Artist: Pink Floyd
Album: The Piper at the Gates of Dawn
Song Title: The Gnome
概要
1967年発表のデビュー作『夜明けの口笛吹き(The Piper at the Gates of Dawn)』に収録された、シド・バレットのイノセントな童話的世界観が色濃く反映された牧歌的な小品である。トールキンの『指輪物語』に登場するホビット族や、イギリスの伝統的な妖精伝説に影響を受けた本作は、グリンブル・グランブルという名のノーム(土の精霊)の小さな冒険を描いている。一聴すると無邪気な子供向けの歌だが、安全で保守的な家を抜け出して広大な自然(未知の世界)へ足を踏み入れるというテーマは、LSDによるサイケデリック体験や精神拡張のメタファーとして機能している。当時のヒッピー・ムーブメントにおける自然回帰の理想と、シド特有の現実逃避的な内面世界が見事に交差した、英国サイケデリアの牧歌的側面を象徴する一曲だ。
和訳
[Verse 1]
I want to tell you a story
君たちに、ある物語を聞かせたいんだ。
'Bout a little man, if I can
できることなら、ある小さな男について。
A gnome named Grimble Grumble
グリンブル・グランブルという名のノーム(妖精)の話さ。
※「ノーム」は四大精霊のうち大地を司る妖精。土に根ざした彼らは、伝統的で保守的なイギリス市民の隠喩ともとれる。シドの言葉遊びのセンスが「Grimble Grumble(不平不満を言う、というニュアンスを含む)」という名前に表れている。
And little gnomes stay in their homes
小さなノームたちは、いつも家の中に引きこもっている。
Eating, sleeping
食べては、眠り。
Drinking their wine
ワインを飲んで過ごすのさ。
※変化を嫌い、閉鎖的な空間で満ち足りた日常を送る様子。これは当時のイギリスの中産階級が抱える保守性への穏やかな皮肉であると同時に、シド自身が渇望した「絶対的に安全な場所(子供部屋)」への退行願望を示している。
[Verse 2]
He wore a scarlet tunic
彼は深紅のチュニックを着て。
A blue-green hood, it looked quite good
青緑色のフードを被っていた。それはとてもよく似合っていたよ。
※初期フロイドの楽曲に頻出する、鮮やかで原色的な色彩描写。LSDの幻覚作用によってもたらされた、共感覚的で極彩色に彩られたヴィジョンが反映されている。
He had a big adventure
彼は大いなる冒険へと出かけたんだ。
Amidst the grass, fresh air at last
草むらの中へ、そしてついに、新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込んで。
※「大いなる冒険」とは、日常という安全地帯からの脱出であり、サイケデリック体験(トリップ)を通じた未知なる精神世界への探求の暗喩である。
Wining, dining
飲んでは、食べて。
Biding his time
ただ静かに、自分の時を待っていたのさ。
[Chorus]
And then one day, hooray
そしてある日、万歳。
Another way for gnomes to say
ノームたちにとっての、新しい表現方法を見つけたんだ。
Ooh, my
「おお、なんてことだ」と。
※日常言語の枠を超え、新しい知覚の扉を開いた瞬間の驚きや感嘆。無邪気な歓声の中に、未知の領域(ドラッグによる精神拡張)へ踏み入れたことに対する畏怖が入り混じっている。
[Verse 3]
Look at the sky, look at the river
空を見てごらん、あの川を見てごらん。
Isn't it good?
素晴らしいじゃないか?
Look at the sky, look at the river
空を見てごらん、あの川を見てごらん。
Isn't it good?
素晴らしいじゃないか?
※ドラッグ体験によって拡張された意識が、自然界の美しさを再発見するヒッピー・カルチャーの自然回帰思想を体現している。
Winding, finding
曲がりくねった道を歩き、見つけ出しながら。
Places to go
自分の行くべき場所を。
[Chorus]
And then one day, hooray
そしてある日、万歳。
Another way for gnomes to say
ノームたちにとっての、新しい表現方法を見つけたんだ。
Ooh, my
「おお、なんてことだ」と。
Ooh, my
「おお、なんてことだ」と。
