Artist: Kendrick Lamar
Album: To Pimp a Butterfly
Song Title: i
概要
本作は、黒人コミュニティが抱えるトラウマや自己嫌悪、うつ病といった重いテーマに対し、「I love myself(自分自身を愛している)」という強烈な自己肯定感を高らかに歌い上げたアンセムである。アイズレー・ブラザーズのクラシック「That Lady」をサンプリングし、アルバム版では先行シングル版とは異なり、熱狂的なライブ・パフォーマンス風にアレンジされているのが特徴だ。曲の後半では、観客同士の喧嘩を制止して演奏を止め、蔑称である「N-word(Nigga)」の語源がエチオピアの言葉で「王」を意味する「Negus(ネグス)」であると説くアカペラのポエトリー・リーディングへと展開。抑圧された歴史を誇りへと反転させる、ヒップホップ史に残る画期的な構成となっている。
和訳
[Intro: Kendrick Lamar & Ronald Isley]
Is this mic on? (Hey, move this way, this way)
このマイク入ってんのか?(おい、こっちに寄れ、こっちだ)
Hey, hey, hey, turn the mic up, c'mon, c'mon
おいおいおい、マイクの音量上げてくれよ、頼むぜ。
Is the mic on or not? I want the mic
マイク入ってんのかどうなんだ?マイクをくれよ。
We're bringin' up nobody, nobody
今から俺たちが呼び込むのは、そこら辺の奴じゃねえ。
※「That Lady」のオリジナルシンガーであるアイズレー・ブラザーズのRonald Isley本人がMCとして登場している。
Nobody but the number one rapper in the world
世界ナンバーワンのラッパー、彼以外にはあり得ねえ。
He done traveled all over the world
彼は世界中を旅してきた。
He came back just to give you some game
お前らにゲーム(人生の教訓や知恵)を授けるためだけに戻ってきたんだ。
All of the little boys and girls, come up here
少年少女たちよ、みんなここへ上がってきな。
(Ah, one two, one two, what's happenin', fool?)
(あぁ、ワン、ツー、ワン、ツー、調子はどうだ、バカ野郎?)
Come right here, this is for you, come on out
すぐここへ来い。これはお前らのためのもんだ、出てきな。
I done been through a whole lot (Kendrick Lamar)
俺はマジで色んなことを経験してきた。(ケンドリック・ラマーだ!)
Trial, tribulation, but I know God
試練に苦難、それでも俺は神を知っている。
The Devil wanna put me in a bow tie (Make some noise, brother)
悪魔が俺に蝶ネクタイを締めさせようとしてきやがる。(騒げ、ブラザー!)
※蝶ネクタイ(bow tie)は、ネーション・オブ・イスラムの正装や、白人社会に迎合する黒人の象徴。悪魔(誘惑やシステム)が自分を型にはめようとしていることを示唆している。
Pray that the holy water don't go dry, yeah, yeah
聖水が枯れないように祈るんだ、あぁ。
As I look around me
俺の周りを見渡してみると。
So many motherfuckers wanna down me
俺を引きずり下ろそうとするクソ野郎どもがウジャウジャいる。
But enemigo never drown me
だが敵(エネミーゴ)が俺を溺れさせることなんて絶対にねえ。
※enemigo=スペイン語で「敵」。LAのチカーノ・カルチャーの影響を受けた言い回し。
In front of a dirty double-mirror they found me
薄汚れたマジックミラーの前で、奴らは俺を見つけたのさ。
[Chorus: Kendrick Lamar]
And I love my (I love myself)
そして俺は自分の(自分自身を愛している)
Huh, when you lookin' at me, ah, tell me what do you see? (I love myself)
なぁ、俺を見る時、あぁ、お前には何が見えるか教えてくれよ。(俺は自分自身を愛している)
Ah, I put a bullet in the back of the back of the head of the poli' (I love myself)
あぁ、サツの頭の後ろのその後ろに、弾丸をぶち込んでやる。(俺は自分自身を愛している)
※poli'=police(警察)。不当な警察の暴力に対する怒りと抵抗の表現。
Uh, illuminated by the hand of God, boy, don't seem shy (I love myself)
神の手に照らされてるんだ、ボーイ、恥ずかしがるこたぁねえぜ。(俺は自分自身を愛している)
One day at a time, huh
一日一日を大切にな。
[Verse 1: Kendrick Lamar]
They wanna say it's a war outside, bomb in the street
外は戦争だ、ストリートには爆弾があるって奴らは言いたがる。
Gun in the hood, mob of police
フッドには銃があり、警察の群れがいるってな。
Rock on the corner with a line for the fiend
コーナーにはクラック(ロック)があり、ヤク中(フィンド)の行列ができてる。
And a bottle full of lean and a model on the scheme, uh
ボトルいっぱいのリーン(咳止めシロップ)と、企みを持ったモデルたち。
These days of frustration keep y'all on tuck and rotation (Come to the front)
こんなフラストレーションだらけの日々が、お前らを縮こまらせて、同じところをグルグル回らせるんだ。(前へ来い)
Yeah, I duck these cold faces, post up fi-fie-fo-fum basis
あぁ、俺は冷たい顔をした奴らをかわして、「ファイ・ファイ・フォー・ファム」のスタンスで構えるぜ。
※fi-fie-fo-fum=イギリスの童話『ジャックと豆の木』に登場する巨人のセリフ。巨人のように堂々と力強く立ち向かうという決意。
Dreams of reality's peace (Oh, yeah)
現実の平和を夢見て。(あぁ、そうだ)
Blow steam in the face of the beast
野獣の顔に蒸気(煙)を吹きかけてやる。
Sky could fall down, wind could cry now
空が落ちてこようが、風が泣き叫ぼうが。
Look at me, motherfucker, I smile
俺を見ろよ、クソ野郎。俺は笑ってやるぜ。
[Chorus: Kendrick Lamar]
And I love my (I love myself)
そして俺は自分の(自分自身を愛している)
Uh, and when you lookin' at me, ah, tell me what do you see? (I love myself)
なぁ、俺を見る時、あぁ、お前には何が見えるか教えてくれよ。(俺は自分自身を愛している)
Ah, I put a bullet in the back of the back of the head of the poli' (I love myself)
あぁ、サツの頭の後ろのその後ろに、弾丸をぶち込んでやる。(俺は自分自身を愛している)
Uh, illuminated—
神に照らされて——
All y'all come to the front, y'all come up to the front (I love myself)
お前ら全員前へ来い、前へ上がってこい。(俺は自分自身を愛している)
Baby, what about you? Come on
ベイビー、お前はどうなんだ?来いよ。
[Verse 2: Kendrick Lamar]
(Crazy, what you gon' do?)
(イカれてるぜ、どうするつもりだ?)
Lift up your head and keep movin' (Keep movin'), turn the mic up
頭を上げて進み続けろ(進み続けろ)。マイクの音を上げろ。
(Haunt you)
(お前を呪ってやる)
Peace to fashion police, I wear my heart
ファッション・ポリスどもにピース。俺は自分の心を着飾る。
On my sleeve, let the runway start
袖口に心をむき出しにして(包み隠さず)、ランウェイを始めようぜ。
※wear one's heart on one's sleeve=感情を隠さず表に出す、という慣用句。
You know the miserable do love company
惨めな奴らは仲間を欲しがるって、お前も知ってるだろ。
What do you want from me and my scars?
俺と俺の傷跡から、一体何を望んでるんだ?
Everybody lack confidence, everybody lack confidence
誰もが自信を失ってる、誰もが自信を失ってるんだ。
How many times my potential was anonymous?
俺のポテンシャルが「無名」のまま終わったことが何度あった?
How many times the city making me promises?
この街が俺に約束を破ったことが何度あった?
So I promise this, nigga
だから俺はこう約束するぜ、ニガ。
[Chorus: Kendrick Lamar]
I love myself
俺は自分自身を愛している。
Uh, and when you lookin' at me, ah, tell me what do you see? (I love myself)
なぁ、俺を見る時、あぁ、お前には何が見えるか教えてくれよ。(俺は自分自身を愛している)
Ah, I put a bullet in the back of the back of the head of the poli' (I love myself)
あぁ、サツの頭の後ろのその後ろに、弾丸をぶち込んでやる。(俺は自分自身を愛している)
Huh, illuminated by the hand of God, boy don't seem shy
神の手に照らされてるんだ、ボーイ、恥ずかしがるこたぁねえぜ。
(I love myself)
(俺は自分自身を愛している)
[Bridge: Kendrick Lamar]
Huh (Walk my bare feet), huh (Walk my bare feet)
ハッ(裸足で歩く)、ハッ(裸足で歩く)。
Huh (Down, down valley deep), huh (Down, down valley deep)
ハッ(深く、深い谷底へ)、ハッ(深く、深い谷底へ)。
(I love myself) Huh (Fi-fie-fo-fum), huh (Fi-fie-fo-fum)
(俺は自分自身を愛している)ハッ(ファイ・ファイ・フォー・ファム)、ハッ(ファイ・ファイ・フォー・ファム)。
(I love myself) Huh (My heart undone), one, two, three
(俺は自分自身を愛している)ハッ(俺の心は解き放たれる)、ワン、ツー、スリー。
[Verse 3: Kendrick Lamar]
I went to war last night
昨日の夜、俺は戦争に行ったんだ。
With an automatic weapon, don't nobody call a medic
オートマチックの武器を持ってな。誰も衛生兵を呼ぶんじゃねえぞ。
I'ma do it 'til I get it right (Oh, no)
正解を掴むまでやり続けるぜ。(オー、ノー)
I went to war last night (Night, night, night, night, woo)
昨日の夜、俺は戦争に行ったんだ。
I've been dealin' with depression ever since an adolescent
思春期の頃からずっと、鬱(ディプレッション)と戦ってきた。
Duckin' every other blessin', I can never see the message
他のあらゆる祝福から逃げ回って、メッセージに気づくことすらできなかった。
I could never take the lead, I could never bob and weave
俺は決してリードを奪えなかったし、ボブ&ウィーブ(パンチをかわす)こともできなかった。
From a negative and lettin' them annihilate me
ネガティブなものから逃れられず、奴らに俺を全滅させちまってたんだ。
And it's evident I'm movin' at a meteor speed
そして明らかに、俺は隕石のようなスピードで動いてる。
Finna run into a buildin', lay my body—
ビルに突っ込んで、俺の体を——
[Spoken Outro: Kendrick Lamar]
(Offstage argument)
(※ステージ外での喧嘩の音)
Ayy, hold on, woah, woah, stop all this
エイ、待て、ウォウ、ウォウ、全部ストップだ。
Not on my, not while I'm up here
俺のステージで、俺がここにいる間はダメだ。
Not on my time, kill the music, not on my time
俺の時間にはやらせねえ。音を止めろ、俺の時間にはやらせねえよ。
We could save that shit for the streets
そんなクソみたいなこと(暴力)は、ストリートのために取っておけばいい。
We could save that shit, this for the kids, bro
そんなことはやめとけ、これは子供たちのための場なんだよ、ブロ。
2015, niggas tired of playin' victim, dog
2015年だぜ、ニガどもはもう被害者ぶるのにはウンザリしてんだよ、ドッグ。
Niggas ain't trying to play vic— TuTu, how many niggas we done lost?
ニガどもはもう被害者ぶろうなんて——トゥートゥー、俺たちは一体何人のダチを失ってきた?
How many, Yan-Yan, how many we lost?
何人だ、ヤンヤン、俺たちは何人失ったんだ?
No, for real, answer the que— how many niggas we done lost, bro?
いや、マジで質問に答えてくれよ。俺たちは何人のニガを失ってきたんだ、ブロ?
This, this year alone?
今年、今年だけでだぜ?
Exactly, so we, we ain't got time to waste time, my nigga
その通りだ。だから俺たちには、無駄にしてる時間なんてねえんだよ、マイ・ニガ。
Niggas gotta make time, bro
ニガどもは時間を作らなきゃいけねえんだ、ブロ。
The judge make time, you know that, the judge make time, right?
裁判官が「時間(刑期)」を作る、分かってるだろ、裁判官が刑期(タイム)を作るんだ。
※make time(時間を作る)とdo time(刑期を務める)を掛けた言葉遊び。黒人同士で争っていれば、白人の裁判官に刑務所へ送られるだけだという批判。
The judge make time so it ain't shit
裁判官が刑期を作るんだから、こんな喧嘩なんてクソみたいなもんだ。
It shouldn't be shit for us to come out here and appreciate the little bit of life we got left, dog
俺たちがここに来て、残されたわずかな人生に感謝することに比べたら、こんなのクソみたいなことであるべきなんだよ、ドッグ。
On the dead homies, Charlie P, you know that, bro, you know that
亡くなったダチに誓ってだ。チャーリー・P、分かってるだろ、ブロ、分かってるよな。
Right, it's man— it's mando, right, it's mando
そうだ、これは義務(マンダトリー)だ。そうだ、義務なんだよ。
※mando=mandatory(義務的、必須)のスラング。平和を保ち生き残ることが義務だという主張。
And I s— and I, and I, and I say this because I, I love you niggas, man
俺が、俺がこれを言うのは、俺はお前らニガを愛してるからだぜ、マン。
I love all my niggas, bro
俺はすべてのニガを愛してるんだ、ブロ。
Exac— enough said, enough said
その通り——もう十分だ、もう言うことはねえ。
And we gon' get back to the show and move on, because that shit petty, my nigga
ショーに戻って先に進もうぜ。だってあんな喧嘩、くだらねえ(ペティ)からな、マイ・ニガ。
Mic check, mic check, mic check, mic check, mic check
マイクチェック、マイクチェック……
We gon' do some acapella shit before we get back to a—
トラックに戻る前に、ちょっとアカペラでカマすぜ。
All my niggas listen, listen to this
俺のニガども、全員聞け。これを聞いてくれ。
I promised Dave I'd never use the phrase "fuck nigga"
俺はデイブ(亡くなった親友)に約束した。「ファック・ニガ(クソ野郎)」なんて言葉は二度と使わないってな。
He said, "Think about what you saying, 'Fuck niggas'
あいつは言った、「自分の言ってる言葉を考えてみろよ。『ファック・ニガ』だぞ。
No better than Samuel on Django
映画『ジャンゴ』のサミュエル(・L・ジャクソン演じる白人に媚びる黒人執事)と変わらねえ。
No better than a white man with slave boats"
奴隷船に乗った白人と何ら変わらねえじゃないか」ってな。
※同じ黒人を「ニガ」と呼んで見下す行為は、奴隷制時代の白人や、白人至上主義に加担した黒人と同じだと指摘している。
Sound like I needed some soul searchin'
どうやら俺には、自分探しの旅(ソウル・サーチング)が必要だったみたいだ。
My pops gave me some game in real person
親父が俺に、直接ゲーム(人生の教訓)を教えてくれた。
Retraced my steps on what they never taught me
学校じゃ絶対に教えてくれなかったことについて、自分のルーツを辿り直したんだ。
Did my homework fast before government caught me
政府に捕まる前に、急いで自分の「宿題(歴史の勉強)」を終わらせたぜ。
So I'ma dedicate this one verse to Oprah
だから、この1ヴァースをオプラ(・ウィンフリー)に捧げるよ。
※オプラ・ウィンフリーは「Nigga」という言葉の使用を強く批判してきた著名な黒人司会者。彼女へのある種のアンサーとして、言葉のルーツを提示している。
On how the infamous, sensitive N-word control us
あの悪名高くてセンシティブな「Nワード」が、いかにして俺たちを支配しているかってことについてな。
So many artists gave her an explanation to hole us
たくさんのアーティストが彼女に言い訳をして、俺たちを窮地に追いやった(hole us)が。
Well, this is my explanation straight from Ethiopia
まあ、これはエチオピアから直輸入した俺なりの説明(アンサー)さ。
N-E-G-U-S, definition: royalty, king royalty, wait, listen
N-E-G-U-S。定義は「王族」「王権」。待てよ、よく聞け。
N-E-G-U-S, description: black emperor, king, ruler, now let me finish
N-E-G-U-S。説明は「黒人の皇帝」「王」「支配者」。さあ、最後まで言わせてくれ。
※「Nigga」という蔑称の起源が、実はエチオピアの言葉で「王」や「皇帝」を意味する「Negus(ネグス)」であるという衝撃的な主張。黒人は元来、奴隷ではなく王族であったという力強いエンパワーメント。
The history books overlooked the word and hide it
歴史の教科書は、この言葉を無視して隠しやがった。
America tried to make it to a house divided
アメリカは、俺たちを「分断された家(互いに争う状態)」にしようとしたんだ。
The homies don't recognize we been usin' it wrong
ホーミーたちは、俺たちがこの言葉を間違って使ってきたことに気づいてねえ。
So I'ma break it down and put my game in a song
だから俺がこれを解き明かし、俺のゲーム(真理)をこの曲に込めるんだよ。
N-E-G-U-S, say it with me, or say it no more
N-E-G-U-S。俺と一緒に言え。さもなきゃ二度と言うな。
Black stars can come and get me
ブラックスター(偉大な黒人たち)よ、俺を迎えに来てくれ。
Take it from Oprah Winfrey, tell her she right on time
オプラ・ウィンフリーにも教えてやれ。彼女のタイミングはバッチリだったってな。
Kendrick Lamar, by far, realest Negus alive
ケンドリック・ラマー、断トツで、今生きてる中で最もリアルな「ネグス(王)」さ。
