Artist: Kanye West
Album: My Beautiful Dark Twisted Fantasy
Song Title: Dark Fantasy
概要
カニエ・ウェストの最高傑作と名高い5thアルバム『My Beautiful Dark Twisted Fantasy』のオープニングを飾る重要曲だ。2009年のVMA事件(※下記リンクにて解説)により世界中から猛バッシングを受け、ハワイへの逃避を余儀なくされたカニエが、自身の名声、エゴ、贖罪、そして世間が作り上げる「歪んだファンタジー」を壮大に描写している。Nicki Minajの不気味なナレーションで幕を開け、梶 芽衣子の「銀蝶渡り鳥」の重厚な旋律をサンプリングしたビートに乗せて「俺たちはこれ以上高く登れるのか?」と自問する本作は、ヒップホップの枠を超越した彼自身の芸術的復活の狼煙である。
和訳
[Intro: Nicki Minaj]
You might think you've peeped the scene
お前らはこの世界(シーン)の裏側を分かってるつもりだろうけど
※Nicki Minajによるイギリス訛りの語り。Roald Dahlのブラックな童話『へそまがり昔ばなし』へのオマージュであり、世間が信じる「名声の表面的なおとぎ話」への皮肉だ。
You haven't, the real one's far too mean
全然分かっちゃいない、本物ははるかに残酷で意地悪なんだ
The watered-down one, the one you know
お前らが知ってる、薄められたマイルドな物語なんて
Was made up centuries ago
何世紀も前に作られたデタラメさ
They made it sound all wack and corny
奴らはそれをダサくて陳腐なものに仕立て上げた
※wack(ダサい)、corny(ベタでつまらない)というストリートのスラング。
Yes, it's awful blasted boring
ああ、本当に退屈でウンザリするわ
Twisted fictions, sick addiction
歪んだ作り話に、病的な依存症
Well, gather 'round, children, zip it, listen
さあ子供たち、集まって。口を閉じて、よく聞きな
[Chorus: Justin Vernon & Teyana Taylor]
Can we get much higher? (So high)
俺たちはもっと高みへ行けるのか?(あぁ、ハイになってるぜ)
※Justin Vernon(Bon Iver)とTeyana Taylorによるコーラス。Mike Oldfield「In High Places」のサンプリング。「higher」は名声の頂点、ドラッグによる酩酊、そしてどん底からの精神的な高みというトリプルミーニングである。
Oh, oh, oh
オー、オー、オー
Oh, oh, oh-oh, oh (Oh)
オー、オー、オーオー、オー(オー)
Can we get much higher? (So high)
俺たちはもっと高みへ行けるのか?(あぁ、ハイになってるぜ)
Oh, oh, oh
オー、オー、オー
Oh, oh, oh-oh, oh
オー、オー、オーオー、オー
Can we get much higher? (So high)
俺たちはもっと高みへ行けるのか?(あぁ、ハイになってるぜ)
Oh, oh, oh
オー、オー、オー
Oh, oh, oh-oh, oh (Oh)
オー、オー、オーオー、オー(オー)
Can we get much higher? (So high)
俺たちはもっと高みへ行けるのか?(あぁ、ハイになってるぜ)
Oh, oh, oh
オー、オー、オー
Oh, oh, oh-oh, oh
オー、オー、オーオー、オー
[Verse 1: Kanye West]
Yeah, yeah, yeah, yeah
イェー、イェー、イェー、イェー
I fantasized 'bout this back in Chicago
シカゴにいた頃から、こんな景色をずっと夢見てたんだ
Mercy, mercy me, that Murciélago
マジでお恵みを、あのムルシエラゴって感じだろ
※Marvin Gayeの名曲「Mercy Mercy Me」と、ランボルギーニの高級車「ムルシエラゴ(Murciélago)」を掛けた秀逸なワードプレイ。
That's me the first year that I blow
俺がブレイクした最初の年なんて、まさにそんな勢いだったぜ
How you say broke in Spanish? Mi no hablo
スペイン語で「文無し(broke)」ってなんて言うんだ? 俺は話せねえよ(Mi no hablo)
※「Mi no hablo(I don't speak)」と言い放つことで、「俺の辞書に貧乏という言葉はない」という絶対的なエゴと富を見せつけている。
Me drown sorrow in that Diablo
俺はあのディアブロの中で悲しみを溺れさせるんだ
※ディアブロ(Diablo)もランボルギーニの車種であり、スペイン語で「悪魔」を意味する。「悪魔」のような酒や快楽でバッシングの悲しみを紛らわせる暗喩。
Me found bravery in my bravado
俺のこの虚勢(ブラヴァド)の中に、勇敢さを見つけたのさ
DJs need to listen to the models
DJどもはモデルの姉ちゃんたちの言うことを聞くべきだな
※クラブのVIP席にいるモデルたちが「カニエの曲をかけて」とリクエストしている情景。
You ain't got no fuckin' Yeezy in your Serato? (You ain't got no Yeezy, nigga?)
お前のSeratoにYeezy(カニエ)の曲が入ってねえって?(マジでカニエが入ってねえの?)
※Seratoは世界中のクラブDJが使用する定番のDJソフト。DJに対する痛烈なディスであり、彼自身の絶対的な自信の表れ。
Stupid, but what the hell do I know?
バカバカしい、けど俺に何が分かるってんだ?
I'm just a Chi-Town nigga with a Nas flow
俺はNasのフロウを持った、ただのシカゴ(Chi-Town)出身の黒人さ
※ニューヨークの伝説的ラッパーNasの高度なリリシズムと、シカゴ育ちの自分のストリート感を同列に語るボースティング(自慢)。
And my chick in that new Phoebe Philo
俺のオンナはPhoebe Philoの新作を身に纏ってるぜ
※Phoebe Philo(フィービー・ファイロ)は当時Céline(セリーヌ)のクリエイティブ・ディレクターを務めていた天才デザイナー。
So much head, I woke up to Sleepy Hollow
最高にフェラされまくって、目が覚めたら『スリーピー・ホロウ』状態だ
※head(オーラルセックス)と、首なし騎士が登場するホラー映画『Sleepy Hollow』を掛けた下ネタのパンチライン。「首(頭)がなくなるほど」という意味。
[Chorus: Justin Vernon & Teyana Taylor]
Can we get much higher?
俺たちはもっと高みへ行けるのか?
Oh, oh, oh
オー、オー、オー
Oh, oh, oh-oh, oh
オー、オー、オーオー、オー
[Verse 2: Kanye West]
Look like a fat booty Celine Dion
まるでデカいケツをしたセリーヌ・ディオンみたいだな
Sex is on fire, I'm the King of Leona Lewis
セックスは燃え上がってる、俺はレオナ・ルイスの王様だ
※ロックバンドKings of Leonのヒット曲「Sex on Fire」と、R&B歌手Leona Lewisの名前を強引に合体させたカニエ特有の不条理な言葉遊び。
Beyond the truest
「リアル(本物)」なんて言葉すら超越してるぜ
Hey, teacher, teacher, tell me how do you respond to students?
なあ先生、生徒たちにはどうやって対応するんだ?
And refresh the page and restart the memory?
ページを更新して、記憶をリスタートするにはどうすればいい?
※世間からのバッシング(VMA騒動など)を受けた後、どうやって自身のパブリックイメージやキャリアを「再起動」すべきかという彼の切実な苦悩が垣間見える。
Re-spark the soul and rebuild the energy?
魂に再び火をつけて、エナジーを再構築するには?
We stopped the ignorance, we killed the enemy
俺たちは無知を止め、敵を殺した
Sorry for the night demons that still visit me
未だに夜な夜な俺の元を訪れる悪魔たちには申し訳ないがな
The plan was to drink until the pain over
痛みが消えるまで飲み明かす計画だったのに
But what's worse, the pain or the hangover?
どっちがマシなんだ? 心の痛みか、それとも二日酔いか?
Fresh air, rollin' down the window
新鮮な空気だ、車の窓を下ろす
Too many Urkels on your team, that's why your wins low
お前のチームにはアーケルみたいなヤツらばっかだな、だからお前は勝てねえんだよ(Winslow)
※90年代のシットコム『Family Matters』のオタクキャラであるスティーブ・アーケル(Urkel)と、その主人公一家「ウィンズロー家(Winslow)」を掛けた神がかったダブルミーニング。「wins low(勝率が低い)」と「Winslow」で見事に韻を踏んでいる。
Don't make me pull the toys out, huh
俺に「おもちゃ(銃・車)」を引っ張り出させるなよ
Don't make me pull the toys
俺にヤバいオモチャを出させるな
And fire up the engines, huh
エンジンに火をつけさせるなよ
And then they make noise
そしたら奴らは轟音を立てるからな
[Chorus: Justin Vernon & Teyana Taylor]
Can we get much higher? (So high)
俺たちはもっと高みへ行けるのか?(あぁ、ハイになってるぜ)
Oh, oh, oh
オー、オー、オー
Oh, oh, oh-oh, oh
オー、オー、オーオー、オー
[Bridge: Justin Vernon & Kanye West]
At the mall, there was a seance
ショッピングモールで、降霊術(セアンス)が行われてた
Just kids, no parents
子供たちだけで、親の姿はない
Then the sky filled with herons
すると、空がサギ(herons)で埋め尽くされたんだ
※herons(サギ)はヘロイン(heroin)の隠語としても使われる。親不在の若者たちがドラッグに溺れていくアメリカの退廃的な光景の暗喩だ。
Saw the devil in a Chrysler LeBaron
クライスラー・レバロンに乗った悪魔を見た
※Verse 1の「ランボルギーニに乗る自分(大富豪)」とは対照的な、庶民的な中流階級の車「クライスラー・レバロン」に悪魔が乗っているという表現。どこにでも悪意や誘惑が潜んでいることを示唆している。
And the hell, it wouldn't spare us
そして地獄は、俺たちを見逃しちゃくれなかった
And the fires did declare us
炎が俺たちを飲み込むと宣言したんだ
But after that, took pills, kissed an heiress
でもそのあと、クスリをキメて、大富豪の令嬢とキスをして
And woke up back in Paris
目を覚ましたら、またパリにいたのさ
※地獄のような精神状態やメディアの攻撃から逃れるように、薬物とセレブとの享楽にふけり、気付けばヨーロッパに逃避しているカニエの実体験。富や名声がもたらす「Dark Fantasy(暗い幻想)」の結末。
[Chorus: Justin Vernon & Teyana Taylor]
Can we get much higher? (So high)
俺たちはもっと高みへ行けるのか?(あぁ、ハイになってるぜ)
Oh, oh, oh
オー、オー、オー
Oh, oh, oh-oh, oh, oh
オー、オー、オーオー、オー、オー
[Chorus: Justin Vernon & Teyana Taylor]
Can we get much higher? (So high)
俺たちはもっと高みへ行けるのか?(あぁ、ハイになってるぜ)
Oh, oh, oh
オー、オー、オー
Oh, oh, oh-oh, oh (Oh)
オー、オー、オーオー、オー(オー)
Can we get much higher? (So high)
俺たちはもっと高みへ行けるのか?(あぁ、ハイになってるぜ)
Oh, oh, oh
オー、オー、オー
Oh, oh, oh-oh, oh
オー、オー、オーオー、オー
Can we get much higher? (So high)
俺たちはもっと高みへ行けるのか?(あぁ、ハイになってるぜ)
Oh, oh, oh
オー、オー、オー
Oh, oh, oh-oh, oh (Oh)
オー、オー、オーオー、オー(オー)
Can we get much higher? (So high)
俺たちはもっと高みへ行けるのか?(あぁ、ハイになってるぜ)
Oh, oh, oh
オー、オー、オー
Oh, oh, oh-oh, oh, oh
オー、オー、オーオー、オー、オー
