Artist: Nas
Album: It Was Written
Song Title: Take It in Blood
概要
Nasの2ndアルバム『It Was Written』(1996年)に収録された、マフィオソ・ラップの真髄を味わえる隠れた名曲である。プロデュースはLive Squadらが手掛け、Fantastic Four「Mixed Up Moods and Attitudes」をサンプリングした哀愁漂うシネマティックなビートが特徴的だ。リリックでは、高級車やブランド品で着飾るハスラーの成功劇と、銃撃戦や刑務所といったゲットーの過酷な現実が巧みに対比されている。また、1995年に凶弾に倒れたLive SquadのStretchへの追悼も込められており、「俺の金と時間を奪うなら、血で購え」という冷徹なストリートの掟(Take It in Blood)を高度なライミングで描写した傑作だ。
和訳
[Chorus]
I made it like that, I bought it like that, I'm livin' like that
俺はそうやって成り上がり、そうやって稼ぎ、そうやって生きてるんだ。
※Ultramagnetic MCs「Ease Back」からのスクラッチ・サンプリング。自身の揺るぎないステータスとライフスタイルを誇示している。
I made it like that, I bought it like that, I'm livin' like that
俺はそうやって成り上がり、そうやって稼ぎ、そうやって生きてる。
[Verse 1]
Yo, I never brag how real I keep it, 'cause it's the best secret
よぉ、俺は自分がどれだけリアルかなんて自慢しねえ、最高の秘密だからな。
I rock a vest, prestigious Cuban link flooded Jesus
防弾チョッキを着込み、最高級のキューバンリンクとダイヤまみれのジーザスピースを揺らす。
In a Lex, watchin' Kathie Lee & Regis
レクサスに乗りながら、(テレビで)キャシー・リーとレジスを見る。
※Kathie Lee & Regis=90年代のアメリカで大人気だった朝のトーク番組『Live with Regis and Kathie Lee』。高級車にテレビモニターを搭載しているという成金的なフレックス。
My actions are one with the seasons
俺の行動は季節と一体化してる。
A TEC squeezin' executioner, winter time, I rock a fur
TEC-9(銃)をブッ放す処刑人さ。冬になればファーのコートを着込む。
Mega popular center of attraction
俺は超絶人気の注目の的だ。
Climaxin', my bitches, they be laughin'
絶頂を迎えながら、俺のビッチたちは笑ってる。
They high from sniffin' coke off a twenty-cent Andrew Jackson
あいつら、20ドル札のアンドリュー・ジャクソンからコカインを吸ってハイになってるんだ。
※twenty-cent Andrew Jackson=20ドル紙幣(肖像画が第7代大統領アンドリュー・ジャクソン)のこと。丸めた紙幣をストロー代わりにしてコカインを吸引する退廃的な描写。
City lights spark a New York night
街のネオンがニューヨークの夜を輝かせる。
Rossi and Martini sippin', Sergio Tacchini
マルティーニ・ロッシをすすり、セルジオ・タッキーニを着こなす。
※Rossi and Martini / Sergio Tacchini=イタリアのベルモット酒と高級スポーツウェアブランド。マフィオソ・ラップ特有のヨーロッパ志向なラグジュアリーの象徴。
Flippin' mad pies, low price, I blow dice and throw them
大量のパイ(コカイン)を安値でさばき、ダイスに息を吹きかけて投げる。
.45 by my scrotum, manifest the 'Do or Die' slogan
股間には45口径を忍ばせ、「やるか死ぬか(Do or Die)」のスローガンを体現する。
My niggas roll in ten M3's
俺のダチは10台のBMW・M3で連るむ。
Twenty gods poppin' wheelies on Kawasakis
20人の神(仲間)たちがカワサキのバイクでウィリーをキメるんだ。
※gods=Five Percent Nationの教義で、黒人男性自身を「神(God)」とする思想に基づいた仲間への呼称。
Hip-hop's got me on some ol' sprayin' shots like a drum roll
ヒップホップのせいで、俺はドラムロールみたいに銃弾をバラ撒くような状態になっちまった。
Blankin' out, never miscount the shells my gun hold
頭を真っ白にしながらも、銃に入ってる弾の数は絶対に数え間違えねえ。
I don't stunt, I regulate
俺はイキったりしねえ、ただシマを仕切るだけだ。
Henny and Sprite I separate, watchin' crab niggas marinate
ヘネシーとスプライトは別々に飲みながら、カニ野郎(雑魚)どもが漬け込まれるのを見物する。
※crab niggas=「Crab in a barrel(樽の中の蟹)」に由来し、他人の足を引っ張り合うゲットーの卑怯な連中。marinate=マリネのように「漬け込まれる(罠にはまる、あるいは停滞する)」こと。
I'm all about TECs, a good jux and sex
俺の頭にあるのはTEC(銃)と、イケてる強盗、それにセックスだ。
Israelite books, holdin' government names from Ness
イスラエルの教典を読み、エリオット・ネスから本名(ガバメント・ネーム)を隠し通す。
※Ness=禁酒法時代の伝説的捜査官エリオット・ネス。ここでは連邦警察(Feds)や警察権力の隠喩。
MCs are crawlin' out every hole in the slum
MCどもがスラムのあらゆる穴から這い出してきやがる。
You be aight like blood money in a pimp's cum
お前らはポン引きの精液にまみれた血塗られた金みたいに「まあまあ」なレベルだな。
※aight=「Alright」のスラング。相手のラッパーのレベルが、ひどく汚れた金程度で「大したことない」と痛烈にディスっている。
[Chorus]
I made it like that, I bought it like that, I'm livin' like that
俺はそうやって成り上がり、そうやって稼ぎ、そうやって生きてる。
I made it like that, I bought it like that, I'm livin' like that
俺はそうやって成り上がり、そうやって稼ぎ、そうやって生きてる。
For you wack MCs
お前らワックなMCどものためにな。
[Verse 2]
Currency is made in the trust of the Messiah, I'm spendin' it to get higher
金(通貨)はメシア(救世主)への信仰で作られてる。俺はもっとハイになるためにそれを使い果たす。
※アメリカ紙幣の印字「In God We Trust」を引用した皮肉。
Earth, Wind and Fire singin' Reasons why I'm
アース・ウィンド・アンド・ファイアーが、俺が朝早く起きる「Reasons(理由)」を歌ってる。
Up early, trustworthy as a nine that bust early
すぐぶっ放せる9ミリ拳銃くらい信用できるぜ。
※Earth, Wind & Fireの1975年の名曲「Reasons」を掛けている。
Sunshine on my grill, I spill
朝日が俺の金歯(グリル)を照らす。架空の墓にレミーマルタンをこぼし、
Remy on imaginary graves, put my hat on my waves
ウェーブのかかった髪にハットを被る。
Latter Day Saints say religious praise
モルモン教徒(末日聖徒イエス・キリスト教会)どもが宗教的な賛美を歌ってる。
I, dolo, challenge any team or solo
俺は単独(ドーロ)で、どんなチームやソロ相手でも受けて立つぜ。
You must be buggin' out — new to my shit, home on a furlough
お前らイカれてるぜ——俺の音楽に乗り遅れてる。まるで一時帰休でムショから戻ったばっかりみたいだな。
Ask around who's laid up, sharp and straight up
誰が隠れ家で女と寝てて、誰が鋭く真っ直ぐ生きてるか、周りに聞いてみな。
Mafioso, gettin' niggas' wakes sprayed up
マフィオソ・スタイルさ。野郎どもの通夜(葬式)ですら銃弾を浴びせてやる。
Skies are misty, my life predicted by a gypsy
空は霧がかっていて、俺の人生はジプシー(占い師)に予言されてる。
I'll one day walk into shots, drunk off champagne from Sicily
いつか俺も、シチリア産のシャンパンで酔っ払ったまま銃撃に巻き込まれるんだろうな。
This be the drama, I'ma pause like a comma in a sentence
これがストリートのドラマだ。俺は文章の中のカンマ(読点)みたいに、一呼吸置く。
Paragraphs indented
段落がインデントされる。
Bloodshot red eyes, high, yellow envelopes of lye
血走った赤い目、ハイになり、黄色い封筒に入った極上のハッパ(ライ)。
Openin' cigars, let tobacco fly
葉巻を切り開いて、中身のタバコの葉を空に捨てる。
※ブラント(マリファナ入りの葉巻)を作るための準備動作。
Condos are tune-proof, we're lookin' out the sky's moon roof
コンドミニアムは防音バッチリだ。俺たちは空のムーンルーフから外を見下ろしてる。
Shittin' like gin and prune juice
ジンとプルーンジュースを混ぜて飲んだ時みたいに、ドバっとブチまけて(圧倒して)やる。
※プルーンジュースは強力な下剤として知られる。ライバルたちを「クソみたいに垂れ流させる」という生々しいジョーク。
Yo, the system wants the coon's noose — hang 'em high
よぉ、この国のシステムは黒人の首を吊るための縄を望んでやがる。「奴らを高く吊るせ」ってな。
※coon=黒人を侮蔑する人種差別的なスラング。アメリカの司法や社会構造が本質的に黒人を排除しようとしていることを告発している。
Courtrooms filled up, it's off the hook while I
法廷は満杯で、マジで異常な状況だ。その間、俺は、
Just wrote a statement like I'm facin' twenty-years in the basement
独房(地下室)で20年の刑に直面してるかのような供述書を書いてるんだ。
Chillin' on a VI with Mumia
ムミアと一緒にVI(面会室)でくつろいでるのさ。
※Mumia=ムミア・アブ=ジャマール。警官殺害の罪で死刑判決を受けたが、冤罪説が根強く政治犯としてヒップホップ界から支持を集めた黒人活動家。
For wearin' chrome, I told the judge snakes slither like Sharon Stone
クローム(銃)を所持した罪で、俺は裁判官に「ヘビどもはシャロン・ストーンみたいに滑り寄ってくるんです」と言ってやった。
※Sharon Stone=映画『氷の微笑』の女優。ファム・ファタール(魔性の女)と、ストリートの裏切り者(snakes)の誘惑を掛けている。
But like Capone, I'm thrown, yo
だがアル・カポネみたいに、俺もブチ込まれちまったよ。
[Chorus]
I made it like that, I bought it like that, I'm livin' like that
俺はそうやって成り上がり、そうやって稼ぎ、そうやって生きてる。
I made it like that, I bought it like that, I'm livin' like that
俺はそうやって成り上がり、そうやって稼ぎ、そうやって生きてる。
For you wack MCs
お前らワックなMCどものためにな。
I made it like that, I bought it like that, I'm livin' like that
俺はそうやって成り上がり、そうやって稼ぎ、そうやって生きてる。
(Lyrical, ly-lyrical shine)
(リリカルに、リリカルに輝く)
I made it like that, I bought it like that, I'm livin' like that
俺はそうやって成り上がり、そうやって稼ぎ、そうやって生きてる。
For you wack MCs
お前らワックなMCどものためにな。
[Verse 3]
Yo, the time is wastin', I use the mind elevation
よぉ、時間が無駄に過ぎていく。俺は精神を昇華(エレベーション)させる。
Dime sack lacin', court pen pacin'
10ドルのハッパに粉をまぶし、裁判所の待合房をウロウロと歩き回る。
Individual, lyrical math abrasion
個々のリリカルな数学的摩擦さ。
※math=Five Percent NationのSupreme Mathematics(万物を数字で読み解く教義)に基づいた知的な言葉遊び。
Psychic evaluation, the foulest nation
精神鑑定、世界で最も腐りきったこの国。
We livin' in, dangerous lives, mad leak and battered wives
俺たちが生きてる場所は、危険な人生、血が流れまくり、虐待された妻たちが溢れてる。
A lifestyle on bad streets is patternized
悪いストリートのライフスタイルは、完全にパターン化(固定化)されちまってる。
Wise men build and destroy
賢き者たち(ワイズメン)は創造し、そして破壊する。
※build and destroy=Five Percent Nationの用語。知識を築き上げ、無知を打ち壊すこと。
While the Real McCoy dope fiend named Detroit is still dealin' boy
その一方で、「デトロイト」って名前の本物のジャンキーが、いまだにヘロイン(ボーイ)を売り捌いてる。
※boy=ヘロインを指すストリートスラング。
Coke suppliers actin' biased
コカインの元締めどもは偏見に満ちた態度をとる。
'Cause rumors say that niggas wear wires and we liars
なぜなら、「あいつらは盗聴器をつけてる」とか「俺たちは嘘つきだ」って噂が流れてるからな。
But every night the gat's fired, and every day a rat's hired
だが毎晩のように銃がぶっ放され、毎日のようにサツの犬(チクリ魔)が雇われてるんだ。
I still remain the mack flyest in the phat Kani, it's
俺はいまだにファットなKarl Kaniを着こなす、最高にイケてるマック(色男)のままだ。
Just the killer in me, slash drug dealer, MC
俺の中の殺人鬼、兼ドラッグディーラー、兼MCの顔さ。
Ex-slug filler, semi mug peeler, demi
元・鉛玉の装填手、半分顔を剥ぐような強盗、それにドゥミ・セック(シャンパン)。
Bottles of Mo', yo, simply follow me flow
モエのボトルを開ける。よぉ、ただ俺のフロウについてきな。
Put poetry inside a crack pot and blow
クラックを煮詰める鍋に「詩(ポエトリー)」を放り込んで、火にかける(ブレイクさせる)んだ。
Rough hoes pull crack out pussies and butt-holes
ガサツな女どもが、プッシーやケツの穴からクラックを引っ張り出す。
Bring the G's and the D's roll, they can't touch those
ギャングスタたち(G's)を連れてこい。サツ(D's)が巡回しても、俺たちには触れられねえ。
※D's=Detectives(刑事、警察)のスラング。
Why shoot the breeze about it, when you could be about it?
なんでウダウダ雑談ばっかりしてんだ? お前自身が行動で示せばいいだろ?
My degrees are routed toward the peasy-haired brick housing
俺の学位(知識)は、チリチリ髪の奴らが住むレンガ造りの団地へと向けられてる。
And studded-up, thick medallions
そしてダイヤが埋め込まれた極太のメダリオン(ネックレス)へと。
Rich niggas transportin' thousands
金持ちのハスラーたちは何千ものブツを運び、
Foreign cash exchange amountin' to millions
外国紙幣の交換は数百万ドルにも上る。
Doors is locked, rocks is chopped, watch the cameras in the ceilings
ドアはロックされ、ロック(クラック)は細かく砕かれる。天井の監視カメラには気をつけろ。
Trick bitches catchin' mad feelings
客を取るビッチどもは、無駄に感情移入(マジ恋)しやがる。
Peelin' off in a Lex Jeep, techniques is four-wheelin'
レクサスのジープでかっ飛ばす。テクニックは四輪駆動さ。
I bet it be some shit when we connect with Stretch
俺たちがStretchと再会した時、そりゃあヤバいことになるぜ。
※Stretch=1995年に銃殺されたプロデューサー/ラッパー。Live Squadのメンバーで2PacやNasの親友だった彼への追悼と、あの世での再会を誓っている。
When we catch them sex niggas with the TECs you blessed
お前が祝福してくれたTEC(銃)で、あのクソ野郎どもを捕らえた時にな。
Word! So now it's on, never wasted a slug
間違いない! だから抗争の始まりだ。鉛玉を一発も無駄にはしねえ。
Time is money, when it comes to mine, take it in blood
時は金なりだ。俺のシノギを邪魔するなら、その代償は血で支払わせるぜ。
※Take It in Blood=曲タイトルの回収。奪われた時間や金は、相手の血(命)で取り立てるというマフィア的な掟。
[Chorus]
I made it like that, I bought it like that, I'm livin' like that
俺はそうやって成り上がり、そうやって稼ぎ、そうやって生きてる。
I made it like that, I bought it like that, I'm livin' like that
俺はそうやって成り上がり、そうやって稼ぎ、そうやって生きてる。
For you wack MCs
お前らワックなMCどものためにな。
I made it like that, I bought it like that, I'm livin' like that
俺はそうやって成り上がり、そうやって稼ぎ、そうやって生きてる。
I made it like that, I bought it like that, I'm livin' like that
俺はそうやって成り上がり、そうやって稼ぎ、そうやって生きてる。
For you wack MCs
お前らワックなMCどものためにな。
[Outro]
Yeah, Capone-N-Noreaga
イェー、Capone-N-Noreaga。
Yeah, yo, official Queensbridge murderers
あぁ、よぉ、オフィシャルなクイーンズブリッジの殺人鬼ども。
Mobb Deep keep it real, though
Mobb Deep、リアルであり続けろよ。
Motherfuckin' AZ, yo
クソヤバいAZ、よぉ。
Mega, Mega, whatever
Cormega、Mega、何でもいいぜ。
Scarlett O'Hara, Fox Boogie
スカーレット・オハラ、Fox Boogie(Foxy Brown)。
East New York
イースト・ニューヨーク。
Yambo, Brownsville
ヤンボ、ブラウンズヴィル。
Wizard, Far Rockaway
ウィザード、ファー・ロッカウェイ。
Big Bo, Jersey
ビッグ・ボー、ニュージャージー。
Connecticut, DC, Sudan
コネチカット、D.C.、スーダン。
VA, NC, LA
バージニア、ノースカロライナ、L.A.。
So on and so on
その他もろもろ。
Big Ha, Houston Fifth Ward
ビッグ・ハ、ヒューストンの第5区(フィフス・ウォード)。
Black Ed, keep it real, Moe
ブラック・エド、リアルでいろよ、Moe。
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