Artist: Harry Styles
Album: Kiss All The Time. Disco, Occasionally.
Song Title: Taste Back
概要
本作は、ベルリンのハンザ・スタジオの冷徹な空気感と、70年代ディスコの官能性を融合させた新作における極めて重要なトラックだ。パンデミック禍で多くの人が経験した「味覚の喪失」という身体的状況を、情熱や愛を失った実存的な虚無感へのメタファーとして鮮やかに転用している。サウンド面では、タイトなベースラインと空間を活かしたミニマルなエレクトロニック・グルーヴが、パリという都市の孤独感を強調する。かつての恋人との再会を描きつつも、その背後には名声の中で自己を見失い、再び「自分自身の味」を取り戻そうとするハリーの切実な内省が隠されている。
和訳
[Verse 1]
Not quite "here we go again"
「また始まったね」なんて言うほどじゃないけれど
But, how've you been?
でも、最近はどうしてたのかな?
Always been a consequence when you call me baby
君が僕を「ベイビー」と呼ぶ時は、いつも何かが起きてしまうね
※「consequence(結果、代償)」という言葉選びに、過去の苦い経験や、甘い言葉の裏にある感情的なコストへの警戒心が滲んでいる。
You on white, so sweet and sour
白い服に身を包んだ君は、まるで甘酸っぱい思い出のようだね
※「On white」は視覚的な描写であると同時に、ハリーの美学における「純真さと危うさの共存」を象徴している。
Just like old times
まるで昔に戻ったみたいだ
Dinners with your high school friends and your favourite pastries
高校の同級生とのディナーや、君が好きだったあのお菓子の話とか
[Chorus]
Must be lonely out in Paris if you talk like that
そんなふうに話すなんて、パリの街はよほど孤独なんだね
※「Paris」はロマンチックな象徴だが、ここでは冷たく孤独な異郷として描かれている。かつて彼が愛した場所への、複雑でメランコリックな視線が反映されている。
It was tough with the time, but you called me back
あの時期を乗り越えるのは大変だったけれど、君は僕に電話をくれた
And you know that you can tell me, I can take that
何でも話してくれていいんだよ、僕なら受け止められるから
Did you get your taste back? Or do you just need a little love?
味覚は戻ったのかな? それとも、ただ少しの愛が必要なだけ?
※COVID-19による味覚消失という物理的状況と、人生に対する情熱(Taste)を取り戻したかという問いかけを重ねた、本作最大のダブルミーニングである。
You just need a little love, you just need a little love
君には愛が必要なんだ、ほんの少しの愛が
You just need a little love, need a little love
ただ愛が必要なだけなんだね
So you
だから君は……
Did you get your taste back? Or do you just need a little love?
自分を取り戻したのかな? それとも、ただ愛に飢えているだけなのかな
[Verse 2]
Talk in tongues, no common sense
支離滅裂な話し方だね、常識なんてどこかに置いてきたみたいだ
※「Talk in tongues」は宗教的な「異言」を指すが、ここでは泥酔状態や、感情が昂って言葉にならない様子をブリティッシュ・ウィットを交えて表現している。
Likе two old friends
まるで、古くからの親友みたいにさ
Where'd you find the confidence to call me baby? (It's all you)
僕を「ベイビー」なんて呼ぶ自信は、一体どこから湧いてくるのかな?(君らしいね)
※「It's all you」は「君のせいだ」「いかにも君らしい」というニュアンスを含み、相手の奔放なキャラクターを優しく肯定するハリーらしい表現。
Is this you settling in? You drinking again (It's all you)
これが君の選んだ落ち着き先なの? またお酒に逃げているんだね(君らしいよ)
Handling it like a European (It's all you)
ヨーロッパ人みたいに、器用にやり過ごしているつもりかい?
※ベルリンでの制作背景を反映し、洗練されているがどこか冷淡で虚無的な「Handling(処理)」の仕方を揶揄している。
Is this you settling in? You starting again? (It's all you)
それが君の安住の地なのかな? また同じことを繰り返すつもり?
Handling it?
うまくやっているのかな?
[Chorus]
Must be lonely out in Paris if you talk like that
そんな口振りじゃ、パリでの独り暮らしは寂しいに決まっているよ
It was tough with the time, did you come back?
あの時期はきつかったよね、君はちゃんと戻ってこれたのかな?
And you know that you can tell me, I can take that
知っているだろう? 何を言われても、僕は受け止めるよ
Did you get your taste back? Or do you just need a little love?
自分自身の「味」を取り戻せた? それとも、ただ温もりが欲しいだけ?
You just need a little love, you just need a little love
君には少しの愛が必要なんだ
You just need a little love, need a little love
愛が必要なんだね
So you
それで君は……
Did you get your taste back? Or do you just need a little love?
輝きを取り戻したのかな? それとも、愛にすがっているだけ?
[Bridge]
Did you—? Did you—?
君は……? 本当に……?
(You, it's all you) Did you—? Did you—?
(君なんだ、すべては君次第だよ)どうなのかな……?
[Chorus]
Must be lonely out in Paris if you talk like that
そんなふうに話すなんて、パリの夜はよほど寂しいんだね
It was tough with the time, did you come back?
大変な時期だったけれど、君は帰ってきたのかな?
And you know that you can tell me, I can take that
僕を頼っていいんだよ、ちゃんと分かっているから
Did you get your taste back? Or do you just need a little love?
心は戻ってきた? それとも、ただ愛が必要なだけなのかな?
You just need a little love, you just need a little love
君には愛が必要なんだ
You just need a little love, need a little love
ただ、愛が。
So you
だから君は
Did you get your taste back? Or do you just need a little love?
自分自身の「色」を取り戻したの? それとも、ただ僕の愛が必要なのかな
