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Quicksilver - Pink Floyd 【和訳・解説】

Artist: Pink Floyd

Album: More

Song Title: Quicksilver

概要

1969年発表の映画『モア(More)』のサウンドトラックに収録された、約7分半に及ぶアヴァンギャルドな長尺インストゥルメンタル楽曲である。タイトル「Quicksilver(水銀)」が示す通り、一定の形を持たず不気味にうごめく流体のような音響空間が構築されている。映画内では主人公たちがヘロインに溺れていく致命的なドラッグ・トリップのシーンで使用されており、サイケデリックな多幸感から逃れられない死の淵へと沈んでいく恐ろしいプロセスを音響化している。シド・バレットを失った後のピンク・フロイドが、ヴィブラフォンやテープ・エフェクト、不穏なオルガンを駆使して「映像を喚起するサウンドスケープ」という新たな武器を研ぎ澄ませていく過程を克明に記録した、音響実験の極北である。

和訳

[Instrumental]
※本楽曲には言語を用いた歌詞は存在しない。「水銀(Quicksilver)」という冷たく重い流体の名が冠されたこの長尺トラックは、リチャード・ライトのヴィブラフォンによる無機質な打音と、重苦しいオルガン、そして不気味なノイズ・コラージュの渦によって構成されている。言語という論理的コミュニケーションが完全に崩壊した地点から始まるこの音響の旅は、映画『モア』におけるヘロインの致死的なオーバードーズ(過剰摂取)と、それに伴う完全な自我の溶解を生々しく描写している。言葉の魔術師であったシド・バレットの喪失というトラウマを抱えたバンドが、もはや言葉では表現しきれない「狂気」や「死の虚無」を、純粋な音響空間(サウンドスケープ)として描き切った野心的な試みである。この言葉を持たないアヴァンギャルドな実験の成果は、後年の大曲「Echoes(エコーズ)」における深海のような中間部や、歴史的名盤『狂気(The Dark Side of the Moon)』における立体的な狂気の表現へとダイレクトに結実していくこととなる。

 

Quicksilver

Quicksilver

  • ピンク・フロイド
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes