Artist: Pink Floyd
Album: Obscured by Clouds
Song Title: Absolutely Curtains
概要
1972年発表のアルバム『雲の影(Obscured by Clouds)』(バルベ・シュローダー監督の映画『ラ・ヴァレ』サウンドトラック)のラストを飾る、荘厳なインストゥルメンタルとフィールド・レコーディングの融合である。リチャード・ライトのメロトロンやシンセサイザーが奏でる深くメランコリックな音響空間から始まり、後半はニューギニアのマプガ族による実際のチャント(詠唱)へとシームレスに移行する。映画の結末である、主人公たちが文明社会を完全に捨て去り、未開のジャングルの奥深くへと同化していく狂気と神秘のプロセスを見事に音響化している。「Absolutely Curtains(完全に幕切れ、万事休す)」というタイトルの通り、初期フロイドのサイケデリアとの完全な決別を宣言し、次作『狂気(The Dark Side of the Moon)』という途方もない金字塔へと向かうバンドの劇的なフィナーレとして機能している。
和訳
[Instrumental]
※本楽曲には言語を用いた歌詞は存在しない。前半はリチャード・ライトを主軸としたメロトロンとEMS VCS 3シンセサイザーが、圧倒的な自然の脅威や、文明崩壊後の静寂を思わせるアンビエント空間を構築する。そして後半、ニューギニアのマプガ族による土着的なチャント(詠唱)のフィールド・レコーディングがフェードインしてくる。西洋の論理(言語や理性)から完全に離脱し、原始的なリズムと肉声の集合体へと回帰するこの展開は、人間の無意識の底へと退行していくサイケデリックな恐怖とカタルシスを同時に呼び起こす。「Absolutely Curtains(完全に幕切れ)」とは、西洋的価値観の終焉であると同時に、これまでのピンク・フロイドというバンド自体の古い殻を打ち破り、いよいよ人間の精神の最深部(狂気)を抉り出す新たなステージへと移行するための、強烈な決別のステートメントなのだ。
