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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Ibiza Bar - Pink Floyd 【和訳・解説】

Artist: Pink Floyd

Album: More

Song Title: Ibiza Bar

概要

1969年発表の映画サウンドトラック『モア(More)』に収録された、フロイド流のヘヴィ・ロック・ナンバーである。音楽的には同作収録の「The Nile Song」の双子とも言える荒々しいディストーション・ギターが特徴だが、その歌詞は極めて内省的でメタフィクション的だ。主人公は自らを「台本通りに動く書き割り(段ボールの切り抜き)」に例え、映画監督あるいは音楽業界という巨大なシステムによって消費され、棚に放置される操り人形としての絶望を歌っている。映画の舞台であるイビザ島での退廃的な生活や麻薬への依存による自己喪失と同時に、ポップスターを単なる商品として消費する資本主義社会の非情さに対するロジャー・ウォーターズの初期の痛烈な自己言及として、後年の『ザ・ウォール』へと繋がる重要な視点を含んでいる。

和訳

[Verse 1]
I'm so afraid
僕はひどく恐れている。

Of all the mistakes that I've made
自分が犯してきた、すべての過ちを。

Shaking every time that I awake
目を覚ますたびに、震えが止まらないんだ。
※ヘロインの禁断症状(離脱症状)による肉体的な震えと、破滅に向かう現実を直視することへの精神的な恐怖が二重に表現されている。

I feel like a cardboard cut-out man
まるで自分が、段ボールの切り抜き人形になったような気分さ。
※「cardboard cut-out man(書き割りの男)」は、自己の意志を剥奪され、他者に与えられた役割を演じるだけの空虚な存在の隠喩。音楽業界における「作られたロックスター」としての疎外感を鋭く突いている。

[Hook]
So build me a time
だから、僕のために新たな時間を構築してくれ。

When the characters rhyme
登場人物たちの辻褄が合い。

And the story line is kind
物語の筋書きが、もう少し優しい時間を。
※映画の脚本家や監督(あるいは運命を握る絶対的なシステム)に対する哀願。悲劇的な結末へと向かう現実(映画『モア』における主人公の破滅)からの切実な逃避願望である。

[Verse 2]
I've aged and aged since the first page
第一ページを開いてからというもの、僕はひたすらに老い込んでしまった。

I've lived every line that you wrote
君が書いたすべての台詞の通りに、生きてきたんだ。
※メタフィクション的な視点。作者(音楽業界や運命)に操られ、敷かれたレールの上を歩むことで急速に生命力と正気を搾取されていくアーティストの悲哀を描写している。

Take me down, take me down
僕を降ろしてくれ、どうか降ろしてくれ。

From the shelf above your head
君の頭上にある、その棚の上から。
※用済みとなって「棚上げ」された存在の孤独。シド・バレットというカリスマを失った後、バンド自体が業界の中で消費され使い捨てられることへの、ウォーターズの強迫観念が垣間見える。

[Hook]
And build me a time
そして、僕のために新たな時間を構築してくれ。

When the characters rhyme
登場人物たちの辻褄が合い。

And the story line is kind
物語の筋書きが、もう少し優しい時間を。

[Guitar Solo]
※デヴィッド・ギルモアによる切り裂くようなヘヴィなギターソロ。「The Nile Song」と同様の荒々しいトーンだが、ここでは怒りよりも、コントロールを完全に失った人間の悲痛な叫びとして響き渡る。

[Verse 3]
I live where I'm left
僕は、ただ放置された場所で生きている。

On the shelf like the rest
他のガラクタと同じように、棚の上で。

And the epilogue reads like a sad song
そしてエピローグは、まるで悲しい歌のように響くのだ。

Please pick up your camera
お願いだから、君のカメラをもう一度手に取って。

And use me again
もう一度、僕を使ってくれないか。
※映画という表現形態を直接的に指し示すフレーズ。消費され捨てられることを憎みながらも、システム(カメラの被写体)に依存し、他者から搾取されなければ自らの存在証明すらできないという、現代社会における極限のジレンマと虚無感が描かれている。

[Hook]
And build me a time
そして、僕のために新たな時間を構築してくれ。

When the characters rhyme
登場人物たちの辻褄が合い。

And the storyline is kind
物語の筋書きが、もう少し優しい時間を。

Yeaaaah!
イェー!

[Instrumental Outro]
※「優しい物語」への祈りも空しく、楽曲は無情にフェードアウトしていく。依存と搾取の連鎖から抜け出せないまま終わる、残酷なエンドロールの音響化である。

 

Ibiza Bar

Ibiza Bar

  • ピンク・フロイド
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes