Artist: Nas
Album: It Was Written
Song Title: I Gave You Power
概要
Nasの豊かな創造性とストーリーテリングの才能が遺憾無く発揮された、ヒップホップ史に残るコンセプチュアルな名曲である。DJ Premierが手掛けた哀愁漂うビートに乗せ、Nasは自身を「一丁の銃(デザートイーグル)」に擬人化し、ストリートにおける暴力の連鎖を冷徹な視点から描き出している。持ち主に殺戮を強いられる銃自身の葛藤や悲哀を通して、黒人コミュニティを破壊する銃社会の闇を浮き彫りにした本作の斬新な手法は、後に2Pacの「Me and My Girlfriend」などにも多大な影響を与えた。最終的に持ち主の命を救うため(あるいは見限って)弾詰まりを起こす結末は、あまりにもドラマティックで皮肉に満ちている。
和訳
[Intro]
Damn, look how muh'fuckers use a nigga
クソッ、どいつもこいつも俺をどう扱ってやがるか見てみろよ。
Just use me for whatever the fuck they want
あいつらの好きなように、ただ俺を利用しやがる。
I don't get to say shit
俺には文句を言う権利もねぇんだ。
Just grab me, just do what the fuck they want
ただ俺をひっつかんで、やりたい放題しやがる。
Sell me, throw me away
売り払われたり、捨てられたりな。
Niggas just don't give a fuck about a nigga like me, right
あいつら、俺みたいな奴のことなんて全く気にも留めねぇんだろ。
Like I'm a f-, I'm a gun, shit
まるで俺が…俺が銃であるかのように、クソッ。
It's like I'm a motherfucking gun, I can't believe this shit
まるで俺が一丁のクソみたいな銃になった気分だ、信じられねぇよ。
※Nasが自身を「銃」という無機物に憑依(擬人化)させるイントロダクション。ストリートで使い捨てられる若者の命と、凶器として使われる銃の運命を重ね合わせている。
Word up, word up
マジでな、間違いない。
[Verse 1]
I seen some cold nights and bloody days, they grab me, bullets spray
凍えるような夜も、血塗られた日々も見てきた。奴らは俺を握りしめ、弾丸をバラ撒く。
They use me wrong, so I sing this song to this day
間違った使われ方をしてきたから、今日までこの歌を歌い続けてるんだ。
My body is cold steel, for real
俺の体は冷たい鋼鉄で出来てる、マジな話さ。
I was made to kill, that's why they keep me concealed
俺は殺しのために作られた。だから奴らは俺を隠し持つんだ。
Under car seats, they sneak me in clubs, been in the hands of mad thugs
車のシートの下や、クラブにこっそり持ち込まれたり、イカれた悪党どもの手に渡ってきた。
They feed me when they load me with mad slugs
奴らは大量の鉛玉を込めて、俺に飯を食わせるのさ。
※slugs=銃弾を指すスラング。「弾を装填する」ことを「食事を与える(feed)」と表現している。
Seventeen precisely, one in my head
正確には17発だ。1発は俺の頭(薬室)の中にな。
They call me Desert Eagle, semi-auto with lead
奴らは俺をデザートイーグルって呼ぶ。鉛玉を吐き出すセミオートマチックだ。
※Desert Eagle=イスラエル・ミリタリー・インダストリーズ社などが製造する強力な自動拳銃。ヒップホップのリリックに頻繁に登場するアイコニックな銃器。
I'm seven inches, four pounds, been through so many towns
俺は7インチ、重さは4ポンド。これまで数え切れないほどの街を渡り歩いてきた。
Ohio to Little Rock to Canarsie, living harshly
オハイオからリトルロック、そしてカナーシー(ブルックリン)まで、過酷な生き方をしてきたぜ。
Beat up and battered, they pull me out, I watch as niggas scattered
ボロボロに傷ついても、奴らは俺を抜き放つ。俺は野郎どもが散り散りに逃げていくのを見てる。
Making me kill, but what I feel, it never mattered
俺に殺しをやらせるが、俺がどう感じてるかなんて、奴らには関係ねぇんだ。
When I'm empty, I'm quiet, finding myself fiending to be fired
弾が空っぽの時、俺は静かだ。自分が撃ち放たれるのを渇望してるのに気づくのさ。
A broken safety, niggas place me in shelves, under beds
安全装置は壊れてる。奴らは俺を棚の中やベッドの下に置き去りにする。
So I beg for my next owner to be a thoroughbred
だから俺は祈るんだ、次の持ち主が筋金入りの本物(サラブレッド)であることをな。
Keeping me full up with hollow heads
俺の腹をホローポイント弾で常に満たしてくれるような奴をな。
※hollow heads=ホローポイント弾(着弾時に先端が広がり、標的に致命傷を与える殺傷力の高い弾丸)のこと。
[Chorus]
How you like me now? I go, "Blaow!"
今度はどうだ? 俺は「ブラウ!」と火を噴くぜ。
It's that shit that moves crowds, making every ghetto foul
群衆を動かし、あらゆるゲットーを汚染するのは、俺みたいなクソ野郎のせいさ。
I might've took your first child
俺がお前の最初の子供の命を奪ったのかもしれねぇ。
Scarred your life or crippled your style
お前の人生に傷を残し、お前のスタイル(生き様)を不具にしたのかもしれねぇ。
I gave you power, I made you buck-wild
俺がお前に権力を与えてやったんだ。俺がお前を狂暴な獣に変えてやったんだよ。
How you like me now? I go, "Blaow!"
今度はどうだ? 俺は「ブラウ!」と火を噴くぜ。
It's that shit that moves crowds, making every ghetto foul
群衆を動かし、あらゆるゲットーを汚染するのは俺のせいさ。
I might've took your first child
俺がお前の最初の子供を奪ったのかもしれねぇ。
Scarred your life or crippled your style
お前の人生に傷を残し、お前の生き様を不具にしたのかもな。
I gave you power, I made you buck-wild
俺がお前に権力を与え、お前を狂暴な獣に変えてやったんだ。
[Verse 2]
Always, I'm in some shit! My abdomen is the clip
俺はいつも厄介事に巻き込まれてる! 俺の腹はマガジン(弾倉)だ。
※clip=本来はクリップ(装弾クリップ)だが、ストリートスラングではマガジンの意味で広く使われる。
The barrel's my dick, uncircumcised
銃身は俺のイチモツさ、割礼すらしてねぇ。
Pull my skin back and cock me, I bust off when they unlock me
皮を引っぱって撃鉄を起こしな。ロックが外れれば、俺はぶっ放して(イッて)やるぜ。
※銃のスライドを引く動作と、男性器のメタファー(射精=発砲)を巧みに掛けている。
Results of what happens to niggas shock me
俺が野郎どもにもたらす結果には、俺自身もショックを受けるよ。
I see niggas bleeding, running from me in fear
野郎どもが血を流し、恐怖に怯えて俺から逃げ惑うのを見る。
Stunningly, tears fall down the eyes of these so-called tough guys, for years
驚くべきことに、自称タフガイどもの目から何年も涙がこぼれ落ちるのを見てきたんだ。
I've been used in robberies, giving niggas heart to follow me
俺は強盗にも使われてきた。野郎どもに俺についてくる度胸を与えてやったんだ。
Placing peoples in graves, funerals made 'cause I was sprayed
人々を墓場へ送り込み、俺が乱射されたせいでいくつもの葬式があげられた。
I was laid in a shelf with a grenade
俺は手榴弾と一緒に棚に寝かされてた。
Met a wrecked-up TEC with numbers on his chest that say
そこでボロボロのTEC-9に出会った。あいつの胸にはこう番号が刻まれてた。
※TEC=TEC-9(テック・ナイン)。安価で手に入りやすいため、ギャングに好まれた悪名高い半自動拳銃。
Five-two-oh-nine-three-eight-five-and-zero
「5-2-0-9-3-8-5-0」とな。
Had a serial defaced, hoping one day police would place
シリアルナンバーは削り取られてた。いつか警察が特定してくれるのを望んでたんだろうな。
※銃器のシリアルナンバー(製造番号)を削り取るのは、犯罪に使われた際に出所を追跡されないようにする常套手段。銃自身は、自分の身元や持ち主を知りたいという哀しい願望を持っている。
Where he came from, a name or some sort of person to claim him
自分がどこから来たのか、名前とか、自分を引き取ってくれる誰かをな。
Tired of murdering, made him wanna be a plain gun
殺しにはもうウンザリして、ただの普通の銃になりたいって思ってたのさ。
But, yo, I had some other plans, like the next time the beef is on
だがよ、俺には別の計画があったんだ。次に抗争(ビーフ)が起きた時は、
I make myself jam right in my owner's hand
持ち主の手の中で、わざと弾詰まり(ジャム)を起こしてやるってな。
※このラインが物語の結末に向けた強烈な伏線となる。銃が自らの意志で殺戮の連鎖を断ち切ろうとする瞬間。
[Chorus]
How you like me now? I go, "Blaow!"
今度はどうだ? 俺は「ブラウ!」と火を噴くぜ。
It's that shit that moves crowds, making every ghetto foul
群衆を動かし、あらゆるゲットーを汚染するのは俺のせいさ。
I might've took your first child
俺がお前の最初の子供を奪ったのかもしれねぇ。
Scarred your life or crippled your style
お前の人生に傷を残し、お前の生き様を不具にしたのかもな。
I gave you power, I made you buck-wild
俺がお前に権力を与え、お前を狂暴な獣に変えてやったんだ。
How you like me now? I go, "Blaow"
今度はどうだ? 俺は「ブラウ!」と火を噴くぜ。
It's that shit that moves crowds, making every ghetto foul
群衆を動かし、あらゆるゲットーを汚染するのは俺のせいさ。
I might've took your first child
俺がお前の最初の子供を奪ったのかもしれねぇ。
Scarred your life or crippled your style
お前の人生に傷を残し、お前の生き様を不具にしたのかもな。
I gave you power, I made you buck-wild
俺がお前に権力を与え、お前を狂暴な獣に変えてやったんだ。
[Verse 3]
Yo, weeks went by and I'm surprised
よぉ、何週間か経って、俺は驚いたよ。
Still stuck in the shelf with all the things that an outlaw hides
アウトローが隠し持ってるようなガラクタと一緒に、まだ棚の中に閉じ込められてたからな。
Besides me, it's bullets, two vests and then a nine
俺の隣には、弾丸と、2着の防弾チョッキ、それに9ミリ拳銃。
There's a grenade in a box, and that TEC that kept crying
箱の中には手榴弾、そして泣き続けてたあのTEC-9だ。
'Cause he ain't been cleaned in a year, he's rusty, it's clear
あいつは1年も手入れされてねぇから、完全に錆び付いちまってる。
He's 'bout to fall to pieces 'cause of his murder career
殺しのキャリアのせいで、もうバラバラに壊れそうになってたんだ。
Yo, I can hear somebody coming in, open the shelf, his eyes bubbling
おい、誰かが入ってくる足音が聞こえる。棚が開けられ、そいつの目は怒りで血走ってた。
He said it was on, I felt his palm troubled him
「いよいよだ」とそいつは言った。俺を握る手のひらが震えてるのが分かったぜ。
Shaking, somebody stomped him out, his dome was aching
ガタガタ震えてた。誰かにボコボコに踏みつけられて、頭(ドーム)が割れるほど痛んでたんだろうな。
He placed me on his waist, the moment I've been waiting
そいつは俺を腰に差した。俺がずっと待ってた瞬間だ。
My creation was for Blacks to kill Blacks
俺が作られた理由は、黒人が黒人を殺し合うためだ。
※ストリートに銃器が蔓延する背景には、マイノリティ同士を潰し合わせようとするシステムや社会の闇があるという、Nasの鋭い社会的メッセージ。
It's gats like me that accidentally go off, making niggas memories
俺みたいなチャカが暴発して、野郎どもを過去の記憶(死体)に変えちまうんだ。
But this time, it's done intentionally
だが今回は、わざとやってやる。
He walked me outside, saw this cat, cocked me back, said, "Remember me?"
そいつは俺を外に持ち出し、標的の野郎を見つけると、俺の撃鉄を起こして言った。「俺を覚えてるか?」
He pulled the trigger, but I held on, it felt wrong
そいつは引き金を引いた。だが俺は耐えたんだ。何かが間違ってる気がしたからな。
Knowing niggas is waiting in Hell for him
地獄で奴ら(過去の被害者たち)がこいつを待ってるのは分かってた。
He squeezed harder, I didn't budge, sick of the blood
そいつはさらに強く引き金を引いたが、俺はピクリとも動かなかった。血にはもうウンザリだったんだ。
Sick of them thugs, sick of wrath of the next man's grudge
悪党どもにもウンザリだし、他人の恨みや怒りにもウンザリだった。
What the other kid did was pull out, no doubt
相手のガキがやったことは、間違いなく自分の銃を抜くことだった。
A newer me in better shape, before he lit out, he lead the chase
俺よりも新しくて状態の良い銃をな。逃げ出す前に、そいつは追撃に出た。
My owner fell to the floor, his wig split
俺の持ち主は床に崩れ落ちた。頭(ウィッグ)をカチ割られてな。
※wig split=頭を撃ち抜かれることを意味する凄惨なスラング。
So fast, I didn't know he was hit, it's over wit'!
あまりにも一瞬の出来事で、撃たれたことすら分からなかった。これで終わりだ!
Heard mad niggas screaming, niggas running, cops was coming
狂ったように叫ぶ声や、逃げ惑う足音が聞こえ、サツが駆けつけてきた。
Now I'm happy, until I felt somebody else grab me
これでやっと自由だと思ったよ。…別の誰かが俺を拾い上げるのを感じるまではな。
※持ち主が死に、殺しの連鎖が終わったかのように思えた直後、現場に落ちていた銃を別の誰かが拾い、また新たな悲劇が始まるという絶望的なエンディング。
Damn!
クソッ!
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