UGMKM

Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

For Free? (Interlude) - Kendrick Lamar 【和訳・解説】

Artist: Kendrick Lamar

Album: To Pimp a Butterfly

Song Title: For Free? (Interlude)

概要

本作は名盤『To Pimp a Butterfly』に収録された、フリージャズの伴奏に乗せて矢継ぎ早に言葉をスピットするポエトリーリーディング的なインタールードである。表面上は高飛車な女性と彼女に搾取される男性の痴話喧嘩を描いているが、その実態は「黒人を搾取し続けるアメリカ社会(=女性)」と「それに反旗を翻す黒人層・アーティスト(=ケンドリック)」の構造的な対立のメタファーだ。繰り返される「俺のモノ(才能や労働力)はタダじゃねえ」という痛烈なパンチラインは、奴隷制時代から続く不当な扱いや資本主義への怒りであり、黒人の尊厳と真の価値を主張する強烈なステートメントとして機能している。

和訳

[Intro: Darlene Tibbs]
Fuck you, motherfucker, you a ho ass nigga
くたばれ、このクソ野郎が。

I don't know why you trying to go big, nigga, you ain't shit
なんでビッグぶってんのか知らねえけど、お前なんか大したことねえんだよ。

Walking around like you God's gift to Earth, nigga, you ain't shit
神様からの贈り物気取りで歩き回ってっけどな、お前なんかマジでクソ以下だ。

You ain't even buy me no outfit for the Fourth
独立記念日(7月4日)に着る服すら買ってくれねえじゃんか。
※the Fourth=7月4日の独立記念日(Fourth of July)。アメリカという国家が自身の建国を祝う日に、黒人(ここではケンドリック)が貢献することを強要するメタファーでもある。

I need that Brazilian, wavy, twenty-eight inch, you playin'
私はブラジリアンヘアーのウェーブがかった28インチのウィッグが欲しいのに、ふざけてんの?

I shouldn't be fuckin' with you anyway
そもそも、お前なんかとヤるべきじゃなかったわ。

I need a baller-ass, boss-ass nigga
私にはもっと金持ってて、ボスみたいな男が必要なのよ。

You's a off-brand-ass nigga, everybody know it
お前なんか無名の安物ブランド野郎だって、誰もが知ってんだよ。

Your homies know it, everybody fuckin' know
お前のダチだって分かってる、マジで全員お見通しなんだよ。

Fuck you, nigga, don't call me no more
クソ食らえ、もう二度と電話してくんな。

You won't know, you gonna lose on a good bitch
分かってないだろうけど、お前はイイ女を失うことになるんだからな。

My other nigga is on, you off
他の男はイケてるけど、お前は終わってんの。

What the fuck is really going on?
一体どうなってんのよ、マジで?

[Verse: Kendrick Lamar]
This dick ain't free
俺のモノ(才能・労働)はタダじゃねえ。
※直訳は「俺のペニスは無料ではない」だが、ここでは黒人としての肉体的な労働力や、アーティストとしての才能・作品を指す暗喩。アメリカ社会による搾取に対する拒絶である。

You lookin' at me like it ain't a receipt
お前は俺を、まるで領収書(価値)がないみたいに見下してやがる。

Like I never made ends meet, eating your leftovers and raw meat
俺がずっとお前の残り物や生肉を食って、かつかつで生きてきたかのように。

This dick ain't free
俺のモノはタダじゃねえんだよ。

Livin' in captivity raised my cap salary
捕らわれの身で生きてきたことが、俺の要求額(サラリー)を引き上げたんだ。
※captivity(捕らわれの身)は奴隷制から続く黒人の抑圧された歴史を指す。その苦痛の歴史こそが、現在の自分に高い対価を要求する正当性を与えているという宣言である。

Celery, tellin' me green is all I need
セロリみたいによ、お前は俺に「必要なのは緑(金)だけだ」って吹き込んできた。
※CeleryとSalaryで韻を踏みつつ、green(野菜/お金)のダブルミーニングを用いている。

Evidently, all I seen was Spam and raw sardines
でも明らかに、俺が見てきたのはスパム缶と生のイワシだけだったぜ。
※低所得層が食べる安価な保存食の代表例。資本主義(アメリカ)が豊かさを約束しながら、ゲットーには貧困しか与えなかった事実を批判している。

This dick ain't free, I mean, baby
俺のモノはタダじゃねえ、だからさ、ベイビー。

You really think we could make a baby named Mercedes
マジで「メルセデス」って名前の子供を作れると思ってんのか?

Without a Mercedes-Benz and twenty-four inch rims
ベンツの実車も、24インチのリムもなしに。

Five percent tint, and air conditioning vents?
5%のフルスモークも、エアコンの吹き出し口もなしによ?

Hell fuckin' naw, this dick ain't free
んなわけあるか、絶対に。俺のモノはタダじゃねえ。

I need forty acres and a mule
俺には40エーカーの土地と1頭のラバが必要なんだよ。
※南北戦争後に解放奴隷に対して政府が約束した賠償策の合言葉。結局反故にされたこの約束を引き合いに出し、歴史的な負債の清算を求めている。

Not a forty ounce and a pitbull
40オンスのビールとピットブルなんかじゃねえ。
※ゲットーの黒人ステレオタイプ(安酒と闘犬)を与えて誤魔化すな、という主張である。

Bullshit, matador, matador
ふざけんな、マタドール(闘牛士)がよ。
※闘牛士(アメリカ)が赤い布で牛(黒人)を騙し、弄んでいる構造を批判している。

Had the door knockin', let 'em in, who's that?
ドアをノックする音がして、中に入れてみたら、誰だと思う?

Genital's best friend, this dick ain't free
「性器の親友」さ。俺のモノはタダじゃねえ。

Pity the fool that made the pretty in you prosper
お前のその「美しさ」を肥え太らせたバカな奴らに同情するぜ。
※「お前(アメリカ)」が繁栄し美しく見えるのは、過去の奴隷や労働者たちが搾取されながら土台を作ったからであるという歴史的背景を指す。

Titty juice and pussy lips kept me obnoxious
おっぱいの汁とマンコの唇が、俺をずっと不快にさせ続けた。
※性的なメタファーを用いて、アメリカ社会が物質的・肉体的な誘惑で黒人を骨抜きにし、本質的な問題から目を逸らさせてきたことを表現している。

Kept me up watchin' pornos in poverty, apology? No
貧困の中でポルノを見させて俺を寝不足にさせたんだ。謝罪だと?ふざけんな。

Watch you politic with people less fortunate, like myself
俺みたいに恵まれない奴らを相手に、お前が政治的な駆け引き(ポリティクス)をするのを見てるんだよ。

Every dog has its day, now doggy style shall help
どんな負け犬にもいつか順番が回ってくる(ツキが回る)。なら今は後背位(ドギースタイル)が役に立つな。
※"Every dog has its day"(誰にでも全盛期は来る)ということわざと、性行為のDoggy styleを掛けた言葉遊び。アメリカの背後(ケツ)を取ってやり返すという逆襲の意図。

This dick ain't free
俺のモノはタダじゃねえんだよ。

Matter of fact, it need interest
実際のところ、利子が必要だぜ。

Matter of fact, it's nine inches
実際のところ、こいつは9インチ(約23cm)ある。

Matter of fact, see our friendship based on business
実際のところ、俺たちの友情はビジネスの上に成り立ってんだろ。

Pension, more pension, you're pinchin' my consensus
年金だ、もっと年金をよこせ。お前は俺の総意(意見)をケチって握り潰してやがる。

Been relentless, fuck forgiveness, fuck your feelings
ずっと容赦なかったな。許しなんかクソくらえ、お前の感情なんて知るか。

Fuck your sources, all distortion, if you fuck, it's more abortion
お前の情報源もクソだ、全部歪んでる。お前とヤれば、中絶(犠牲)が増えるだけだ。

More divorce courts and portion
離婚裁判が増えて、財産が分割されるだけ。

My check with less endorsement left me dormant
保証の少ない小切手が、俺を冬眠状態(無力)にさせたんだ。

Dusted, doomed, disgusted, forced with
ボロボロにされ、破滅に向かい、嫌気がさして、無理やり押し付けられる。

Fuck you think is in more shit?
誰がもっとクソみたいな状況にいると思ってんだ?

Porcelain pipes pressure, bust 'em twice
陶器のパイプの圧力、2回ブッ壊してやるよ。
※Porcelain pipesはトイレの配管やクラックパイプを示唆し、貧困のプレッシャーが限界に達して破裂する(暴動が起きる)様子を描写している。

Choice is devastated, decapitated the horseman
選択肢は破壊され、騎手の首を刎ね飛ばした。

Oh, America, you bad bitch, I picked cotton and made you rich
あぁ、アメリカよ、お前は本当に悪女(バッド・ビッチ)だ。俺は綿花を摘んでお前を金持ちにしてやったんだぜ。
※ここで相手の正体が「アメリカ」であることが明確になる。奴隷制時代の綿花摘みによる搾取が、現在のアメリカの富の基盤であることを告発する強烈なパンチラインである。

Now my dick ain't free
だからもう、俺のモノ(労働力)はタダじゃねえ。

[Outro: Darlene Tibbs]
I'ma get my Uncle Sam to fuck you up
「アンクル・サム」を呼んで、お前をボコボコにさせてやるからな。
※アンクル・サムはアメリカ政府の擬人化。反抗する黒人に対し、国家権力(警察やシステム)を使って力で弾圧するというアメリカの姿勢を風刺している。

You ain't no king
お前なんか王様(キング)じゃないわ。
※ケンドリックの愛称である「King Kendrick」や、前作『good kid, m.A.A.d city』での成功を否定する言葉。黒人がどれだけ成功しても、アメリカの構造上は真の支配者になれないという呪いのような捨て台詞である。

 

For Free? (Interlude)

For Free? (Interlude)

  • ケンドリック・ラマー
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes