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Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Astronomy Domine - Pink Floyd 【和訳・解説】

Artist: Pink Floyd

Album: The Piper at the Gates of Dawn

Song Title: Astronomy Domine

概要

1967年に発表されたピンク・フロイドの記念すべきデビュー・アルバム『夜明けの口笛吹き(The Piper at the Gates of Dawn)』のオープニングを飾る、初期サイケデリック・ロックの金字塔である。初期のバンドの絶対的リーダーであったシド・バレットの天才的な感性が爆発しており、宇宙の無限の広がりと、LSDなどの影響による内面の幻覚体験が交錯するような音像が特徴だ。冷戦期の宇宙開発競争という時代背景を映し出したSF的なモチーフと、シド特有の童話的で色彩豊かな言語感覚が融合している。同時に、広大な無重力空間(あるいは肥大化した内面世界)を漂うようなサウンドの底には、後にシドの精神を蝕むことになる「狂気」への入り口と、自己喪失への微かな恐怖がすでに刻み込まれている。

和訳

[Intro: Peter Jenner]
"Moon in twelve thousand
「月は1万2千にあり……

… one … Scorpio … braving the skies …
……1……蠍座……空に立ち向かい……

Libra … Portalia … Mao … Lapintin … Roscoe Thomas …
天秤座……ポルタリア……マオ……ラピンティン……ロスコー・トーマス……

Pluto was not discovered until 1930
冥王星は1930年まで発見されなかった……

… nine two three select …
……9、2、3、選択せよ……

Mars is in conjunction with a fixed star of
火星が……の恒星と合(ごう)となる……

… reduce, execute now if possible …"
……縮小せよ、可能ならば直ちに実行せよ……」
※当時のバンドのマネージャーであったピーター・ジェナーが、メガホンを通して占星術や天文学の用語を読み上げている。冷戦下における宇宙開発時代の管制塔と宇宙飛行士の交信を思わせ、リスナーを日常から未知の空間へと引きずり込むサイケデリックな導入部である。

[Verse 1: Syd Barrett & Richard Wright]
Lime and limpid green, a second scene
ライム色、そして透明な緑色、第二の場面。
※シド・バレットが共感覚的な幻覚体験、あるいはドラッグによるサイケデリックなヴィジョンを描写していると解釈される。色彩が直接的に空間や場面を構築していく。

A fight between the blue you once knew
君がかつて知っていた「青」との争い。
※現実世界の空の「青」と、幻覚の中で見る新たな強烈な色彩との間の葛藤、または現実からの乖離と自己喪失の暗示である。

Floating down, the sound resounds
漂い落ちてゆく、その音が響き渡る。

Around the icy waters underground
地下深く、冷たい氷の水脈の周りで。
※宇宙(マクロ)から地下(ミクロ・内面)へと一気に視点が下降する。シドの内面世界に広がる、美しくも冷酷な深層心理を表している。

Jupiter and Saturn
木星と土星。

Oberon, Miranda, and Titania
オベロン、ミランダ、そしてタイターニア。
※これらは天王星の衛星群である。同時にシェイクスピアの戯曲『夏の夜の夢』や『テンペスト』に登場する妖精や人物の名でもあり、冷たい宇宙空間とイギリスの古典文学がシドの脳内でシームレスに融合している。

Neptune, Titan, stars can frighten
海王星、タイタン、星々は恐怖をもたらすこともある。
※広大な宇宙空間(あるいは肥大化した幻覚世界)に対する畏怖と、迫り来る自身の狂気に対する無意識の恐怖(パラノイア)が垣間見える。

[Instrumental Break]

[Verse 2: Syd Barrett & Richard Wright]
Blinding signs flap
目も眩むような標識が羽ばたく。

Flicker, flicker, flicker, blam
チカチカと瞬き、明滅し、そして爆発する。
※光の激しい明滅は、幻覚による視覚の変容や、当時のロンドンのアンダーグラウンド・クラブ「UFOクラブ」における実験的なライトショーを文字通り音響化したものである。

Pow, pow
パウ、パウ。

Stairway scare, Dan Dare, who’s there?
階段の恐怖、ダン・デア、そこにいるのは誰だ?
※「Dan Dare(ダン・デア)」は、1950年代のイギリスの人気SFコミック『イーグル』に登場する宇宙パイロットのヒーロー。幼少期の無邪気な空想と、得体の知れない存在への恐怖心が同居した、シド特有の危うい精神状態を表現している。

[Outro: Syd Barrett, Syd Barrett & Richard Wright]
Lime and limpid green, the sound surrounds
ライム色、そして透明な緑色、その音が包み込む。

The icy waters under—
あの冷たい水脈の下で──。

Lime and limpid green, the sound surrounds
ライム色、そして透明な緑色、その音が包み込む。

The icy waters underground
地下深く、冷たい氷の水脈を。

 

Astronomy Domine

Astronomy Domine

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