Artist: Kendrick Lamar
Album: To Pimp a Butterfly
Song Title: Complexion (A Zulu Love)
概要
本作は、黒人コミュニティ内部に根深く存在する「カラーイズム(肌の色の濃淡による差別)」をテーマにしたコンシャスな楽曲である。アルバム『To Pimp a Butterfly』において、自己受容とコミュニティの連帯を説く重要な役割を担っている。Pete Rockがコーラスで参加し、同アルバムで唯一のラップ客演としてRapsodyが起用された。奴隷制時代から続く「フィールド・ニガ(野外労働の奴隷、色が濃い)」と「ハウス・ニガ(家事労働の奴隷、色が薄い)」の分断を象徴するウィリー・リンチ理論を否定し、「Complexion(肌の色)なんて関係ない」というメッセージを南アフリカのズールー族の概念に重ねて提示。あらゆるシェード(濃淡)の肌が美しいと肯定し、ストリートのギャング・カラーによる争いにも終止符を打つよう促す傑作だ。
和訳
[Intro: Pete Rock]
I'm with this
俺も賛同するぜ。
[Chorus: Pete Rock]
Complexion (Two-step)
肌の色(ツーステップ)。
Complexion don't mean a thing (It's a Zulu love)
肌の色なんて何の意味もねえ(これがズールーの愛だ)。
Ooh, complexion (Two-step)
あぁ、肌の色(ツーステップ)。
It all feels the same (It's a Zulu love)
結局はどれも同じように感じるのさ(これがズールーの愛だ)。
[Verse 1: Kendrick Lamar]
Uh, dark as the midnight hour or bright as the mornin' sun
真夜中のように暗くても、朝日みたいに明るくてもな。
Give a fuck about your complexion, I know what the Germans done
お前の肌の色なんて知ったこっちゃねえ、俺はドイツ人が何をしたか知ってるぜ。
※ナチス・ドイツによる優生思想やホロコーストを引き合いに出し、肌の色や人種で人間の優劣を決めることの愚かさと危険性を批判している。
Sneak (Dissin')
こっそり(ディスる)。
Sneak me through the back window, I’m a good field nigga
裏窓から俺をこっそり入れてくれよ、俺は優秀な「フィールド・ニガ」だからさ。
※奴隷制時代、肌の色の濃い奴隷(フィールド・ニガ)は過酷な野外労働を強いられ、主人の家に住む色の薄い奴隷(ハウス・ニガ)と分断されていた。その歴史的背景を皮肉交じりに引用している。
I made a flower for you outta cotton just to chill with you
お前と一緒にくつろぐために、綿花で花を作ってやったぜ。
You know I'd go the distance, you know I'm ten toes down
俺がどこまでも行くって分かってるだろ、俺が地に足つけて(本気で)るってこともな。
Even if master listenin', cover your ears, he 'bout to mention
たとえ「ご主人様」が聞いてようとな。耳を塞ぎな、奴が何か言おうとしてるぜ。
※master=奴隷の主人、転じて白人中心の社会構造や権力者を指す。
[Chorus: Pete Rock]
Complexion (Two-step)
肌の色(ツーステップ)。
Complexion don't mean a thing (It's a Zulu love)
肌の色なんて何の意味もねえ(これがズールーの愛だ)。
Ooh, complexion (Two-step)
あぁ、肌の色(ツーステップ)。
It all feels the same (It's a Zulu love)
結局はどれも同じように感じるのさ(これがズールーの愛だ)。
[Verse 2: Kendrick Lamar]
Uh, dark as the midnight hour, or bright as the mornin' sun
真夜中のように暗くても、朝日みたいに明るくても。
Brown skinned, but your blue eyes tell me your mama can't run
褐色の肌をしてるが、その青い目を見れば、お前のママが逃げられなかったってことが分かるぜ。
※白人の主人によって黒人奴隷の女性がレイプされ、青い目を持つ混血の子供が生まれたという奴隷制の残酷な歴史を示唆している。
Sneak (Dissin')
こっそり(ディスる)。
Sneak me through the back window, I’m a good field nigga
裏窓から俺をこっそり入れてくれよ、俺は優秀な「フィールド・ニガ」だからさ。
I made a flower for you outta cotton just to chill with you
お前と一緒にくつろぐために、綿花で花を作ってやったぜ。
You know I'd go the distance, you know I'm ten toes down
俺がどこまでも行くって分かってるだろ、俺が地に足つけてるってこともな。
Even if master's listenin', I got the world's attention
たとえご主人様が聞いていようと、俺は今、世界中から注目されてるんだ。
So I'ma say somethin' that's vital and critical for survival
だから、人類が生き残るために必要不可欠で決定的なことを言ってやる。
Of mankind, a feline color should never rival
人類において、ネコ科の動物みたいに毛色で張り合うべきじゃねえんだよ。
Beauty is what you make it, I used to be so mistaken
美しさってのは自分で作るもんだ。昔の俺はマジで勘違いしてた。
By different shades of faces
顔の色の濃淡(シェード)によってな。
※黒人コミュニティ内で「肌が薄い方が美しい」とされるカラーイズムの価値観に、かつては自分も囚われていたことを告白している。
Then Whit' told me, "A woman is woman, love the creation"
そしたらホイットニーが俺に教えてくれた、「女は女よ、神の創造物を愛しなさい」ってな。
※Whit'はケンドリックの長年のパートナー(現在の婚約者)であるWhitney Alfordのこと。彼女の言葉でカラーイズムの呪縛から解き放たれた。
It all came from God, then you was my confirmation
すべては神から来たものだ、お前がそれを俺に確信させてくれた。
I came to where you reside
俺はお前が住む場所へやって来た。
And looked around to see more sights for sore eyes
そして辺りを見回し、目の保養になるもっと美しい景色を探したんだ。
Let the Willie Lynch theory reverse a million times with...
ウィリー・リンチの理論を、100万回ひっくり返してやるよ……。
※ウィリー・リンチ理論とは、白人が黒人奴隷を「肌の色の濃淡」や「年齢」などで分断し、互いに争わせて支配しやすくしたとされる奴隷管理のノウハウ。これを完全に打ち破り、連帯するという宣言。
[Chorus: Pete Rock]
Complexion (Two-step)
肌の色(ツーステップ)。
Complexion don't mean a thing (It's a Zulu love)
肌の色なんて何の意味もねえ(これがズールーの愛だ)。
Ooh, complexion (Two-step)
あぁ、肌の色(ツーステップ)。
It all feels the same (It's a Zulu love)
結局はどれも同じように感じるのさ(これがズールーの愛だ)。
[Interlude: JaVonté & Kendrick Lamar]
You like it, I love it
お前がそれを好きなら、俺はそれを愛するぜ。
You like it, I love it
お前がそれを好きなら、俺はそれを愛するぜ。
You like it, I love it
お前がそれを好きなら、俺はそれを愛するぜ。
You like it, I love it
お前がそれを好きなら、俺はそれを愛するぜ。
You like it, I love it
お前がそれを好きなら、俺はそれを愛するぜ。
You like it, I love it
お前がそれを好きなら、俺はそれを愛するぜ。
You like it, I love it
お前がそれを好きなら、俺はそれを愛するぜ。
You like it, I love it
お前がそれを好きなら、俺はそれを愛するぜ。
(Where the homegirl Rapsody at?
(俺のホームガール、ラプソディはどこだ?
I need you to speak your mind real quick, loved one!)
愛しのシスターよ、お前の思ってることをすぐに話してくれ!)
[Verse 3: Rapsody]
Let me talk my Stu Scott, 'scuse me on my 2Pac
スチュアート・スコットみたいに語らせて。2Pacみたいに失礼するわ。
※Stu Scott=著名な黒人スポーツキャスター。2Pacの楽曲「Keep Ya Head Up」のメッセージを引き継ぎ、黒人女性へのエンパワーメントを行う。
Keep your head up when the juice stop, loving thy
ジュース(権力・活力)が途絶えても、頭を高く上げて。愛しなさい。
Color of your skin? Color of your eyes
あなたの肌の色を?あなたの目の色を?
That's the real blues, baby, like you met Jay's baby, uh
それこそが本物のブルース(憂鬱)よ、ジェイ・Zの赤ん坊(ブルー・アイビー)に会ったみたいにね。
※カラーイズムの悩みを「blues(憂鬱)」と表現し、Jay-ZとBeyoncéの娘Blue Ivyの名前を掛けている。
You blew me away, you think more beauty in blue, green and grey
あなたは私を驚かせたわ。青や緑、グレー(の色素の薄い目)の方が美しいと思ってるんでしょ。
All my solemn men up north, twelve years a slave
北部の真面目な男たちよ、まるで『それでも夜は明ける(12 Years a Slave)』ね。
Twelve years of age, thinkin' my shade too dark
12歳の頃、私は自分の肌のシェードが濃すぎると思い悩んでた。
I love myself, I no longer need Cupid
でも今は自分を愛してる、もうキューピッドなんて必要ないわ。
Enforcin' my dark side like a young George Lucas
若き日のジョージ・ルーカスみたいに、自分の「ダークサイド」を強化してるの。
※スター・ウォーズの「ダークサイド(暗黒面)」と、自身の「ダークな肌」を肯定する意味を見事に掛けたワードプレイ。
Light don't mean you smart, bein' dark don't make you stupid
肌が明るいからって賢いわけじゃないし、肌が暗いからってバカなわけじゃない。
And frame of mind for them bustas, ain't talkin' "Woo-hah!"
あのバカども(bustas)の考え方、バスタ・ライムスの「Woo-Hah!!」の話じゃないわよ。
Need a paradox for the pair of doc's they tutored
奴らが教え込んだ2人の医者(pair of doc's)には、パラドックス(逆説)が必要ね。
Like two Todd's, L-L, you lose two times
2人のトッド(LL Cool Jの本名)みたいに、LとLで2回負ける(lose)のよ。
※LL Cool J(James Todd Smith)の「L」と、敗北を意味する「L(Loss)」を掛けた高度なリリシズム。
If you don't see you beautiful in your complexion
もし自分の肌の色を美しいと思えないならね。
It ain't complex to put it in context
文脈に当てはめるのは、そんなに複雑(complex)なことじゃない。
Find the air beneath the kite, that's the context
凧の下の風を見つけなさい、それが文脈よ。
Yeah, baby, I'm conscious, ain't no contest
そうよベイビー、私はコンシャス(意識的)なの、勝負にもならないわ。
If you like it, I love it, all your earth tones been blessed
あなたがそれを好きなら、私はそれを愛する。すべてのアースカラー(様々な肌の色)は祝福されてるの。
Ain't no stress, jiggaboos wanna be
ストレスなんてないわ、ジガブー(黒人への蔑称)になりたがってる奴らがいるけど。
I ain't talkin' Jay, I ain't talkin' Bey
ジェイ・Zの話でも、ビヨンセ(JiggaやBey)の話でもないわよ。
I'm talkin' days we got school watchin' movie screens
学校で映画のスクリーンを見ていた日々の話をしてるの。
And spike your self-esteem
そして自尊心を高める(スパイクする)の。
※黒人の自尊心を描く映画監督スパイク・リー(Spike Lee)の名前が隠されている。
The new James Bond gon' be black as me
新しいジェームズ・ボンドは、私くらい黒くなるはずよ。
※当時、黒人俳優のイドリス・エルバが次期ジェームズ・ボンド役の候補として噂されていたことに言及している。
Black as brown, hazelnut, cinnamon, black tea
ブラウン、ヘーゼルナッツ、シナモン、ブラックティーみたいに黒くね。
And it's all beautiful to me
私にとっては、どれも美しいわ。
Call your brothers magnificent, call all the sisters queens
兄弟たちを「素晴らしい」と呼び、姉妹たちを「クイーン」と呼びなさい。
We all on the same team, blues and pirus, know colors ain't a thing
私たちはみんな同じチームなの。クリップス(ブルー)もパイル(ブラッズ/レッド)も、色なんて関係ないって分かってるでしょ。
※カラーイズムだけでなく、ギャングのカラー(青と赤)による殺し合いの無意味さも指摘し、黒人コミュニティ全体の団結を促している。
[Outro: Kendrick Lamar]
Barefoot babies with no care
何も気にしていない裸足の赤ん坊たち。
Teenage gun toters that don't play fair, should I get out the car?
フェアな戦いをしない、銃を持った10代のガキども。俺は車を降りるべきか?
I don't see Compton, I see something much worse
俺にはコンプトンが見えない。もっと酷いものが見える。
The land of the landmines, the hell that's on earth
地雷だらけの土地、この世の地獄だ。
※南アフリカに滞在した際、ケンドリックが目撃した過酷な現実(貧困や暴力)を表現し、次曲「The Blacker the Berry」の人種的緊張へと繋がっていく重要なアウトロ。
