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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

One of These Days - Pink Floyd 【和訳・解説】

Artist: Pink Floyd

Album: Meddle

Song Title: One of These Days

概要

1971年発表の歴史的転換点となったアルバム『おせっかい(Meddle)』のオープニングを飾る、攻撃的で凶暴なインストゥルメンタル・ナンバー(邦題「吹けよ風、呼べよ嵐」)である。ロジャー・ウォーターズとデヴィッド・ギルモアによるディレイ(ビンソン・エコーレック)を効かせた2本のベースのリフが牽引し、狂気を孕んだスライド・ギターが空間を切り裂く。シド・バレット脱退後の長きにわたる音楽的模索を抜け出し、ピンク・フロイドが遂に独自の「空間的かつ重厚なプログレッシブ・ロック」の黄金律を確立した記念碑的楽曲だ。中盤に挿入されるドラマー、ニック・メイソンによる唯一の不気味なセリフは、当時彼らを苛立たせていた保守的なラジオDJへの殺意とも、人間の内面に潜む突発的な暴力衝動の表出とも解釈され、バンドの冷徹なシニシズムを象徴している。

和訳

[Instrumental]
※不気味な風の音(シンセサイザーによるノイズ)から始まり、ディレイ・エフェクトがかけられた2本のベースラインが、迫り来る脅威の鼓動のように重なり合っていく。シド・バレット時代のポップなサイケデリアとは完全に決別し、重厚で構築的なプログレッシブ・ロック・バンドへと変貌を遂げた彼らの、圧倒的な力と自信を見せつけるサウンドスケープである。

[Interlude: Nick Mason]
[幕間:ニック・メイソン]
※極限まで高まった緊張感の中、楽曲は突如として底なしの静寂に包まれ、ドラマーのニック・メイソンによる不気味なセリフが挿入される。テープの録音速度を操作することで、まるで地獄の底から響く悪魔のような低い声へと加工されている。

One of these days I'm going to cut you into little pieces
近いうちに、お前を細切れに切り刻んでやるからな。
※ピンク・フロイドの全楽曲において、ニック・メイソンが単独でボーカル(セリフ)をとった極めて珍しい瞬間である。この過激な言葉は、当時のイギリスで彼らの前衛的な音楽を軽視し、的外れな紹介を繰り返していたBBCの保守的なラジオDJ(ジミー・ヤングなど)に対する鬱憤と殺意を、ブラックユーモアを交えて表現したものとされる。同時に、管理社会の抑圧の中で蓄積された人間の根源的な破壊衝動を、冷徹な音響処理によって提示するロジャー・ウォーターズ流の社会風刺の萌芽とも読み取れる。

[Instrumental]
※メイソンの恐ろしい宣告を合図に、抑圧されていた狂気が一気に解放される。デヴィッド・ギルモアの凶暴なスライド・ギターとリチャード・ライトの絶叫するようなハモンド・オルガンが吹き荒れ、聴く者の意識を文字通り「細切れに切り刻む」かのようなカオスが展開される。この極端な「静と動のダイナミクス」と「暴力性の音響化」こそが、1970年代のピンク・フロイドを世界的スタジアム・バンドへと押し上げる最大の武器となっていったのである。

 

One of These Days

One of These Days

  • ピンク・フロイド
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes