Artist: Tyler, The Creator
Album: Goblin
Song Title: Yonkers
概要
本楽曲は、タイラー・ザ・クリエイターの2011年のアルバム『Goblin』からの先行シングルであり、彼とOdd Futureの名を世界に轟かせたブレイクスルー作である。彼自身がプロデュースした不穏でミニマルなビートに乗せ、別人格である「Wolf Haley」としての猟奇的で矛盾に満ちた思考がストリーム・オブ・コンシャスネス(意識の流れ)の手法で吐き出される。ゴキブリを食べて首を吊る衝撃的なMVと共に、過激な暴力描写や意図的なヘイト発言でメインストリームを挑発する一方、父親不在のトラウマや希死念慮などの内面も生々しく描かれている。2010年代のオルタナティヴ・ヒップホップにおける最重要曲の一つだ。
和訳
[Intro]
Uh, Wolf Haley, Golf Wang, go
あぁ、ウルフ・ヘイリー、ゴルフ・ワン、行くぜ。
※Wolf Haley=タイラーの過激で破壊的な別人格(アルター・エゴ)。Golf Wang=彼が率いるOdd Future(Wolf Gang)のアナグラムであり、彼が展開するアパレルブランドの名前でもある。
[Verse 1]
I'm a fuckin' walkin' paradox, no, I'm not
俺は歩く矛盾そのものだ、いや、やっぱ違うわ。
※自身の発言を即座に否定することで、自らが「矛盾」であることを体現しているライン。
Threesomes with a fuckin' triceratops, Reptar
トリケラトプスやレプターとスリーサムしてやるよ。
※Reptar=アニメ『ラグラッツ』に登場する恐竜のキャラクター。非現実的でバカげた妄想を描写している。
Rappin' as I'm mockin' deaf rock stars
耳の聞こえねえロックスターをからかいながらラップする。
Wearin' synthetic wigs made of Anwar's dreadlocks
アンワルのドレッドで作った人工ウィッグを被りながらな。
※Anwar=元Odd Futureのメンバー、アンワル・キャロル(Anwar Carrots)。彼のドレッドヘアを小馬鹿にしている。
Bedrock, harder than a motherfuckin' Flintstone
フリントストーンよりも硬い「ベッドロック」だぜ。
※Bedrock=アニメ『フリントストーン(原始家族フリントストーン)』の舞台となる街の名前であり、「岩盤(非常に硬い)」という意味を掛けている。
Making crack rocks outta pussy nigga fishbones (Haha)
雑魚ニガどもの魚の骨からクラック・ロックを作ってやるよ(ハハッ)
This nigga Jasper tryin' to get grown
ジャスパーの野郎はいっちょ前に大人ぶろうとしてやがる。
※Jasper=Odd Futureの創設メンバーでありタイラーの親友、ジャスパー・ドルフィン(Jasper Dolphin)。
About five, seven of his bitches in my bedroom (Hey)
あいつの女が5、7人くらい俺のベッドルームにいるぜ。(ヘイ)
Swallow the cinnamon, I'ma scribble this sin and shit
シナモンを飲み込んで、この罪とかクソみたいなことを書きなぐる。
※当時ネットで流行していた、シナモンの粉を飲み込む危険な悪ふざけ「シナモン・チャレンジ」を示唆している。
While Syd is tellin' me that she's been getting intimate with men
シドが男と親密になってるって俺に話してる間にな。
※Syd=Odd Futureのメンバー、シド・ザ・キッド(現在のSyd)。彼女はレズビアンであることを公言しており、「男と親密になっている」というのは明らかなジョーク(嘘)である。
(Syd, shut the fuck up)
(シド、黙ってろ)
Here's the number to my therapist (Shit)
ほら、俺のセラピストの電話番号だ。(クソッ)
※前作『Bastard』や本作『Goblin』のコンセプトである、架空の精神科医「Dr. TC」を指している。
You tell him all your problems, he's fuckin' awesome with listenin' (Haha)
お前の悩みは全部そいつに話せよ、あいつは聞き上手だからな(ハハッ)
[Chorus]
Uh, Wolf Haley, uh, Golf Wang
あぁ、ウルフ・ヘイリー、ゴルフ・ワン。
Uh, Wolf Haley, Golf fuckin' Wang
あぁ、ウルフ・ヘイリー、クソったれなゴルフ・ワンだ。
[Verse 2]
Jesus called, he said he's sick of the disses
ジーザスから電話があって、ディスられるのはもうウンザリだってさ。
I told him to quit bitchin', this isn't a fuckin' hotline
俺は「愚痴るのはやめろ、ここは悩み相談のホットラインじゃねえぞ」って言ってやった。
For a fuckin' shrink, sheesh, I already got mine
精神科医宛てなら他を当たれ、俺にはもうお抱えがいるからな。
And he's not fuckin' workin', I think I'm wastin' my damn time
そいつも全然仕事してねえけどな、時間の無駄だぜ。
※セラピー(Dr. TCとの対話)が全く自分の精神状態を改善していないことへの苛立ち。
I'm clockin' three past six and goin' postal
俺は6時3分(666)を刻んで、ブチギレて暴れ回る。
※three past six=6の3つ並び、つまり悪魔の数字「666」を暗示。goin' postal=職場で銃乱射事件を起こすような「極度の怒り・発狂」を意味するスラング。
This the revenge of the dicks, that's nine cocks that cock 9's
これはディックどもの復讐だ。9丁の9ミリ銃を構える9人のチンコ野郎さ。
※Odd Futureのメンバーたち(大所帯)を指しており、銃(9mm)を装填する(cock)と男性器(cock)を掛けた言葉遊び。
This ain't no V. Tech shit, or Columbine
これはバージニア工科大学やコロンバインの話じゃねえ。
※米国で起きた凄惨な学校銃乱射事件(バージニア工科大学事件、コロンバイン高校事件)に言及する過激なライン。
But after bowling, I went home for some damn Adventure Time
でもボウリングの後は、家に帰って『アドベンチャー・タイム』を観るんだ。
※コロンバイン事件のドキュメンタリー映画『ボウリング・フォー・コロンバイン』と掛けている。『アドベンチャー・タイム』は人気アニメ。猟奇的な発言の直後に子供っぽい行動をとる矛盾を描写。
(What'd you do?) I slipped myself some pink Xannies (Yeah)
(何したんだ?)ピンクのザナックスをキメてやったよ。(ああ)
※Xannies=抗不安薬のザナックス(Xanax)。タイラーは実際にはストレート・エッジ(酒やドラッグをやらない)であり、これも架空のキャラクターとしての発言。
And danced around the house in all-over print panties
総柄プリントのパンティー一丁で家中を踊り回ったのさ。
My mom's gone, that fuckin' broad will never understand me
オフクロは出かけた。あのクソアマは絶対に俺を理解しねえ。
I'm not gay, I just wanna boogie to some Marvin
俺はゲイじゃねえ、ただマーヴィン・ゲイの曲で踊りたいだけだ。
※ゲイではないと言いながらパンティー一丁で踊る矛盾。Marvin=ソウル歌手マーヴィン・ゲイ(Marvin Gaye)と「Gay」を掛けている。
(What you think of Hayley Williams?)
(ヘイリー・ウィリアムスについてどう思う?)
Fuck her, Wolf Haley robbin' them
あんなビッチくたばれ、ウルフ・ヘイリーが強盗してやる。
※Hayley Williams=ロックバンドParamoreのボーカル。Tylerのオルター・エゴ「Haley」と同名であることからの連想。
I'll crash that fuckin' airplane that that faggot nigga B.o.B is in
あのオカマ野郎、B.o.Bが乗ってる飛行機を墜落させてやるよ。
※B.o.Bのヒット曲「Airplanes」を嘲笑している。当時タイラーはメインストリームのポップラップを激しく嫌悪していた。
And stab Bruno Mars in his goddamn esophagus
そしてブルーノ・マーズのクソ食道を刺してやる。
※ブルーノ・マーズは当時B.o.Bの客演などで活躍していたポップアイコン。後にブルーノはこのラインに対して「刺されないようにしないと」と大人の余裕でジョークを返している。
And won't stop until the cops come in
サツが踏み込んでくるまでやめねえぞ。
I'm an overachiever, so how about I start a team of leaders
俺は成績優秀者だからな、リーダー集団でも作ってやろうか。
And pick up Stevie Wonder to be the wide receiver? (Cool)
スティーヴィー・ワンダーをワイドレシーバーに抜擢するなんてどうだ?(いいね)
※盲目の大物歌手スティーヴィー・ワンダーに、ボールを「目で追う」必要があるアメフトのポジションを任せるというブラックジョーク。
Green paper, gold teeth, and pregnant golden retrievers
緑の紙幣(金)、金歯、それに妊娠したゴールデンレトリバー。
※ヒップホップのステレオタイプな成功の象徴(金と金歯)に、無意味で不条理なもの(犬)を並べている。
All I want, fuck money, diamonds, and bitches, don't need 'em
俺が欲しいのはそれだけだ。金やダイヤやビッチなんてクソくらえ、必要ねえよ。
But where the fat ones at? I got somethin' to feed 'em
でもデブのビッチどもはどこにいる? 食わせてやりたいもんがあるんだ。
It's some cooking books, the black kids never wanted to read 'em
料理本だよ、黒人のガキどもが絶対に読みたがらないやつな。
Snap back, green ch-ch-chia fuckin' leaves
スナップバックのキャップに、緑のチアの葉っぱ。
It's been a couple months
もう数ヶ月経つぜ。
And Tina still ain't perm her fuckin' weave
ティナは未だにクソみたいなウィッグにパーマをかけてねえ。
※Tina=前作『Bastard』に収録された曲「Tina」に登場する実在の友人。彼女がいまだに髪の手入れをしていないという内輪ネタ。
Damn
クソッ。
[Chorus]
Uh, Wolf Haley, uh, Golf Wang
あぁ、ウルフ・ヘイリー、ゴルフ・ワン。
Uh, Wolf Haley, Golf Wang, yeah
あぁ、ウルフ・ヘイリー、ゴルフ・ワン。
Goddamn goblin
クソったれなゴブリンだ。
※ゴブリン=本アルバムのタイトルであり、社会から疎外された化け物のような存在としての自認。
Wolf Haley, uh, Golf Wang
ウルフ・ヘイリー、ゴルフ・ワン。
Uh, Wolf Haley, Golf Wang, yeah
あぁ、ウルフ・ヘイリー、ゴルフ・ワン。
[Verse 3]
They say success is the best revenge
成功こそが最高の復讐だって言うだろ。
So I beat DeShay up with the stack of magazines I'm in
だから俺は、自分が載ってる雑誌の束でDeShayをボコボコにしてやるんだ。
※DeShay=元Odd Futureのプロデューサー、ブランドン・デシェイ(brandUn DeShay)。タイラーと仲違いして脱退した彼に対するビーフ。自分が雑誌の表紙を飾るほど成功したことを見せつけている。
Oh, not again, another critic writing report
あーあ、またかよ。別の評論家が記事を書いてやがる。
I'm stabbin' any bloggin' faggot hipster with a pitchfork
ブログを書いてるオカマのヒップスターどもを、ピッチフォークで刺してやる。
※Pitchfork=大手音楽メディア。評価を気にする批評家たちを、農具のピッチフォーク(熊手)で刺すと脅す秀逸な言葉遊び。
Still suicidal, I am
俺はまだ自殺願望がある。
I'm Wolf, Tyler put this fuckin' knife in my hand
俺はウルフだ、タイラーが俺の手にこのクソナイフを持たせたんだ。
※タイラーの別の人格「ウルフ・ヘイリー」が、本体であるタイラーに操作されているという狂気的な精神状態の描写。
I'm Wolf, Ace gon' put that fuckin' hole in my head
俺はウルフだ、エースが俺の頭に風穴を開けるだろうよ。
※Ace=「Ace the Creator」のこと。タイラーの初期のプロデューサー名義。複数の人格が自己崩壊を起こしている。
And I'm Wolf, that was me who shoved a cock in your bitch
俺はウルフだ、お前のビッチにチンコをぶち込んだのは俺だ。
(What the fuck, man?) Fuck the fame and all the hype, G
(なんだって?)名声もハイプもクソくらえだぜ。
I just wanna know if my father would ever like me
ただ、親父が俺を好きになってくれるかどうかが知りたいだけなんだ。
※これまで過激な発言を繰り返してきた中で、突如として父親への強烈な愛情への渇望を吐露する痛切なライン。タイラーの抱えるトラウマの核心。
But I don't give a fuck, so he's probably just like me
でも俺は何も気にしねえから、たぶん親父も俺と同じなんだろうな。
A motherfuckin' goblin
クソったれなゴブリンなのさ。
(Fuck everything, man) That's what my conscience said
(全部クソくらえだ)それが俺の「良心」の言ったことだ。
※「良心(conscience)」=Dr. TCやタイラー自身のまともな判断力。
Then it bunny-hopped off my shoulder, now my conscience dead
そしたらそいつは俺の肩からバニーホップして消えた。今じゃ俺の良心は死んでる。
※良心が肩から飛び去り、完全なモラルハザードに陥ったことを意味する。
Now the only guidance that I had is splattered on cement
今や俺が持ってた唯一の導き(良心)は、コンクリートにスプラッター(飛び散って)になってるぜ。
Actions speak louder than words, let me try this shit
「行動は言葉よりも雄弁だ」ってな。俺に試させてくれよ。
Dead
死。
※MVではこのラインの後、タイラーが自ら首を吊る場面で曲が終わる。「自殺」という行動を起こすことで曲を締めくくっている。
