Artist: Nas
Album: It Was Written
Song Title: Silent Murder
概要
本作は、Nasの2ndアルバム『It Was Written』(1996年)のカセットテープ版およびヨーロッパ盤のボーナストラックとして収録された隠れた名曲である。Live Squadの関連プロデューサーであるLo-Maxが手掛けた哀愁漂うビートに乗せ、ストリートに潜む「静かなる殺人(Silent Murder)」をテーマにしている。ギャングスタの栄枯盛衰や警察との軋轢、さらにはマルコムX暗殺における政府の陰謀説にまで言及し、ゲットーの底辺から社会構造全体を見渡すNasの鋭い観察眼が光る。アウトロでは旧約聖書における「カインとアベル」の兄弟殺しの逸話が引用され、黒人コミュニティ内で繰り返される嫉妬や憎悪による同胞殺し(Black-on-Black Crime)への痛烈なメタファーとして機能している。
和訳
[Chorus]
Silent, silent murder
静かなる、静かなる殺人。
Silent, silent murder
静かなる、静かなる殺人。
Silent, silent murder
静かなる、静かなる殺人。
Silent, silent murder
静かなる、静かなる殺人。
[Verse 1]
It's sort of like the conclusion to Color Purple, niggas is losing
映画『カラーパープル』の結末みたいだ、俺たちは負け続けてる。
※Color Purple=黒人女性の過酷な人生と解放を描いたスティーブン・スピルバーグ監督の映画。ストリートの黒人たちが直面する抑圧された現状と重ね合わせている。
Confusion, with one-time on pursuit moves in
混乱の中、サツ(ワン・タイム)が追跡して乗り込んでくる。
※one-time=「一度見たら逃げろ」という由来から、警察を指すストリート・スラング。
Grabbing niggas up in this movement to rule shit
このムーブメントの中で黒人たちをしょっ引き、全てを支配しようとする。
Cop versus the block, shorties is schooled quick
サツ対ブロック(ストリート)。ガキどもはすぐに現実を叩き込まれる。
Lesson number one — if you arrested and hung
レッスンその1だ——もしお前がパクられて痛い目を見ても、
※hung=本来は「首を吊る」だが、ここでは警察からの激しい尋問や不当な暴力を意味する。
Where niggas is from, gotta keep a lid on your tongue
俺たちの出身地じゃ、絶対に口を割っちゃいけねえ(スニッチしてはいけない)。
It's like silent murder, I hit blunts hard like Ray Mercer
まるで静かなる殺人だ。俺はレイ・マーサーみたいにハードにブラント(ハッパ)を吸い込む。
※Ray Mercer=元WBO世界ヘビー級王者のプロボクサー。強烈なパンチ(ヒット)とハッパを吸う(ヒット)を掛けている。
The violent words of a prince in a palace of Persia
ペルシャの宮殿にいる王子の、暴力的な言葉さ。
※自身の知性と権力を中東の王族に例えたマフィオソ的なメタファー。
The cognac plurger, plus the trees
コニャックをがぶ飲みし、おまけにハッパをキメる。
But who's the foul one to make his nose take a freeze?
だが、鼻を凍らせる(コカインを吸う)ような汚えマネをしてるのは誰だ?
And got enough gall to rock ice in all hype
しかも厚かましくも、見栄を張ってアイス(ダイヤ)をこれ見よがしにつけてやがる。
Used to be a general, but just lost his stripe
昔は将軍(大物)だったが、今は階級章を失っちまった(落ちぶれた)。
Pipe dreams and white fiends and all-nighters
パイプの夢(クラックの幻覚)、白人のヤク中ども、そして徹夜の日々。
Collect calls from lifers, Astoria wars with Cypress
終身刑の仲間からのコレクトコール。アストリア対サイプレスの抗争。
※Astoria / Cypress=どちらもニューヨーク・クイーンズ区の地名およびプロジェクト(公営団地)。地元での縄張り争いを指す。
Since I got a problem with the law-writers
俺は法律を作る連中(政府や権力者)と揉めてるからな。
I kick some more items just to explore horizons
視野を広げるために、さらにいくつかのアイテム(知識やライム)を提示してやるぜ。
The palm lady dreamt of this day
手相占い師のババアが、この日が来るのを夢に見て(予言して)たよ。
So I'ma play the crib close, smokin' with the big toast and lay
だから俺は家(クリブ)に籠もって、デカいチャカ(トースト)と一緒にハッパを吸って身を潜めるのさ。
[Chorus]
Silent, silent murder
静かなる、静かなる殺人。
[Verse 2]
They say the arms of Nicky Barnes would be enough to blast
ニッキー・バーンズの武装(力)なら、ブッ放すには十分だと言われてる。
※Nicky Barnes=1970年代にニューヨークのハーレムを牛耳った悪名高い麻薬王「ミスター・アンタッチャブル」。
A lot of rich niggas fell and started pumping gas
多くの金持ちのハスラーたちが没落し、今じゃガソリンスタンドで働いてる。
Was it the mind of C.I.A. that bumped off Malik Shabazz?
マリク・シャバズを暗殺したのは、CIAの差し金だったのか?
※Malik Shabazz=マルコムX(黒人解放運動の指導者)のムスリム名。彼の暗殺の背後にアメリカ政府の陰謀があったとする説に触れている。
Fuck what they teach in class, I'ma reach the mass
学校で教えることなんかクソ食らえだ。俺が大衆に真実を届けてやる。
Strap up, no back-up, it's jungle tactics
チャカを持て、援軍はねえ、ジャングルの戦術さ。
Living practice, out-of-line niggas get smacked backwards
生き残るための訓練だ。一線を越えた野郎どもは裏拳でぶっ飛ばされる。
So wear it if the cap fits
だから、もし帽子が合うなら被ってみな(思い当たる節があるなら自分のことだと思え)。
※if the cap fits, wear it=「自分に思い当たるなら、それが真実だと受け止めろ」という意味の英語の慣用句。
Folded up money and mad clips are stacked right under my mattress
折りたたんだ札束と大量のマガジン(弾倉)が、俺のマットレスの下に積み上げられてる。
To smoke a nigga like a Hughes Brothers motion picture
ヒューズ兄弟の映画みたいに、野郎どもをスモークして(撃ち殺して)やる。
※Hughes Brothers=『Menace II Society(ポケットいっぱいの涙)』などのフッド映画を手掛けた双子の映画監督。
Niggas getting open, crews roping older niggas
野郎どもは隙を見せ、クルーたちは年上のハスラーたちを罠にかけて縛り上げる。
April Fools, they laugh, the jokes on the benches
エイプリルフールだ、奴らは笑う。ベンチで冗談を言い合ってる。
Seeds outside, my nigga spoke on his sentence
外には子供たち(シーズ)がいる。俺のダチが自分の刑期について語ってたぜ。
[Chorus]
Silent, silent murder
静かなる、静かなる殺人。
Silent, silent murder
静かなる、静かなる殺人。
Silent, silent murder
静かなる、静かなる殺人。
Silent, silent murder
静かなる、静かなる殺人。
Silent...
静かなる...
Silent, silent murder
静かなる、静かなる殺人。
[Verse 3]
My right-handers never play too close to cameras
俺の右腕(側近)たちは、絶対にカメラの近くでは目立つ真似はしねえ。
It's night time, scandalers circle the loud gamblers
夜になると、スキャンダルを狙う奴らが騒がしいギャンブラーたちを囲み込む。
Peace-making niggas pep talk, the Beast making niggas walk
仲裁役の野郎どもが活を入れ、ビースト(警察)が野郎どもを連行する。
Off the hot avenues with their brew
熱を帯びた(危険な)大通りから、酒のボトルを取り上げてな。
Time to get this loot – countless
この金(ルート)を稼ぐ時間だ——数え切れないほどな。
'Cause, son, it ain't no youth fountains
だってよ兄弟、若返りの泉なんてねえんだからな。
Niggas take cash and shoot, bouncin'
野郎どもは現金を奪い、発砲して、ズラかるのさ。
Pakistanians are took hostage
パキスタン人たちが人質に取られる。
※クイーンズなどでデリや酒屋を経営する中東や南アジア系の移民が、強盗のターゲットになるゲットーの生々しい日常。
Locked up inside a linen closet, known for spending pies up
リネンのクローゼットに閉じ込められる。大量のパイ(コカイン)を捌いてることで知られる奴らだ。
What's the flavor when your neighbors do Jake favors?
お前の近所の奴がサツ(ジェイク)に媚を売る(チクる)時、どんな味(気分)がする?
Locking real niggas down and letting fake players
本物のハスラーたちをムショにぶち込ませ、フェイクなプレイヤーたちを、
Roam around the projects, it's lyrical logic
プロジェクト(団地)の周りでうろつかせる。これがリリカルな論理(ロジック)さ。
I dilute, then we can inject the right composite
俺が(真実を)薄めて、それから適切な配合で注入してやるよ。
When plotting on murderous schemes
殺人計画を企ててる時、
It seems I'm ghostly called by the essence of Queens
まるでクイーンズの本質(エッセンス)から、幽霊のように呼ばれてる気がするんだ。
The palm lady dreamt of this day
手相占い師のババアがこの日を予言してたよ。
So I'ma play the crib close, smokin' with the big toast and lay
だから俺は家に籠もって、デカいチャカと一緒にハッパを吸って身を潜めるのさ。
[Chorus]
Silent, silent murder
静かなる、静かなる殺人。
Silent, silent murder
静かなる、静かなる殺人。
Silent, silent murder
静かなる、静かなる殺人。
Silent, silent murder
静かなる、静かなる殺人。
Silent, silent murder
静かなる、静かなる殺人。
Silent, silent murder
静かなる、静かなる殺人。
[Outro]
And Cain killed his brother Abel
そしてカインは弟のアベルを殺した。
When God accepted Abel's offering and not his
神がアベルの供物を受け入れ、カインの供物を受け入れなかった時、
Abel's offering showed that Cain was not giving his best to God
アベルの供物は、カインが神に最善を尽くしていなかったことを示していた。
And Cain's jealous anger drove him to murder
そしてカインの嫉妬深い怒りが、彼を殺人に駆り立てたのだ。
Drove him to murder
彼を殺人に駆り立てたのだ。
※旧約聖書の「カインとアベル」の物語。人類初の殺人であり、ここではストリートにおいて黒人同士が嫉妬や憎悪によって殺し合うこと(Black-on-Black Crime)への隠喩として用いられている。
![It Was Written [Explicit] It Was Written [Explicit]](https://m.media-amazon.com/images/I/51mLA2lLxzS._SL500_.jpg)