Artist: Kendrick Lamar
Album: To Pimp a Butterfly
Song Title: The Blacker the Berry
概要
本作は、黒人社会が直面する構造的な人種差別と、コミュニティ内部で連鎖する暴力(ブラック・オン・ブラック・クライム)という二つの重いテーマを真っ向から突きつけた、ヒップホップ史に残る問題作である。タイトルは「果実は黒いほど甘い」という黒人賛美の古いことわざに由来する。曲の前半から中盤にかけて、ケンドリックは白人至上主義的な社会構造に向かって誇りと怒りを暴力的なビートに乗せて咆哮する。しかし、曲の最後で「お前たちは同胞を憎んでいる」と矛先をストリートのギャングに向け、白人による黒人の無惨な殺害(トレイボン・マーティン事件)に涙しながら、自分たちもまた同じ黒人を殺し合っているという「最大の偽善」を告白する。リスナーに強烈なパラダイムシフトと内省を促す、極めて思索的で重厚な一曲だ。
和訳
[Intro: Kendrick Lamar & Lalah Hathaway]
Everything black, I don't want black (They want us to bow)
黒いものはすべて、俺は黒なんて欲しくない(奴らは俺たちに頭を下げさせたがる)
I want everything black, I ain't need black (Down to our knees)
すべてを黒にしたい、俺に黒は必要ない(膝をつかせたがる)
Some white, somethin' black, I ain't mean black (And pray to the God)
少しの白、何かの黒、俺は黒って意味じゃなかった(そして神に祈らせたがる)
I hate everything black (We don't believe)
黒いものはすべて大嫌いだ(俺たちは信じない)
Black, I want all things black
黒、すべてのものを黒にしたい
I don't need black, I want everything black
黒は必要ない、俺はすべてを黒にしたい
I don't need black, our eyes ain't black
黒は必要ない、俺たちの目は黒じゃない
I own black, I own everything black
俺は黒を所有する、黒いものをすべて所有する
[Bridge: Kendrick Lamar]
Six in the morn'
朝の6時。
Fire in the street
ストリートには火が放たれている。
Burn, baby, burn (You, you, you, you, you)
燃えろ、ベイビー、燃えちまえ。(お前、お前がな)
That's all I wanna see (You, you, you, you, you)
俺が見たいのはそれだけさ。
And sometimes I get off watchin' you die in vain
時々、お前らが無駄死にしていくのを見て興奮するんだよ。
It's such a shame, they may call me crazy
本当に残念なことだ。奴らは俺をイカれてるって呼ぶかもしれない。
They may say I suffer from schizophrenia or somethin'
俺が統合失調症か何かを患ってるって言うかもしれないな。
But homie, you made me (You, you, you, you, you)
でもな、ホーミー。俺をこんな風にしたのはお前(アメリカ社会)なんだぜ。
Black don't crack, my nigga
「黒はひび割れない(黒人は老けない)」んだよ、マイ・ニガ。
※"Black don't crack"は、黒人は年齢を重ねても肌が若々しいという意味の有名なフレーズ。
[Verse 1: Kendrick Lamar]
I'm the biggest hypocrite of 2015
俺は2015年最大の「偽善者」だ。
Once I finish this, witnesses will convey just what I mean
この曲が終わる頃には、証人(リスナー)たちが俺の言いたいことを伝えてくれるだろう。
Been feelin' this way since I was sixteen, came to my senses
16歳の頃からずっとこう感じてた、正気を取り戻したんだ。
You never liked us anyway, fuck your friendship, I meant it
どうせお前ら(白人社会)は俺たちのことなんて好きじゃなかったんだろ。友情なんかクソくらえだ、本気で言ってんだよ。
I'm African-American, I'm African, I'm black as the moon
俺はアフリカ系アメリカ人だ、俺はアフリカ人だ、月(の裏側)みたいに真っ黒だ。
Heritage of a small village, pardon my residence
小さな村の遺産。俺の住んでる場所(ゲットー)を許してくれ。
Came from the bottom of mankind
人類のどん底から這い上がってきたんだ。
My hair is nappy, my dick is big, my nose is round and wide
俺の髪はチリチリで、イチモツはデカくて、鼻は丸くて横に広い。
※白人社会が黒人に対して抱くステレオタイプな身体的特徴をあえて誇張して並べ立て、それらを自分の誇りとして突きつけている。
You hate me, don't you?
俺のことが憎いんだろ?
You hate my people, your plan is to terminate my culture
お前らは俺の同胞を憎み、俺たちのカルチャーを絶滅させる計画を立ててる。
You're fuckin' evil
お前らはマジで邪悪だ。
I want you to recognize that I'm a proud monkey
俺が「誇り高き猿」だってことをお前らに認識させてやりたいのさ。
※黒人に対する最悪の蔑称である「猿」を逆手に取り、プライドの象徴へと反転させている。
You vandalize my perception but can't take style from me
お前らは俺の認識を破壊するが、俺のスタイル(黒人の文化)を奪うことはできない。
And this is more than confession
そして、これは単なる告白以上のものだ。
I mean I might press the button just so you know my discretion
俺の裁量(権力)を知らしめるためだけに、ボタン(暴動の引き金)を押すかもしれないぜ。
I'm guardin' my feelings, I know that you feel it
俺は感情を押し殺してる。お前もそれを感じてるはずだ。
You sabotage my community, makin' a killin'
お前らは俺のコミュニティを破壊し、大儲け(makin' a killin')してやがる。
You made me a killer, emancipation of a real nigga
お前らが俺を人殺し(キラー)にしたんだ。これがリアル・ニガの解放宣言さ。
[Pre-Chorus: Kendrick Lamar]
The blacker the berry, the sweeter the juice
果実は黒いほど、そのジュースは甘い。
※Wallace Thurmanの同名小説のタイトルであり、2Pacの楽曲「Keep Ya Head Up」でも引用された黒人賛美の有名なフレーズ。
The blacker the berry, the sweeter the juice
果実は黒いほど、そのジュースは甘い。
The blacker the berry, the sweeter the juice
果実は黒いほど、そのジュースは甘い。
The blacker the berry, the bigger I shoot
果実は黒いほど、俺の撃ち出す弾もデカくなるんだ。
[Chorus: Assassin]
I said they treat me like a slave cah me Black
俺が黒人だからって、奴らは俺を奴隷みたいに扱いだす。
※ジャマイカのダンスホール・レゲエDeejay、Assassin(Agent Sasco)によるパトワ語の強烈なコーラス。
Woi, we feel a whole heap of pain cah we Black
おい、俺たちは黒人だからって山ほどの痛みを感じてるんだ。
And man a say they put me inna chains cah we Black
黒人だからって、奴らは俺を鎖(チェーン)で繋いだって言うのさ。
Imagine now, big gold chains full of rocks
今じゃ想像してみろよ、ダイヤ(ロック)が敷き詰められた極太のゴールド・チェーンをな。
※奴隷の鎖(chain)と、成功したラッパーの象徴であるネックレス(chain)を掛けたワードプレイ。
How you no see the whip, left scars 'pon me back
俺の背中に傷跡を残したムチ(ウィップ)が見えないのか?
But now we have a big whip parked 'pon the block
でも今じゃ、俺たちのブロックにはデカいウィップ(高級車)が停まってるぜ。
※奴隷を打つムチ(whip)と、高級車のスラング(whip)を掛けている。
All them say we doomed from the start cah we Black
奴らはみんな、俺たちが黒人だから最初から破滅する運命だと言う。
Remember this, every race start from the Black, jus 'member dat
だが覚えとけ、すべてのの人種は黒人(アフリカ大陸)から始まったんだ、それだけは忘れんなよ。
[Verse 2: Kendrick Lamar]
I'm the biggest hypocrite of 2015
俺は2015年最大の偽善者だ。
Once I finish this, witnesses will convey just what I mean
この曲が終わる頃には、証人たちが俺の言いたいことを伝えてくれるだろう。
I mean, it's evident that I'm irrelevant to society
つまり、俺がこの社会にとって無関係(不必要)な存在であることは明白だ。
That's what you're tellin' me, penitentiary would only hire me
お前らがそう言ってるんだろ。俺を雇ってくれるのは刑務所だけだってな。
Curse me 'til I'm dead, church me with your fake prophesizing
俺が死ぬまで呪いな、お前らのフェイクな予言で俺に説教しやがれ。
That I'ma be just another slave in my head
俺の頭の中は、しょせん一人の奴隷のままだってな。
Institutionalized manipulation and lies
制度化された操作と嘘。
Reciprocation of freedom only live in your eyes
自由への見返りなんてものは、お前らの目にしか映ってねえんだよ。
You hate me, don't you?
俺のことが憎いんだろ?
I know you hate me just as much as you hate yourself
お前が自分自身を憎むのと同じくらい、俺を憎んでることは分かってるぜ。
Jealous of my wisdom and cards I dealt
俺の知恵と、俺が切ったカード(成功)に嫉妬してやがる。
Watchin' me as I pull up, fill up my tank, then peel out
俺が車を停め、ガソリンを満タンにして、タイヤを鳴らして走り去るのを見てな。
Muscle cars like pull-ups, show you what these big wheels 'bout, ah
懸垂(プルアップ)みたいにタフなマッスルカーで、このデカいホイールの力を見せつけてやるよ。
Black and successful, this Black man meant to be special
黒人でありながら成功している。この黒人は特別になる運命だったのさ。
Katzkins on my radar, bitch, how can I help you?
カッツキン(高級レザーシート)を狙ってるぜ、ビッチ、何かご用か?
How can I tell you I'm making a killin'?
俺が大儲けしてる(殺しをしてる)って、どうやって伝えてやろうか?
You made me a killer, emancipation of a real nigga
お前らが俺を人殺しにしたんだ。これがリアル・ニガの解放宣言さ。
[Pre-Chorus: Kendrick Lamar]
The blacker the berry, the sweeter the juice
果実は黒いほど、そのジュースは甘い。
The blacker the berry, the sweeter the juice
果実は黒いほど、そのジュースは甘い。
The blacker the berry, the sweeter the juice
果実は黒いほど、そのジュースは甘い。
The blacker the berry, the bigger I shoot
果実は黒いほど、俺の撃ち出す弾もデカくなるんだ。
[Chorus: Assassin]
I said they treat me like a slave cah me Black
俺が黒人だからって、奴らは俺を奴隷みたいに扱いだす。
Woi, we feel a whole heap of pain cah we Black
おい、俺たちは黒人だからって山ほどの痛みを感じてるんだ。
And man a say they put me inna chains cah we Black
黒人だからって、奴らは俺を鎖で繋いだって言うのさ。
Imagine now, big gold chains full of rocks
今じゃ想像してみろよ、ダイヤが敷き詰められた極太のゴールド・チェーンをな。
How you no see the whip, left scars 'pon me back
俺の背中に傷跡を残したムチが見えないのか?
But now we have a big whip parked 'pon the block
でも今じゃ、俺たちのブロックにはデカいウィップが停まってるぜ。
All them say we doomed from the start cah we Black
奴らはみんな、俺たちが黒人だから最初から破滅する運命だと言う。
Remember this, every race start from the Black, go scream mother
だが覚えとけ、すべての人種は黒人から始まったんだ。マザー(母なる大地)に向かって叫べ。
[Verse 3: Kendrick Lamar]
I'm the biggest hypocrite of 2015
俺は2015年最大の偽善者だ。
When I finish this, if you listen, then sure you will agree
これが終わる時、もしお前がちゃんと聴いてるなら、必ず同意するはずだ。
This plot is bigger than me, it's generational hatred
この陰謀は俺一人の手に負えない。世代を超えた憎悪だ。
※ここからケンドリックは視点を変え、白人社会への怒りではなく、「黒人コミュニティの内部」へと言葉を向け始める。
It's genocism, it's grimy, little justification
これはジェノサイド(大虐殺)だ、汚らわしく、正当化できる理由なんてほとんどない。
I'm African-American, I'm African
俺はアフリカ系アメリカ人だ、俺はアフリカ人だ。
I'm Black as the heart of a fuckin' Aryan
俺はクソみたいなアーリア人(白人至上主義者)の心と同じくらい真っ黒だ。
I'm Black as the name of Tyrone and Darius, excuse my French
「タイロン」や「ダリウス」って名前と同じくらい黒人(ブラック)さ、汚い言葉(フレンチ)を使うが許してくれ。
※黒人にありがちなステレオタイプな名前の例え。
But fuck you — no, fuck y'all, that's as blunt as it gets
でも、お前はクソ食らえ——いや、お前ら「全員(黒人も白人も)」クソ食らえだ。これ以上ないくらい単刀直入にな。
I know you hate me, don't you?
俺のことが憎いんだろ?
You hate my people, I can tell 'cause it's threats when I see you
お前は俺の同胞(他の黒人)を憎んでる。お前を見ると脅威を感じるから分かるんだよ。
I can tell 'cause your ways deceitful
お前のやり方が欺瞞に満ちてるから分かるぜ。
Know I can tell because you in love with that Desert Eagle
分かるよ、だって「お前」はあのデザートイーグル(拳銃)に恋してるんだからな。
※同胞である黒人に銃を向けるストリートのギャング(かつての自分たち)への痛烈な批判。
Thinkin' maliciously, he get a chain then you gon' bleed him
悪意に満ちた考えさ。あいつがチェーン(金)を手に入れたら、お前はあいつから血を流させるんだろ。
It's funny how Zulu and Xhosa might go to war
ズールー族とコサ族が戦争を起こすかもしれないなんて、笑える話だ。
※南アフリカの部族間の抗争を引き合いに出している。
Two tribal armies that wanna build and destroy
築き上げ、そして破壊し合おうとする二つの部族の軍隊。
Remind me of these Compton Crip gangs that live next door
隣のストリートに住む、コンプトンのクリップスどもを思い出させるぜ。
Beefin' with Pirus, only death settle the score
パイル(ブラッズ)とビーフして、死だけがそのスコア(決着)をつけるんだ。
So don't matter how much I say I like to preach with the Panthers
だから、俺がブラックパンサー党と一緒に説教を垂れるのが好きだと言おうが。
Or tell Georgia State "Marcus Garvey got all the answers"
ジョージア州の大学で「マーカス・ガーベイがすべての答えを持ってる」と語ろうが。
※Marcus Garveyは黒人民族主義の指導者。
Or try to celebrate February like it's my B-Day
2月(黒人歴史月間)を自分の誕生日のように祝おうが。
Or eat watermelon, chicken, and Kool-Aid on weekdays
平日にスイカやフライドチキンを食って、クールエイドを飲もうが。
※黒人のステレオタイプなカルチャーや食べ物をあえて挙げて、黒人としての誇りを強調している。
Or jump high enough to get Michael Jordan endorsements
マイケル・ジョーダンみたいなエンドースメント(契約)をもらえるくらい高くジャンプしようが。
Or watch BET 'cause urban support is important
アーバン(黒人層)のサポートが大事だからってBETチャンネルを見ようが、全部関係ねえんだ。
So why did I weep when Trayvon Martin was in the street
それならなぜ、トレイボン・マーティンがストリートで殺された時、俺は涙を流したんだ?
※Trayvon Martin=2012年にフロリダ州で自警団員に射殺された無防備な黒人の少年。Black Lives Matter運動の原点の一つ。
When gang-banging make me kill a nigga blacker than me?
ギャングの抗争で、俺自身が「自分より黒い(肌の濃い)ニガ」を殺してるってのによ?
※白人による理不尽な黒人殺害に涙して社会を批判しながら、自分たちもまたストリートの抗争で同胞を殺害しているという事実を突きつけ、「ブラック・ライヴズ・マター(黒人の命は大切だ)」というスローガンの前にある自己矛盾を露わにした衝撃のパンチライン。この曲で繰り返された「偽善者」という言葉の意味が最後に回収される。
Hypocrite
俺は「偽善者」なんだよ。
