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Runaway - Kanye West (feat. Pusha T) 【和訳・解説】

Artist: Kanye West (feat. Pusha T)

Album: My Beautiful Dark Twisted Fantasy

Song Title: Runaway

概要

本作は、カニエ・ウェストが2009年のVMAにおけるテイラー・スウィフトへの乱入事件で世界的な大バッシングを浴びた後、ハワイに隠遁して制作し2010年に発表した傑作アルバム『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』の核心をなす9分超の大作である。プロデュースはカニエ自身に加え、エミール・ヘイニーやマイク・ディーンらが手掛けた。不穏で美しいピアノの単音リフレインに、リック・ジェームスのライブ音源から抽出された「Look at ya」の声をサンプリングした骨組みが特徴的だ。自身の肥大化したエゴ、不器用な人間関係、そして世間からのヘイトを真っ向から受け止め、世界中の「嫌われ者」たちへ自嘲気味に乾杯を捧げる、ポップミュージック史上最も美しい自己批判のバラードである。プッシャ・Tによる冷徹なハスラー視点の客観的なヴァースも、カニエの人間的欠陥をより多角的に浮き彫りにしており、完璧な対比を生み出している。

和訳

[Intro: Rick James & James Brown]

Look at ya, look at ya, look at ya, look at ya
あいつを見ろよ、あいつを見ろよ、あいつを見ろよ、あいつを見ろよ

Look at ya, look at ya, look at ya, look at ya
あいつを見ろよ、あいつを見ろよ、あいつを見ろよ、あいつを見ろよ

Look at ya, look at ya, look at ya, look at ya
あいつを見ろよ、あいつを見ろよ、あいつを見ろよ、あいつを見ろよ

Look at ya, look at ya, look at ya, look at ya (Ladies and gentlemen, ladies, ladies and gentlemen)
あいつを見ろよ、あいつを見ろよ、あいつを見ろよ、あいつを見ろよ(紳士淑女の皆さん、女性の皆さん、紳士淑女の皆さん)
※リック・ジェームスの1981年の楽曲「Mary Jane」のライブ音源から「Look at ya」というフレーズをサンプリングしている。2009年のVMAでの乱入事件以降、世間から好奇の目で見られ、指を指され続けたカニエ自身の状況を自嘲的に表現している。後半の「Ladies and gentlemen」はジェームス・ブラウンのライブ音源からのサンプリングである。

[Pre-Chorus: Kanye West]

And I always find, yeah, I always find something wrong
そうさ、いつも悪いところばかり見つけてしまう

You been puttin' up with my shit just way too long
お前は俺のくだらない我が儘に、あまりにも長い間耐えてきてくれた

I'm so gifted at finding what I don't like the most
一番気に入らない部分を見つけ出すことに関しては、俺は天才的な才能があるらしい

So I think it's time for us to have a toast
だから、そろそろ俺たちのために乾杯をすべき時だと思うんだ

[Chorus: Kanye West]

Let's have a toast for the douchebags
ろくでなしどもに乾杯しよう

Let's have a toast for the assholes
嫌われ者どもに乾杯しよう

Let's have a toast for the scumbags
クズ野郎どもに乾杯しよう

Every one of them that I know
俺が知っているあいつら全員に

Let's have a toast for the jerk-offs
独りよがりのバカどもに乾杯しよう

That'll never take work off
絶対に仕事を休まないあいつらに
※自身の偏執的なワーカホリック気質を自虐的に表現しており、音楽制作に没頭して周囲を顧みないエゴイズムを指している。前行の「jerk-offs」と巧みに韻を踏んでいる。

Baby, I got a plan
なあ、俺にいい考えがあるんだ

Run away fast as you can
できるだけ早く、俺から逃げるんだ

[Verse 1: Kanye West]

She find pictures in my email
彼女が俺のEメールの中に写真を見つけちまった

I sent this bitch a picture of my dick
別の女に俺の性器の写真を送っていたのさ
※当時、カニエがモデルに自身の露骨な写真を送信したというスキャンダルがタブロイド紙を賑わせた事実をそのままリリックに反映している。自らの不貞行為と醜態を隠さずに暴露する、極めて剥き出しの自己批判である。

I don't know what it is with females
女性ってやつが一体何なのか、俺にはさっぱり分からない

But I'm not too good at that shit
とにかく俺は恋愛ってやつがひどく苦手なんだ

See, I could have me a good girl
ほら、せっかく最高の彼女が手に入ったとしても

And still be addicted to them hoodrats
ストリートの安っぽい女たちへの依存から抜け出せない
※「hoodrats」はスラムにいるような素行の悪い女性を指すスラング。ここでは、上品で貞淑な恋人がいながらも、破壊的で刺激的なストリートの女性を求めてしまうカニエの二面性と、根深い自己破壊衝動を表している。

And I just blame everything on you
そのくせ、俺はすべての非をお前に擦り付けるんだ

At least you know that's what I'm good at
せめてそれだけは、俺の得意分野だってことはお前も知ってるだろ

[Pre-Chorus: Kanye West]

And I always find, yeah, I always find
そうさ、いつも

Yeah, I always find something wrong
そうさ、いつも悪いところばかり見つけてしまう

You been puttin' up with my shit just way too long
お前は俺のくだらない我が儘に、あまりにも長い間耐えてきてくれた

I'm so gifted at finding what I don't like the most
一番気に入らない部分を見つけ出すことに関しては、俺は天才的な才能があるらしい

So I think it's time for us to have a toast
だから、そろそろ俺たちのために乾杯をすべき時だと思うんだ

[Chorus: Kanye West]

Let's have a toast for the douchebags
ろくでなしどもに乾杯しよう

Let's have a toast for the assholes
嫌われ者どもに乾杯しよう

Let's have a toast for the scumbags
クズ野郎どもに乾杯しよう

Every one of them that I know
俺が知っているあいつら全員に

Let's have a toast for the jerk-offs
独りよがりのバカどもに乾杯しよう

That'll never take work off
絶対に仕事を休まないあいつらに

Baby, I got a plan
なあ、俺にいい考えがあるんだ

Run away fast as you can
できるだけ早く、俺から逃げるんだ

[Bridge: Kanye West & Rick James]

Run away from me, baby
俺から逃げるんだ、ベイビー

Ah, run away
ああ、逃げてくれ

Run away from me, baby (Look at ya, look at ya, look at ya)
俺から逃げるんだ、ベイビー (Look at ya, look at ya, look at ya)

Run away
逃げるんだ

When it starts to get crazy (Look at ya, look at ya, look at ya)
状況が狂い始めたら (Look at ya, look at ya, look at ya)

Then run away
その時は逃げてくれ

Babe, I got a plan, run away as fast as you can
なあ、俺に考えがある、できるだけ早く逃げるんだ

Run away from me, baby
俺から逃げるんだ、ベイビー

Run away
逃げるんだ

Run away from me, baby (Look at, look at, look at, look at, look at, look at, look at ya)
俺から逃げるんだ、ベイビー (Look at, look at, look at, look at, look at, look at, look at ya)

Run away
逃げるんだ

When it starts to get crazy (Look at ya, look at ya, look at ya, look at ya)
状況が狂い始めたら (Look at ya, look at ya, look at ya, look at ya)

Why can't she just run away?
どうして彼女はただ逃げ出せないんだろう?
※自分の酷いエゴに耐え続け、傷つきながらも去ろうとしない恋人への、カニエの当惑と引き裂かれるような葛藤が表現されている。

Baby, I got a plan
なあ、俺にいい考えがあるんだ

Run away as fast as you can (Look at ya, look at ya, look at ya)
できるだけ早く、俺から逃げるんだ (Look at ya, look at ya, look at ya)

[Verse 2: Pusha T]

Twenty-four seven, three sixty-five, pussy stays on my mind
年中無休、24時間365日、頭の中は女のことでいっぱいさ
※ヒップホップ界で最も冷徹なリリシストの一人であるプッシャ・Tは、カニエの繊細な自己嫌悪とは対照的に、徹底して傲慢で物質主義的な「悪役」としてのペルソナを演じている。

I-I-I-I did it, alright, alright, I admit it
そうさ、俺がやったんだ、分かったよ、認めてやるさ

Now pick your next move, you could leave or live with it
さあ、次の出方を選びな、出ていくか、それともこれを受け入れて生きるかだ

Ichabod Crane with that motherfuckin' top off
イカボッド・クレーンみたいに、車のルーフを叩き切ってオープンカーにしてな
※「Ichabod Crane」は、小説『スリーピー・ホロウの伝説』に登場する首なし騎士に追われる男。ここでは車の屋根(トップ)がない超高級コンバーチブルに乗っている姿を、首のないイカボッドに喩えた鮮烈なメタファーである。

Split and go where? Back to wearing knockoffs?
お前が俺と別れて一体どこへ行くんだ? また安物のパチモンを着る生活に戻るのか?
※「knockoffs」はブランドの偽物やコピー品のこと。俺という富のパトロンを失えば、お前は元の貧しい生活に逆戻りするだけだと冷酷に突き放している。

Haha, knock it off, Neimans, shop it off
ハハ、いい加減にしな、ニーマン・マーカスで好きなだけ買い漁れよ
※「Neimans」はアメリカの超高級百貨店ニーマン・マーカスの略称。前行の「knockoffs」と「knock it off」、そして「Neimans」で巧みに韻を踏む高度なラインである。

Let's talk over mai tais, waitress, top it off
マイタイでも飲みながら話そうぜ、ウェイトレス、グラスを満タンにしてくれ

Hoes like vultures, wanna fly in your Freddy loafers
ビッチどもはハゲタカみたいに、俺のフレディのローファーに群がりたがる
※「Freddy loafers」はイタリアの高級靴ブランド「Fratelli Rossetti」のローファー、あるいは高級セレクトショップで購入した上質なフットウェアを指すストリートの隠語。カネ目当てで群がる女性をハゲタカに喩えている。

You can't blame 'em, they ain't never seen Versace sofas
だが彼女たちを責められやしない、ヴェルサーチのソファなんて見たこともないんだからな
※一流のハスラーだけが所有できる高級家具を提示し、ストリートでの圧倒的な成功を見せつけている。

Every bag, every blouse, every bracelet
すべてのバッグも、すべてのブラウスも、すべてのブレスレットも

Comes with a price tag, baby, face it
全部に値札がついてるんだ、ベイビー、現実を見ろよ

You should leave if you can't accept the basics
こんな基本すら受け入れられないなら、さっさと出ていくべきだ

Plenty hoes in the baller-nigga matrix
大金を稼ぐ男たちのマトリックスには、代わりの女なんていくらでもいるんだからな
※「baller」は成り上がって大金を稼ぐ男。「matrix」は、そうした金と女が冷酷に循環するストリートの構造的なシステムを意味している。

Invisibly set, the Rolex is faceless
インビジブル・セッティングで埋め尽くされ、ダイヤで文字盤も見えないロレックス
※「Invisibly set」とは、宝石の留め爪が見えないように隙間なく敷き詰める極めて高度で高価なジュエリー技法。文字盤がすべて最高級ダイヤモンドで覆われて時間が読めない過剰な贅沢さを「faceless」と表現している。

I'm just young, rich, and tasteless, P
俺はただ若くて、金を持っていて、悪趣味なだけさ。プッシャ・Tとはそういう男だ
※「P」は彼のストリートネームの頭文字。どれだけ大金を手に入れても中身は空っぽで悪趣味だと自嘲しつつ、圧倒的な経済力でマウントを取る、完璧な「ろくでなし」のスタンスを提示してヴァースを締めくくっている。

[Verse 3: Kanye West]

Never was much of a romantic
俺はもともと、ロマンチストな人間なんかじゃなかった

I could never take the intimacy
心の底から深く繋がるような親密さに、どうしても耐えられなかったんだ

And I know I did damage
お前を深く傷つけてしまったことは分かっている

'Cause the look in your eyes is killing me
お前のその瞳のまなざしが、俺の心をひどく突き刺すから

I guess you knew of that advantage
お前はそのアドバンテージに気づいていたんだろう

'Cause you could blame me for everything
何が起きても、すべて俺のせいにできるという強みにな
※カニエ自身の非道な振る舞いのせいで、関係性が壊れた時の道徳的主導権(アドバンテージ)が常に相手側にあることを認めつつ、どこか被害妄想的なニュアンスも含ませている。カニエ独特の内省的でありながらもエゴイスティックなマインドセットが表れている。

And I don't know how I'ma manage
これからどうやって生きていけばいいのか分からないんだ

If one day, you just up and leave
もしある日突然、お前が本当に俺の前から立ち去ってしまったら

[Pre-Chorus: Kanye West]

And I always find, yeah, I always find something wrong
そして俺はいつも、そうさ、いつも悪いところばかり見つけてしまう

You been puttin' up with my shit just way too long
お前は俺のくだらない我が儘に、あまりにも長い間耐えてきてくれた

I'm so gifted at finding what I don't like the most
一番気に入らない部分を見つけ出すことに関しては、俺は天才的な才能があるらしい

So I think it's time for us to have a toast
だから、そろそろ俺たちのために乾杯をすべき時だと思うんだ

[Chorus: Kanye West]

Let's have a toast for the douchebags
ろくでなしどもに乾杯しよう

Let's have a toast for the assholes
嫌われ者どもに乾杯しよう

Let's have a toast for the scumbags
クズ野郎どもに乾杯しよう

Every one of them that I know
俺が知っているあいつら全員に

Let's have a toast for the jerk-offs
独りよがりのバカどもに乾杯しよう

That'll never take work off
絶対に仕事を休まないあいつらに

Baby, I got a plan
なあ、俺にいい考えがあるんだ

Run away fast as you can
できるだけ早く、俺から逃げるんだ

[Outro: Kanye West]

[Non-Lyrical Vocals]
※約3分半にわたり、カニエの歌声に強烈な歪み(ディストーション)とヴォコーダーエフェクトをかけ、まるでエレキギターのソロのように処理された伝説的なアウトロ。どれだけ言葉を尽くしても世間に誤解され、最愛の人間ともまともにコミュニケーションを取ることができないカニエの、文字通り「言葉にならない」絶望、孤独、そして魂の叫びを表現している。声を抽象的な楽器へと昇華させた、ヒップホップ史、ひいてはポップミュージック史における最高峰のアヴァンギャルドな表現である。