Artist: Sabrina Carpenter
Album: Man’s Best Friend
Song Title: Never Getting Laid
概要
サブリナ・カーペンターのアルバム『Man’s Best Friend』に収録された「Never Getting Laid」は、別れた恋人への複雑な未練と独占欲を、極めてダークかつユーモラスな祝祭感に乗せて歌い上げた異色のポップチューンである。相手の幸せを心から願いつつも、「一生セックスできない呪い」をかけるという強烈なパラドックスは、彼女のシニカルなポップセンスの真骨頂だ。「アゴラフォビア(広場恐怖症)」や「禁欲」といった深刻なテーマを、軽快なメロディとZ世代特有の皮肉でコーティングすることにより、失恋の痛みを極上のエンターテインメントへと昇華させている。現代ポップスにおける新たな「失恋アンセム」の形を提示する見事な一曲だ。
和訳
[Verse 1]
We were so happy, why not mix it up?
私たちすごく幸せだったのに、どうしてぶち壊しにしちゃったの?
※「mix it up(状況を変える、波風を立てる)」という表現で、平穏な関係を自ら壊した相手への皮肉を込めている。
I'm so at peace, yeah, I can't drink enough
私はすごく心安らかよ、ええ、お酒がいくらあっても足りないくらいね
※「at peace(穏やか)」と言いながら浴びるように酒を飲んでいるという、言葉と行動の矛盾(アイロニー)が彼女らしい。
No way to know just who you're thinkin' of
あなたが誰のことを考えてるかなんて、知る由もないし
I just wish you didn't have a mind (Oh)
ただ、あなたに「心」なんて無ければよかったのにって思うわ(ああ)
[Pre-Chorus]
That could flip like a switch
スイッチみたいにコロッと心変わりしちゃうような
That could wander and drift
ふらふらと彷徨って、流されて
To a neighboring bitch
そこら辺のビッチのところへ行っちゃうような心なんて
When just the other night
ついこの間の夜には
You said you need me, what gives?
「私が必要だ」って言ってたじゃない、一体どういうこと?
※「what gives?」は「どうしたの?」「何があったの?」と問い詰める口語表現。突然の心変わりに戸惑う等身大の脆さが見える。
How did it come to this?
どうしてこんなことになっちゃったのよ
Boy, I know where you live
ねえ、私、あなたの家の場所知ってるんだからね
※悲しみから一転、急にストーカーじみた脅し文句を放つスリリングな展開。ダークコメディ的な要素が光るラインである。
[Chorus]
Baby, I'm not angry
ベイビー、私怒ってなんかないわ
Love you just the same
今までと同じように愛してる
I just hope you get agoraphobia some day
ただ、いつかあなたが広場恐怖症になればいいなって願ってるだけ
※「agoraphobia(広場恐怖症・外出恐怖症)」。相手が家から出られなくなり、他の女性と出会う機会を物理的に奪ってしまいたいという狂気的な独占欲である。
And all your days are sunny
そして、あなたの毎日が晴れやかでありますように
From your windowpane
窓ガラス越しに見る限りはね
※外に出られない相手に対して「窓から見る景色は晴れているといいね」という、極めて意地悪で洗練された呪いの言葉だ。
Wish you a lifetime full of happiness
一生分の幸せがあなたに訪れることを祈ってるわ
And a forever of never getting laid
そして、永遠に誰ともセックスできない呪いにかかればいいのよ
※究極のパンチライン。「never getting laid(絶対にヤれない)」という生々しい言葉と、聖母のような祝福のコントラストが圧倒的なインパクトを放つ。
[Verse 2]
I think this schedule could be very nice (Very nice)
こういうスケジュールも、案外悪くないと思うのよ(すごくいいわ)
Call up the boys and crack a Miller Lite, watch the fight
男友達を呼んで、ミラー・ライトを開けて、格闘技でも見ればいいじゃない
※「Miller Lite」はアメリカの安価な大衆ビールの代表格。典型的な「男だけの退屈な休日」をステレオタイプに描写している。
Us girls are fun, but stressful, am I right? (Am I right?)
私たち女の子って楽しいけど、ストレスも溜まるんでしょ、そうよね?(そうでしょ?)
And you got a right hand anyway (And only yesterday)
それに、どうせあなたには「右手」があるんだし(つい昨日までは)
※「右手」という直接的なマスターベーションの暗喩。女性がいなくても一人で処理すればいいという、強烈で容赦ない皮肉である。
[Pre-Chorus]
Was when we called it quits (Called it quits)
私たちが関係を終わらせたのは(終わらせたのは)
I was so confident (Confident)
私はすごく自信満々だったのよ(自信満々だった)
'Til the thought of it hit
ある考えが頭をよぎるまではね
That any given night
いつの夜だって
You could be using your lips
あなたがその唇を
On a girl with big tits
胸の大きな女の子に使ってるかもしれないって
※自分への自信が揺らぎ、具体的な他の女性への嫉妬に駆られる瞬間のリアルな心理描写だ。
Boy, I know where you live
ねえ、私、あなたの家の場所知ってるんだからね
[Chorus]
Baby, I'm not angry
ベイビー、私怒ってなんかないわ
I love you just the same
今までと同じように愛してる
I just hope you get agoraphobia some day
ただ、いつかあなたが広場恐怖症になればいいなって願ってるだけ
And all your days are sunny (Sunny from your windowpane)
そして、あなたの毎日が晴れやかでありますように(窓ガラス越しに見る限りはね)
From your windowpane
窓ガラス越しに見る限りはね
I wish you a lifetime full of happiness
一生分の幸せがあなたに訪れることを祈ってるわ
And a forever of never getting laid (Forever, mm)
そして、永遠に誰ともセックスできない呪いにかかればいいのよ(永遠にね)
A forever of never getting laid (Mm, hmm)
永遠にヤれない呪いにね(んー)
[Outro]
At the end of the rainbow
虹のふもとにたどり着いたら
※「虹のふもとには金貨の壺がある」という西洋の伝承を引いている。
I hope you find
あなたが見つけられますように
A good whole lot of nothing
文字通り「何もない」ってことをね
※希望の象徴である虹のふもとに何もない、という絶望的なオチ。
'Cause you're still inside
だって、あなたはずっと家の中に引きこもったままだから
And abstinence is just a state of mind
「禁欲」なんて、ただの気の持ちようよ
※「state of mind(気の持ちよう、心の状態)」。一生セックスができなくても気にするな、という最後の手痛い引導の渡し方である。
