UGMKM

Unraveling Genius: Music, Knowledge, Madness

Halftime - Nas 【和訳・解説】

Artist: Nas

Album: Illmatic

Song Title: Halftime

概要

1992年に映画『Zebrahead』のサウンドトラックに収録され、Nasの記念すべきソロデビュー・シングルとして世に出た楽曲。後にヒップホップ史上最高傑作とも称されるアルバム『Illmatic』(1994年)にも収録された。プロデューサーはLarge Professorで、ファンキーなベースラインとトランペットのサンプリングが特徴的だ。タイトル「Halftime」には、ヒップホップの歴史が新たなフェーズ(後半戦)へと突入するパラダイムシフトの瞬間であるという意味が込められている。「Nasty Nas」としての荒々しさと、後の知的なリリシストとしての側面が同居しており、クイーンズブリッジ団地の過酷な日常を高密度のライムと高度なワードプレイで描き出した、東海岸ヒップホップの決定的なクラシックである。

和訳

[Intro]
(Right... Right...)
(そうだ… その通りだ…)

Check me out, y'all
みんな、俺をチェックしな。

Nasty Nas in your area
ナスティー・Nasがテメェらのエリアに登場だ。

About to cause mass hysteria
大パニック(マス・ヒステリア)を引き起こしてやるよ。

[Verse 1]
Before a blunt, I take out my fronts
ブラント(葉巻大麻)を吸う前に、フロント(金歯)を外す。
※fronts=取り外し可能な金歯(グリルズ)。当時のNYストリートファッションの象徴である。

Then I start to front, matter of fact, I be on a manhunt
それからイキり始める。いや、むしろマンハント(人間狩り)に出るのさ。
※front=「見栄を張る」「イキる」という意味のスラング。前行の「fronts(金歯)」と言葉遊びをしている。

You couldn't catch me in the streets without a ton of reefer
大量のリーファー(大麻)を持たずにストリートを歩く俺を見ることはねぇよ。

That's like Malcolm X catchin' the Jungle Fever
それはマルコムXが「ジャングル・フィーバー」にかかるくらいあり得ないことだ。
※Jungle Fever=異人種間(特に黒人と白人)の恋愛を指すスラング。スパイク・リーの同名映画でも有名。黒人至上主義を掲げたマルコムXが白人女性に惹かれることは絶対にあり得ない、という強烈な比喩。

King poetic, too much flavor, I'm major
詩的なキング、フレーバーが溢れすぎてる、俺はメジャーな存在だ。

Atlanta ain't Brave-r, I pull a number like a pager
アトランタ(・ブレーブス)よりも「勇敢(ブレイバー)」だ。ポケベルみたいに番号(女の連絡先)を引き寄せるぜ。
※Atlanta ain't Brave-r=MLBの球団アトランタ・ブレーブスと「Brave(勇敢な)」を掛けたワードプレイ。

'Cause I'ma ace when I face the bass
俺はベースの音に直面した時、エース級の力を発揮するからな。

40-side is the place that is givin' me grace
40サイドが、俺に恩恵を与えてくれる場所さ。
※40-side=Nasの地元クイーンズブリッジ団地内の「40th Avenue」側を指す。

Now wait, another dose and you might be dead
待てよ、もう一服(一回分のラップ)くらったら、お前は死んじまうかもしれないぜ。

And I'm a Nike-head, I wear chains that excite the Feds
俺は重度のナイキ・マニア(ナイキ・ヘッド)で、サツ(FBI)を刺激するような太いチェーンを着けてる。

And ain't a damn thing gonna change
そして、何一つ変わることはねぇ。

I'm a performer, strange, show the mic warmer was born to gain
俺はパフォーマーだ、奇妙なほどにな。マイクを熱くする奴が、勝つ(得る)ために生まれてきたってことを見せてやる。

Nas, why did you do it?
「Nas、どうしてそんなことやったんだ?」

You know you got the mad-phat fluid when you rhyme, it's halftime
俺がライムする時、超ヤバい(マッド・ファットな)液体(フロウ)が溢れ出すって分かってるだろ。さあ、ハーフタイムだ。

[Chorus]
(Right...) It's halftime
(そうだ…)ハーフタイムだ。

(Right...) A-yo, it's halftime
(そうだ…)エイヨ、ハーフタイムだ。

(Right...) It's halftime
(そうだ…)ハーフタイムだ。

(Right...) Yeah, it's about halftime
(そうだ…)あぁ、そろそろハーフタイムだな。

This is how it feel, check it out, how it feel
これがその感触(ヴァイブス)さ、チェックしな、どんな感じか。

[Verse 2]
It's like that, you know it's like that
こんな感じさ、分かってるだろ。

I got it hemmed, now you never get the mic back
俺が完全に縫い付けた(支配した)から、お前らにマイクが戻ることは二度とねぇ。
※got it hemmed=「裾を縫い上げる」から転じて、「完全に掌握する」「囲い込む」という意味のスラング。

When I attack, there ain't a army that could strike back
俺が攻撃を仕掛けたら、反撃できる軍隊なんて存在しねぇ。

So I react, never calmly on a hype track
だから俺は反応する、ハイプな(アガる)トラックの上では絶対に大人しくなんてしてねぇよ。

I set it off with my own rhyme
俺は自分自身のライムでぶちかます。

'Cause I'm as ill as a convict who kills for phone time
だって俺は、電話の時間のために人を殺す囚人くらい「イル(ヤバい)」だからな。
※ムショ内の公衆電話の順番待ちで殺人が起きるほど、刑務所やゲットーの環境が過酷であることを示すハードコアな比喩。

I max like cassettes, I flex like sex
カセットのMaxell(マクセル)みたいに限界(マックス)まで詰め込み、セックスみたいにフレックス(自慢/伸縮)する。
※当時のカセットテープの人気ブランド「Maxell」と「max(限界までやる)」を掛けたワードプレイ。

In your stereo sets, Nas'll catch wreck
お前のステレオセットの中で、Nasが大暴れ(キャッチ・レック)してやるよ。

I used to hustle, now all I do is relax and strive
昔はハッスル(非合法なシノギ)してたが、今じゃリラックスして上を目指すだけだ。

When I was young, I was a fan of The Jackson 5
ガキの頃は、ジャクソン5のファンだったぜ。

I drop jewels, wear jewels, hope to never run it
宝石(知識)を落とし、宝石(ジュエリー)を身につける。走って逃げる(逃走する)ような真似はしたくねぇな。
※drop jewels=ヒップホップスラングで「知識や真理(宝石)を語る」こと。

With more kicks than a baby in a mother's stomach
母親の腹の中の赤ん坊よりも、多くのキックを持ってるぜ。
※kick=「蹴る」「スニーカー」「ドラムのキック音」のトリプルミーニング。

Nasty Nas has to rise 'cause I'm wise
ナスティー・Nasは上に登り詰めなきゃならねぇ、だって俺は賢いからな。

This is exercise 'til the microphone dies
これはマイクが死ぬ(壊れる)までのエクササイズ(運動)さ。

Back in '83, I was an MC sparkin'
1983年の頃、俺は輝き始めたMCだった。

But I was too scared to grab the mics in the parks and
でも、公園でマイクを握るのが怖すぎたんだ。

Kick my little raps 'cause I thought niggas wouldn't understand
自分の拙いラップを蹴る(披露する)のがな。連中には俺の凄さが理解できねぇと思ってたから。

And now in every jam, I'm the fuckin' man
だけど今じゃ、どのパーティー(ジャム)に行っても、俺が一番ヤバい男(ザ・マン)だぜ。

I rap in front of more niggas than in the slave ships
奴隷船に乗せられた黒人たちよりも多い観衆の前で、俺はラップしてるんだ。

I used to watch "CHiPs", now I load Glock clips
昔は『白バイ野郎ジョン&パンチ(CHiPs)』を観てたが、今じゃグロック(銃)のクリップ(弾倉)を装填してる。
※CHiPs=70〜80年代に放送されていたアメリカの警察ドラマ。純粋だった子供時代から、銃を手にする過酷な環境への変化を描写している。

I got to have it, I miss Mr. Magic
俺にはこれ(ヒップホップ)が必要だ。ミスター・マジックが恋しいよ。
※Mr. Magic=NYの伝説的なヒップホップ・ラジオDJ。Nasの初期のキャリアにも多大な影響を与えた重要人物。

Versatile, my style switches like a faggot
多才(ヴァーサタイル)だろ、俺のスタイルはオカマみたいに切り替わる(スイッチする)んだ。
※当時のホモフォビア的なスラング(faggot)。「switch」は「(性的な)役割を切り替える・腰を振って歩く」という意味と、「ラップのスタイルを切り替える」を掛けている。現代の基準では不適切な表現だが、90年代当時のストリートの粗野な空気感がそのまま表れている。

But not bisexual, I'm an intellectual of rap
だがバイセクシャルってわけじゃねぇ、俺はラップのインテリ(知識人)なんだよ。

I'm a professional, and that's no question, yo
俺はプロフェッショナルだ。そんなの疑う余地もねぇよ。

These are the lyrics of the man, you can't near it, understand?
これが本物の男のリリックだ、お前らには近づくことすらできねぇ、分かるか?

'Cause in the streets, I'm well-known like the number man
なぜならストリートじゃ、俺はナンバーズの胴元(ナンバー・マン)くらい顔が広いからな。
※number man=非合法な宝くじ(ナンバーズ)の集金人。ゲットーの誰もが知っている存在である。

Am I in place with the bass and format?
俺はベースとフォーマットにバッチリハマってるだろ?

Explore rap, and tell me Nas ain't all that
ラップを隅々まで探求して、それでもNasが大したことないって言ってみろよ。

And next time I rhyme, I be foul
次に俺がライムする時も、反則スレスレ(ファウル)でいくぜ。

Whenever I freestyle, I see trial niggas say I'm wild
俺がフリースタイルする時はいつも、裁判待ち(トライアル)の奴らが「お前はワイルドだ」って言うのを見るんだ。

I hate a rhyme-biter's rhyme
俺はライムをパクる奴(ライム・バイター)のライムが大嫌いなんだ。

Stay tuned, Nas soon, the real rap comes at halftime
チャンネルはそのままで待ってな。すぐにNasが、リアルなラップをハーフタイムにお届けするぜ。

[Chorus]
(Right...) It's halftime
(そうだ…)ハーフタイムだ。

(Right...) Exhale, check it, it's halftime
(そうだ…)息を吐き出せ、チェックしな、ハーフタイムだ。

(Right...) It's halftime
(そうだ…)ハーフタイムだ。

(Right...) It's real in the field
(そうだ…)この現場(フィールド)はリアルだぜ。

Word life, check it
命にかけてマジだ、チェックしな。

[Verse 3]
I got it goin' on, even flip a morning song
俺はイケてるぜ、朝の曲だってフリップ(サンプリングで作り変える)できる。

Every afternoon, I kick half the tune
毎日の午後、俺は曲の半分(ハーフ)を蹴り飛ばす(ラップする)。

And in the darkness, I'm heartless like when the NARC's hit
そして暗闇の中じゃ、麻薬捜査官(ナークス)が踏み込んでくる時くらい冷酷(ハートレス)になる。

Word to Marcus Garvey, I hardly sparked it
マーカス・ガーベイにかけて誓うぜ、俺はまだほとんど火をつけて(本気を出して)ねぇってな。
※Marcus Garvey=黒人ナショナリズムの指導者。「Word to mother」の派生として、偉大な黒人指導者の名前を使って誓いを立てている。

'Cause when I blast the herb, that's my word
俺がハッパ(ハーブ)を吹かす時、それは俺の言葉(ワード)そのものだからな。

I be slayin' 'em fast, doin' this, that and the third
奴らを瞬殺してやるよ、あれやこれや、三番目のこと(色んなこと)をこなしながらな。

But chill, pass to Andre, and let's slay
まぁ落ち着け。アンドレにパスして、ぶっ殺しに行こうぜ。
※Andre=「アンドレ・ザ・ジャイアント」という巨大なブラント(大麻葉巻)を指すスラングか、あるいは地元の仲間の名前と解釈される。

I bag bitches up at John Jay and hit a matinée
ジョン・ジェイ高校でビッチをひっかけ、昼下がりの映画(マチネ)に行くんだ。
※John Jay=ブルックリンにあるジョン・ジェイ高校。Nas自身は中退しているが、ストリートの等身大の日常を描写している。

Puttin' hits on 5-0
5-0(サツ)にヒット(暗殺命令/攻撃)を仕掛ける。
※5-0=警察を指すスラング(ドラマ『Hawaii Five-O』に由来)。

'Cause when it's my time to go, I wait for God with the .44
なぜなら俺の死ぬ時が来たら、44口径を握りしめて神を待つつもりだからな。

And biters can't come near
スタイルをパクる奴ら(バイター)は近づくことすらできねぇ。

And yo, go to Hell to the foul cop who shot Garcia
ガルシアを撃ち殺したクソったれなサツは地獄へ落ちな。
※Garcia=1992年にワシントン・ハイツで私服警官に不当に射殺されたドミニカ系移民キコ・ガルシア。この事件はNYで大きな暴動を引き起こした。

I won't plant seeds, don't need an extra mouth I can't feed
俺は種(子供)を植え付ける気はねぇ。食わせられねぇ口(子供)なんて余計にいらねぇんだよ。

That's extra Phillie change, more cash for damp weed
その分、フィリーズ(葉巻)の小銭が浮くし、しめった極上のウィード(大麻)を買う金が増えるからな。

This goes out to Manhattan, the Island of Staten
これはマンハッタン、スタテンアイランドに捧げる。

Brooklyn and Queens is livin' fat and
ブルックリンとクイーンズはファット(最高)に生きてる。

The Boogie Down, enough props, enough clout
ブギー・ダウン(ブロンクス)、リスペクト(プロップス)も影響力(クラウト)も十分だろ。

Ill Will, rest in peace, yo, I'm out
イル・ウィル、安らかに眠れ。じゃあな、俺は行くぜ。

[Outro]
(Right...) It's still halftime
(そうだ…)まだハーフタイムだ。

(Right...) To the Queensbridge crew
(そうだ…)クイーンズブリッジのクルーへ。

To the Queensbridge crew, you know it's halftime
クイーンズブリッジのクルーへ、ハーフタイムだって分かってるだろ。

(Right...) '92, it's halftime
(そうだ…)1992年、ハーフタイムだ。

(Right...) Yo, police, police man, yo, let's get ghost
(そうだ…)おい、サツだ、サツが来たぞ。なぁ、トンズラ(ゴースト)しようぜ。
※get ghost=「姿を消す(幽霊になる)」「逃げる」という定番のストリートスラング。

Halftime...
ハーフタイム…

 

Halftime

Halftime

  • Nas
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes