング。スーパーモデルはダイエットのためにクラッカーしか食べないことから、自分が「食べられるクラッカー=孤独な存在」であると表現している。
Everybody's sparking but me, and I keep coughing
俺以外の全員が火をつけて(ハッパを吸って)るけど、俺は咳き込み続けてる。
※タイラーはストレートエッジでマリファナを吸わないため、受動喫煙で咳き込んでいる。
Can't keep calm in this spot's hot box and I'm getting nauseous
このホットボックス(煙が充満した場所)じゃ落ち着けねえし、吐き気がしてきやがる。
Hop in the car, ride to Saugus, and head straight to the office
車に飛び乗って、ソーガスまで車を走らせて、まっすぐオフィスに向かう。
Pissed off at Jasper because that's some faggot shit called "Pink Dolphin"
ジャスパーにムカついてる、だってあいつ「Pink Dolphin」とかいうオカマみたいな服を着てやがるからな。
※Jasper=Odd Futureのメンバー。Pink Dolphin=当時流行していたストリートブランド。タイラーはこのブランドを嫌っていた。
(Damn) I roll here on a mean unicorn
(クソ)俺はイカツいユニコーンに乗ってここに来た。
Green hat, Vans, Golf top is the team uniform
緑の帽子、Vans、Golfのトップスがチームのユニフォームだ。
Downing that Capri Sun, tighten my bandana up
カプリサンを飲み干して、バンダナをきつく締める。
Something like a lez, I'm forgetting my damn manners cause
まるでレズビアンみたいにな。俺はクソみたいなマナーを忘れちまってる、だって…
[Chorus]
I am the cowboy on my own trip
俺は自分だけの旅(トリップ)に出てるカウボーイなんだ。
And I am the cowboy on my own trip
俺は自分だけの旅に出てるカウボーイなんだ。
And I am the cowboy on my own trip
俺は自分だけの旅に出てるカウボーイなんだ。
And I am the cowboy
俺はカウボーイなんだよ。
[Verse 2]
When you're alone, thoughts start coming in
一人でいると、色んな考えが浮かんできやがる。
Punching in that dark lock box and they start rummaging
あの暗いロックボックスに暗証番号を打ち込んで、そいつらが中をあさり始めるんだ。
Shit you've got to battle with, wishing they could skedaddle
戦わなきゃいけないクソみたいな感情どもさ。消え失せてくれればいいのに。
But it makes your shadow say none, fun and grab the gun again
でもそいつらのせいで、お前の影は「何もない」って言って、面白半分でまた銃を掴んじまう。
I needed to get out of the house
俺は家から出る必要があった。
So I hit the Dead Sams, and we went biking it out
だからデッド・サムズに連絡して、自転車で出かけたんだ。
In a black hoodie, with an Arizona and a bag of Skittles
黒のパーカーを着て、アリゾナ(アイスティー)とスキットルズの袋を持ってな。
Just to see what all that fucking hype is about (RIP)
あの大騒ぎが一体何なのか、確かめるためだけにな。(R.I.P.)
※2012年に起きたトレイボン・マーティン射殺事件への言及。被害者の黒人少年が黒のパーカー姿でアリゾナ・アイスティーとスキットルズを持っていただけで不審者とみなされ射殺された事件。タイラーは自身をカウボーイに例えつつ、社会的な事件にも触れている。
Now every time you see a roach, you think of me, ayy?
今じゃお前らはゴキブリを見るたびに、俺のことを思い出すだろ、ええ?
※曲「Yonkers」のMVでゴキブリを食べたことに由来する。
'Cause every time I see one, I think what his parents would say
だって俺はゴキブリを見るたびに、あいつの親が何て言うか考えるんだ。
In court saying I ate him, I wasn't present that day
法廷で「俺があいつを食った」って言われるのをな。あの日、俺はその場にいなかったけど。
I was with Whitney smoking, sitting at the dock of the bay
俺はホイットニーと一緒にハッパを吸って、入り江のドックに座ってたんだよ。
※Otis Reddingの「(Sittin' On) The Dock of the Bay」と、Whitney Houstonがクラック・コカイン(スモーキング)をしていたというゴシップを掛け合わせたブラックジョーク。
[Chorus]
I am the cowboy on my own trip
俺は自分だけの旅(トリップ)に出てるカウボーイなんだ。
And I am the cowboy on my own trip
俺は自分だけの旅に出てるカウボーイなんだ。
And I am the cowboy on my own trip
俺は自分だけの旅に出てるカウボーイなんだ。
And I am the cowboy
俺はカウボーイなんだよ。
[Verse 3]
Do you know how weird it is knowing I make a bunch of cheese
俺が大量のチーズ(金)を稼いでるって自覚するのが、どれだけ奇妙な気分か分かるか?
While my friends can't afford little pizzas from Little Caesars
ダチどもはリトル・シーザーズの小さなピザすら買えないのにな。
And they whole goal is to roll up and smoke bowls
あいつらの目標は、ハッパを巻いてボウル(パイプ)を吸うことだけだ。
So I don't feel bad when they not eating
だからあいつらが飯を食えなくても、俺は悪い気はしねえよ。
(But you still treating us, you punk bitch)
(でもお前は結局俺たちに奢ってくれるだろ、このパンクなビッチめ)
※成功して金持ちになった自分と、相変わらずストリートで燻っている友人たちとの経済的・精神的なギャップによる孤独感。それでも友人を見捨てられないタイラーの優しさが現れている。
Wolf Haley got more methods than Pinkman
ウルフ・ヘイリーはピンクマンよりも多くのメソッド(メス)を持ってるぜ。
※ドラマ『ブレイキング・バッド』の登場人物ジェシー・ピンクマンと、ドラッグのメス(methamphetamine)、やり方(methods)を掛けた言葉遊び。
I'm never civil, fuck Lincoln, 'Preme out the bag it's no wrinkles
俺は絶対に市民(大人しく)にはならねえ、リンカーン(南北戦争/Civil War)なんてクソくらえだ。袋から出したばかりのSupremeにはシワ一つねえぜ。
I'm okie dokie and loopy and booboo nana and caca
俺はオキドキでルーピーで、ブーブーナナでカカだ。
※幼児言葉や意味のない言葉を並べ、自分の頭が狂っていることをコミカルに表現。
If you think I'm fucking koo-koo, try talking to my shrink then
俺がイカれてる(koo-koo)と思うなら、俺の精神科医と話してみな。
[Skit: Tyler, The Creator as Dr. TC, Sam, and Wolf]
"Hey..."
「ヘイ…」
"Bitch"
「ビッチ」
"I'm right here"
「俺はここにいるぜ」
"Yo, who's that..?"
「ヨー、あれ誰だ…?」
"That's Salem, that's my girlfriend
「あれはセーラムだ。俺の彼女だ。
You stay the fuck away from her, alright?"
あいつには絶対に近づくなよ、いいな?」
※Camp Flog GnawでのWolfとSamの会話。WolfがSamの彼女であるSalemに一目惚れするシーン。ここからアルバムのストーリーにおける三角関係と対立が本格化する。
[Chorus]
I am the cowboy on my own trip
俺は自分だけの旅(トリップ)に出てるカウボーイなんだ。
And I am the cowboy on my own trip
俺は自分だけの旅に出てるカウボーイなんだ。
And I am the cowboy on my own trip
俺は自分だけの旅に出てるカウボーイなんだ。
And I am the cowboy
俺はカウボーイなんだよ。
